Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

学校法人の財務情報公開に関する調査結果について

high190です。
文部科学省が実施した、平成19年度学校法人の財務情報等の公開状況に関する調査結果が公開されました。

ちなみに今回調査の対象となったのは、大学を設置している530法人と大学法人以外で短期大学か高等専門学校を設置している138法人、計668法人です。さすがに文部科学省が実施する調査、回答率は100%です。

さて、調査結果ですが、今回の調査対象となった学校法人のうち、約9割が何らかの形で情報を公開しているようです。ただ、学校法人会計は一般的な企業会計と比較して難解だと言われています。学校法人が作成しなければならない財務書類としては、企業会計でも用いられる貸借対照表の他に消費収支計算書・資金収支計算書があります。ほとんどの人は目にしたこともないような書類です。ですから、情報を公開するにあたっては分かりやすい解説を行うために事業報告書の作成が義務付けられています。
本来であれば、事業報告書には受験者数・入学者数・卒業者数・退学者数などの数値を掲載するべきです。しかし、ほとんどの大学ではこうした情報を掲載していないのではないでしょうか。
何故、掲載しないのか。その大きな理由に募集への影響と学校法人の収入体系があります。大学にとって学則で定めている入学定員を満たすことは、経営面で非常に大きな意味を持ちます。まず、大学の財政は国からの補助金と学納金によって成り立っています。そのうちの学納金が全収入に占める割合が非常に大きいのです。つまり、入学者が減少すると大学経営に直接的な打撃を蒙る。定員を満たせないと国からの補助金も減額されてしまうため、大学は入学者の確保に対して神経を尖らせることになります。先般、慶應義塾大学の安西塾長らが中央教育審議会宛に高等教育に対する公的支出の増額を要請しているのは、日本の大学の国際競争力を危惧してのことですが、こうした背景も一因となっているでしょう。

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