Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

教育基本法とはどのような法律なのか?同法の制定過程(特に政治教育)から検討する。

high190です。
2026年3月16日、同志社国際高等学校における研修旅行中の重大な事故が発生し、同校の生徒1名が死亡する痛ましい事案が発生してしまいました。このことについて、文部科学省は4月24日に高等教育局私学部参事官を学校法人同志社に派遣するなど、調査を実施し、本件が教育基本法第14条第2項の違反であり、是正を図る必要があるとの解釈を示しました。現在も各メディアにおいても解釈の妥当性等について、引き続き議論等がなされているところです。

www.mext.go.jp

  • 現時点で把握した情報からは、辺野古への移設工事に関する学習について、政治的活動を禁じる教育基本法第14条第2項に反するものであったと考えられ、是正を図る必要がある。
  • 教育基本法反対及び辺野古の米軍新基地建設反対を宣教基本方策に掲げる日本基督教団京都教区のホームページ上で、関連諸団体として、同志社国際中学・高等学校が位置付けられていること


第1 高等学校等における政治的教養の教育
教育基本法第14条第1項には「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。」とある。このことは、国家・社会の形成者として必要な資質を養うことを目標とする学校教育においては、当然要請されていることであり、日本国憲法の下における議会制民主主義など民主主義を尊重し、推進しようとする国民を育成するに当たって欠くことのできないものであること。
また、この高等学校等における政治的教養の教育を行うに当たっては、教育基本法第14条第2項において、「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動」は禁止されていることに留意することが必要であること。

laws.e-gov.go.jp

 (政治教育)
第14条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

上記が現行法の規定です。しかしながら、そもそもの話として教育基本法について、教育現場、特に事務職員が触れる機会は少ないと思われます。そして学校教育法違反については認証評価等で指摘がなされることがありますが、教育基本法の違反というのは法制定後、初の事例であり、その点も含めて教育基本法の制定過程、特に政治教育についての規定がどのように定められたのかを知ることには一定の意義があると思います。

私自身の理解を深めることを目的として、教育基本法はどのような制定過程を経て制定されたのかを本ブログでは見ていきたいと思います。なお、同法律は平成18年に全面改正されていますが、ここでは昭和22年の制定時の内容を検討します。資料として国立教育政策研究所の戦後教育資料デジタルアーカイブ、名古屋大学大学院法学研究科「日本研究のための歴史情報 法令データベース」等を用います。

まず前提情報として、教育基本法は昭和22年3月31日法律第25号として公布され、現在の法律は平成18年12月22日法律第120号として全面改正され、現在に至っています。

第八條(政治教育) 良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。
法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

 (政治教育)
第14条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

条の入れ替わりや若干の字句修正等は行われているものの、政治教育に関しては昭和22年制定法の規定から変化がないことが分かります。

上記の資料は、教育基本法に関係して各国の教育状況が調査された結果で、文部省調査局調査課長名の「国会説明資料」との記載があります。このうち政治教育に関しては、1.公民教育に関する調査((1)米英を中心として見たる公民教育、(2)本邦における公民教育)、2.教育と政治(教育制度の調査)が行われていたことが分かります。「教育と政治」については勝田昌二氏(後に横浜国立大学教授、1947年文部省調査局調査課嘱託、1948年文部事務官)がレポートしてまとめていますので、以下に抜粋します(手書き文字なので判読誤りによる誤記載があり得ることを御了承ください。資料中取り消し線が引かれたものは除外しています)。

1.政治教育の意義

1.一般に民主主義国家にあっては政党的意見を学校教育に導入することを許さない何らかの規定もしくは動かし難い伝統がある。即ち特定の主義主張を学校において教育することは被教育者の自由な思想発展にとって極めて危険であると言わねばならぬ。学校における政治教育は被教育者をしてなんらかの世界観あるいは政治的理想及思想を選び得る能力を育て上げることが主眼であらねばならぬ。いずれの国においても教育は多かれ少なかれ政治的な偏りをこわしている。これは自国の優秀性についての教育、あるいは愛国的な教育の表れである。この傾向が国際主義的なもの、他国との相互理解の教育との割合がどんなになっているかという点にその国が民主主義的であるか、又は全体主義であるかの問題が含まれている。
社会における政治と、社会人としての基本的公民教育は無論必要であり実施されているが、政党的政治色が強く反映されている場合があるもの許されるべきであろう。

2.米国における政治教育

1.学校における政治教育は立憲政体の下に政治的知識を授け優秀な選挙民を養成する目的をもって、公民科教育として行われてきたが、1929年の世界経済恐慌以来公民科教育には従来の政治教育に加えて、社会経済的教育がはいった。さらに近年になって公民科中に歴史、地理を包含して総合的社会科(インテグレート・ソーシャル・スタディズ)として教育をするようになった。政治教育に政党的意見を加えることは強く反対されているが、政治への理解、愛国心、国および社会への奉仕等について生徒の心に教え込むようにしている。米国の政治教育の特徴と考えられるのは生徒をしてきわめて能動的な自治的な社会人に養成することであって、或る学校に於いては学校全体を一つの自治体として、例えば全校を一国、クラスを1州の如く組織して、生徒によって、生徒のために、生徒の管理を行なっているのもある。
2.社会においては、中等および高等の諸種の成人教育学校、講習会、通信教授等の方法により公民教育として政治教育を実施している。
3.宗教団体、職能団体、労働組合等によってもクラブ、集会、労働者大学等によって政治教育を行っている。

3.英国における政治教育

1.英国においては、之に反して政治の知識を授業することは、全然重要視されていない。之は人間の知的、道徳的、身体的な適当な行使、発達が国民普通教育の目標であり、教室における諸学科、教室自体、スポーツ、運動場、寄宿舎、ボーイスカウト、教会、過程等のあらゆる機会に社会的人格完成の教育が興えられているからである。であるから、中等学校、初頭学校においては特に政治的知識を他の科目より分離して興えられる公民科を設置していない。
2.補習学校においては学校生活の経験なき人々のために「公民科」「常識科」」等の名称の下に市民生活に必要な立憲思想の教育を行っている。
3.社会、職能諸団体、宗教団体及び労働組合等による政治教育は大体米国に似ている。

4.ソ連邦

1.ソ連邦においては学校教育のすべての学科がマルクス-エンゲリス-レーニン-スターリンの共産党の指導精神によって、理解され、教育されているのであって、すなわち全教科が政治教育といえるのであり、特に政治教育としての中等学校以上におけるソ連邦憲法講義以外には行われていない。
しかし就学前児童教育を含み、オクチャブリャータ(十月革命の子)、ピオネール、コムソモール(共産青年団)等の共産党への準備教育組織によって、日常生活を通して共産党精神により完全に教育される。特に各組織の党指導者となるもののために共産党大学があり特別に社会の幹部層候補者としての政治教育が行われている。
2.社会における政治教育は文盲又は半文盲撲滅運動として各民族の母国語教育と平行して強力に行われている。
各種出版物、クラブ図書館、映画、劇場、集会、赤い鳩等のすべての啓蒙期間は党精神に充満しているのであって、それは政治教育というよりはむしろ常識であると言い得るであろう。この点において他の民主主義国の人々は、ソ連邦には自由がなく、全体主義的であると批判するのである。

上記のような資料を準備して国会での説明資料としていたようです。他国との比較も含め、文部省調査課の担当者が調べた資料の内容等に圧倒されながら読んでいました。何分、歴史資料から教育基本法の制定過程を読み解くのは難しいところもあり、ここからは先行研究から教育基本法の制定過程を見ていくことにします。

抄録

教育基本法の成立ということについて、通説は、当時の文相、田中耕太郎の発意と熱意からこれを説明している。が、彼の教育改革案には、もともと国民教育の倫理化と教育権独立の憲法的保障という二つの力点があった。教育目的の法規化に否定的なそのような構想から教育基本法の着想が自動的に生まれるかどうかは一つの問題であろう。ところで、教育基本法成立史の研究は、戦後教育改革資料の調査研究の飛躍的発展によって新しい段階に立ち至っており、田中(耕)に加えて、二人の人物に注目を要することが判明している。一人は、被占領期教育改革立法の立案を担っていた文部省の審議室参事事務取扱、田中二郎で、もう一人は、教育政策の策定に重大な影響力のあった、教育刷新委員会の副委員長、南原繁である。そこで、教育基本法の成立を説く鍵は、どの点に見いだしうるか。第一に、教育基本法立案の起点は、1946年9月11日の文部省省議にあった。教育基本法の構想は、事実上この会議において、法律専門家である田中二郎が発案したものである。教育刷新委員会第一特別委員会の審議過程や審議室・CI&E教育課の協議過程の原案になったのも、彼の1946年9月21日付教育基本法要綱案であった。教育基本法に異例の前文を付す構想も彼のアイデアである。田中(耕)文相は、こうした構想を支持しそれを国策として確定することに重要な役割を演じたのである。第二に重要なのは、南原繁もまた教育基本法の立案に少なからず影響を及ぼしていることである。教育及び文化の問題についての、8月27日の貴族院における彼の質問演説には注意を払うべきだろう。彼は田中(耕)文相の教育立法政策と教育権独立論を批判し、新憲法に教育の根本方針を規定するよう要求するとともに、教育の国民との直結性と政治教育の重要性を説いていた。さらに教育刷新委員会が教育基本法制定方針の大綱を採択したのは、第一特別委員会報告に対する南原の厳しい批判に負うところが大きい。その際、彼は教育の目的は人間性の開発ではなく、あくまで人格の完成でなければならないと力説し、倫理教育において宗教にまで飛躍することに反対した。このような彼の思想は、結果として教育基本法成文のいくつかの条項に生きたのである。今後は、こうした諸点を熟慮して、教育基本法の成立の歴史的意義と限界を読み取っていかなければならない。

以下、本文からの抜粋

田中(耕)は(中略)「教育を政治より分離し、教育制度を政党政派の対立及び勢力関係の影響外に置くこと-此の為めに教育に憲法上司法権を与へられたる独立の地位を保障する取扱を為すこと」という原則を直截に明記している。別言すれば、戦後をスタートした直後の田中(耕)の思想を教育権独立の憲法条規による保障論こそが、その論法の中核を成す問題であった。

(中略)

1945(昭和20)年10月15日学校教育局長として文部省入りした田中耕太郎は(中略)「教育改革私見」の構想を敷衍して、「教育の目的は人格の完成及び個性の健全なる発達に置かれる。人格の観念が倫理的性質を有し、また個性の発達の意味が決して個人的放恣の発揮を意味するものではなく、人格及び個性ともに人間が社会的動物である事実の承認を前提とするものなることは注意を要する点である」と論じるとともに、「われわれは教育に政治から独立した地位を与へ、憲法の条規をもって教育権の独立を保障する必要を感ずるのである。と断じていた。

(中略)

田中二郎教育関係文書には、「教育法関係」と「教育行政制度」の立案計画を期した注目の文書が見出される。(中略)これは9月11日の省議用に作成された文書推定して誤りなく、注目はその内容である。大臣官房文書課の起案に成るとみられるこの文書は、「教育法関係」で①「第一案 応急的措置として現行関係勅令の法令化即ち憲法抵触部分の改廃のみを行ひ」「但し教育根本法は同時制定すること」、②「第二案 学校教育法を制定するも暫定的措置として学制問題のみは一応現行のままにしてをくこと」、③「第三案 完備した学校教育法を制定すること」という三つの案を提示している。(中略)教育基本法立案作業の起点が昭和21年9月11日の省議にあったのは確実である。(中略)9月11日省議用文書の孔子た存在態様を通じて浮かび上がってくるのは、当代第一線の行政法学者、田中二郎が文部省内で実際に担っていた部署である。田中(二)文書に収められた教育改革立法関係諸資料は、彼が、教育基本法だけでなく昭和21年7月から8月にかけての学校教育法立案作業や地方教育行政改革案作成作業、22年9月ごろまでの地方教育行政法案・地方教育委員会法案や教員身分法案の立案作業等にも深く関与し、被占領期の教育改革立法体系かに決定的な役割を演じていたことを証示してあまりある。(中略)田中二郎と審議室(注:大臣官房審議室)のスタッフは、9月11日省議の結論をうけて直ちに「教育根本法」の立案作業に着手し、「教育(基本)法要項案」を作成している(中略)。現在までに発見されたなかでは、これが教育基本法の最初の草案であるが、「教育根本法」を「教育(基本)法」というタームに置き換えているのが目を引く。

(中略)

教育基本法の成立と南原繁(中略)第一に、第90回帝国議会貴族院本会議における質問演説(昭和21.8.27)はことのほか重要である。(中略)①田中(耕)の教育権独立論を一種の教階制度(ハイアラーキー)、文教官僚主義に陥る恐れあるものとして批判して、「要スルに国民一般カラ分離スルコトニ依ツテ教育ノ権威ヲ確立スルトイウノデナクシテ、国民ニ直結シテ、国民ノ自覚ト、其ノ手ニ依ツテ教育進歩ヲ図ルト云フコトガ眼目デナケレバナラヌ」と重要な論題を出している。また②「凡ソ教育理念ハ真理トカ正義トカ云フ単ナル抽象性ニ止ツテ居ラナイ限リハ、必ズヤ其ノ時代ノ政治的、社会的精神ト分離シテ考エルコトノデキナイモノデア」ると言い、「是ガ具体的内容ハ、必ズヤ国民ノ左様ナ政治的、社会的現実生活カラ生ジテクルモノデア」ると確言して、新憲法が国民全てを把握し得るような世界観、政治観を作る必要性と公衆の政治教育の重要性を指摘したのだった。

(中略)

本稿が検討してきた教育基本法成立史再考の視点、要するに田中耕太郎の果たした役割を相対化し、田中二郎の立法技術的な構想力の独自の地位を浮かび上がらせ、南原繁の教育政治的影響力を田中(耕)との関係で重要視する見地は、先の疑問に答える最初の関門であろう。教育基本法構想の誕生を田中二郎の教育改革立法政策論の展開のなかに見出し、各立案ルートにおける田中(耕)と南原の教育立法思想的な影響の跡を対比的にたどりながら、諸機関間のーそしてその中で苦闘した人々のー政治力学的な緊張感系の中で教育基本法の成立を捉えることによって何がみえてくるか。教育基本法成立の歴史的意義と限界を同時代的かつ現代的な眼でリアルに読み取り、わが国教育の機構と機能の未来に活かす学問的格闘があらためて求められているように思われる。

以上、史料的な検討は少ないですが、教育基本法の制定過程と政治教育についての規定がどのように定められていったのかを明らかにしようする試みでした。なお、文部科学省のWEBサイトにも制定時の経緯等に関する資料が置かれているので、併せて紹介します。

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最後に、今回の同志社国際高等学校の事故は改めて、教育現場に勤める教職員に対して重大な課題を提示していると思います。

学校教育において最も重視されるべきは園児、児童、生徒及び学生の生命財産の確保とその保護であり、学校は機関としてその安全を確保し、現行の学校教育法第1条に定められる「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」という目的を実現しなければならないという、当たり前ですが、日々の多忙等で見落としがちな視点です。

特に大学教育は青年期教育であり、成人となった人が教育の対象ではありますが、安全確保面での配慮は当然に必要ですし、中等教育以下の学校種においてはその責任はさらに大きいと言わざるを得ません。学校に勤めるすべての人が今回の事故を教訓としつつ、二度とこのような事故を起こしてはならない教訓を与えていると考えます。

【追記】本件について、過去の記事等も探していたところ、武蔵野大学教授の貝塚茂樹先生が2016年に書かれていた記事が参考になると思いますので、追記します。
www.sankei.com

「18歳選挙権」の実施に向け高校では新学期から本格的な主権者教育が開始される。しかしその先行きは不安だ。特に「政治的中立性」の問題である。

教育の目的は人格の完成とともに、「平和で民主的な国家及び社会の形成者」(教育基本法第1条)を育成することだ。そのため国家社会の形成者として正しく権利を行使し、義務を遂行し、良識にかなった活動ができる政治的教養が不可欠となる。しかし現実の政治問題ではさまざまな思想や主義や利害関係が錯綜(さくそう)し、政党の意見には対立が生じる。だからこそ学校は「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」(同法第14条)と規定され、「政治的中立性」が課題となる。

学校教育の使命は将来の国家社会の形成者として、いずれの政党の政策を選択すべきかを主体的に判断できる資質・能力を育成することである。学校は特定の政党の教育機関とならないことで政党党派の上に超然たる地位と使命を有するのである。

また、授業では教員が、政治的な課題について、個人的な見解を積極的に提示すべきだという意見もある。しかし、特別な場合を除いてその必要はない。主権者教育では、現実の課題について、生徒自身が多面的・多角的に考えることが重要である。ここで重視されるべきは、さまざまな議論を交わすことで合意形成を図ろうとする努力と姿勢であり、問題を解決しようとする過程である。ここでの教員の役目は、考え、議論するための資料を幅広い視点から提供し、中立かつ公正な指導をすることである。むしろ、教員が個人の見解を示すことは主権者教育において弊害となるはずである。

なぜか。教師と生徒とは基本的に権力関係にあり、教員の具体的な発言は本来的に「権力性」を持つからである。この「権力性」こそが「政治的中立性」を必要とする理由でもある。

教員はこの「権力性」を自覚し、自らの見解をまずは括弧に括(くく)りながら生徒の政治的教養を育成することが必要だ。それこそが教員の「専門性」でもある。教員の安易な見解の提示が、「押し付け」となり政治的教養の育成を妨げる危険性に教員はもっと謙虚となるべきだ。「権力性」は、たやすく「暴力性」へと変質するからである。

マル合教員とは何か?ー史料的アプローチによる調査

high190です。
大学職員として勤めている人が一度は聞いたことがあると思われる「マル合教員」という言葉について、今日は取り上げます。これは大学院で研究指導(具体的には修士論文又は博士論文の指導)を行うにあたり、大学設置・学校法人審議会で研究指導を担当して相応しい業績を持つ教員のことを指します。

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  • 3.大学の設置等に係る提出書類の作成の手引(令和9年度開設用)【記入要領2 (155~227ページ)】

(P.208)「過去の大学設置・学校法人審議会における判定結果及び補正理由」の欄は,当該教員が過去に大学設置・学校法人審議会(旧大学設置審議会を含む)で受けた判定(不可,保留及び「適格な職位・区分であれば~」等の判定は除く)を記入するものです。したがって,いわゆる「学内
審査」については対象となりません。なお,履歴書(別記様式第 4 号(その 1))の「職歴」欄にも同じ内容が含まれることになりますので,整合性に留意してください。
①判定を受けた年月,大学名,職名,区分(基幹・その他の別)及び授業科目名を記入してください。なお,オムニバス科目については,授業科目名の下部に担当回数(例:全 15 回のうち 3回分を担当した場合は「3 回/15 回」と記入)及び担当部分の概要を記入してください。
②大学院の前判定を記入する場合は,授業科目名と併せて,M又はDの別及びマル合,合又は可の別を記入してください。


(P.215)届出の場合には,研究指導を担当する専任教員については,「研究指導(Mマル合)」、「研究指導補助(M合)」の別を記入してください。

簡単に説明すると「Mマル合」は博士前期課程(修士課程を含む)で修士論文指導を行えることが認められた教員、「Dマル合」は博士後期課程で博士論文指導を行えることが認められた教員ということになります。これは大学院を設置している大学で、設置認可申請時以外にも学内的に使われている言葉だと思います。

では、そもそも何故「マル合教員」という言葉が使われるようになったのでしょうか?ここを史料的に解明を試みたいというのが今日のブログのお題です。

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  • 「大学院審査会各分科会 主査及び副主査合同会議申合せ事項」,孔版,戦後教育資料,国立教育政策研究所

申し合せ事項

  1. 教員組織審査の判定については、合(合格)又は不(不合格)の別を記入し(インキを使用のこと)、特に有力な者には更に⚪︎印を附する。
  2. 教員組織審査の判定の結果は、各分科会主査がその原本を保持し、その写しについて、主査の捺印を受けたるものを文部省において保管する。
  3. 教授一、(指導教授)で担当し得る学生の最大数は十名とする。但し、自然科学の場合にあっては七名とする。

上記の資料を参照する限り、大学院における教員組織審査の判定に際し、合格・不合格を記入する際、「特に有力な者には更に⚪︎印を附する」とされています。この申し合せ事項が1951年の大学設置委員会大学院審査運営委員会において「修士課程をもつ大学院審査会運営委員会申合せ事項」として決定されています。

  • 修士課程をもつ大学院審査会運営委員会申合せ事項」

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  • 「大学設置委員会官制」

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もう少し絞り込みは必要ですが、1951年の「大学院審査会各分科会 主査及び副主査合同会議申合せ事項」が現在の大学設置認可制度にも生きているというのが、私なりに調べた結果です。この辺りの歴史的事実が制度化していった過程は今後も調べたいと思います。

日本教育工学会 2024年秋季全国大会に参加しました。

high190です。

2024年9月7日(土)、9月8日(日)の2日間で東北学院大学で開催された標記学会に参加しました。当日は大学行政管理学会の定期総会・研究集会が日本福祉大学東海キャンパスで開催されていたため、大学職員で学びを深めようと思っている方々はそちらに行っていたかと思いますが、私は自分の研究領域に近い所属学会に参加しました。

当学会には2021年に入会し、同年の秋季全国大会でポスター発表したのですが、対面での参加は初です。2日間のプログラムの所感を書いていきたいと思います。

9月7日(土)

チュートリアルセッション1「日本教育工学会へようこそ!学会と全国大会の見どころを紹介します!」

対面参加初なので、最初のチュートリアルセッションから参加。
たまたま以前から知っている大阪大学の村上先生にお会いできて、初学会の緊張が解れました。大会の見どころを聞く。
会長からは「会員数は約3,700名。どの学会も学問細分化で人数が少なくなっているが、学際融合もあり会員数は純増の傾向。」とのコメント。

一般研究発表1

ポスター発表は以下のものを興味深く拝見、勇気を出して質問してみる。
麻布大の松井先生は、今年卒業した学部学生と一緒に発表。
愛媛大学職員の二宮さんは、防災eラーニング設計の発表。現在、どの大学でも防災教育は喫緊の課題だと思うので、取り組む意義は大きいです。現時点でもきちんと設計されていて、最終的な成果が楽しみだと思いました。

  • 小学校低学年を対象とした鳥類発生標本を用いた理科講座の実施および効果の検証(◎安部 遥香,松井 久実(麻布大学))
  • 1-L610-012 大学職員の安全確保と安否確認行動を促す防災eラーニングの設計(◎二宮 和真(愛媛大学熊本大学),久保田 真一郎,川越 明日香,喜多 敏博(熊本大学))

一般研究発表2

ここは自分の興味関心に合致するものがそれほどなかったので回遊しながら色々見て聞いていました。
稲垣先生の発表には多くの聴衆が。初等中等教育での生成AI利用の関心度の高さを感じる。

  • 2-L604-014 生成AIを用いたPBLシミュレーターのログと評価の分析(○稲垣 忠(東北学院大学),佐藤 雄太(みんがく))

一般研究発表3

  • シラバスチェック、各大学で膨大な手間をかけていると思うので、そこに生成AIの助力を得るのはとても良い着眼点だなと思いました。こうした取り組みで各大学の負担軽減に繋げられると良いですね。
  • 3-L605-005 高等教育におけるシラバスチェックのための生成AIの活用(◎根岸 千悠(京都外国語大学),金 賢眞,田尾 俊輔,梶原 久梨子(大阪大学),大山 牧子(神戸大学),浦田 悠,村上 正行,佐藤 浩章(大阪大学))

一般研究発表4

業務遂行のためのコンピテンシー基盤型教育。面白かったです。修論頑張ってください!
北大の重田先生にも挨拶に行ってみたかったが、発表が人気でなかなかトライできず。次回への課題に持ち越し。

  • 4-L610-005 業務遂行のためのコンピテンシー基盤型教育に移行するための現状調査(○濱田 勇,久保田 真一郎,喜多 敏博,合田 美子(熊本大学大学院))
  • 4-L610-017 事前学習とグループワークを組み合わせたリベラルアーツ研修の開発と評価(○重田 勝介,杉浦 真由美,沙 華哲(北海道大学),佐々木 基弘(ドコモgacco))

ウェルカムレセプション

主に大学院時代にゼミ等でオンラインのみでお会いしていた方々と名刺交換。
本人の名刺よりもブログ名刺(猫の名刺)が威力を発揮する。

9月8日(日)

企画セッション【学習環境部会】

座席で受講者の関心別に初等中等教育、高等教育を分けて実施。事例報告を聞いてグループに分かれてディスカッション。
瀬戸SOLAN小学校の取り組みは初めて知ったのですが、小学校段階で探究学習をガッチリ実践していてすごいなと思いました。
また、高等教育の事例の対象大学での上田勇仁先生の取り組みも非常に興味深く聞かせていただきました。

  • 学習環境のデザインプロセスに関する探索
    • 状況の観察
    • 観察の分析
    • 分析に基づく実践デザイン
  • 空間、人工物、活動、共同体
  • 初等中等教育と高等教育の実践例を共有
  • 瀬戸SOLAN小学校の探究の取組
    • 探究学習→子ども自身がルーブリックを設定する
    • 個人探究の学習を中核に据えている。習得→活用→探究
    • 学習主導者が教師から徐々に子どもに移っていく
    • 個人探究のテーマは子ども自身が設定する
    • 学修支援は全教員、保護者、外部専門家の協力
    • iPadをベースに様々な学習コンテンツを用意、思考ツール、図書、ホワイトボード、子どもたちが手を取りやすい箇所に配置
    • 子どもの関心を広げるために高校生、大学生との交流機会を設計
    • 子どもたちの「知りたい」を伸ばす教育
    • クォーター制を導入、探究学習の成果は年度末に保護者も含めた報告会を実施
    • 学修成果はeポートフォリオに蓄積、探究人材バンクを用い、子どもと専門家を繋げる仕掛け
  • 大学初年次におけるプロジェクト型教育「抽象的概念化を促す記述指示が抽象的概念化に与える影響」
    • 学生の振り返りの促進を促す「記述指示」とはどのような経緯で生まれたのか?
    • 大正大学サービスラーニングでの実践事例(初年次教育の選択科目)
    • あらかじめ学生に対して「単位認定基準は厳しい」と表明。当該授業によって「何ができるようになったか」を学生本人が語れるように、毎回の振り返り課題を書かせた
    • コルブの経験学習モデルと内省支援
      • 具体的経験:授業での経験
      • 内省的観察:内省課題の記述
      • 抽象的概念化:記述された抽象的な課題
      • 能動的実験:抽象的か課題を踏まえた実践
    • 解釈を促す記述指示、分析を促す記述指示。振り返り課題はルーブリック評価表。ルーブリック評価表は上田先生が添削して返却
  • ワークショップ
    • 自己紹介、お題(上田先生へのインタビューデータを読んで、「状況の観察」「観察の分析」「分析に基づく実践デザイン」に分類)を読んで、グループ内でディスカッション。
    • 隣のグループと意見交換。観察に対する分析、というよりも教員の経験によるひらめきが大きい。元々考えていないと閃かない。その背景となる知識、経験などが重要。

一般研究発表5(日英発表含む)

熊本大学技術職員で熊本大学教授システム学専攻で学ぶ片山さんの発表。ご自身の業務領域を研究課題に設定されていて、これもまた最終的な評価が楽しみな研究。ストーリーセンタードカリキュラム(SCC)でどんな教材を開発できるのか楽しみです。
次は以前から懇意にしている岩澤さんの発表を聞く。自動採点システムも教師の負担軽減に役立てられそう。あとは形成的評価を受けて改善すると、さらにより良いものになりそうです。
あと、今回のポスター発表で個人的に一番楽しみだったのが木村紀彦さんの実践共同体の発表。パターン・ランゲージで著名な井庭先生のところで博士後期課程にいらっしゃるとのこと。個人的な関心もあったので多くのことを質問してみる。実践共同体に埋め込まれたナレッジ生成のサイクル(SECIモデルのような循環構造)、長年続く実践共同体のナレッジマネジメント・ナレッジ生成のプロセスはある種学会のような構造を持っていることなど、気づきが多く得られました。

  • 5-L610-005 化学物質のリスク管理の自律性を高めるeラーニングコースのデザイン(◎片山 謙吾(熊本大学熊本大学大学院),喜多 敏博,中野 裕司,合田 美子(熊本大学大学院))
  • 5-L609-007 生成AIを用いた自由記述の自動採点支援システムの試作と構築(○岩澤 孝徳,久保田 真一郎,喜多 敏博,マジュンダール リトジット(熊本大学大学院))
  • 5-L610-009 実践共同体における「実践」概念の意味構造(◎木村 紀彦,井庭 崇(慶應義塾大学))

チュートリアルセッション2「教育システム論文をどのように記述していくか」

チュートリアルセッションに参加。教育システム論文はJSETとしても課題とのこと。
この辺りは他の学会等の特徴をよく見た上で、どこに投稿するのが良いのか、各研究者は色々考えているんだなと思わされました。

  • どういう研究が「教育システム開発論文」への投稿に適しているか。
    • 関連する学会は多くある。そもそもJSETが投稿先として適しているのか?
    • 教育現場の課題、実践上の課題を解決するようなもの。また教育支援者への技術的支援など。
    • 技術的な部分の新奇性はそこまで厳格ではなく、教育への影響がどのようなものだったかを主張するとよい。
    • 例えばTAの支援に役立つシステム、保育士の業務支援システムなどが挙げられると思う。
    • システムの場合、使ってみての試行錯誤が重要
  • 「教育システム開発論文」を執筆する際に気をつけるべきことは何か。
    • 技術に対する認識が曖昧では通らない。使っているシステムの構成、組み合わせ方の的確な言語化は必要。評価の観点との適合は必要。システムの有用性の評価。
    • 教育のみならず開発物(システム全体の説明)が説得的であること。
    • 性能に関する評価(10分→1分に短縮など)
  • どのような「教育システム開発論文」の投稿を期待するか。
    • 固有課題をシステムで解決する実践面での新奇性
    • SIGなどで専門を同じくする研究者と連携すること、併せて他分野の研究者と連携して課題解決を図る研究
    • 新しい技術の適用可能性を開拓する研究

チュートリアルセッション3「査読を通っていく投稿論文はどのように記述されている論文か」

論文のお作法的な話題を聞く。これは教育工学分野に留まらず、一般的な研究での留意点という点でもとても面白かったです。

  • JSETの論文誌を読む
    • 傾向として投稿数は純増の傾向にある
    • 会員でない人が投稿しようとする場合は、まず書き方があるので、その点をまず把握する必要がある
    • 引用文献にJSETの学会誌が含まれていないのは先行研究レビューが足りない
  • 論文の基本のきを徹底する
    • 先行研究レビューがなされているか
    • RQは書かれているか
    • 自分の実践をアピールするだけになっていないか(理論的背景は何か)、論文は宣伝メディアではない
    • 研究は後の人が見て積み重ねていけるかにかかっている
  • 他の人に読んでもらう
    • 誤字脱字は意外とある。順番がずれている、図があるとされているが添付されていないなど。出す前に形成的評価を受けること。
    • 査読者もピアで読んでいるので、関係する協力者にコメントをもらうことは重要。院生なら指導教員コメントがあるとよい。
  • その他の大切なこと
    • 通ったら直せない
      • 早期公開は便利だが修正できないので注意
      • 取り下げになった場合、JSTAGEにもその履歴が残る
    • 著作権に気をつけること
      • 原稿はJSETでコピペルナーにかけている
      • オリジナル原稿をしっかり書くこと
      • 他者の図を引用する場合は、適切にJSETの著作権規程に適合している
      • 自己剽窃にも気をつけなければならない。例えば研究会の原稿をそのまま論文誌等に掲載するのはNG。同じ実践を土台にして書くとしても、具体的な表現とその後の実践・検討が加わっていること
    • 研究協力者や利益相反
      • 著作権、他者の人権等への配慮
      • 研究倫理審査
      • 教育実践に基づくデータを用いる場合、そのことの承諾等は適切に取る必要がある。
      • また、子どもが実践した内容を元に実践論文とするのもNGなので、その点にも留意してほしい。
      • 投稿手引きと投稿規定は今後改訂予定
      • 教育データ利活用については、ELSIの議論も踏まえる必要性

全体会

会長挨拶。会場校挨拶。表彰。40周年の学会の歴史を知る機会に。

シンポジウム テーマ「教育工学研究の発展に学会は何ができるか」

  • 取組の紹介
  • ディスカッション
    • 山内先生:山口先生への質問
      • アイデンティティの共同構築は「同じ目標を探求しており、活動の種類は違っても実践を共有している」ことの確認も重要ではないか。
      • 山口先生:ハンドブックのイントロ的チャプター
        • イントロを地図として自分や他者を位置付ける
      • 山内先生:学会の知の体系化としてユニーク
        • 今までにない新しい問いを立てるために、このマップはどう貢献できるのか。
      • 近藤先生
        • 研究者なら読めると思うが、新参の者は読めない。例えばそのための正統的周辺参加のデザイン、学会での新入会員へのガイダンス・ワークショップなどに活用可能と思う。
      • 山内先生:各領域に共通したマネジメント上の工夫は
        • メンバーの興味関心を活かし、個々の研究者のメリットも担保しながら、研究の深化が求められる組織的なミッションを遂行するマネジメント手法とは
      • 益川先生
        • 重点活動領域の成果は学会となるとともに、関わる個人研究者の成果ともなる
      • 山内先生
        • 小回りのきく領域に特化したコミュニティはよいが、そのコミュニティのみに留まらない交流機会をどう作るのか
      • 重田先生
        • SIG合同研究会の開催
      • 共通質問
        • 社会や実践現場における、学会の学術知の認知/活用/普及/深化等の促進
      • 研究者の成長の支援
        • 「研究の舞台裏の支援」もまた何か必要ではないか
        • 教育工学研究者を育成する機関が少ないという背景に、何らかのアプローチは必要だろう。
      • 他学会とのコラボレーション
        • Jsiseのマップは教育工学の全体像を可視化する一助のためのツールとして有益だが、更新が大変。
        • マップWGの議論でも、枠組みは作ってもどうメンテナンスするのかは課題。作成以後もマップを発展させていける人向けのアプローチが必要か。
          • 人的なマップもまた必要では。
  • 総括コメント
    • 近接学会との共同大会等の検討は必要
      • 歴史を知る
      • 日本教育学会のこれまで
        • 近接領域と積極的に越境できるようにコミュニティが形成されてきた
      • 教育工学研究と学会のこれからの役割
        • 教育工学分野のイントロダクション
        • JSET研究成果のサマライズ
        • 近接領域のコミュニティと積極的に交わる仕掛け(例えばJSETとJsise)

ということで2日間あっという間でしたが、自分自身が大学院で教育工学・インストラクショナル・デザインを学んだこともあって、どのプログラムも学習してきた内容との関連が多く、面白かったです。JSETの全国大会はまさに全国各地で開催されるので、なかなか毎回参加は難しいかもですが、また参加してみたいと思わせる内容でした。

株式会社立大学の大学設置を通じた組織の「正統的周辺参加」-デジタルハリウッド大学の事例

high190です。
最近はアフターコロナになって人と会う機会が増えたように感じます。よく知る人との再会を喜び、語り合う中で人間は社会的な動物なのだなと改めて感じているところです。

さて、久しぶりのブログ更新です。少し前ですがとても面白く読んだ論稿がありました。株式会社立大学のデジタルハリウッド大学の創立から関わった方が、振り返りを含めて書かれたものです。大学設置認可制度に関わる者として、非常に興味深く読むとともに、「大学」に勤める人にとって「社会」とのギャップを認識する上で有用なのではないかと思い、ブログに書いてみようと思います。

ここでは筆者の関心に沿って大学設置認可制度、認証評価等に関わる部分を中心に取り上げます。

3.1 株式会社のまま大学を設立
 杉山学長はもともと、デジタルハリウッド創設時に大学院大学を作ろうと考えていた。しかし当時は大学を設立するには法人格を学校法人にする必要があり、経営要件が厳しかったことから大学院大学は見送り、専門スクールからスタートすることになったのである。
 2002年に小泉政権により構造改革特区制度(以下特区制度)が創設された。特区制度とは、法律で規制されている要件について自治体ごとに緩和し、その緩和が地域を活性化させるものであれば全国に拡大されるというものである。杉山学長と当時の藤本社長はこの制度を利用し、デジタルハリウッド設立10年目の2004年2月に、株式会社のままデジタルハリウッド大学院大学を設立し、デジタルコンテンツ研究科を開設した。その翌年の2005年4月にはデジタルコミュニケーション学部を開設し、それを機に名称が「デジタルハリウッド大学」となった。特区制度を活用し、株式会社が大学を設立できるという緩和以外に、校地・校舎の自己所有の緩和や、校地面積の引き下げ、運動場や空地は代替措置とする緩和の適用を受けて開設した。

3.2 最初のカルチャーショック
 大学設置認可申請を通して、カルチャーショックとも言える経験にいくつか遭遇した。
 まずは説明の仕方についてである。プレゼンテーションしてなんぼであったベンチャー企業としては、Word の書式に文章だけで全てを表現しなければならないこと*1が、思いのほか難儀であった。
そもそもデジタルコミュニケーションの説明が難しい。また、大学という高等教育機関になることで、自分たちのやろうとしていることが、産業界だけではなく社会に対してどのように良い影響を与え得るのか、意志はあってもアカデミアに説明した経験はなく、言葉を編むのに苦労した。
 次に印象的だったのが、他大学の教員による審査である。大学の設置審査は、大学設置・学校法人審議会(以下大学設置審議会)という主に他大学の教員で構成された委員会で審査される。委員は日本の高等教育を守ってきた重鎮らで構成されており、批判的なやりとりが多く、我々のロジックとは明らかに正反対であるように思えた。*2
 今にして思うと、正しい知を発見し蓄積することが使命であるアカデミアが、その精度を上げるためにクリティカルな指摘をしてくる習性があるのは当然であったが、当時はなぜそこまで敵対視されるのかが全く分からず、ベンチャー企業の文化との間に大きな乖離を感じていた。
 一方で、我々がアカデミックな世界の考え方やお作法について無知である自覚はあったことから、数々の指摘も天の声と思って受け入れ、デジタルハリウッドの思想を逸脱しない限り対応した。郷に入っては郷に従えである。この姿勢は今でも変わっていない。ちなみにデジタルハリウッド大学というカタカナの名称も変更するよう助言があったが、そこは断固として譲らなかった。

3.3 社会と向き合うということ
 学部の設置審査は、大学院単体の審査より要件が多く、それらをクリアするのに苦労したが、書面審査、面接審査、実地調査を経て、2004年 11月に無事に認可されることとなった。認可の際は、その後の改善要求が留意事項として付される。デジタルハリウッド大学の留意事項は、大項目が 9つ、小項目で数えると22個も付されており、他の認可校と比べて一段と目立っていた。留意事項は文部科学省のホームページに公表され、解消されるまで毎年文部科学省の細かなチェックが入る。前途多難な出発であった。*3

(中略)

3.4.5 文部科学省
 大学を開設したことで、官公庁とのやりとりが多くなった。まずは文部科学省である。大学は設置認可された後、その設置計画の履行状況について、毎年、文部科学省による調査を受ける。調査方法は、分厚い設置計画履行状況報告書の提出と、授業見学や学内関係者との面接等を行う実地調査である。設置計画履行状況等調査委員会は、これまた他大学の教授等で組成され、調査の状況に応じて必要な指導や助言を行うとされている。本学も開学当初は学内の整備が発展途上であったため、指導や助言に従って必死に運営していた。しかしここでも大学組織等に関する考え方が噛み合わず、幾度も厳しいアドバイスをいただいた。時には事務局長の交代をアドバイスされたほど*4であった。
 この設置計画履行状況等調査(以下履行状況調査)は、通常は最初の入学者が卒業する 4年目まで実施される。しかし開学時に付された22個の留意事項は4年間では解消されず、その後も調査が続いた。全て解消されたのは、大学を開学してから7年が経過した2011年であった。そこでようやく完全なる大学の自治が始められることになったのである。留意事項がとうとうなくなったという知らせを聞いて一緒に喜んでくれた1期生もいた。
 ちなみに、文部科学省に認められ学位授与が可能な大学となったが、株式会社立であることから、大学に関する文部科学省からの助成金は適用されなかった。学内のリソースは、まずは何をおいても教育に集中させ、研究活動等については、企業連携などによる外部資金を獲得することで捻出していった。ここは株式会社立としての腕の見せどころであった。

4.3 真に認められた日
 大学の中身も着実に進化していった。大学発ベンチャー創出数は全大学で 10〜12位、私立大学で 2〜4位を恒常的にマークするようになった。開学して最初の 10年はとにかく教育に力を入れていたが、その後は研究活動も盛んになり、毎年メディアサイエンス研究所から研究紀要を発刊するようになった。産学官連携センターによる学発プロダクトの開発もコンスタントに行われている。中長期的視点においては、教職協働で描く未来構想として「DHU2025構想」が策定され、「DHU 2025 VISION BOOK」として広く社会に公表された。
 そんなデジタルハリウッド大学史上、最大級と言っても過言ではないと筆者が思う出来事は、大学基準協会専門職大学院認証評価にて適合を受けたことである。
 認証評価とは、文部科学大臣の認証を受けた機関による第三者評価のことである。2004年度より学校教育法にて、国公私立全ての大学、短期大学、高等専門学校がその認証評価を受審することが義務付けられた。その頻度は 7年以内に 1回(専門職大学院は5年以内に1回)である。法改正の趣旨は、学校設置申請時の国による事前規制を弾力化しつつ、大学等の教育研究の質を保証するというものであり、複数の法的要件の緩和を受けて開学した本学としては、まさに対象のど真ん中にいる。デジタルハリウッド大学は 2017年度に、デジタルハリウッド大学大学院は 2017年度と2021年度に、大学基準協会の認証評価を受審した。
 これまでの大学設置認可申請や履行状況調査でのやりとりを振り返ると、株式会社立の我々の考え方が認証評価団体側に理解いただけるのか、一抹の不安があった。そもそも専門職大学院とは、理論と実務を架橋した教育を行うことを基本とした比較的新しい制度であり、その在り方についてはどの専門職大学院も試行錯誤しているところである。案の定、実地調査で教職員との面接が行われた時は、デジタルコミュニケーションにおける理論とは何なのか、その理論と実務の架橋とは何なのか、デジタルハリウッドの大学としての存在意義は何なのか等について、強くて深い議論が繰り返された。この認証評価においても、委員は主に他大学の教員で構成される。ピアレビューを目的としていることから敵対的姿勢でないことは分かっていたが、真実を追求するアカデミック流の強い議論となることもあった。
 結果的には、どの年度においても無事に「適合」をいただけた。加えて、2021年度の認証評価結果においては、総評の締めくくりにこのような記述をいただいた。「当該専攻は、常に最先端の取組みを通じてデジタルコンテンツを活用した高度情報化社会におけるデジタルコミュニケーションのあり方を提唱していくことに取り組んでおり、その意義は今後の社会にとって重要であるといえる。」。大学設置認可申請時からずっと噛み合わなかったアカデミック界と完全に歩み寄れた瞬間であり、歴代スタッフの苦労が報われた瞬間でもあった。*5

以上、少し長くなりましたが、ご紹介です。私個人としては、著者の方が認証評価受審時のコメントで高く評価されたことを受けて、「アカデミック界と完全に歩み寄れた瞬間」と書かれているのが印象的でした。これは組織レベルでの「正統的周辺参加」ではないかと思います。

www.cultibase.jp

www.jstage.jst.go.jp


正統的周辺参加(LPP:Legitimate peripheral participation)とは、「社会的な実践共同体への参加の度合いを増すこと」が学習であると捉える考え方*6のことです。

学校教育法では、大学を設置できるのは国、地方公共団体、学校法人のみに限定していました。構造改革特区制度を活用して参入が可能となった株式会社立大学ですが、2023年度現在では4校のみに留まっています。*7
著者が語る「アカデミック界」へ大学参入を通じて洗礼を受け、履行状況調査で苦労し、その後も運営等を試行錯誤しながら「アカデミック界という社会的な実践共同体」への参加の度合いを如何にして増してきたかが、このテキストで雄弁に語られていると思います。例えば設置認可申請時の「プレゼンテーションしてなんぼであったベンチャー企業としては、Wordの書式に文章だけで全てを表現しなければならないことが、思いのほか難儀」という部分は、読んでいてなるほどと思いました。大学職員として働く自分にとって所与のものとして捉えていることが、外から見ると違うと。

レイヴ・ウェンガーの「状況に埋め込まれた学習」に書かれているように、「学習とそれが生起する社会状況との関係」という点で、デジタル・ハリウッドという組織が社会状況としての文部科学省大学基準協会等の質保証システムと接触することによって、大学組織として「アカデミック界」に「正統的周辺参加」することで、組織学習してきた成果が現れているように感じました。大学設置から16年の長きに亘り、試行錯誤してきた組織変革の取り組みからは「アカデミック界」も学ぶべき点は多いように感じます。

*1:「設置の趣旨等を記載した書類」のことを指していると思われます。

*2:ここに書かれているように、日本の大学設置認可制度は「ピアレビュー」、アカデミアの同僚たる他大学教員による審査を受けます。この点は大学固有のものであり、理解に苦しまれたことはよく分かります。

*3:開設時の留意事項は社会的に注目度も高く、また株式会社立大学の参入当初でしたので、内部の方は様々な苦労があったものと推察します。

*4:こうした行政指導は設置業務に関わった大学職員ならばよく分かると思います。

*5:開設が2005年なので、16年の経過を経て大学としてアカデミアから高く評価を受けたことに対する関係者の感慨は深かっただろうと思います。

*6:https://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/pf/3Block/09/09-1_text.html

*7:株式会社立大学 - Wikipedia

「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について(審議まとめ)(素案)」から見る論点

high190です。ご無沙汰しています。
約1年振りに記事を書きます。中央教育審議会大学分科会質保証システム部会で議論されている表題の件、審議まとめの素案が公表されました。

www.mext.go.jp

このことについて他の大学職員ブロガーが早速記事を書かれていたので、触発されて書くことにしました。

www.daigaku23.com

現行制度の問題点や改善の方向性が示されています。以下はざっと読んだ感想です。

「既存制度の周知や大学現場での効果的な運用」は良い方向性

大学設置認可でも「何故認可申請をするのか」「認可と届出の違いは何か」をトップマネジメント層が理解していない状況に遭遇することは多いです。こういった点を改善することは重要だと思います。個人的には学長向けの研修*1 *2を行うなら、こうしたテーマに取り組むべきだと考えています。
文科省も「相談しやすくなる体制の充実」を挙げているので、開示する情報の充実(大学設置室HPは見やすいとは言えない)、設置認可のチャットボット開発などを検討してもらいたいです。

「遠隔教育の普及・進展」をチャンスと捉える

4ページに以下の言及があります(赤字強調箇所は筆者による)。この辺りが次の高等教育政策の政策目標に掲げられてくる可能性がありますね。

遠隔教育の取組はまだ試行錯誤をしながら改善を図っていく段階にある。学修者本位の観点から遠隔教育の取組を充実させていくためには、安全で快適な通信環境の整備や技術的な支援体制の構築も重要となる。また各大学のディプロマ・ポリシーを達成するための教育方法としてカリキュラム・ポリシーに遠隔教育が適切に位置づけられ、面接授業と遠隔授業の双方の良さを生かした教育が提供されることが求められる。このことを踏まえれば、今後、大学における先進的・先導的な取組が積極的に行われ、その実践の検証や評価を通じて、遠隔教育がどのような授業に適しているのか、面接授業との効果的な組み合わせ方はどのようなものか、遠隔教育を効果的に行う上でどのような指導体制の整備サポートスタッフの配置が必要となるのかなどについて、知見を蓄積していくことが求められているといえよう。

「3つのポリシー」は実質化しているのか。

7〜8ページに以下の記述があります。3つのポリシーを中心とした教学マネジメントの重要性は「教学マネジメント指針」にまとめられています。

教学マネジメントが適切に行われており、学生が入学時から実際に3つのポリシーに沿ったカリキュラムで学ぶことができるように設計されていることが必要である。その際、学内に3つのポリシーに基づいた教育が行われていることを確認するための自己点検・評価の仕組みが学位プログラム単位で整備されており、学生や社会の声を反映しつつ不断の見直しが行われていることが重要である。

「ポリシーが策定されたことでカリキュラムは変わったのか?」という問いは重要だと思います。シラバスレベルでの科目間の整合性、それによってカリキュラムが成り立つこと、これまでの大学教育でそのことを意識するのは設置認可時のみ*3という鈴木克明先生の指摘は興味深いと思いました。
www.ihe.tohoku.ac.jp

インストラクショナル・デザイン(ID)を活用した大学教育の抜本的な「革新」を指向する試み

質保証システムの改善と並行して、コロナ禍を起点としたオンライン教育の充実化を図っていくことが必要です。そのために取りうる方法としてどのようなものがあるのか。こうした部分での先行研究に当たっておくことが重要です。

IDの理論家として数多い業績を残しているチャーリー・ライゲルースは、最新書(Reigeluth et al,2017)のID研究テーマとして学習者中心パラダイムへの変革を取り上げた.工業社会向けの選抜機能中心に設計されている学校を情報社会向けの誰もが自分の才能を開花させることができる機関へと再設計することが必要であり,そのためにIDの資産を役立てることができると述べている.
学習者中心パラダイム教育機関は,学習時間に基づく進行ではなく達成基準型であり,学問体系中心ではなく課題解決中心であり,全員が同じことを同じ方法で学ぶのではなく学習者個々のニーズに応じて課題・目標・方法がカスタマイズ可能であるとする.また,教員の役割は情報の提供者からゴール設定・進捗・評価の支援者に代わり,学習者の役割もより活動的で自己主導的で互いに教えあう役割をも引き受けるようになる.テクノロジーの果たす役割はますます重要になり,学習記録・計画立案・学習指示・学習評価などを担うようになるとしている.
教授・学習過程の革新は,時代の変化に対応するだけでなく,新しい時代を切り開く次世代を養成する高等教育機関に求められている使命である.小手先の「改善」にとどまらない大学教育の抜本的な「革新」を指向する試みにIDの知見が活かされることを期待して,本稿の結びとしたい.

鈴木克明先生は日本におけるインストラクショナル・デザイン(ID)研究の第一人者ですが、実際に熊本大学大学院教授システム学専攻の取り組みは革新的なものが多いです。例えば「ストーリー中心型カリキュラム」の導入はまさにその典型例と言えます。詳細は以下の書籍と東北大学でのセミナー動画から確認できます。コロナ禍後にはNIIの「大学等におけるオンライン教育とデジタル変革に関するサイバーシンポジウム」でも発表されています。

www.ihe.tohoku.ac.jp

edx.nii.ac.jp

edx.nii.ac.jp

質保証システムの改善・充実の素案を読んで、改善の方向に向かっていることは分かりつつ、現状の延長線上に過ぎないのも事実です。大学教育の革新を担える大学が日本にもっと増えて、その手段の一つとしてIDがもっと活用される方向に向かえばいいと思っています。

*1:東京大学大学経営・政策コース http://ump.p.u-tokyo.ac.jp/news/2021-3.html

*2:大学基準協会 https://www.juaa.or.jp/president_seminar/

*3:教育課程等の概要、授業科目の概要、シラバス、教員名簿〔教員の氏名等〕など、申請者による整合性チェック。認可申請書に対しての大学設置・学校法人審議会でのピア・レビューのサイクル。

大学に関する「質問主意書」と「答弁書」をまとめてみた。

high190です。
普段大学に関するニュースや各省庁の通知などで高等教育の政策動向把握していますが、それ以外に注目しているのが「質問主意書」と「答弁書」です。

www.sangiin.go.jp

国会議員は、国会開会中、議長を経由して内閣に対し文書で質問することができます。この文書を「質問主意書」と言います。質問しようとする議員は、質問内容を分かりやすくまとめた質問主意書を作り、議長に提出して承認を得る必要があります(国会法第74条)。
議長の承認を受けた質問主意書は、内閣に転送され、内閣は質問主意書を受け取った日から7日以内に答弁しなければなりません。7日以内に答弁できない場合は、その理由と答弁できる期限が議長に通知されます(国会法第75条)。
内閣からの答弁は、原則として文書をもってなされ、これを「答弁書」と言います。答弁書は、各府省等で案文を作成し、内閣法制局の審査を経て閣議決定された後、議長に提出されます。

議員が本会議や委員会で質疑を行う場合、その内容は議題による制約を受けます。また、原則として所属する会派の議員数に比例して質疑時間が決まるため、少数会派の議員や会派に属しない議員にとっては必ずしも十分な質疑時間が確保できない場合があります。これに対し質問主意書は、議院の品位を傷つけるような質問主意書や単に資料を求める質問主意書は認められないなど、一定の制約はありますが、国政全般について内閣の見解を求めることができます。また、議員一人でも提出することができるので、所属会派の議員数等による制約もありません。

以上に書かれているように「答弁書は、各府省等で案文を作成し、内閣法制局の審査を経て閣議決定された後、議長に提出」され、「内閣の見解」として公表されます。日本は議院内閣制で、両院制*1なので衆議院参議院の両方で質問主意書答弁書が作成されます。実は衆議院参議院では答弁書の作成過程が違います。この点を明らかにした田中信一郎さんの論文は面白いです。

国会議員から出た大学に関する質問主意書答弁書には、どのようなものがあるのか調べました。何故大学に関するものを調べるのかというと、答弁書閣議での決定を経て内閣の見解となる途上で、内閣法制局の審査を経るので、田中信一郎さんによれば「答弁書が政治見解でなく行政見解としての性格を有する。」ためです。大学も法の下にある組織なので、法令解釈の上でも確認しておくことが必要だと思い、国会会期中に確認しています。私が調べ始めたのが2013年ごろからなので、以下に紹介するものは2013年以後のものが中心です。今後も随時追加していきたいと思います。

衆議院

参議院

*1:両院制(りょういんせい)とは、二つの「議院」によって構成される議会が、それぞれ独立して活動する制度である。二院制(にいんせい)とも言う。対照的な制度に一院制がある。 http://ow.ly/vmZu30rLWeJ

大学職員インタビュー@high190編

high190です。
人事系大学職員の玉山さん、とある大学職員さんが大学職員インタビューをやっていたので、私もやってみます。
note.com
note.com
note.com

埼玉大学の「若手職員アンケート」が元ネタのようです。読み物として面白いので是非。

1.前職について
Q.前職はありますか?また、前職がある場合は前職の業種、職種を教えてください。
前職も私立学校で職員をしていました。企画、学生支援、学長室、教務などを経験しています。


Q.前職での経験で最も役立っていることは何ですか?
設置認可申請に関わったこと。特に設置認可を担当した後、教務で新設組織の運営実務を経験したのは現在も役立っています。


Q.学生時代の経験で最も役立っていることは何ですか?
通っていた大学で学生スタッフをやっていました。職員として大学を考えるきっかけがもらえたと思います。


2.現在の仕事について
Q.現在の担当業務はどれにあてはまりますか?
例示は「総務系」「財務系」「研究支援系」「教務・学生支援系」「国際系」「その他(図書系、出向中)」ですが、この括りでは総務系に該当します。


Q.教員・学生との距離感はどの程度ですか?
私の場合、私立学校の法人事務局所属なので、教員・学生との接点は薄く、法人役員・部門役職者とのやり取りが多いです。しかし設置認可案件だと教員とのやり取りが多く発生します。


Q.①仕事の自由度、与えられている裁量はどの程度だと思いますか?②また、自らが主導的な役割を果たして物事を進めた経験はありますか?
現在「監督職」なので、一定の裁量はありますが原則は管理職の指示に従って業務を進めます。プロジェクト業務、業務改善などで主導的な役割を担ったことがあります。


Q.仕事上英語を使う機会はありますか?
ありません。残念ながら英語が不得意なのですが、1週間ほど海外研修(調査訪問)に参加したことがあるので英語コミュニケーションの必要性は痛感しています。


Q.働くうえで、今後 伸ばしたい・身に付けたいと思う知識やスキル等があれば教えてください。
世代的にも中堅なので、今後は「コンセプチュアル・スキル」をより強化する必要があると感じています。
www.acpa.jp


Q.大学職員を志望した理由、また現在の大学のどのような点に魅力を感じ志望されたか教えてください。
教育に関わる仕事がしたかったことと、職員として教育を支える裏方としての仕事に魅力を感じました。現在の職場に感じた魅力は、母校でもあるので、建学の精神に対する共感によるところが大きいです。


Q.現在、働いていて満足している具体的な内容を選択してください
優秀な上司の下で働いているので、自己の成長に繋がる環境であることは満足度が高いです。


3.先輩職員の声
Q.大学職員として実際に働いてみて、働く前に想像していたこととの違いやギャップを感じた経験はありますか。また、それはどのようなことですか。
私は2つの私立学校を職場として経験していますが、組織的硬直性、官僚制、集団凝集性などは入職後にギャップとして感じました。ただし、これは私立学校という狭い集団内なので、国立大学法人などでは異なるのかもしれません。


Q.現在の大学で働き始めてから、これまでで最も印象に残っている又は最もやりがいのあった仕事について教えてください。
これも設置認可案件ですね。大変ですがやりがいのある仕事です。


Q.働く中で、目標としていることや、日頃から心がけていることがあれば教えてください。
職員には組織の中長期的な安定性と堅実性を担保するため、日々の業務を遺漏なく行うとともに、業務を改善し、組織を前に進めることが役割として求められています。よって前例は重視しつつも、常に改善の視点を持つことを心がけています。


Q.現在の大学で働くことを通じて、「自分のここが成長した」と思う点や、身に付いた知識・スキル等があれば教えてください。
現在の職場に来てからは、前職よりも規模が大きかったこと、所属部署が組織全体を俯瞰的に見る役割であるため、全体を見る視点と知識が身についたと思います。


Q.事務職員の仕事のうち、「この部署の仕事は面白い」「あの部署の仕事が面白そうだ」という仕事があれば、 理由も含めて教えてください。
財務部門の仕事は面白いと思います。一見地味かもしれませんが、私立学校は中長期的な計画に基づく健全な財務体質、戦略計画に基づく経営が必要であり、その根幹を支えるのが財務だからです。もっというと教学と経営と統合した戦略部門で働いてみたいです(総合企画部のイメージ)。


Q.自身はどのようなタイプの人だと思いますか?
面倒くさがり。だからこそ非効率な業務は改善すべきだと思います。


4.受験生へのメッセージ
Q.どのような後輩と一緒に働きたいと思いますか?
よく調べる人。改善提案を持ってきてくれる若手の人には、現状の業務の背景、従前のやり方の俯瞰的観点からの改善方策を聞いています。その上で論理的妥当性があるものは積極的に改善してもらっています。そのためにも「調べる」ことは重要なコンピテンシーです。「大学職員の書き散らかしBLOG」で紹介されていたIMRADフレームワークは私も使っています。
kakichirashi.hatenadiary.jp


Q.最後に受験生へのアドバイスやメッセージがありましたらお願いします。
どんな仕事もそうだと思いますが、一定の領域に到達するまでには学習が必要です。特に大学は社会的に厳しい視点で見られていますし、設置形態を問わず税金が投入されるため、説明責任を強く求められます。財政制度等審議会経済財政諮問会議、総合科学技術・イノベーション会議などでは厳しい論調も多いです。

また少子高齢化による学生獲得競争の激化、現在では感染症対応など業務革新が必要であり、(私はそう思っていませんが)斜陽産業だと言われています。こうした難局を突破する人材が来てくれたら嬉しいですし、そういう人材に選択される大学業界であって欲しいと願っています。