Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

"アフターコロナ"以後の大学教育について

high190です。
現在日本国内はゴールデンウィークですが、新型コロナウイルスの対応もあり、行動自粛が周知されると同時に連休明けから授業をオンラインで行う大学も多くあるでしょう。今回のパンデミックが大学教育に与える影響も甚大であり、高等教育政策自体にも大きな変化が起こるものと想定されます。
このような状況下で大学はどのように大学教育のあり方を考えるべきなのでしょうか。一つ参考にしたいのが、カナダ・オンタリオ州のオタワ大学における取組みです。当大学で現在Vice PresidentをされているJill Scott*1さんのTwitterで4月に以下のツイートがなされていました。

少し前の情報ですが、このツイートから分かることは、オタワ大学では4月のうちに新型コロナウイルスに対処するための教育プログラムを組成し、提供する用意があるということです。

www.uottawa.ca

www.uottawa.ca

未曾有の感染症に対応するための法学、薬学、社会科学、eラーニング、健康科学など各学問分野別のコースが提供されるようです。社会的な知の拠点として大学ができることは何なのかを考えさせられます。翻って日本の大学においては、平時の教育をどのようにオンラインで提供するかに腐心しています。もちろんこれは、現在の大学が置かれた社会的な状況等も含めてやむを得ないことだとは思います。*2
大学が社会の知の拠点として役割を果たそうするならば、現在の困難な状況に対して学問に何ができるのかを示す姿勢は必要だと思います。この感染症は全世界的な拡がりを見せていますので、簡単に終息することは考えにくく、これからも付き合っていかなければなりません。各国の大学が自国にとって学問的に何をすべきか、できるのかを考える機会になると考えます。今我々に求められているのは、新型コロナウイルスを包摂した大学教育の新たなあり方を省察的に模索し、大学にできることを社会に示すことではないでしょうか。
伝統的な学問を伝えつつ、社会の変化に適応的な"Adaptive University"であることが、アフターコロナ以後の大学教育には求められていること、その目指すべき姿がカナダの大学にはあるような気がします。

*1:Jill Scottさんは2019年までQueens UniversityでVice Presidentをされていました。私が2018年に訪問調査で訪れた際、直接お話を伺うことができたアカデミック・リーダーです。 https://www.uottawa.ca/about/governance/senior-administration/jill-scott

*2:この点については、熊本大学大学院教授システム学専攻の鈴木克明先生が2020/04/17にNIIで講演した内容が参考になります。 https://www.nii.ac.jp/news/upload/20200417-9_Suzuki.pdf