Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

学生に求められる「主体性」や「創造性」を大学教育でいかに養うか

high190です。
日本経団連が企業に対し、大学生の採用に関して重視することをアンケート調査したところ、最近の大学生には主体性が足りないとの回答が最も多かったそうです。
就職活動の早期化等、大学と社会の接続に関し、大学と産業界の意見交換をより深めていくことが必要ではないでしょうか。


最近の大学生には主体性や創造力が足りない――産業界にこんな不満があることが、日本経団連のアンケートでわかった。最近の新卒採用で企業側は、募集人数に達しなくても求める人材がいなければ採用しない「厳選採用」を続ける。内定率の向上には、大学教育の内容を巡る企業と大学のミスマッチを解消する努力が求められている実情が改めて浮き彫りになった。
大学生の採用で重視すること(複数回答)を企業に1〜5ポイントで評価してもらったところ、「主体性」が平均4.6ポイントで最多。「コミュニケーション能力」と「実行力」が4.5ポイントで続いた。
一方、最近の大学生に不足している素質を尋ねる(同)と、一番多かったのが「主体性」で89.1%。能力・知識面で不足を尋ねた(同)ところ、既存の価値観にとらわれない発想ができる「創造力」が69.3%でトップだった。
大学に取り組みを期待することの質問(同)では「教育方法の改善」が76.5%を占めた。具体的には、学生に体験活動をさせる授業などが挙がり、教員が一方的に講義する授業への不信を示した。
企業側は大学教育にどう参加しているのか。27.3%が幹部や実務担当者を大学に派遣して講義をし、インターンシップを実施している企業も48.3%に達した。経団連は「今後も大学側との協力を進めたい」と話している。
アンケートは昨年9〜11月、経団連会員企業1283社と非会員の地方中堅企業に尋ね、596社から回答を得た。

アンケートの詳細は日本経団連のWebサイトに掲載されています。

企業の具体的な回答を引用してみると産業界が大学に求めていることが何か、おぼろげではありますが分かってきます。

  • 「グローバルに活躍する日本人の人材に求められる素質・知識・能力」として、「既成概念に捉われず、チャレンジ精神を持ち続けること」、ついで「外国語によるコミュニケーション能力」を重視。
  • 「グローバル人材育成に向けて大学に期待する取り組み」は「専門科目を外国語で履修するカリキュラムの構築」、「企業の経営幹部・実務者から、グローバル・ビジネスの実態を学ぶカリキュラム」を求めている。
  • 「採用に際して大学生に期待する素質・態度、知識・能力」のうち、特に重視されるのは、主体性、コミュニケーション能力、実行力、チームワーク・協調性。
  • 「期待される大学教育改革」は、「教育方法の改善」「大学教員の教育力向上」「AO入試の廃止」「民間からの積極的な教員登用と処遇」に対する対応。

いずれも大学にとっては大きな課題であると同時に、産業界からの意見を踏まえつつ大学運営をしていく必要があるでしょう。しかしながら、主体性や創造性を大学教育の中でどのように育成していくかということは難しい問題であると言えます。既存のカリキュラムを充実させることはもちろんですが、初年次教育やPBLなどを取り込んで、各大学の学問分野別にアプローチの仕方を試行錯誤していくことが望ましいのではないかと思います。いずれにせよ、学生が大学時代にしっかり学問に打ち込み、学問以外の事柄にもチャレンジできる環境を大学側が用意できるかどうかにかかっているのではないでしょうか。

また、このアンケートで明らかになったのは学生の採用に関することですが、その他にも大学が求められる社会的使命としてリカレント教育の推進、産学連携の推進役、地域連携と多面的な社会の要請に大学は応えていく必要があります。
これらについては単一の大学では対応が難しいと思われるため、大学間連携や大学コンソーシアムを活用することで、社会の中に位置づけられた大学全体で解決していくことも求められていると思います。