Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

大学院の収容定員削減から、大学、大学院、専門職大学院の役割について考えてみる。

high190です。
最近はポストドクターの就職問題など、色々と大学院についての議論がなされています。
少し前の記事ですが、国立大学の大学院のうち12校で収容定員が9割を切っていたことが文部科学省国立大学法人評価委員会の調査で明らかになりました。


文部科学省国立大学法人評価委員会(委員長=野依良治理化学研究所理事長)は6日、国立大の2008年度の業務実績評価をまとめた。業務効率や財務内容の改善などの重要目標についておおむね良好と評価する一方で、大学院修士課程などで定員充足率が9割を満たしていなかった大学が12校あるとして改善を促した。
定員充足率が9割を切ると、国から支払われる運営費交付金の返納を求められる。12校のうち、弘前大、山梨大、信州大については07年度も充足率が9割を満たしていないにもかかわらず入学定員を減らしていなかったため、評価委は「速やかに定員充足に向けた取り組みが必要」として定員削減を求めた。
評価委は04年度から毎年、各大学が設定した中期計画に対し計画通りに取り組んだかをチェックしている。国立大86校と大学共同利用機関4法人の全90法人が対象で、業務効率▽財務内容▽自己点検▽その他――の4項目について5段階評価する。

定員9割を切ると運営交付金を返納しないといけないんですね。国立大学法人の経営も大変です。
ちなみに、今後文部科学省は博士課程の収容定員削減を求めていく方針を既に打ち出しています。

個人的には、大学院の収容定員を減らすことも大事ですが、大学別に役割を分けていくことの方が生産的なんではないかと思うんですよね。研究型大学と教育型大学とでもいいますか、それぞれの得意分野に特化した形に持って行った方がそれぞれの強みを活かせていいのではないかと。
アメリカだと研究型大学と教育型大学の切り分けはしっかり行われているようです。例えば、リベラルアーツ型の大学として有名なアマースト大学は、研究施設や大学院を持っていません。アメリカで最も入学が困難な大学とも言われ、卒業後に著名な大学院に進学する学生も多いと聞きます。大学院を設置しなければ大学ではない!という考え方は、これからの大学教育には相応しくないのではないでしょうか。

リベラルアーツは学部教育に任せ、研究志向の教育は大学院に任せ、プロフェショナル・スクールの教育は専門職大学院に任せたいというのが、いま日本で高等教育政策を考えている人たちの本音でしょう。あるべき姿から考えると確かにその通りなのですが、うまくいっていない。アメリカのプロフェッショナル・スクールと日本の専門職大学院の比較には、実際にMBAを取った人の体験談を読むと面白いです。日経ビジネスのWeb版「Road to CEO」でいくつか読めるので、時間のある方は読んでみることをオススメします。

個人的には藤井清孝さんと樋口泰行さんの回が面白かったです。やっぱりアメリカのMBAは真剣度がちょっと違うなという印象。優秀な人ほど起業志向が強いというのも日本との違いでしょうか。

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