Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

Times Higher Educationの世界大学ランキング2012-2013が発表されました

high190です。
毎年恒例のTimes Higher Educationによる世界大学ランキングが公表されました。


英教育専門誌、タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)は3日、今年の「世界大学ランキング」を発表した。上位200校に入った日本の大学は5校と昨年と同数で、東京大が27位(昨年30位)とアジア首位の座を守った。
東大以外で上位に入った日本の4校はいずれも昨年から順位を落とし、国際化を進める韓国や中国の躍進が目立つ中で「日本全体としては憂慮すべき結果」(同誌)となった。
近隣国では、韓国のソウル大が昨年の124位から59位に躍進。29位のシンガポール国立大、46位となった中国の北京大など順位を上げる大学が目立った。同誌は「高等教育の勢力分布が欧米からアジアにシフトしている」と分析した。
東大以外の日本の4校は、京都大が54位(同52位)、東京工業大が128位(同108位)、東北大が137位(同120位)、大阪大が147位(同119位)。
トップは昨年に続いて米カリフォルニア工科大。2位は英オックスフォード大と米スタンフォード大が同順位で続くなど、上位10校はすべて米英の大学だった。
ランキングは研究論文の引用頻度やスタッフ1人当たりの学生数など13の要素を基に順位を付けた。

以前にこのブログでも、中国が春・秋のどちらも対応できるよう入学時期の弾力的な取り扱いを進めていることや、韓国が教育の質が低い大学に対して政府が廃校を命じることに加え、国際化への対応として留学生の管理の能力の認証を行うこと、アジア諸国が国際化への対応を急いでいること、*1シンガポール、マレーシア、韓国などが海外大学の分校を誘致するなどして高等教育の国際化を進めていること*2 *3 *4などをご紹介しましたが、これまでの経緯を踏まえるとアジアの躍進は妥当な結果かと思います。
分析結果として、アジアの躍進が目立つのは喜ばしい反面、日本の大学は東京大学の他、4校がランクインするも東大以外の大学が昨年から順位を下げてしまう結果となったのは残念ですね。ただ、個別の大学では努力をされているのだと推察しますが、どちらかというと国の戦略が調査結果に反映されたのではないかと思います。より国際化を志向した国が順当にランクを伸ばしたといいますか。全体の調査結果は以下のリンクから参照できます。


Our 13 performance indicators are grouped into five areas:

  • Teaching: the learning environment (worth 30 per cent of the overall ranking score)
  • Research: volume, income and reputation (worth 30 per cent)
  • Citations: research influence (worth 30 per cent)
  • Industry income: innovation (worth 2.5 per cent)
  • International outlook: staff, students and research (worth 7.5 per cent).

その他、上位大学に目を向けるとハーバード大学が昨年の2位から4位にランクダウンしています。昨年度と評価ポイントを比較してみて目立つのが"international outlook"の項目です。これは留学生数、外国人教員比率をポイント化しているようですが、67.5%から63.7%と3.8%下がっています。極めて微々たる数値ですが、ハーバード大学において国際化の指標が下がっていることは興味深いです。代わって、1位のカリフォルニア工科大学の場合、何よりも目を引くのは"Industry income"の高さで、上位5大学の中でもトップの95.6%となっています。その他、上位5大学だけを見てみるとバランスがいいのはマサチューセッツ工科大学ということに気づいたり、見ているとキリが無いくらいに面白いランキングなんですが、まずはブログを書いている私自身が国際化して英語を読みこなせるようにならないといけないなと感じました(笑)
ちなみに日経記事で紹介されているのは、上位200校にランクインした5校ですが、200位以降は個別順位ではなくグループですが、順位自体は400位まで公表されており次の大学がランクインしています。

ランキング全体では、日本の大学は13校ランクインしており、リサーチユニバーシティの大学コンソーシアム「RU11」に加盟している大学は全て入っています。*5昨年度は16校がランクインしており、広島大学神戸大学東京農工大学が残念ながら今年のランクインを逃してしまいました。*6是非来年は盛り返してほしいものですね。
さて、最後に国際化への対応ということなんですが、日本でランクインしている大学を見るとほとんどが国立大学が10校、公立大学が1校、私立大学が2校となっています。平成24年度の文部科学統計要覧によると日本国内には大学が780校あるので、単純に1.67%の大学がランクインしているということになります。グローバル人材の養成を国家目標に掲げるならば、もっとランクインする大学を増やさなくてはいけないと思います。また、レベルの高さ云々に関わらず、こうしたランキングを見て諸外国の大学がどんな改革を行っているかに目を向けることも大切ではないでしょうか。

*1:日本私立大学協会附置私学高等教育研究所の公開研究会に出席してきました http://d.hatena.ne.jp/high190/20120817

*2:イェール大学シンガポール校の開設に向けた準備が進行中 http://d.hatena.ne.jp/high190/20100929

*3:マレーシアが北京大、清華大の分校誘致に向けた準備を進めている http://d.hatena.ne.jp/high190/20101110

*4:韓国も海外大学の分校を誘致。アジアの大学で加速する国際化戦略 http://d.hatena.ne.jp/high190/20101216

*5:RU11 学術研究懇談会 http://www.ru11.jp/topics/53.html

*6:Times Higher Educationの世界大学ランキング2011-2012が発表。ハーバード大学が初めて首位から転落 http://d.hatena.ne.jp/high190/20111014