high190です。
韓国の済州特別自治道が外国営利法人に対して、大学設立や利益金の本国送金を認める制度改善案を議会に提出したというニュースがありました。
- 済州道 海外営利法人の大学設立許可などで財政強化(出典:中央日報 2012/09/24)
済州島を行政区域に持つ済州特別自治道が外国営利法人に対し、大学設立や利益金の本国送金を認める方針を打ち出した。特定地域を観光客専用免税特区に指定し、法人税などの国税を地方税に移譲する制度も推進する。
済州道は24日、これら内容を柱とした制度改善案をまとめ、道議会に提出したと明らかにした。
改善案では済州英語教育都市に外国の営利法人が、大学や大学院の分校を設立することを認める。韓国政府は現在、営利法人が同都市に英語専用国際学校を設立することは認めているが、外国の大学設立は認めていない。
また、営利法人が済州島に投資して得た利益を本国に送ることを認める内容も含まれている。海外の営利法人の投資誘致を活性化させるためだ。
済州島を訪れた観光客に付加税を還付する制度とは別に、特定地域を観光客専用免税特区に指定し、付加税減免対象を拡大する方針だ。
済州道は財政強化のため投資誘致実績と関連のある法人税と付加税など、一部国税を地方税に移譲する内容も改善案に盛り込んだ。昨年、済州地域で納付された法人税は800億ウォン(約55億7000万円)、付加税は1400億ウォン規模だ。
また、済州海軍基地建設による地域発展事業について、国庫補助金の20%上乗せを求めていく方針だ。
同様に東アジア諸国では外国大学の分校を誘致するなど、極めて積極的な高等教育政策を打ち出している国が多くなってきました。2年前にはマレーシア、シンガポールの両国が海外大学の分校誘致に向けて動き出していることをこのブログでも取り上げました。*1 *2
その他に、韓国の仁川経済自由区域では松島グローバル大学キャンパス"Songdo Global University Campus"が海外大学の誘致に向けて準備を進めています。*3 *4
- FEZ生活環境(出典:Korean Free Economic Zones)
国際水準の教育サービスを提供し、グローバル教育サービスの先占に向けて海外優秀大学の分校と優秀高等教育機関を誘致することにより、グローバル人材を養成し、高等教育のグローバル競争力をアップします。
さて、ここで今日のブログの題名に戻ってみましょう。果たして日本の高等教育を国際化する上で、国内の大学がグローバル化するよう政策面で誘導するのと、外国大学の分校等を誘致することで国際化を促進させるのと、どちらがスピーディかつ効果的に対応できるでしょうか?
このことについては、色々な意見があろうかと思いますが、個人的には中長期的に大学の国際化を図るなら、国内大学のグローバル化を促進させることが重要だと思います。ただし、その場合の条件として、どうしても日本国内に国際的なハブ空港を設置することが重要になるのではないかと思います。既に国際教養大学の中嶋嶺雄学長を中心とした羽田空港の航空ネットワークハブ機能を活用した「教育のハブ化」についての検討が始まっています。*5
海外大学の分校を誘致する場合、高い教育力を持つ大学を呼び込むことで、留学生等の確保にも繋げ得る可能性があります。しかしながら、誘致に係る費用や日本国内の教育関係法令等との適合性を考えるとハードルが高いように感じます。
どちらにもメリット・デメリットがありますが、共通点は実現に向けて相応の費用がかかることです。アジア諸国が海外大学の分校誘致を進めている背景は、高等教育の充実を重視しているための政策的判断である可能性が高いように思われるため、諸外国の動向を注視しておく必要があります。もはや、大学の国際化は日本国内の全ての大学に対して求められていると言っても過言ではないように思いますので、各大学においても自学での国際化を進めていくためにどういった戦略を立てるのか、参考にすべき事例があるかを調査しておく必要があると思います。
*1:イェール大学シンガポール校の開設に向けた準備が進行中 http://d.hatena.ne.jp/high190/20100929
*2:マレーシアが北京大、清華大の分校誘致に向けた準備を進めている http://d.hatena.ne.jp/high190/20101110
*3:韓国も海外大学の分校を誘致。アジアの大学で加速する国際化戦略 http://d.hatena.ne.jp/high190/20101216
*4:Incheon Free Economic Zone 松島地区 開発事業 https://ifez.go.kr/jsp/jp/business/business2_2_07.jsp#2b
*5:日本の高等教育におけるグローバル化ビジョン実現のためのUniversity Hub Haneda Airport(UHHA)の発足 http://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/whats_new/306_0316_0342.pdf