Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

博士号取得者の就職支援のために文部科学省が「持参金」を準備。果たして制度は機能するか。

high190です。
文部科学省が博士号を取得した研究者の民間企業への就職を増やそうと、企業へ500万円の雇用経費負担を行う持参金制度をスタートするそうです。


博士号取得後に任期付き研究員(ポスドク)として大学や公的研究機関で働く人たちの民間企業への就職を増やそうと、文部科学省が、ポスドクを採用した企業へ1人につき500万円を支給する。国策としてポスドクを増やしながら受け皿不足が指摘される中、「持参金」で企業側の採用意欲を高める狙い。文科省が企業対象の事業を実施するのは珍しく、09年度補正予算案に5億円を計上した。
政府は90年代、高度な研究人材を増やそうと、大学院を重点化し博士号取得者を増やした。博士の受け皿となるポスドクは1万6000人を超えたが、企業への就職は進んでいない。日本経済団体連合会の06年調査で、技術系新卒採用者のうち博士は3%だ。
文科省の調査によると、ポスドクの6割以上は企業への就職も視野に入れているが、企業側の技術系採用は修士が中心で、85%が「過去5年にほとんど採用していない」と答えている。企業側が「食わず嫌い」している状態だ。
文科省の新施策では、まず企業からポスドクの活用方針や業務内容、支援策などの採用計画を募集。科学技術振興機構で審査した上で、採択された企業に対してポスドク1人につき500万円の雇用経費を支払う。支援期間は1年間だが、「使い捨て」にならないよう、終了後のキャリア構想も審査するという。文科省は「実際に採用した企業からのポスドクの評価は高い。何とかよい出会いを増やしたい」と話している。

ちなみに記事を読んだ率直な感想を述べると、博士号取得者の民間企業への就職が進まないのは

企業側が「食わず嫌い」している状態

が問題なんでしょうかね?むしろ博士を増やすという方針を出したはいいけど、社会的な受け入れ態勢が整っていなかったことの方が問題なのでは。企業側が技術系採用に修士を中心にしていることは、食わず嫌いなのではなく、研究者側と企業のマッチング体制が整っていないことが根本原因なのではないかと思います。
ちなみに民間では既に両者のマッチングを進めるべく、動きだしている組織もあります。

この記事が書かれたのは今から約2年半前です。当時から既にポスドクの就職問題は大学業界にとって大きな関心事のひとつでした。
今回、文部科学省補正予算に5億円を計上したそうですが、来年度は予算化されるんでしょうか。制度化が第一目的で、問題が発生してから修正するということはよくあることなのかも知れませんが、大学設置基準の大綱化・規制緩和で発生した準備不足の大学設置等に係る問題と同様の事態が文部科学省内でも起こっているということは皮肉以外の何物でもありません。

いずれにせよ、博士の学位が社会の中で軽んじられてはいけないのではないかと私は思いますし、優秀な人材を企業とマッチングさせるための取り組みが広がりを見せていくことを期待しつつ、この制度の成否を見守りたいと思います。

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