Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

IR組織を設置している大学のリストを作ってみた

high190です。
遅くなりましたが、2015年もどうぞよろしくお願いいたします。今年も自分のペースではありますが継続してブログを書きたいと思っています。
昨今、日本でのIR導入が急速に進展していますが、どの大学にIR組織が置かれているか明らかになっていないので、大学IR組織のリストを作成しました。設置有無の根拠は当該大学のWEB公開資料で確認できる場合に限りました。よって"IR"の名称は使っていないが、実質的にIR機能を有す大学はカバーしきれていません。リストは継続整備しますので、追加情報があればブログのコメント又はTwitterなどでお知らせ下さい。
※更新情報 明治薬科大学IR室を追加(2021/07/27)

国立大学

公立大学

私立大学

高等専門学校

私立大学でIR組織を持つところが多いのは、私立大学等改革総合支援事業のタイプ1「教育の質的転換」にて「IR担当部署の設置及び専任の教職員の配置」が全学的な教学マネジメント体制の構築の項目で加点対象になっていることが影響しており、新規に組織を立ち上げた大学が多いからと推測されます。公立大学に関しては私の探し方が悪いのか、あまり見つけることができませんでした。国立大学に関しても、恐らく実質的にIR機能を有している組織を持つ大学が多くあると思いますので、随時追加していくつもりです。また、文科省高等教育局担当の官房審議官の方から「国立大学法人に関しては全大学でIRを導入し、専門家を置く」という発言もあったようなので、その点も注視しておきたいですね。*11
さて、その他に公表されている資料からIR組織の数を調べてみることにします。平成24-25年度の文部科学省大学改革推進委託事業による報告書に「IR組織の設置状況」に関する事項がまとめられており、第4章「日本におけるIRの現状」の「IR組織と担当業務」にIR組織開設数の記述があります。


IR組織の設置状況について(図4-4)、有効サンプル(N=547)の中「IR名称の組織がある」(9.9%)と「IR名称はないが、担当組織がある」(15.4%)と合わせて,約四分の一となっている。

有効サンプルの547は、2013年12月調査の「大学のインスティテューショナル・リサーチ(IR)に関する調査研究」に回答した大学の数ですので、有効サンプルに比率を掛けますと、IR名称の組織を有すのは54大学、IR名称はないが担当組織がある大学は84大学になります。調査自体に回答していない大学が200以上ありますが、日本でも徐々にIR組織を持つ大学は増えていることが分かります。IR先進国のアメリカとの比較で考えた場合、以前にLEAP参加者の方の講演を伺った際、*12講演後の質疑応答で「アメリカのIRはすごいのか」との質問に「どの大学にも必ずIR担当者がいる。IRがないことのデメリットを考えた場合、必須の存在であり、公的調査に対応するためにも必要」と回答されていたことを思い出しましたが、日本でもこれから導入の動きが加速することは間違いありません。
IRは大学のガバナンスを適正にコントロールすることを下支えする手段ですが、日本は「戦略的な大学ガバナンスを作り上げる機構がきわめて弱い」ということを慶應義塾大学の上山隆大教授が教育再生実行会議などで発言されていました。*13最近「国立大学法人運営交付金の在り方に関する検討会」にて、上山教授からIRに関する発言があったようなので、議事録から一部抜粋してご紹介します。

その意味で、明らかに日本の大学の「大学本部」の果たしている役割は小さ過ぎる。小さ過ぎるというのは、それを果たすような予算が与えられていないということだと常に思っています。例えば、アメリカですと、主立った大学、大きなところでいうと、年間の予算は大体3分の1は恐らく大学の本部、すなわち学長がほぼ完全に把握している。それ以外のところの競争的資金も含めて、3分の2ぐらいは十全に理解できなかったのですが、それ1990年代に入ってきますと、大学の学長は、すべてのうちの大学の予算の隅々まで把握するようなバジェットシステムに変えるべきだという動きが起こってきました。その動きの震源地はシカゴ大学だったですけれども、やがてスタンフォード大学に移っていき、多くの大学が予算の中央管理を進めるようになっていきます。
その予算の管理は大学の学長を中心とした組織の大学運営の根本です。それによって学内の様々な分野のことを「経営」することができる。つまり、たとえトップが理系の先生であろうと、社会科学の分野でも自分の大学が何を行っているのか、それが一体うちの大学に必要なのか、その予算はどれぐらい充てるべきなのかということの完全な内部の財務のデータを大学本部が持つようになってきているわけです。そのようなきちんとしたデータに基づいた資料を手にして大学のビジョンを作っている。したがって、うちのところではこれだけの予算が必要だというような論拠を作っていくということができているわけです。日本の大学は、その力が非常に弱い。したがって、外部に発信するアカウンタビリティーに力がないわけですよね。
それができないうちは、財務省一つとってみてもそうですけれども、国立大学への資金の投入を握っている人たちを説得できないのではないですか。恐らくそのような大学の内部のガバナンスのマネジメントを達成できるシステムを早く国立大学の中に作ってあげなければいけない。それは渡し切りの予算の中で何%か分かりませんけれども、IR(インスティテューショナル・リサーチ)といいますか、内部のインスティテューションのリサーチをやって、うちの大学にはどういう人材がいて、どこがイノベーションに行き、それはそうではないところにも必要なものがあるかという絵を描けるようにしていけないと思います。

昨年末に中教審の大学教育部会で「職員の資質向上等に関する論点」という資料が公表されて話題になりました。*14 この資料では「高度専門職」という言葉が出てきますが、恐らく現在国立大学法人で導入の進んでいるURAのように博士号を持つような人材を私などはイメージします。しかし、高度専門職を設置形態や規模を問わず、全ての大学に置くことは難しいと思われるため、現在のように「できるところから手探りで始めている」大学がほとんどだと思います。他の大学職員ブロガーの方の職員とIRの関係を現状から捉えた記事を拝見し、*15 *16また、大学評価コンソーシアムなどで知見が集積されてきているようですし、*17私立大学職員によるInstitutional Research(IR)文献メモ」という非常に有益なサイトもありますので、*18そういった先行研究を整理しながら自学のガバナンスに資するIRを作り上げていくことが大切ではと感じます。

*1:茨城大学大学戦略・IR室要項 http://www.che.yamanashi.ac.jp/modules/ir/index.php?content_id=1

*2:鹿児島大学Fackbook https://www.kagoshima-u.ac.jp/ir/]

*3:国立大学法人佐賀大学インスティテューショナル・リサーチ室設置規則 https://kiteikanri2011.admin.saga-u.ac.jp/doc/rule/818.html

*4:国立大学法人佐賀大学におけるインスティテューショナル・リサーチ室の運用に関する内規 https://kiteikanri2011.admin.saga-u.ac.jp/doc/rule/841.html

*5:企画政策課IR推進事務室 http://www.chiba-u.ac.jp/general/recruit/recruit_staff/staff/occupation/kikaku.html

*6:点在する学内のデータを集約・分析 戦略的な大学運営と開かれた大学を目指して国内大学初の統合報告書でビジョンや戦略を示し、「東大ファン」を増やしていく https://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/education/campus/case-studies/u-tokyo-ir/index.html

*7:補足資料:平成30年度国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学年度計画 https://www.jaist.ac.jp/about/data/year-plan-h30.pdf

*8:大学IRを活用した大学経営マネジメントの実施 大学IRを活用した大学経営マネジメントの実施 | 北海道大学URAステーション

*9:大阪府立大学におけるIR実践について http://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/infolib/user_contents/kiyo/DBn0110202.pdf

*10:https://www.fujitsu.com/jp/about/businesspolicy/fieldinnovation/case-studies/case48/

*11:「『教学マネジメントの改善と学修成果』〜学生支援型IRの可能性」に参加 http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2014/11/22/235113

*12:LEAPプログラム参加の大学職員による研修報告を聞いてきました http://d.hatena.ne.jp/high190/20120730

*13:教育再生実行会議による提言は大学ガバナンスの向上に資するのか http://d.hatena.ne.jp/high190/20130610

*14:大学教育部会(第31回)配付資料「職員の資質向上等に関する論点」 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/015/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2014/11/20/1353507_01.pdf

*15:大学職員とIR〜職員がIRを関わる意味とは〜 http://as-daigaku23.hateblo.jp/entry/2014/10/02/141212

*16:IRと大学職員?〜IRの定義から考える拒否反応〜 http://as-daigaku23.hateblo.jp/entry/2014/12/13/104540

*17:これまでの大学評価担当者集会における米国IRの議論 http://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/documents/2011/0915/h23-0915_sato_ppt.pdf

*18:私大職員によるIR(Institutional Research)文献メモをまとめたサイトを見つけました http://d.hatena.ne.jp/high190/20120803

上智大学の「教職協働・職員協働イノベーション研究」から今後のSDの方向性を探る

high190です。
自分自身が大学職員として仕事をしていて、色々な業務を経験させてもらってきましたが、最近強く感じる事は自分自身の強みをいかにして作るか?ということです。専門性を持つために大学院に通う方も多くいらっしゃいますし、そうした方々の諸研究を拝見して、自分自身の学びに繋げていきたいというモチベーションになってきました。
しかしその反面、大学院で研究した成果を職場で活かせた人が多いか?というと必ずしもそうではないかも知れません。これは各大学毎に人事政策が異なる事にもよるでしょうが、大学院での学びをどのように評価していくかという点でまだ課題があるように感じます。理論に根ざした実践的な取り組みに繋げていくために、どのような仕組みが必要であるのか?という点で参考に出来そうな事例があります。上智大学の「教職協働・職員協働イノベーション研究」です。


本学が競争的環境の激化による厳しい経営環境の中で、個性際立つ「世界に並び立つ大学」としてさらなる発展を遂げるためには、既存の概念に捉われない大胆且つ自由な発想による改革が必要です。
2012年8月の中央教育審議会の答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」においても、わが国の目指すべき社会像として「主体的な思考力や構想力を育み、想定外の困難に処する判断力の源泉となる教養、知識、経験を積むとともに、協調性と創造性を合わせ持つことのできるような大学教育への質的転換」が求められておりました。
そして、この教職協働の取り組みは、まさしく「知識を基盤とした自立、協働、創造モデル」を教職員自らが実現していく方法です。 また同時に、学院の教員と職員が協働し、あるいは職員が所属部署の枠組みを超えて協働して、学院行政および教育・研究体制の改革に向けた、実現可能な研究・政策提言を行うことは、学院全体の組織ネットワーク力の開発でもあり、組織力の向上にも寄与しています。
現在、第4回(2013〜14年度)においても5件の研究プロジェクトが運営されているだけでなく、過去の幾つかのプロジェクトについては、実際の事業段階へすでに移行しています。

第3回までは報告書が掲載されていますので、どのようなプロジェクトが行われてきたのかを見ることができます。研究代表者1名に加えて複数の研究メンバーを置いてプロジェクトを運営する形式のようですね。個人的には教職協働を行う中で、職員が教員から研究に必要なメソッドを学んでいける点がSDの効果を高めていくことに有効だと感じました。現在では多くの大学で教職協働の取り組みが行われていると思いますが、大学内部の取り組みに留まらず、成果を対外的に発信していくプロセスを経ることは非常に重要だと思っています。自分自身の関心としてはフューチャーセンターに大きな可能性を感じているので、*1以下の2つのプロジェクトについての進捗が気になります。

  • 上智大学における課題解決を促進するフューチャー・セッションの開催および上智大学フューチャー・センターの設置の可能性を模索する研究(第3回(2012〜2013年度))

○研究テーマについて
少子化や社会環境の変化の中で、日本社会は極めて多くの社会的課題を抱えており、上智大学も同様に多くの課題を抱えている。教育の質向上の問題、組織のマネジメントの問題、そして高まる社会のニーズにいかに応えていくべきかという問題など。こうした多様な問題に対して、従来型の縦割り組織では、利害調整の難しさや、問題の先送り、責任の押し付け合いなど、前向きで本質的な問題解決にはたどり着かない傾向が見られる。こうした傾向は上智大学だけでなく、閉塞感に包まれた日本、そして世界中のいたるところで共通してみられる根が深い問題である。
このような課題を克服するアプローチとして、北欧で開発されたフューチャー・センターとそこで行われるフューチャー・セッションを上智大学に導入するための準備として今回の研究を行った。
○研究内容

  1. フューチャー・センターとそこで行われるフューチャー・セッションについての研究
  2. 3回のフューチャー・セッションを開催し、教職員、学生、卒業生、経営陣など多くのステークホルダーがフラットな関係で未来志向の議論をする場を作る。
  3. 上智大学におけるフューチャー・センターの意義や実現可能性を研究する。
  4. 1〜3をふまえ、学院に対して「上智大学フューチャー・センターの設置」の提言を行った。
  • 上智大学フューチャー・センターを持続可能な組織とする方法の研究 ―NPO法人化を視野に入れて―(第4回(2013〜2014年度))

SDについては、大学設置基準に規定するか否かの議論が中央教育審議会大学分科会の大学教育部会で行われていますが、*2 *3 *4現有の職員能力の底上げという点からすると、上智大学の取り組みはプロジェクト形式でかつ教職協働を取り入れており、職員が得られる知見が多いと思われるため、優れているのではないかと考える次第です。なお、中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」では、教職協働に関して以下の記述があります。

  • 今後,各大学による一層の改革が求められる中,事務職員が教員と対等な立場での「教職協働」によって大学運営に参画することが重要であり,企画力・コミュニケーション力・語学力の向上,人事評価に応じた処遇,キャリアパスの構築等についてより組織的・計画的に実行していくことが求められる。例えば,国内外の他大学,大学団体,行政機関,独立行政法人,企業等での勤務経験を通じて幅広い視野を育成することや,社会人学生として大学院等で専門性を向上させることを積極的に推進すべきである。
  • 教職員の協働関係の確立という観点からは,FDやSDの場や機会を峻別する必要は無く,目的に応じて柔軟な取組をしていくことが望まれる。

特に既存の大学組織では対応困難な課題に対処するため、プロジェクト型の業務を増やしていくことはこれからの大学マネジメントに必須の考え方だと思いますし、教員の専門領域での知識を大学マネジメントに活用していくためにも教職協働のより深い進展はこれまで以上に重視されてくるでしょう。

*1:大学にフューチャーセンターを作ろう! http://d.hatena.ne.jp/high190/20120611

*2:大学教育部会(第31回)配付資料「職員の資質向上等に関する論点」  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/015/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2014/11/20/1353507_01.pdf

*3:大学教育部会(第32回)配付資料 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/015/gijiroku/1353929.htm

*4:義本博司大臣官房審議官(高等教育局担当)の発言部分「『教学マネジメントの改善と学修成果』〜学生支援型IRの可能性」に参加(松宮慎治の憂鬱) http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2014/11/22/235113

ウェブの進化について、大学職員の視点から振り返ってみる

high190です。
最近では他の大学職員ブロガーの皆さんから刺激を受けて、記事の内容を色々考えたり出来るので楽しいです。松宮慎治さんが「ネットによる知の変化と教養―大学教育学会 課題研究集会に参加して(2)―」という興味深い記事を書かれていましたので、*1記事を引用しながらウェブの進化を大学職員目線で振り返ってみようと思います。

1."The Machine is Us/ing Us"に衝撃を受ける

こちらの動画は2007年に公開されたもので、当時はWEBの進化を"Web2.0"などと表現していました。(最近はあまり聞かなくなりましたね)
梅田望夫さんが「ウェブ進化論」を書かれたのが2006年ですから、ブログやソーシャルメディアが興隆し始めてきた頃だと思います。私は当時ブログを始めたばかりでしたが、Twitterは2007年5月に、*2Facebookもその頃に始めました。今までとは違う新しい世界がWEBを通じて広がっていると思い、未知の可能性を強く感じたことを憶えています。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

現在ではWEBはさらなる進化を遂げていますが、進化の過程がよく分かることから上記の動画は何度も見返してきました。この動画を見てWIREDの"We are the Web"などの記事にも触れることができました。*3動画の作成者はカンザス州立大学のマイケル・ウェスチ准教授です。文化人類学を専攻されているようですが、"Digital Ethnography"というプロジェクトも進めておられます。*4(プロジェクト名を訳すと「デジタル民族誌」という表現になるでしょうか)


2.大学教育とWEBを巡る進化の過程
この頃から徐々に大学の授業にもオンラインの波が来ていたように思います。ちょうど"iTunes U"が始まったのも2007年でした。*5そしてこの頃からオンライン教育の効果に関する調査や、*6アメリカの大学が先行して講義をYouTubeなどで配信する試みなどが始まります。*7日本国内でもWEBによる大学のオープン化・講義の公開等に高い期待が寄せられていました。*8 その流れを受けて、2008年には京都大学が日本で初めてYouTubeで講義動画の配信をスタートさせています。*9こういった情報のオープン化に関わる一連の流れは、後のMOOCsにも繋がるものです。
その他にも大学が広報のためにソーシャルメディアを使用するようになり、*10大学の内部では、特に図書館が先んじてWEB2.0に対応してきたように感じます。蔵書を電子ジャーナルに移行させる取り組みや、*11 *12所蔵品をWEB上に公開する取り組みなどがありました。*13WEBの進化は止まることなく、むしろそのスピードが上がってきたように感じます。2010年には、先述した「ウェブ進化論」の著者である梅田望夫さんが、マサチューセッツ工科大学教育イノベーション・テクノロジー局シニア・ストラテジストの飯吉透さん(現在は京都大学高等教育研究開発推進センター長)と共著で出版した「ウェブで学ぶ」を出版しています。

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

最初に紹介した松宮さんの記事に「ネットによる知の変化」について以下の記述がありますが、目的に合わせて体系化すること自体がWEBの力でしょうね。組み合わせ方をどのように考えるかですが、私の場合は自分で過去に書いた記事のことを覚えているので、断片的な知識をたどりながら積み木を積むように過去の記事を引用するような形式を取ることが多いです。これもブログを書き続ける中で、他の人のまとめ方を参考にしつつ試行錯誤しながら自分なりに積み上げてきたひとつの知識なのかなと思っています。

自分なりに情報を峻別する能力がないと、溢れる情報に埋もれてしまって、騙されたり、被害を被ったりする可能性があります。加えて、峻別した情報を組み合わせる能力が求められます。多くの場合、得られる情報はバラバラに存在しているからです。体系化された情報もあるかもしれませんが、その体系性が自分の目的と合っていないと、自分にとってはバラバラにしか見えません。バラバラに存在するものを組み合わせて、目的に合わせて自分なりに体系化する能力が必要になるでしょう。


3.MOOCsに代表される大学教育のオープン化とこれから
さて、WEBの進化についての話に戻ります。2012年に入ると、Cousera、edX、UdacityなどのMOOCsプラットフォームが次々に生まれてきます。東京大学も2013年にはCourseraに参加するなど、*14日本においても講義のオープン化に関する土壌が整ってきていますし、現在ではJMOOCが発足して現実に大学の講義が無償で提供されるようになっています。このように、ちょうど私がブログを始めた頃からWEBは目まぐるしい進化を遂げてきた訳ですが、その流れに乗るように大学教育も大きくその姿を変えてきています。この流れに乗るためには止まっていては取り残されるだけなので、常に先端の情報に触れながら流れを追う必要があります。この10〜20年でWEBによって社会は劇的に変化してきましたが、今後はどのような変化が待っているでしょうか。その流れを見つめていけるよう、引き続きWEBを通じて大学のことを考えていきたいです。

*1:ネットによる知の変化と教養―大学教育学会 課題研究集会に参加して(2)― http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2014/12/05/231607

*2:https://twitter.com/high190

*3:We Are the Web http://archive.wired.com/wired/archive/13.08/tech.html

*4:DR. MICHAEL WESCH http://mediatedcultures.net/michael-wesch/

*5:iTunes Uのサービスは2007年に開始され、iTunes StoreにもiTunes U専用の配信チャネルが開設された。スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校、マサチューセッツ工科大学などが当初から参加し、iTunes Uを通じて講義の映像を一般向けに配信している。日本でも2010年前後から、東京大学慶応義塾大学、早稲田大学明治大学などが講義映像の配信を開始している。 http://www.weblio.jp/content/iTunes+U

*6:「大学教員の多くが,ポッドキャストやブログの教育的な利用価値を認めている」,米調査 http://d.hatena.ne.jp/high190/20070510

*7:米大学が全世界で初めて講義をYoutubeで公開 http://d.hatena.ne.jp/high190/20070916

*8:Webを使った大学のオープン化、講義の公開に強い期待〜gooリサーチ結果 http://d.hatena.ne.jp/high190/20070210

*9:京都大学が国立大学では初めてYouTubeに講義を公開 http://d.hatena.ne.jp/high190/20080408 

*10:大学のソーシャルメディアポリシーを定めよう! http://d.hatena.ne.jp/high190/20111121

*11:これからの大学図書館はメディアセンターへ http://d.hatena.ne.jp/high190/20100713

*12:紙の本が1冊もない大学図書館がアメリカで誕生 http://d.hatena.ne.jp/high190/20100914

*13:イェール大学が博物館、図書館の所蔵品画像をライセンスフリーで提供 http://d.hatena.ne.jp/high190/20110519

*14:東京大学が大規模オンライン講座サイトのCourseraに参加 http://d.hatena.ne.jp/high190/20130227

「道の駅」と大学の連携・交流からサービスラーニングに繋げる取り組みを観光庁が開始

high190です。
先月末に観光庁から興味深い発表がありまして、その内容は是非取り上げたいと思っていました。全国に所在する「道の駅」ですが、最新の情報では全国に1,040カ所設置されているようです。*1この道の駅を活用して、将来の地域活性化の担い手を育成しようという取り組みを観光庁が始めることになったようですので、このブログでもご紹介しておきたいと思います。


「道の駅」には地域の観光資源や魅力を語る人材が集まっており、地域の課題を解決する拠点となっています。また、将来の地域活性化の担い手となる人材を育成・確保するためには、現場での就労体験を通して、実際的な知識や技術を学ぶことが重要です。このため、「道の駅」を、観光振興や地域振興を学ぶ学生の課外活動やインターンシップの場として本格活用することとしました。
これまで、「道の駅」において、地元大学等と個別に連携を行う事例はありましたが、全国の道の駅を対象に実施することにより、都市部の学生が地方部の道の駅で交流するなど、新たな価値の創造が期待されます。(別紙1参照)

<実施内容例>
・観光資源調査、地域活性化プログラムの企画・立案
・HPやSNSなどによる情報発信の提案・実施
・地場産品を活用したオリジナル弁当などの商品開発

上記の別紙1の内容は以下のとおりです。

大学においても、COC事業などの募集によって地域連携を強化することの重要性は今まで以上に認識されてきていると思います。また、学生の学びを深めるためのサービスラーニングに対する認知度に関しても、2012年度の「質的転換答申」で言及されたこともあって*2徐々に高まりつつありますので、私も他大学の取り組みに関する情報を集めていました。*3学生が大学で学んだ知識を、実践を通して深い学びに繋げていくことは大学教育の質的転換にまさしく適う取り組みですので、社会と大学が深く連携していくきっかけになるだろうと思います。サービスラーニングに関しては、筑波大学による解説がわかりやすいと思いますのでこちらもご紹介しておきます。*4
道の駅のように、一般的な認知度も高い組織体との連携ができると、大学側でも色々なプログラムを考えることができると思います。一番重要なのは間に入って調整の役割を担うコーディネーター役ですが、職員側でもそういった人材ニーズに応えることができる人を発掘・育成していくことが永続的な制度設計に繋がるように感じます。地方創生は人口減少社会を迎える日本にとって重要な政策課題ですので、その意味でも観光庁文部科学省の連携も重要になってくると思います。行政と大学がさらに連携を深めて、地方創生に繋げていけたらいいですね。

【2014/12/06追記】
具体的には、立教大学観光学部と跡見学園女子大学マネジメント学部が興味を示しているようです。*5

*1:「道の駅」の第42回登録について〜今回10駅が登録され、1,040駅となります〜 http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000444.html

*2:質的転換答申の本文と用語集に記述があります http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm

*3:サービスラーニングに関する私のブックマーク http://goo.gl/R1gwBm

*4:サービス・ラーニングとは http://www.human.tsukuba.ac.jp/gakugun/k-pro/aboutSL/aboutSL.html

*5:「道の駅」で就労体験=観光学部の学生ら対象−国交省 http://www.jiji.com/jc/c?g=eco&k=2014120600198

千葉県大学職員の集い「Chinowa」の勉強会に参加してきました

high190です。
昨日は千葉商科大学で開催された千葉県大学職員の集い「Chinowa」の勉強会に参加してきました。この勉強会は今年の5月から活動をされているそうなのですが、昨日が2回目の勉強会ということで、私は東京都内の大学に勤務していますが、発足メンバーの方から参加しませんか?とお声掛けいただいたので出かけてきました。ちなみに会の趣旨は、千葉県内の大学職員がそれぞれの知識・経験・課題を持ち寄り、ネットワークを構築し、学びあう事で大学職員のスキルアップを図ろうという有志の集いということで、名称の「Chinowa」には、「千(葉)の輪」・「知の輪」の意味が込められているそうです。


大学運営などに生かせる知識や経験を共有し、職員としてのスキルアップにつなげようという県内の若手大学職員らの勉強会「Chinowa」が29日、市川市の千葉商科大であった。
5月に続き、今回で2回目。この日のテーマは大学を新設する場合などに、どんな基準を満たさないといけないかなどを学ぶこと。学部新設の経験がある職員が、国への申請の流れなどを説明した後、新大学を作る想定で、基準上、必要な面積、教員数やどんな特色を打ち出せばいいかなどを全員で考えた。
少子化グローバル化が進む中、大学界では学生獲得競争が激化したり、より丁寧な教育が必要になったりしている。職員にも高いスキルが求められるが、県内は小規模大学が多く、研修の機会などが少ない。そこで学びのきっかけにしたいと、有志で企画した。
千葉科学大(銚子市)企画課の中島資彦(ゆきひこ)さん(30)は「普段はなかなか接する機会のない他大学の人と話ができ、とても刺激になったし、勉強になった」と話した。勉強会は今後も年2回程度開く予定。問い合わせは事務局(chiba.univ.staff@gmail.com)へ。

今回のテーマは大学設置基準に基づいて、大学を新設する場合に専任教員数や校地・校舎面積をどのようにして算出するか?というワークショップが行われました。私も学部等の設置関係業務を担当していたことがあったため、過去に関係する記事をいくつか書いていますが、*1 *2 *3 *4設置に関わる知識は、直接その業務を経験しないと得られない知識というものがあります。また、大学設置基準は大学を置く場合の「最低の基準」であるため、大学設置基準に基づいて大学運営ができているかをチェックする視点は教育の質保証の観点からも非常に重要です。講師の方の説明もわかりやすかったですし、ワークショップの際にもアイスブレイクなど、研修内容が非常によく練られていると感じました。
今後も年2回程度の開催されるとのことですので、千葉県内の大学にお勤めの職員の方々には是非参加してもらいたい勉強会だと感じました。

*1:日本国際大学に改称予定の聖トマス大学、認可申請時の書類不備で認可取り下げ。向こう2年間の認可申請が不可能に http://d.hatena.ne.jp/high190/20110829

*2:北海道旭川市公立大学の設置構想が浮上。廃止予定の東海大学旭川キャンパスを活用 http://d.hatena.ne.jp/high190/20111205

*3:田中眞紀子文部科学大臣が来春新設の大学認可を見送り、波紋が広がる http://d.hatena.ne.jp/high190/20121102

*4:平成25年度設置計画履行状況等調査の結果に思う〜リメディアルからサプリメンタル・インストラクションへの転換 http://d.hatena.ne.jp/high190/20140220

官民人事交流制度が学校法人に拡大されたことをどのように活かすか

high190です。
大学職員は人材流動性が低いと言われていますが、*1設置形態に応じて様々な出向先などがあります。*2例えば、国立大学法人の場合は「文部科学省実務研修生」という制度があります。こちらは「大学職員の書き散らかしBLOG」に制度などの詳細な解説が掲載されていますので、是非ご一読をおすすめします。*3 *4 *5その他、私立大学の場合でも日本私立学校振興・共済事業団を始めとして、大学基準協会日本高等教育評価機構などが出向を受け入れていたかと思います。*6プロパーで勤めた職員にとっては、出向等を通して外部団体などで経験を積むことで大学職員としての能力開発に活かせるのではないかと思います。
さて、ここでご紹介したいのが「官民交流人事制度」です。今年の5月に官民交流人事法が改正され、*7 *8従来は含まれていなかった学校法人も官民交流人事の対象になりました。このことによって、行政から出向人材の受け入れと送り出しが学校法人においても可能になりました。そこで早速、学校法人との官民交流人事制度を活用している例が新聞記事で紹介されましたので、ご紹介したいと思います。


私立聖光学院横浜市中区)で、経済産業省から出向した五十棲(い・そ・ずみ)浩二さん(36)が9月から教壇に立っている。「社会人経験を生かして、生徒の関心を広げてあげたい」と、母校での指導に意気込んでいる。
「The world has changed」――。教室に世界的なプレゼンテーション大会「TED(テッド)」の動画が流れる。五十棲さんが担当する高1英語の授業の風景だ。字幕もなく、早口の英語が流れるなか、生徒たちは身を乗り出して聴いていた。五十棲さんが「いま『世界は変わった』という意味で現在完了形が使われてたのはわかった?」と問う。動画のテーマは「高校数学では微積分よりも、データやリスクを理解できる統計学を学ぶべきだ」という提案。英文法を教える授業だが、生徒に身近に思ってもらえるテーマを選んだ。繰り返し聞いて内容を理解した生徒たちも「そうだったのか、グサっときた」「先生、数学の先生に言ってよ」と活発に答えていた。
「英語はツール。どんなことができるようになるかを知れば、自分で学びたくなる。現在完了なら『I have finished my homework(宿題を終えた)』とだけ習うより面白いじゃないですか」
同校出身で、大学卒業後の2001年に経産省へ。エネルギーやIT、医療分野などに携わってきた。学生の社会人体験をサポートするNPO活動で母校を訪れた昨年夏、工藤誠一校長から、「社会の一線で活躍する体験を生徒に伝えて欲しい」と誘われた。五十棲さんは「聖光は中高一貫で特に外の人との関わりが少ない。10年間外で働いた自分のような人間が学校にいたら面白いんじゃないか。それもいいか、と考えました」。
今年5月に改正官民人事交流法が施行され、NPO法人や学校法人への出向が可能となった。英語と公民分野で、社会人経験者を教員として迎え入れる「特別免許状」を県教委から取得。9月から5クラスに英語を教えている。いつまで続けるかは未定だが、数年間の予定だ。
授業はまったくの手作りで、洋楽の歌詞を使って文法を教えることもある。「事前に準備していましたが、生徒の反応は全然違った。もっと興味を持ってもらえるよう発展途上です」
人脈を生かし、社会人を学校に招いての講演や討論も企画している。官僚時代の2年間、米国の大学院に留学した際、投資会社や政府に勤める社会人が講義や放課後に出入りして一緒に討論する環境に、刺激を受けた。来年は米国に生徒を派遣して社会体験を積む引率も任される予定だという。「僕らの頃より、海外で働きたいという志向も強いので、挑戦を応援してあげたい。0から1を作り出せるような人を育てたい」
工藤校長は「生徒も本人も新鮮で刺激を与え合っている。自分で考え、コミュニケーションもとれる生徒を育てる教育の一里塚になる」と意義を話す。

上記は経済産業省の官僚として活躍されている方を、教員として出向を受け入れた事例ですが、同様に職員として受け入れる事例も今後増えてくるのは無いかと思っています。これは一例としてご紹介したいのですが、以前は私立大学職員が文部科学省に出向する事は法的に出来ず、一度退職してから文部科学省に勤めて、その後所属大学に復職するという手続きを取る必要がありました。(具体的に私立大学職員でそういったキャリアパスを歩んだ方を知っています)今後、官民交流人事制度を活用すればそういった人事上の手続きも不要になる事から、もっと活用していくべき制度ではないか?と個人的には思います。
特に私立大学職員が政策立案過程に関わる機会を作るという点で、この制度は非常に有用だと思いますから、職員の資質の維持向上に向けて制度への理解とともに、行政に関わる機会を作れるという点で面白い制度だと思っています。

*1:倉部さんが言うと重みがある。「どんなに不満があっても、基本的には職場を移ることはないのが、大学職員」 大学が、スタッフを失うとき(大学プロデューサーズ・ノート) http://www.unipro-note.net/archives/50235203.html

*2:活動報告リポート-2013年度第3回勉強会-「大学職員の『出向』を考える」 http://www.greenhorn-network.jp/article/379673049.html

*3:文部科学省行政実務研修生に思う 〜制度編〜 http://kakichirashi.hatenadiary.jp/entry/2014/10/20/213210

*4:文部科学省行政実務研修生に思う 〜業務編〜 http://kakichirashi.hatenadiary.jp/entry/2014/10/22/183907

*5:文部科学省行政実務研修生に思う 〜私感編〜 http://kakichirashi.hatenadiary.jp/entry/2014/10/23/215854

*6:活動報告リポート -2013年度第3回勉強会-大学職員の『出向』を考える」 http://www.greenhorn-network.jp/article/379673049.html

*7:内閣府】官民人事交流制度について(お知らせ) http://www.shidairen.or.jp/blog/info_c/others_c/2014/09/08/16103

*8:具体的には人事院規則のようですね。http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H26/H26F22021000.html

教授会等の議事概要を公開している大学のまとめ

high190です。
現在、学校教育法の改正に絡んで内部規則等の総点検を全国の大学が実施しているところだと思います。
直接的には内部規則等の総点検に関わらないのですが、9月2日に開催された実務説明会の議事録に興味深い内容が記載されていました。

※更新情報 青森公立大学滋賀県立大学兵庫県立大学長崎県立大学長野大学昭和大学摂南大学、学校法人日本大学理事会・評議員会を追加(2023/06/15)、リンク修正


学校教育法改正関連(P.22)
教授会の役割についてはなかなか一般の方に明らかでないという部分がございます。もちろん学生の入学の審査とか教員の資格審査とか,個人情報に関する部分もたくさんあるとは存じますけれども,一部の大学では議事の次第や議事概要等をホームページで公表しているようなところもございますので,こういったことについても各大学で御検討をいただければと存じます。

国立大学法人法改正関連(p.32)
経営協議会につきましてはこういったような法改正の趣旨を踏まえて,実際の運用の部分において学外委員の意見というものが適切に反映されるようにするために,学外委員の出席が確保できるかといったような観点も含めて経営協議会の規模,その実情を踏まえた適切な学外委員の選任ということが求められるわけでございます。また,経営協議会という会議の場にとどまらないような学外委員に対する積極的な情報提供であるとか,多くの学外委員の出席が可能となるような出席日程の確保,欠席した学外委員に対するフォロー,議事概要の公表その他適切な情報公開など,経営協議会の運用について配慮を行うことが必要であって,これは法施行前であっても変わらず求められているところでございます。特にこの法改正の趣旨というものを十全に実現する観点からは求められる部分であるというわけでございます。
また,各国立大学法人においては,経営協議会の学外委員からの意見の内容とその反映状況というものについて公表を行っていただいているところでございますけれども,経営協議会の学外委員からの質問等については次回の経営協議会においてフォローを行うことであるとか,経営協議会の議事録については特に学外委員の意見,質問,それに対する学内委員の回答,執行部の回答,こういったものについて公表するなど,経営協議会の機能の強化を図る手法というのは様々考えられるところなわけでございます。こういったような法改正と運用が相まって国立大学法人の経営協議会というものが国民の社会に対する説明責任を果たし,学外の有識者の意見を適切に経営に反映させること,また,学外のモニタリングを適切に機能させることによって社会からの信頼と支援の好循環を確立することにつながることが期待されているわけでございます。

さて、学校教育法の改正に関する説明部分で指摘されている「一部の大学」とはどこなのでしょうか?自分自身の興味もあったので探してみました。

【国立大学】

公立大学

【私立大学】

国立大学と公立大学では、徐々に公表が進んでいるという印象です。その反面(私の探し方がよくないのかも知れませんが)、私立大学で議事概要を公表しているところは見つけられませんでした。(※2015/06/10に十文字学園女子大学美作大学美作大学短期大学部を追加しました)コンプライアンスの観点からも教授会での議決がどのように行われているかは、一定の説明責任を果たすためにも必要になってくるでしょう。これは私が私立大学の職員だから感じる事かも知れませんが、恐らくそう遠くないうちに教授会等の議事概要の公表有無は、私立大学等経常費補助金の項目に入りそうな気がします。そういった意味では、日本の大学のガバナンスレベルを上げていくには、政策誘導が無いと大学は動かず、自律的な改善は望むべくもないと思われても仕方ない部分もあるかと思います。
以前、LEAPでアメリカの大学にインターンされた方のお話を伺いましたが、*1その際「外部資金による統制はアメリカの方がシビア。少ない金額で州からの統制が大きい。また、連邦政府奨学金で大学を統制しようとしている。」、「Budget Retreatで業務の仕分けを全学公開、Webストリーミングしている」という点に関心を持ったのを思い出しました。もちろん制度の違いがあるので、一概に単純比較は出来ませんが、こういった点でも日本の大学にはさらなる効率的運営の模索と、外部への説明責任を果たしうるガバナンス体制の構築がより求められてくると思います。
本ブログでも「規程集を外部公開している大学のまとめ*2」など、大学のガバナンスや情報公開に関する記事をこれまでも書いてきましたが、教授会の議事概要等の公開状況についても、継続的にモニタリングして記事に追記していこうと思っています。

*1:LEAPプログラム参加の大学職員による研修報告を聞いてきました http://d.hatena.ne.jp/high190/20120730

*2:規程集を外部公開している大学のまとめ http://d.hatena.ne.jp/high190/20100315