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Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

就活学生の自殺を防げ

high190です。
先週のニュースを読んでいて、就職活動に失敗した学生の自殺が急増しているとの情報があり、気になっていたので関係する資料なども改めて読んでみました。


就職活動に失敗して自殺する若者が増えている。昨年の自殺者数は六年前に比べ三倍近くに増加。自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンク」(東京都)が就活生を対象に実施したアンケートでは、二割が就活中に「死にたい」と考えていた。厳しい雇用環境が続き将来に希望が見いだせない中で育った世代にとって、就活失敗のショックはかつてより大きくなっていると分析している。
ライフリンクでは今年三月と七月、都内で就職活動する学生約百二十人ずつにアンケートし、結果を十八日に公表した。七月の調査では、就活を始めた後に「本気で死にたい、消えたい」と考えたことがあるかを質問。二十六人が「ある」と答えた。
清水康之代表は「背景には社会や企業への不信感がある」と説明する。アンケートでは七割近くが、日本の社会のイメージを「いざというときに何もしてくれない」「正直者がバカを見る」と回答。経団連が定めた就活期間を守らない企業や、不採用通知すら送ってこない不誠実な対応にも不満の声が多かった。
正社員志向の強さも目立った。「絶対になりたい」「できればなりたい」を合わせると、97%が正社員を希望。一方で「定年まで勤める」としたのは20%で、約四割が転職や独立を考えていた。清水さんは「頼れるものがない日本社会で生きていくため、緊急避難的に正社員を望む学生が多い」とみる。
就職が決まらないことでの焦りや不安、企業の対応の問題などは、過去の就活にも共通する。しかし景気や労働環境など、学生を取り巻く社会の状況は大きく変わった。
「今の学生は高度成長やバブルを知らない。将来に希望を見いだせず、生きる意欲を失いやすくなっている」と清水さん。つまずいても立ち直り別の道を見つけられるよう、小中学校・高校からの就職教育や、大学などの相談体制の充実を提言している。

上記記事でも紹介されているNPO法人ライフリンクによる調査結果は以下のURLからご覧いただけます。

大学における学生の自殺を予防する取り組みは、筑波大学富山大学などで行われていますが、*1 *2全国的に見るとまだまだ支援の手は差し伸べられていないのが実情ではないかと思います。また、昨年度にも報道で同じように就職活動に失敗した学生の自殺が増えていることの指摘があり、その時にもこちらのブログで記事にしました。*3

ライフリンクの提言の中で私の目を引いたのは、大学主催の「キャリア教育」や「就活ガイダンス」で、過去に就職活動がうまくいった成功モデルだけを紹介してしまい、実際に躓いたりうまくいかない時の支援策を提示していないのではないかという指摘です。実際には誰もが内定をすぐに掴める訳ではなく、失敗しながらも周りの教職員や学生の友人、家族などの励ましを受けながら、就職活動を継続していくことが不可欠ではないかと思います。確かに大学側は成功モデルを提示して、成功モデルに沿った行動を是として学生に接する嫌いがありますが、職員と学生の間には当然ジェネレーションギャップが存在しているので、いまの学生の目線に立つためにも、就職に関する情報はもちろん、現代の大学生に関連する様々な情報を集めて接していくことが必要だと感じます。提言では大学のキャリアセンター利用者が少ないことの指摘もなされていますが、就業経験がない学生を育てることには苦難が伴うのは当たり前で、職員が学生の態度や言動などを問題視して放り出すのではなく、辛抱強く見守っていくことが大事です。この点においては職員も教育の重要な一翼を担っているといえます。

私自身の話になって恐縮ですが、ひとつ経験談としてお話しておきたいことがあります。以前も触れたことがあるのですが、私は高校を5年かけて卒業しました。いまでいうところの不登校のような状態だったのですが、周囲の人に励まされて高校を卒業することができ、大学に入学して学ぶ中で、ご縁があって在学していた大学を設置する学校法人に就職することになって、今は教務課で仕事をしています。学生の気持ちが分かる、とは言いきれないのですが、就活に悩み、先が見えない状態で苦しい気持ちは何となく自分自身の経験からも感じられるような気がします。そうした時、そばに寄りそいながらも、本人が立ち上がるのを辛抱強く待ち続けることが大切なのです。私自身が他者の励ましによって導かれた経験があるからかも知れませんが、職員として大学に勤務していて、待つことは学生支援にとって本当に重要なポイントなのだと実感しています。これは就職支援に携わる職員だけでなく、大学で勤める責務として色々な部署で働く人たちに知っていただきたいと思います。

*1:平成22年度自殺対策白書に見る大学生の自殺対策 http://d.hatena.ne.jp/high190/20101026

*2:富山大学が全国でも珍しい「自殺防止対策室」を設置 http://d.hatena.ne.jp/high190/20110125

*3:就職活動の失敗による学生の自殺が増えているとの報道を受けて、大学職員として何をすべきか http://d.hatena.ne.jp/high190/20120509