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Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

大学教育改革地域フォーラム2012 in ネットワーク多摩に参加してきました。

high190です。
昨日は東京都日野市にある明星大学に行ってきました。何故、明星大学に行ったのかというとネットワーク多摩という大学コンソーシアムが主催する大学教育改革地域フォーラム*1があったからです。ネットワーク多摩というのは、東京都多摩地域の産官学の連携組織である公益社団法人で、日本全地域を主役にした21世紀ビジョンが作り出されるモデルケースになることを目指しているそうです。*2
今回、文部科学省が全国で開催してきた「大学教育改革地域フォーラム」をネットワーク多摩主催、文部科学省共催で行うということで参加してきました。

1.主題講演 「新たな未来を築くための大学教育の質的転換−中教審答申を読む−」
講師 板東久美子 氏(文部科学省高等教育局局長)

板東局長の講演に先立って、「今、問われる「大学での学び」」のビデオ上映がありました。この映像は文部科学省の若手職員の方が、自発的に作成したものだそうです。板東局長からは、今年発表された大学改革実行プラン及び中教審答申を踏まえた今後の大学のあり方についての講演がありました。

昨今の日本を取り巻く問題に対して、社会から大学に対して人材育成に関して大きな期待と同時に、批判も寄せられている。一人一人が予測困難な社会の中で、主体的に問題を解決するための力を身につけていくことが必要。大学と企業の意識のミスマッチがあるので、これを解消するために産学協働が必要になってくる。学士課程教育の質的転換のために、体系的なカリキュラム、双方向の教育、厳格な成績評価、教員の教育力向上、学位プログラムに基づくプログラムの徹底、学修支援環境の構築。様々な問題を総合的に好循環させていかなければならない。

  • 中教審答申において示された「大学において速やかに取り組むべき事項」
      • 教学マネジメント体制の構築(専門スタッフの養成)
      • プログラムとしての課題の共有、教育方法に関する技術向上に資するFDの実施

2.メインシンポジウム「産官学連携を軸に、高等教育はどう変わるか?―質重視の段階に入った高等教育をめぐって―」
パネリスト:鈴木寛氏(前文部科学副大臣)、梶谷誠氏(電気通信大学学長)、日比谷潤子氏(国際基督教大学学長)、佐藤浩二氏(多摩信用金庫理事長)、板東久美子氏(文部科学省高等教育局長)
モデレーター:小川哲生氏(学術・文化・産業ネットワーク多摩会長、明星大学学長)

パネルディスカッションに先立って、各パネリストから10分間のプレゼンテーションがありました。

鈴木前文部科学副大臣
日本人はそもそも大人が勉強していない。若い世代からの突き上げが改革に繋がっていくのではないか。現代は文明の大きな転換期にあり、ソフトパワーによる智識文明の創造が必要。大量消費社会の転換は大人にはできない。若い人だからできる。夏目漱石は「大学は知の配電盤だ」と言ったが、大学がどういうものであるかを答えるのは難しい。形がないからこそ、形作っていく必要がある。

  • 人生に迷ったときに大学に帰り、時代の最先端を知ることで社会に戻ることが必要不可欠で、大学は学び直しの拠点としての機能を高める必要がある。
  • 経済成長と人口動態は高い相関があり、人口減少社会では、イノベーション投資を高めることが不可欠だが、日本は先進国でも最低水準。これからは唯一無二、一期一会の仕事が当たり前になり、今までの成功パターンを当てはめるやり方は成功に結びつかない。

これからの人材育成の方向性は、次の3つをポートフォリオ化して、自らの強みを作ることが不可欠。この中で何が自分の強みかを考えて、そのための自分磨きの場を大学が学生に提供していかなければならない。

    1. 人類に新たな価値を創造するチームを担う人材
    2. 日本で創造した価値を磨き、諸外国の人たちとコラボレーションして広げていく人材
    3. 世代や立場を超えてコミュニケーションできる人材

梶谷電気通信大学学長
20世紀までは積分型社会だったが、これからは微分型社会になる。情報が相対的に主役になる時代であり、大学は認識すべきだが、まだ日本は対応できていない。諸悪の根源は組織にあり、セクショナリズムの打破とボーダレスの組織構築が大切で、そのために大学の構成員を多様化してボーダーレス化しないといけない。産学連携の目的は相互協力で社会を活性化すること。

日比谷国際基督教大学学長
ICUで行っている取り組みから、ディプロマ・ポリシー、サービス・ラーニングについて紹介したい。ICUは学生一人当たりの教員比率が1対19で、非常に高い。それを守って手厚い教育を実施している。

  • ディプロマ・ポリシー
      • 学科組織別に「何ができるようになったか」を明確にして、身につけたものに対して学位を与える。生涯にわたり学び続ける力を支えるため、学科制度を全廃してメジャー制度(ダブルメジャー、メジャー・マイナー)を始めた。入学後に専門分野を決める。
      • アメリカでは有名な調査である学生学修意識調査・NSSE(National Survey of Student Engagement)の質問項目を、実情に合わせるために一部修正して活用している。3年生を対象に自分がいかに主体的に学修したかを調査している。ICUの授業では、ディスカッション、ディベート、グループプレゼンテーションを重視しており、授業で扱っているテーマに沿って、授業外の学修に向かわせることに繋がっている。
  • サービス・ラーニング
      • 外部機関での30日以上の無償活動に単位を付与する制度であり、事前・事後学修を必須にしている。

佐藤多摩信用金庫理事長
多摩地域の採用実態調査を多摩地域の更なる産業発展という理念のもと、多摩大学と共同で実施し、採用における就職チャネル、求人告知の課題などについて調査した。

  • インターンシップ等から、地域及び企業のことを理解していくことが必要。地域連携についても、ルートを作ること・支える組織が大事になる。
  • 多摩信用金庫に就職しようとする学生には、皆は大人なのかという問いかけをしている。志を持っているかどうかが子供と大人を分けるものである。志があれば小学生でも大人である。
  • これからは今までの常識が通じない。信用金庫も銀行の劣化版ではなく、信用金庫だからこそできる価値を提供していきたい。

各パネリストによるプレゼンテーションでは、それぞれの大学毎の取り組みに加え、多摩地域ならではの話もあって、聞く側としても興味深い話が多かったです。また、鈴木寛文部科学大臣が話された「人生に迷った時に大学に帰る」ということこそ、社会人の学び直しの場として必要なことだと思います。また、ICUの日比谷学長からお話のあったNSSEの質問項目を活用している点は、アクティブ・ラーニングの現状を調べる際の参考になるので、私自身の新しい発見でした。
パネルディスカッションは、モデレーターの小川明星大学学長の進行でスタートしました。

  • パネリストからの発言に対し、文部科学省としてどうしていくかを考えていきたい。
      • 高等教育投資が少ないことは、以前から指摘されているが、学ぶことが社会全体にとって重要であることを広げたい。
      • また、各大学のベストプラクティスを社会に提供することも必要であるし、大学に関する情報公開について、大学ポートレートなどを積極的に行っていきたいと考えている。社会全体で連携して取り組んでいけるようにしたい。
  • 大学の教育予算について、アメリカは学生1人当たりに約2万9千ドルを投資していることに対し、日本の文科系は7千ドルである。そういう観点ではICUは非常に優秀な大学で、正直学費は高いが、その分だけいい教育をしている。
  • 日本の文系教育をどうしていくかが極めて重要。少人数教育がなければ人は育たない。事実に基づいた議論をする日本になっておらず、悪循環である。教育者としても政治家としても2重に責任は感じる。
      • これまでは企業が人材育成に莫大な投資をしていたが、企業にも余裕がないので、限りあるリソースをかき集めてPBL教育を行い、評価されるまで継続することが重要である。
      • 社会に出れば膨大な資料を読むことになる。活字・データを読み解く大学入試に変えなくてはならない。読み込みと書き出しを反復することが力になるので、それをやらないといけない。
  • 政治と官に期待することは多様性を認めること。新しい何かを大学で始めようとしても、制度的にできないのが日本の現状で、もっと現場を信頼して色々なことをやらないとイノベーションは起こらない。また、個々人が創造性を発揮できない組織では人材も育たない。そういう改善が極めて重要。
  • ICUの学費は普通の大学よりは高めであるが、それでも財務状況は厳しい。今の状況を維持することだけでなく、向上させることが必要で、そのために補助金が重要になっている。
      • 最近では、補助金のポリシーが政情等によって変わりやすくなっている。必ずしも使いやすいものではなく、申請内容に従うことが求められるため、良い取り組みをしている大学に対して包括的な補助金などを出す制度に変えていってほしい。
  • 就職活動として受け入れる側として感じることは、現在の就職活動のシステムはウェブで申込・エントリーしているが、就職は人生の一大イベントになっており、もう少しいいやり方がないかと感じている。
      • 就職する学生としても、自分が何で身を立てていくかをよく考えて、企業を選ぶような形に転換していくことが重要ではないか。
  • これからはもっと大学に様々なリソースを集めてこないといけない。アメリカと比較すると日本は企業からの寄付金が少ない。大学にもガバナンス強化などの課題はあるが、もっと産業界と大学が意見交換をしなくてはいけない。
  • 企業側からすると採用コストが非常に高い。そのための費用を就職支援企業に払うのでなく、直接大学や大学コンソーシアムなどに渡していくべきではないか。
      • 例えば、留学経験者に奨学金を出して採用に結びつけるなど、企業・大学双方のメリットになる。そういうモデルを多摩地域から創出していってはどうか。
      • 中小企業の場合、大学に寄付すると税額控除される制度を創設したので、就職支援会社に払うよりも、大学に寄付した方が損金算入することができる。
  • 産官学連携の実現のために議論する場が必要であり、企業経営者も志を持たなくてはいけない。また、国の観点では志を持った人材をどのように養成していくのかが非常に重要な課題となる。そのためにも政治にはがんばってほしいし、実業界も頑張っていきたい。
  • 冒頭のビデオの中で、モチベーションの高い学生はモチベーションの高い社会人と触れ合っているとの話があったと思う。
      • 地域課題の解決という観点で、学生の学びのフィールドを拡大することも重要なことである。
      • 本当は、大学は大人も含めた学びの場であり、社会人の学び直しの拠点としての機能拡充を図っていかなければならない。
      • もちろん、働き方や企業の姿勢を変えていく必要はあるが、大人の学び、社会と地域の協働に対して大学側でも考えて欲しい。その点について大学から参加のパネリストの意見を聞きたい。
  • 20年前にイギリスの大学に行った際、在学生の年齢層は40歳程度まで均質になっており、また、学生の専門分野についても、学問横断的なプログラムが構築されていた。
      • バックボーンが異なる人が多いことが重要で、同質的な人同士の議論をしても意味がない。
      • 学生の身分を正規・非正規を分けるのでなく、全て正規にしないといけない。社会人の学び直しには企業の理解も非常に重要になる。

パネルディスカッションでの質疑応答では、参加者から多くの質問が出ていました。このシンポジウムには学生も参加しているのですが、文部科学行政に対する鋭い指摘も出ていて、なかなか職員の立場からは聞きたくても聞けないテーマを率直に聞けるのは、学生が参加する利点ですね。また、質問に対する回答にも示唆に富んだ意見が多く出されていました。行政・大学に限らず、多摩信用金庫の佐藤理事長が登壇していたことで議論に幅が出ていたように感じます。参加者の属性が様々であるからこそ、面白い議論になりますね。

【主な質問の一覧】

  • 大学が今までやってきた一方的な教育でなく、双方向の教育が重要とのことだが、パネリストの皆さんは、学部生から学際的な教育を実施した方がいいと思っているか。
  • 学生の学修時間が少ないとの話があったが、アルバイト・サークルは学びの場ではないのか。そういった環境から学び得るものがあるのではないか。大学内から見えない学修の場としての可能性について、板東局長に聞きたい。
  • 私学行政の形として、補助金から今後の大学のあり方を規定している面があると思うが、行政の側からどのように折衝しているのか、また今後どのようにしていこうと思っているのかを知りたい。
  • 教育政策というのは、6・3・3・4制であり、教育の成果には長い時間がかかる。教育政策の主導権をどこが握るかどうかを知りたい。
  • 大学の偏差値について聞きたい。偏差値の高い大学・低い大学があるが、偏差値がある意味で、入学後にも学生に影響を与えている可能性があると思うが、その点についてはどうか。

【主な回答の一覧】

  • 伝統的な学部では、特に資格取得などが関係すると難しいが、メジャー制度は学部の伝統的なディシプリンはもちろん、その他の分野の科目を取らなければいけない仕組みにしている。
      • 学際的な学びだからといって、総花的な取り方になるのは良くないと思う。
      • 卒業生の中でも、様々な科目がある中で自分の興味関心を踏まえて、メジャーを構築していくことが重要と言っていた。
  • 以前教鞭を執っていた慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでも10年前に同じ問題を抱えていて、あまり様々な分野を食い散らかすとアカデミックリテラシーが何も身に付かないことが分かった。
      • ただし、プロジェクトは学際的にできるので、プロジェクトを各学部の学生が担当するなどして、クリニックの改善提案をしたことがある。
      • PBLではそれぞれの分野の特性を組み合わせることが可能になるので、動機付け・意味付けの部分で、コラボレーティブな形での運営が実現可能と考えている。
  • 学生たちが力を付けていくために、アルバイト等の教育課程外の学修も重要だと考えている。しかし、大学教育に対する投資を考えるとしっかりした答えを出していかなくてはならないと思う。
      • 例えば、アルバイト等の教育課程外の活動については、大学入学前に初等中等教育でのキャリア教育を充実化させるなどを考えていくことが必要。
      • アルバイトをする学生が多い点も踏まえて、経済的支援・大学教育の本質的部分を変更していくことが重要ではないかと思う。
  • 副大臣就任時に、ひも付きの補助金をやめて自由に使える補助金を増やした。また、授業料免除者をさらに倍にしたい。
      • では、何故GPを残したかというと、私学関係者からの要望があった。GPを取るから、という点で教授会を説得しているという大学ガバナンスの固有問題があった。
      • また、教育予算の獲得を目指して折衝を積み重ねてきたが、新規案件でないと記事にならないというメディアの問題もある。新聞等が記事にしないと、そういった政策課題があることが分からないという問題がある。
      • これは政策形成過程の話だが、現状ではそのような問題がある。
  • 政策にとって、旗印を掲げることは重要であると認識している。GPについてはまさにそうである。
    • 大学という組織はガバナンスが難しいところだと言われているが、新しいことに部局の壁を超えて、次の大学のあり方を検証・改善しながら作り上げていかなければならないので、そのための応援としてGPを活用して欲しい。
    • ただ、自学に合わないと予算が切れた時点でその組織・取り組みも失われてしまう。鈴木先生の話の通り、予算を増やすべく色々な取り組みをしている。
  • エビデンスを踏まえた教育行政の実現にかかっている。
      • 思いつきや、ちょっとしたイデオロギーではない、現場で求められていることが何なのかを分析して、政策を作っていくことが必要ではないかと思っている。それは政権が変わっても変わらないようにしたい。
      • 中長期的なプランの構築として、教育振興基本計画や大学改革実行プランなどによって、地道に積み上げていくことが重要であることを行政としては重視していきたい。
  • 現状ではわずか数科目の入試で大学入学者を選抜しているが、そもそも人生に及ぼす影響は100分の1程度である。自分で行きたい大学を選ぶこと自体、主体的な決定で主体的学習者である。
      • また、大学の教授陣のポテンシャルはどの大学でもほとんど変わらない。また、日本の大学教員は質問に来た学生にはとても丁寧に対応する。今後は「この人材と一緒に大学を作りたい」という選抜方法を探っていくことが重要。

3.分科会(サブシンポジウム)第3セッション:グローバル時代の日本の大学
コーディネーター:若林茂則副学長

パネルディスカッション終了後、分科会は3つのテーマから参加セッションを選ぶ形式だったのですが、今回は「グローバル時代の日本の大学」を聞くことにしました。特に、グローバル5大学のひとつである国際基督教大学の日比谷学長がどんなことをお話になるのかがとても興味深かったからです。日比谷学長は、進路マイスターの倉部史記さんが毎週金曜日にニコニコ生放送を行っている「大学の見方」にも出演されていて、視聴者の意見も非常に好意的なものが多かったそうです。


日比谷ICU学長
このセッションは大学のグローバル化を扱うが、グローバル人材育成推進事業に採択された内容を中心にお話する。ICUはリベラルアーツ大学なので、3つの柱を立てている。自らの学びの主体性を持っていないと厳しいカリキュラム編成としている。

    1. 分野を超えた幅広い知を主体的に統合する能力
    2. 異質な他者との出会いによる批判的思考と自己認識の能力(自分自身を客観視する能力、外国籍教員34%、キャンパス内に外国籍教員住居、留学生寮学生寮がある)
    3. 日英両語による発信と表現で社会的に知を発信する能力

リベラルアーツ英語プログラムの導入、全員がIELTS(International English Language Testing System)を受験、英語での授業開講、ライティング能力の涵養。reserach writing+海外留学、40%の学生が英語で論文を作成。留学生は日本語で論文作成を行う。交換留学などの留学プログラムの拡充やサービス・ラーニングの海外での実習を行う。特色として、理系の学生が海外理系大学での学習を行うプログラムもある。

小出創価大学教授
競争的資金獲得に関しては、大学全体の教育プログラムを構築することとアドミニストレーションを学ぶいい機会であった。本事業については、GPとは異なり、大学全体のグローバル人材育成力を向上させるものであると感じた。最終的には経済学部の専門課程で実施していた英語での授業(平成19年度特色GP)を既存6学部にも適用するという内容で、構想をまとめた。

  • 学部横断型として、共通科目の英語授業、学部横断型プログラムを実施した。japan studies program,global citizenship programによってTOIECスコアが251点アップ、TOEFiBTのスコアで80点を9割が突破した。
  • 育成する人材の持つべき資質として、創造的人間「グローバル・シティズン」をグローバル人材と定義して進めている。英語圏以外のロシア・東欧圏、開発途上国などから留学生を受け入れている。

教員の教育力向上を実現するため、アメリカ創価大学から先進事例を学ぶ。教員をUCLAに派遣し、授業運営研修を行う。教員の教育、研究、社会貢献を総合的に評価するシステム、国際公募による教員採用を拡大し、海外大学院の博士号保有者・外国語で授業のできる教員を採用している。

若林中央大学副学長
中央大学では、今までの学内の取り組みを掘り起こすことから準備をスタートした。建学の精神をベースにグローバル・スペシャリスト、リーダー、ジェネラリストを養成することを目指す。ジェネラリストについては、全学生を対象とし、アドバンストとしてリーダー、スペシャリストが対応する。

  • ジェネラリスト=日本社会でのグローバル化対応
  • リーダー:グローバル社会で海外にて活躍できる人材
  • スペシャリスト:主専攻分野での専門的知識を英語で説明でき、政策提案ができる人材

コンピテンシー自己評価システム、海外体験を軸とした科目の新設、多様な新型短期留学の導入、新FLP(Faculty Linkage Program)、国際連携推進(ILO本部、JICAなどの国際機関と連携)C-compassというルーブリックを開発して、コンピテンシー指標を設定。教員の海外引率数を調査したところ、ゼミ単位での実態が分かったので、制度化して全学的に実施していきたい。

第3セッションの質疑応答では、次のような質問が出ていました。グローバル人材の育成に関するテーマだったので、英語学習のことが多く話題になっていたように思います。

【主な質問の一覧】

  • 意欲的な取り組みを実施する中で、英語での授業・レポートが重要であることが分かったが、学生の英語力が制約条件になると思われるため、そうしたことをどのようにして克服しているかを知りたい。
  • 大学であまり英語の授業を受ける機会がなかったので、高校時代の方が語学力があったように感じる。学生の英語力をどのように伸ばしていくかをもう少し聞かせて欲しい。また、日本人の特性として、ディスカッション等での発言力が弱いことがあるが、大学教育の中でどのように能力開発をしていくべきかを教えて欲しい。
  • 日本が本気でグローバル人材を育てようと思うなら、大学からでは無理であるように思う。普通の日本の小中高を卒業してきた学生たちを大学の4年間で育成することが可能なのかどうかが気になる。

【主な回答の一覧】

  • 英語のみでいきなりやるのではなく、入門的な内容を学ぶ際には課題も少なくして、徐々に負荷を上げていくような仕組みにしている。日本語と英語を併用して、どのように組み合わせてカリキュラムを構築するかが重要。
  • 専門科目は日本語で実施し、その上で専門知識に基づいて英語でディスカッションする科目なども設置した。ライティングは大学院のみの実施だが、ライティングセンターを設置、短期の語学研修プログラムを開講している。
  • ディスカッションもそうだが、そもそも大勢の前で話す機会が少ない。語学力を高めるためには少人数教育を実施することが不可欠である。失敗を恐れる学生と成功のために失敗を恐れない学生の差があるように思う。そういう授業を増やしていきたいと思っている。
  • 長文を読んでのディスカッション、発表を行うクラスがあるが、訓練を積むことは非常に重要だと思っている。日本語で行う授業であっても、授業の中で習慣付けていくことが極めて重要。日本で過ごしてきた人はそういう訓練は積んでいないが、大学に入った時がチャンスである。
  • 大学入学後の伸びが悪いという人もいるが、最初は得意でなかった人も、継続して英語での開講授業を受けて能力を伸ばしてきた例がある。
      • 語学は「継続は力なり」で、続けないと能力が下がってしまうため、英語力を維持・向上したいならば、相応の時間を割くことが大切。
      • 大学側はチャレンジができるカリキュラムを用意することと、学生が迷った際に厳しい方の選択肢を提案できることが、教員としては重要だと思っている。
  • 本当のグローバル人材というのは、そもそも生育環境によらず、あるきっかけをもとに海外に羽ばたくので、入学時点での国際感覚などはあまり必要はないように感じる。
  • オックスフォードの場合は1ターム8週しかなく、あとは自分で勉強しろというスタンス。
      • サセックス大学の場合は10週、ポリテクニークは12週であった。
      • レベルの高い大学の方が自習が多く、自分自身で学習をマネジメントできるかどうかが重要になる。
  • 日本の場合、ゆとり教育は失敗してしまったが、本来的にはプロジェクト型で教育したかったはず。日本に海外の留学生を呼び込みたい場合、質問に来た学生やゼミの学生に手厚いところ、卒論を書こうと思えば誰でも書けるは日本の教育の特色である。
  • ネットワーク多摩は大きなポテンシャルを秘めている団体であり、今後も多摩地域間での関わり合いが重要になると思う。

全てのプログラムが終了した後、それぞれの分科会で議論した内容についてコーディネーターからまとめの発表があり、クロージングセッションとなりました。私が参加した第3セッションについては、内容が重複するので省略します。

4.クロージングセッション

第1セッション:学生の資質を伸ばす雇用革命(コーディネーター 法政大学宮城まり子教授)
大学の立場から大学教育のあり方を説明し、それに対して企業の立場から大学教育に求めるものについて話題提供をしていただいた。変化の時代の中で大学教育はどうあるべきか、またどのように学生に教育を行っていくかについて議論。

  • 法政大学での取り組みとして、大学の教育は論文を書くことにあるとの意見があった。
      • 論文執筆は、仮説・検証を繰り返し、発表を行うことから、社会人基礎力の育成に役立つが、そのことに気がついていない大学教員は多い。専門教育からでもそういったアプローチができる。
  • 企業もコンプライアンスの関係で、個々の人物の世話を焼くことができなくなってきている。最近の若者の姿勢(待ちの姿勢、無駄なことをやりたがらない)についての指摘もあり、積極的な行動をできるような教育が必要である。
  • 企業ニーズに大学教育が合わせるだけではなく、大学独自の個性・カラーを打ち出した人材育成が重要。学ぶことへの動機付け、読む・書く・伝えるのトレーニング、正課としての産学連携課題解決型(PBL)プログラム展開が重要である。

第2セッション:ICTイノベーションと大学教育(コーディネーター 大妻女子大学生田茂教授)
ICTリテラシー教育のあり方とタブレット端末等の教育利用に関する可能性等を議論した。高校で情報が教科として設置されるようになったが、来年からはまた新しいカリキュラムの対応が始まる。

  • 社会に出たらMicrosoft Word,Excelを使うので、その授業をやっているが、本当にそれでICTリテラシー教育はいいのかという意見が出た。
  • 良き市民のためのICT教育が必要不可欠であり、ソーシャルメディアとのつきあい方なども教育していくことが、その辺りの教育方法の括り直しが必要との意見があった。
  • 一般教室での授業形態など、もっと先進的な授業を実施していくことが重要であり、授業のあり方を含めた教育環境全体が大きく変わっていかなければならないとの意見があった。
  • ICTツールを使って、学生支援が行えるのかについても、試行運用でもいいが何か始めていくべきとの意見があった。

全部で5時間のフォーラムでしたが、熱気に後押しされたのかあっという間に終わってしまった印象です。大学を取り巻く関係者を一同に集めて議論することは、議論の方向性を見定めておけば脱線することもなく、有意義な意見交換が可能であることが分かりました。こういったフォーラムを継続的に実施するのは準備等を含めて大変ですが、産学官協働を実現するためにも、是非継続して意見交換の場を設けていって欲しいと思います。また、こういった場での議論のためにも、是非フューチャーセンターの考え方を取り入れたらいいのではないかと感じました。フューチャーセンターとは、「対話を未来のイノベーションにつなげる仕組み」として北欧で生まれた手法で、企業、政府、自治体などの組織が中長期的な課題の解決を目指し、様々な関係者を幅広く集め、対話を通じて新たなアイデアや問題の解決手段を見つけ出す場を作ることを目的にしています。このブログでも以前、大学でのフューチャーセンター導入に関する記事を書きました。*3
大学改革実行プランで示されたCOC(Center of Community)構想を具現化するためにも、今回のようなフォーラムを是非継続して欲しいことと、より身のある議論のためにもフューチャーセンターのようなワークショップを取り入れることなど、私自身が大学教育改革地域フォーラムに参加することで、産官学を切り口とした大学のあり方を考えるいい機会になったと思います。

*1:大学教育改革地域フォーラム http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigakukyou/1319974.htm

*2:ネットワーク多摩とは http://nw-tama.jp/about/

*3:大学にフューチャーセンターを作ろう! http://d.hatena.ne.jp/high190/20120611