Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

『なぜ、国際教養大学で人材は育つのか』

high190です。
秋田の国際教養大学は、100%の就職率、1年間の留学義務化や厳格な卒業要件など国際教養を高めるユニークな教育を行っており、各種メディアで取り上げられている大学です。
中嶋嶺雄学長は政治学者として国際的にも著名な人物ですが、東京外国語大学の学長を務められるなど、優れた大学人でもあります。
その中嶋学長が書かれたのが「なぜ、国際教養大学で人材は育つのか」です。

なぜ、国際教養大学で人材は育つのか (祥伝社黄金文庫)

なぜ、国際教養大学で人材は育つのか (祥伝社黄金文庫)

私も人から勧められて読ませていただきましたが、職場の同僚にも読んでもらいたいと思いましたので、現在は貸し出し中です。
もともとはミネソタ州立大学機構という、日本の大学設置基準上は大学として認められなかった教育機関を再構築したのが国際教養大学ですが、カリキュラム設計や教職員の任期制採用など、日本の大学ではあまり見られなかったドラスティックな運営をしているという印象を持ちました。ちなみに現在桜美林大学の教授をされている諸星裕教授は、国際教養大学の前身にあたるミネソタ州立大学機構秋田校の学長を務めていました。諸星教授はアメリカの大学行政管理者としての経験を活かして、日本の大学に対する提言をまとめた書籍を多数書かれていますが、中嶋学長とは国際的な大学観を持っている点で似ていると思います。元々の土台を作った人と後に発展させた人に共通項があるという点において、人の繋がりから見ても面白いと感じます。

さて、国際教養大学というと素晴らしい図書館を持っていることで有名だと思います。図書館は24時間開放して学生の学びに対応しているのですが、図書館の設計者が賞を受賞するなど別の観点でも注目されています。


国際教養大学は在学生数が800名ほどの小規模大学ですが、これだけの教育ができるということを実証した成果は計り知れないと思います。
また、公立大学法人の第1号としてパイオニア的な役割を担うことにもなりましたが、小規模大学のモデルケースとして大いに参考にしていくべき大学だと私は思います。