Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

経済同友会による私立大学のガバナンス強化を促す提言

high190です。
久しぶりのブログ更新になりました。少し前の情報ですが、公益社団法人経済同友会が私立大学のガバナンス改革推進を促す提言を公表しましたので、ご紹介します。


経済同友会は26日、日本の高等教育の質を高めるため私立大学のガバナンス(意思決定システム)を明確化すべきとする提言をまとめた。私立大学法(私学法)など関連法を改正し、学長や理事会の権限を強化し、教授会の権限を弱めるべきだとしている。
提言は「大学の最高意思決定機関は理事会である」として、私学法38条を改正し学校関係者以外の理事比率を高め、学長の任命権を明記すべきと主張。人事や学部改変などで学校運営に関与しがちな教授会は学校教育法93条などで「教育・研究に関する学長の諮問機関」と規定するよう求めた。
同時に理事会を監督する監事の機能強化や大学経営に関する情報公開を充実させるべきだと提案。経営を拡充するため企業経営経験者など学部の有識者を活用すべきだとしている。
提言の背景には日本の高等教育の質の低下がある。日本の大学は世界の大学ランキングで質の低下が指摘されており、記者会見した北山禎介教育問題委員長(三井住友銀行会長)は「国際競争力のある人材を育てるためにも大学改革が急務」と強調。学校数や学生数で日本の大学の7割を占めている私立大学の改革を促した。

この提言のポイントは、私立大学における最高の意思決定機関は理事会であるべきということです。意思決定機関について、何故このような提言が行われるのか?という背景には、私立大学を取り巻く法制度に理由があります。私立大学の場合、設置者である学校法人を規定する私立学校法では第36条第2項に「理事会は、学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する。 」とありますが、学校教育法では第93条に「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。 」と規定されています。私立大学におけるガバナンスが問題になるのは、理事会と教授会の上下関係があいまいであるということです。*1 *2
先般、東京女学館大学の閉校問題に伴って、大学経営人材の養成がこれからさらに求められてくるという記事を書きましたが、*3何よりも対外的な説明責任を果たせる体制を大学が構築することが重要だと思います。また、理事会の権限を強化すると同時に、監事による業務監査の実施や内部監査部門の創設などによってガバナンスを強化することもあわせて考えておきたいところです。