Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

高等教育の修学支援新制度説明会(仙台開催)に参加しました。

high190です。
2019年10月3日(木)にトークネットホール仙台で行われた説明会に参加しました。来年度から新たに開始される高等教育の修学支援新制度に係る説明会です。対象の大学等全てに説明するため、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、福岡でそれぞれ開催されています。こうした説明会は質疑応答が開催毎に蓄積していくので、あくまでも10月3日時点での情報であることに留意してください。
仙台開催説明会の記録を公表します。主観が入っていること、内容に誤りが含まれる可能性があることを予めご了承ください。

www.mext.go.jp

議題

  1. 授業料減免等の事務処理等について
    • 【授業料等減免実施の全体スケジュール概要(予定)について】
      • 2019年度は予約採用(新入生:入学手続時)の準備と、在学予約(在学生:11月以降で各大学が提出時期設定)の手続き、在学採用(予約採用できなかった新入生及び在学予約できなかった在校生:翌年度4月)の準備が必要。
      • 2020年度授業料等減免交付金(補助金)申請/交付/実績報告スケジュール抜粋(大学と私学事業団)
        • 6月 減免費用の交付申請書提出
        • 7月 概算払請求
        • 10月 減免費用の変更交付申請書(追加分)提出
        • 12月 概算払(追加分)請求
        • 4月 実績報告
    • 上記スケジュールと併せて、日本学生支援機構に対し進学届提出(学生から)・現況届提出(大学から)、支援区分確認、大学が学生に対し減免認定・減免決定通知書発行、継続の際の適格認定及び通知、学生等から大学へ認定申請書(新入生・在学生)、継続願(在学後)の提出を行う必要有。
    • 授業料等減免の支援対象の認定要件は、機構の給付型奨学金と同一であるため、支援区分は機構の認定に従う。各学生の支援区分の情報は機構システム(スカラAC)を通じて大学と連動し、確認することができる。
    • 機構の支援区分の決定は5月頃であるが、新入生の支援区分の確認は、大学に提出する認定申請書(A様式1「大学等における修学の支援に関する法律による授業料等減免の対象者の認定に関する申請書」)に添付する「採用候補者決定通知(内定)」の写しによる。同通知は、12月末までに機構→高校→予約採用候補者(生徒)が受領するものである。
    • 【ケース別の実施スケジュールについて】
      • 減免実施にあたっては、以下の4区分毎にスケジュールが異なる。
        • 新入生の予約採用者の場合
        • 在学採用者の場合
        • 在学生の在学予約採用者の場合(初年度である2020年度採用者のみ)
        • 秋入学生(9月入学者(予約採用)の場合)
    • 【減免対象者の管理簿】
      • 作成例を参考に各大学での作成・管理が必要。(資料P.38参照)
    • 【様式(雛形)一覧】
      • A様式(減免対象者の認定等に関すること)
      • B様式(減免交付金の交付に関すること)
      • 2つの区分で構成されるので、適宜使用する必要がある。なお、A様式は各大学で様式を定めること。B様式は最終的に交付要綱で提示するので、変更があり得る。(授業料減免事業費負担金(授業料等減免交付金※)に係る交付要綱の周知時期は2020年3月頃の予定。※補助金
  2. 学修意欲等の確認について
    • 【学修計画書について】
      • 学修計画書について様式例を提示する。
        • 各大学で同様に定める様式等が既にある場合、そちらを使用しても構わない。ただし、様式例で示した以下の区分は最低限含むものとする。
        • 学修の目的(将来の展望を含む。)
        • 学修の計画
        • 卒業までに学びを継続・全うすることの意思確認
      • 以上の内容を踏まえ、「総合判定結果」にて教職員が「在学中の学習意欲等の有無」を判定すること。判定に当たっては、結果の妥当性、適切性、委員会等での機関決定などに留意すること。
  3. 学生等に対する新制度の周知について
    • 【在学生への新制度申込みについて】
      • 修学支援新制度の資料として、学生等向けリーフレット及び文部科学省の特設ホームページ等で周知を図っているので、学生・保護者への情報提供に御活用いただきたい。
      • 新制度では家計状況で採否が決まるため、日本学生支援機構の進学資金シミュレーター活用についても、併せて周知を図っていただきたい。
  4. その他
    • 新制度に関する問い合わせに係る取扱い
      • 授業料等減免の事務処理、又は学修意欲等の確認の手引きに関することは、文部科学省学生・留学生課高等教育修学支援準備室が問い合わせ先となる。問い合わせ方法はメールのみなので、注意すること。

事務取扱要領(案)に基づいた説明でしたが、給付は日本学生支援機構、減免は文部科学省で説明会をそれぞれ行っていたため、大学等が制度の詳細を理解する上では日本学生支援機構文部科学省が合同で説明会を開催すべきだったのではないかと思います。また、事務手続の面で未確定事項があるため、必ずしも明確な説明が行われないなどの問題点があったように思います。

質疑応答

  1. 各様式について
    • A様式の改変は行っても差し支えないか。
      • 各様式で定められた項目は様式から削除してはならないが、追加を行う分には各大学で行ってよい。
    • 「資産に関する基準」について、「申請者の自己申告による」とあるが、様式はあるのか。
      • A様式1の別紙1に「資産の申告」という項目がある。同書類は日本学生支援機構宛となる。また、現時点では自己申告としているが、不正防止の観点から今後変更になる可能性がある。
    • 予約採用候補者に係るA様式1の認定申請書の提出について、入学手続き時ではなく入学選抜時に提出させることは可能か。
      • 入学選抜時に提出を要する正当な事由について説明が困難と思われる。入学手続き時が妥当と思われる。
    • 予約採用候補者に係るA様式1の認定申請書について、入学手続き時に提出させる場合、他の学校との重複申請しない旨の注記はあるものの、実際には併願している複数校に提出することはあり得るのではないか。
      • 当該学生が複数の学校から減免を受けることは制度上発生しないが、複数の学校に認定申請書を提出する可能性は否めない。今後、併願している複数校への提出を回避できる運用を検討したいと考えているが、現状は無い。
  2. 私立大学等経常費補助金との関係について
    • 従前は経常費補助金での授業料減免制度があり、減免額の2分の1が補助されていた。今般の新制度創設に伴い、制度の取扱いはどうなるのか。
      • 概算要求にて財務省と協議中である。新制度の創設に伴い、従前の制度は学部生への拡充は見込めないと思われる。詳細は文部科学省私学助成課に問い合わせいただきたい。
  3. 学修計画書について
    • 学生から学修計画書が提出され、教職員が内容を確認して「学習継続の意思が無い」と判断し、基準を満たさなくなることを想定しているか。
      • そういったこともあり得ると想定している。
  4. 認定の取り消し・ペナルティ等について
    • 減免等が取り消された場合の返還については、個別の振込か、10月又は3月の支払時での調整のいずれか。
      • 現時点では10月又は3月に文部科学省から各大学への振込を行う際に調整することで検討している。
    • 成績判定の結果、前期で進級不可が判明した場合の取扱いはどうなるか。
      • 後期から対象外となる。
    • 在留資格「定住者」の者が、退学した後に帰国した場合、返還のペナルティは生じるか。
      • 個別ケースだが、返還を求められることは原則無いと考える。
  5. 授業料減免規程の作成例について
    • 修学支援新制度の創設に伴い、授業料減免の根拠となる規程を各大学で定めなければならないと想定しているが、文部科学省として作成例を示す予定はあるのか。
      • 御指摘のとおり、各大学で減免の根拠となる規程は制定いただきたい。文部科学省として作成例を示す予定は現時点では無い。
  6. 入学金、前期授業料の徴収猶予・還付について
    • 徴収猶予について、授業料等減免の上限額を超えた分についても猶予を要望しているのか。(第Ⅱ区分、第Ⅲ区分のため減免が上限以下の場合も含む)
      • Q&Aにもあるとおり、あくまでも大学の裁量によるが、減免対象が決定するまでは全ての対象者について一旦全額の猶予措置を要望している。また、各大学の猶予の有無については、高校からの問い合わせも多く、文科省にて各大学に徴収猶予か還付かについて状況を確認し、公開することも検討している。
    • 推薦・AO・一般入試等、入試区分によって徴収猶予・還付を決めてもよいか。
      • 入試区分によって明らかに不利益とならないのであれば区分毎に決めることは可能である。

全ての質疑応答を記録した訳ではないので、他の大学職員ブロガーにも説明会の参加記録を共有してもらえたらと思います。
shinnji28.hatenablog.com


なお、「大学職員の書き散らかしBLOG」では、修学支援新制度についてこれまでも各種記事を公開しているので、参考にされると良いです。
kakichirashi.hatenadiary.jp

配付資料

  • 配付資料は以下のとおり。確認大学等に文科省からメール配信。
    • 資料1 大学等における修学の支援に関する法律に基づく授業料等減免事務処理要領(案)
    • 資料2 学修意欲等の確認の手引き(大学等向け)の概要(案)
    • 資料3 広報・周知について
    • 参考資料1 問合せ窓口について
    • 参考資料2 Q&A(令和元年9月24日版)
    • 参考資料3 新制度リーフレット

配付資料は確認大学等にメールで事前配信されましたが、特に今回のような新制度の場合、各大学で学内的な事務取扱などを議論するので、文部科学省WEBサイトに掲載して広く閲覧できるようにすべきだと思います。
10月から制度が開始した幼児教育無償化のケースですが、最近中央省庁が実施する施策は内閣官房に置かれる会議が主導して素案・スケジュールを提示し、そこから各省庁に下ろすやり方が多いです。そのためなのか、制度の作動を考慮していないと思われるような事態が発生しており現場での混乱が生じています。

www.shinmai.co.jp

www.sangiin.go.jp
西山文代(内閣委員会調査室)【立法と調査】「幼児教育・保育の無償化に向けた法整備―子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案の成立―」2019. 7 No. 414 参議院常任委員会調査室・特別調査室

新たな修学支援新制度では、確認を受けた大学等が何らかの事由で確認を取り消された場合、その時点で給付及び減免対象に大学等が認定した学生の給付及び減免に掛かる経費は大学等自ら負担することが義務付けられています。*1 *2
各大学等でも制度が作動するかどうかを検証し、疑問点がある場合は取扱いを文部科学省に照会して、適切な事務処理を行うことが必要だと思います。

*1:第十六条 前条第一項の規定により確認が取り消された場合又は確認大学等の設置者が当該確認大学等に係る確認を辞退した場合において、その取消し又は辞退の際、当該確認大学等に授業料等減免対象者が在学しているときは、その者に係る授業料等減免については、当該確認を取り消された大学等又は確認を辞退した大学等を確認大学等とみなして、この法律の規定を適用する。ただし、同項第二号若しくは第三号に掲げる事由に該当して同項の規定により確認が取り消された場合又はこれに準ずる場合として政令で定める場合における当該大学等に係る減免費用については、第十条及び第十一条の規定は、適用しない。 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/17/1417025_02_1.pdf

*2:さらっと法律に書いてありますが、私立大学の場合、私立大学等経常費補助金で申請内容に誤りがあった場合、該当する項目に係る金額を返還すれば良いですが、大学等修学支援法では給付及び減免の負担は大学自らが行う必要があるため、確認の取り消し又は辞退は経営上大きなダメージになり得ます。