Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

学生寮、復活の兆し

high190です。
今でこそ全寮制を採用している大学は数えるほどしかありませんが、明治時代などは全寮制の学校が大半であったという話を聞いたことがあります。ちなみに私が卒業した大学の先輩でも寮生活を経験された方がいまして、色々と話を聞かせてもらったところ、学習効果も高かった(学生同士が教えあう風土があった)そうですし、その後の人生においても交友関係を継続していける友人にたくさん恵まれたそうです。そういったことから考えますと、寮生活には教育面での大きな効果が期待できるということになります。

ここ最近、大学において寮の存在が見直されてきている…そんな記事がありましたのでご紹介します。

地方出身の学生を経済的に支えるというイメージが強かった、大学の学生寮の役割が見直されている。留学生増を打ち出す大学では、受け皿にするとともに、日本人学生との国際交流の拠点にすることを目指す。人格形成のため全寮制を敷くなど、「教育」の場として位置づける大学も増えている。


◆留学生と映画や料理

慶応大の下田国際学生寮横浜市)は06年に設立された。留学生約120人と体育会の日本人学生約200人が住む。留学生と日本人の棟は別だが、年に7回程度、大規模な交流会を開いている。
留学生の支援役を担う修士2年、関谷進吾さんは「いろいろな国の人と出会える。英語を使う機会も多い」と寮の魅力を語る。フランスからの留学生エドミー・アムストゥッツさん(23)は「昨夏の交流会は、地域の人たちの盆踊りが素晴らしかった」と話す。最近は日本人学生にクレープの作り方を教えたという。
一方、体育会棟に住む3年の小野加寿也さんは、毎日のように留学生棟のラウンジに出向いている。「一緒に映画を見たり、中国からの留学生と北京五輪について話したり。キャンパスでは接する機会がないので、貴重な場所です」
ただ、小野さんのように日常的に交流している学生はそれほど多くない。関谷さんは「お互いにもっと交流したいという思いはある。今年は月1、2回映画会を開きたい」と言う。
留学生増加への対応策は、どの大学も力を入れている。慶大の留学生は現在、約870人。15年度には全体の5%にあたる1500人にするのが目標という。下田寮も対策の一つとして体育会の合宿所を建て替える際に造られ、地域住民も含めた国際交流の場として期待されている。坂本達哉常任理事は「学生たちの交流の意思を尊重し、サポートしたい」と話す。
慶大はこのほか、民間業者と提携して百数十人規模の寮を造り、入居者の3人に1人は留学生にすることも検討している。湘南藤沢キャンパスでは11年をめどに寮を建設し、日本人学生と留学生、教員らが一定期間、共同生活を送る計画もある。


◆居間共有 助け合い

早稲田大は来年、日本人学生と留学生が一緒に住む900人規模の寮を東京・中野に着工予定だ。5年以内に留学生を8千人に増やす目標を掲げているが、現在の寮は1500人分しかないからだ。
この寮は単なる留学生の受け皿にとどまらない。留学生を含む4人が1組で、寝室は個室だが居間などは4人共同。学生同士が助け合い、引きこもりを防ぐとともに、異文化交流を進めるのが目的だ。入寮は原則的に2年生までとし、自立を促す。
大学側は計画にあたって、スタンフォード大など米国の6大学の寮を見学した。島田陽一学生部長は「今までの寮は部屋を割り当てて住むだけだった。これからは住まいを超えた教育の場にする」と意気込む。
留学生と日本人学生の交流を目的とする寮は、南山大(名古屋市)が先駆けだ。99年から留学生3人と日本人1人が4LDKで共同生活を送るタイプの寮を開いている。面接で選考しなければいけないほど入居希望者が多いという。


◆全寮制で人間性養う

寮生活を学生の人格形成に役立てようとする取り組みもある。
秀明大(千葉県八千代市)は今年開設した学校教師学部を全寮制にした。嘉部好修(かべ・よしのぶ)学部長は「かつての師範学校も全寮制だった。昨今は教員の不祥事が問題になっており、対人関係能力や自分を律する力を身につけさせたい」と話す。後発大学として、力のある学生に育て、教員採用試験で結果を出したいという思いが背景にある。
現在、今春の新入生約70人が2人ずつ同室で暮らす。朝は7時に起床し全員でウオーキング、月〜木曜は夜も1日3時間の勉強が課せられるなど、寮生活はたやすくはない。だが、1年の沢畠由香さんは「意外と楽しい。4年間は長いけど、教員になるという目標があるので耐えられる」と前向きだ。同室の永山渚(なぎさ)さんも「入学してまだ1カ月だけど、半年くらいたったような人間関係ができた。普通の大学ならこうはいかないと思う」と強調する。
新入生に一定期間の寮生活を課す大学もある。医系4学部からなる昭和大(東京)の1年生は全員、山梨県の富士吉田キャンパスで、各学部1人ずつ4人が同室の寮生活を送る。医療に携わるにあたって必要な協調性や思いやりを培うのが目的という。
東京理科大の基礎工学部は、1年次に北海道長万部キャンパスで全寮制の「全人教養教育」をしている。豊田工業大(名古屋市)も1年男子は全寮制。やはり人間性やコミュニケーション能力を養うのがねらいだ。

確かに少子化の時代を迎えて、明らかに限られた対人コミュニケーションしか経ずに大学へ入学してくる学生が今後増えていくことを考えますと、寮制度の復活はある意味では必然的であると言えます。また、学生にしっかり勉強してもらうためにも、大学が施設を準備して「居住するだけではない」教育的場として寮を活用する方法もあるわけです。

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