Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

清成忠男氏による学校法人への指摘

high190です。
私は今年度の4月に大学へ配属されるまで、学校法人の法人事務局で仕事をしていました。最初は大学勤務として採用されたのですが、色々な事情があったみたいで2年間ほど法人事務局での勤務に。今になってから考えると、就職してすぐに学校法人の中核的な部署で仕事をさせてもらえたのは大きかったな〜、と思います。
法人事務局だと現場ではなく、バックオフィス的な仕事が多かった分、学校法人の内情が分かりやすかったのです。その分だけ、1月22日に掲載された朝日新聞の記事が気になりました。

(上記記事より一部抜粋、赤字強調部分はhigh190による)

◆家業意識、傷広げるもとに
私学事業団の学校法人活性化・再生研究会の座長を務める清成忠男・法政大学事顧問に、私学経営の現状を聞いた。
――赤字の学校法人の現状をどう見ますか
「イエローゾーン」に入る学校法人の話を聞くと、多くの学校の経営者には危機意識はある。しかし、このままでは限界が来ると分かっていても、どう対応すべきか分かっていない。
やるべきことをやっていない法人も多い。短期的な資金計画すらないケースもある。ブランド力のある東京の大学のマネをするだけでは生き残れない。地方で活躍する人材の育成に力を入れるなど、特色を出すべきだ。
――なぜこれほど赤字の法人が増えたのですか
最近できた大学の多くが短大からの移行組だ。志願者が減っても、短大のままでいれば10年以上は耐えられるのに、無理に4年制に移行した。だから移行当初から定員割れを起こし、傷口を広げたケースが多い。
再建が難しくなって学生募集の停止などを勧めても、創業家の理事長が「続けたい」と応じないこともある。家業を「自分の代でつぶしたくない」という意識が企業以上に強い点も、傷を広げる原因となっている。
――今後どんな対策が必要と考えますか
定員割れが続いて私学が破綻したときには、周辺の同ランクの私学も同じように定員割れしていることが多い。破綻した大学の学生の受け皿を国などが決める際には、こうした同ランクの私学に割り振るといいのではないか。1校の破綻を機に、残った別の私学の経営を立て直すことも考えるべきだ。

赤字強調した部分が私には一番気になるところでした。私立学校は篤志家が寄附で設立したものが多く、経営を創立者の子孫が担うというケースは恐らく日本中の私立学校に見られる特色のひとつと言えるでしょう。
ただ、清成氏の指摘のとおり、企業以上に伝統・歴史を重んじるのが学校です。それは幾人もの人材を世に送り出してきたことの自負であるとも言えるでしょう。問題はそういった組織風土の学校を経営的に好転させることがなかなか難しいことです。学校法人の最終的な意思決定機関は理事会ですが、その中でも理事長の権限は大きく、私立学校法第37条には

理事長は、学校法人を代表し、その業務を総理する。

とあります。清成氏は「傷を広げる」と表現していますが、経営危機を察知していてもなかなか身動きが取れないという場合もあるのでしょう。今回、日本私立学校振興・共済事業団は経営状況が危うい学校法人に対して再建支援を実施するそうですが、どこまでうまく行くのでしょうか。

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