Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

地域に根ざした大学のサテライトキャンパス

high190です。
最近、ある教員から面白いことを聞きました。その内容は「今後の大学は自らのキャンパスに縛られず、外に飛び出して講義を行うべきである」というものでした。大学キャンパスは大学の持つ資産であり、その中で教育を行うのが最も忠実ですが、いかんせん大学の中には「大学の論理」が働いてしまうのも事実だと思います。(話を聞かせてくれた教員は実務経験者なのですが、大学の閉塞的な環境・組織風土については疑問を抱いている部分もあると言っていました)大学という特有の環境から社会に進んで出て行く、そんな取り組みをしている大学がありました。

宇治市槇島町の京都文教大・短大は10日、宇治橋通商店街振興組合(中西敏理事長)と連携し、宇治橋通り商店街にサテライトキャンパスを開設する。地域住民と同大学生、教職員の交流拠点を目的に開設するもので、初の取り組みという。
同大の文化人類学科の学生がフィールドワークの一環で商店街ヘ調査に訪れたのをきっかけに、約5年前から交流がスタート。商店街のイベントに大学としても積極的に協力、商店街に拠点を設けることでより密接な交流を目指す。
サテライトキャンパスは商店街のほぼ中央に位置し、空き店舗を改装。広さは約95平方メートルで、フリースペース2部屋と調理場、バリアフリー対応のトイレを設置。地域と学生によるプロジェクト活動の拠点とするほか、映画上映会やミニコンサートなど地域交流イベントを開催し、実習やゼミ活動の場としても活用。地域にも無料で開放する。
同大の担当者は「学外でのさまざまな活動で、時には怒られもしながら学生が成長してくれることを願う」と話した。
オープン初日の10日には午前11時から開所式。関係者のあいさつに続き、商店街と大学の地域連携の歩みをスライド上映などで振り返り、テープカットを行う。午後1時からはワークショップ「地域の夢の地図を作ろう」も開かれる。

地域社会との連携は大学にとって多くの利点があります。また、地域社会にとっても良い大学が身近にあるということはとても良いことだと思います。大学での勉強は、座学からフィールドワーク重視に変わってきています。在学中に社会経験を多く積ませ、就職した際スムーズに社会へ溶け込んでいける学生を企業は求めているのではないでしょうか。
学生に求める資質としてコミュニケーション能力を挙げる企業が増えているそうですが、そうしたことの裏づけなのではないでしょうか。

[Reference Information]
九州産業大 九州造形短大 商店街にサテライト校 地元活性化へ住民と交流(出典:西日本新聞

学校が弁護士に直接相談 港区、理不尽要求に対応

「モンスター・ペアレンツ」や「ヘリコプター・ペアレンツ」といった言葉が一般的になりつつある今、東京都港区では「学校もとうとうここまで来たか!」という対策を打ち出しました。

学校に対する親からの理不尽な要求やクレームで、教員が法律的なトラブルに巻き込まれるのを防ぐため、東京都港区は11日、区が契約した弁護士に区立小中学校、幼稚園が直接相談できる制度を始めたと発表した。こうした制度は全国でも珍しいという。
港区によると、学校外での子どものけがにも親が学校側に責任を求めたり、子どもの親権争いをする両親の間に教員が挟まれたりするなど、学校が法律的なトラブルに巻き込まれる可能性のあるケースが年々増えているという。
このため港区は本年度250万円の予算で、5人の弁護士と契約。トラブルなどがあった場合、校長らが弁護士事務所に出向いて相談をするほか、緊急時には学校での面談や電話での相談も行うという。
港区は「相談制度によって、教員が授業や生活指導といった本来業務に専念しやすくなると思う」としている。

「物言う株主」ならぬ「物言う保護者」が出現してきたことで、学校でも法律相談する必要が生じてきています。保護者対応に追われることで、本来の教育活動に支障が出るのであればこうした措置も止む無しといったところでしょうか。今後も同じような対応を取る自治体が増えそうです。

【2007/06/18追記】