Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

立命館大学で開催された学生FDサミット2013・夏に参加しました

high190です。
京都の立命館大学で8月24日(土)、25日(日)の2日間で行われた「学生FDサミット2013夏」というイベントに参加してきました。今回で7回目の開催とのことです。参加のまとめを書いたので、以下にまとめておきました。
私は今回初めて参加したんですが、個人的に感じたことは、学生FD活動を支えるためには「大学教育の大枠」が説明できる職員が支援する体制を整備することで、学生たちが主体的に活動できるようになるのではないかと感じました。そういった意味で参考になったのは、京都産業大学の学生FDスタッフ燦*1ですね。京都産業大学には知り合いの職員さんが何人かいらっしゃるのですが、学生たちの支援方策など参考にしたい点が多々あります。

第1日目(8月24日)

  • 開会挨拶:立命館大学木野茂教授
    • 学生FDサミットも2011年は震災で中止となったが、今年で7回目を迎えた。立命館で学生FDをスタートしたのは2007年である。学生が他大学の学生と交流することで、自学の良さを再認識できる機会なので、是非活発な議論をしてもらいたい。
  • 本企画説明・挨拶(立命館大学学生FDスタッフ)
  • メイン企画「学生FDの歴史と今を考える」(明学館93号教室)
    • 基本の確認
      • 第1問:FDとは何の略=Faculty Development
      • 第2問:学生FDとは何なのか?学生が主体的に関与して授業改善などを考えるFD
      • 第3問:今日の参加校は何校か?=50校が参加、活動の多様化:授業発案、授業工夫、シラバス作成、職員との交流、学生FDスタッフ以外の学生との交流、自校教育や大学生活を盛り上げる活動、その他にもたくさん
      • 第4問:「学生FDを始める」から「質を求める」へ。大学間連携が広がっているが、どれほど広がっているでしょうか?今までの取り組みは、各プログラムが独立していた。「しゃべり場」が中心的な活動だったが、規模の違う大学と議論してもあまり建設的ではないとの意見があったり、サミットとしての統一感がないのではとの指摘があった。岡山での学生FDサミット2013・春が転換点になった。
    • 私たちの考えるサミットの新しい在り方
      • 「それぞれの団体が次に行動するための必要な材料を手に入れる」ことに特化する。これからの進む方向性を定める。今までの活動を見直し、確認する。ともに歩むことのできる仲間を見つける。
    • 本サミットプログラムのポイント
      • 知る:しゃべり場、ポスターセッション(46大学)、懇親会
      • 深める:分科会1&2
      • 行動する:サミット後に学生FDを深化させる。
    • FDタイムカプセル開封
      • 学生FDサミット岡山の際に参加大学がまとめた「タイムカプセル」を開封し、その時に設定した目標が達成できているか否かを各大学間で共有した。
    • 新参加大学紹介
    • 挨拶・諸連絡
    • ランチミーティング「しゃべり場」(敬学館各教室)
      • 学生・教員・職員でのフリーディスカッション。過去に複数回学生FDサミットに参加したことがある学生がファシリテーターとして、議論をリードする。
    • しゃべり場
      • 授業評価アンケートについて
        • アンケートが活かしきれていない。アンケート結果を活用するためにも学生FDを活用すべき。授業を受けていても、教員によって差が大きい。
        • 授業評価アンケートの用紙は、表面に質問、裏面に回答を記入する形式で、結果はあまり教員の役立っていない。WEB形式にしても、大学のサイトにアクセスして答えるのは面倒。好きな先生ならちゃんと答えてあげたいけど、そうでない先生だと早く書いて帰りたいと思ってしまう。実際にスルーしてしまっている人も多くいる。
        • 少人数だと学生と教員のコミュニケーションが密接だが、大規模大学だと学生間で意識の差があり、教員とコミュニケーションが取れて初めて学生もアンケートに回答すると思う。
      • 学生FD活動を行う中の悩み
        • 学内でイベントを企画しても、学生が参加してくれない。教員は熱心に参加してくれるのだが。イベントの企画は学生FDスタッフで行っており、自由に発言を求める形式で行った。
      • 授業改善の具体的な取り組み
        • 大学では当然、レポート作成の機会があるが、具体的な書き方などは教えてもらえることがなく、IT機器の利用サポートをする中で必要性を感じたので、学生主導でレポート作成の支援を始めた。学内のFD懇親会でも、教員から「レポートに対する考え方に教員と学生に差があることに気づいた」と声をかけてもらった。
        • 教員の立場からは授業改善について意見しにくい部分もあるが、大多数の教員は「本当にこの意図で回答しているのか?」「面倒だから同じ回答にしているのでは?」と感じていると思う。ただ、授業の質を保つことや授業の到達度を考えると、一概に学生の要望を受けて全て改善することは難しい。改善できない仕組みに目を向けて、教員の意見を聞いてみるといいと思う。
        • シャトルカード(学生と教員との間の双方向性の授業の確立を目的に開発されたカード)という取り組みを行っているが、双方向の授業は80人が限界だと思う。
        • ある授業ではよくまとまっている学生のノートを次の授業で紹介するような取り組みを行っている教員もいる。
        • 教科書の値段は高すぎないか?例えば、アメリカでは教科書の古本屋があり、多くの古書が流通する市場がある。ただ、そういう指摘は教職員からは提案しにくいので、学生から提案してみてはどうか?教科書を指定しない授業で、学生から「何を基準に勉強すれば良いのか」という指摘があった。ただ、教員はそのように思っていない部分もあり、その学問分野を学ぶ上で必要だろうと考えて教科書を指定している。
    • ポスターセッション
      • 参加希望大学が自らの取り組みをポスターにまとめ、各教室で発表を行う。45大学が企画に参加。参加者は自由に会場内を移動して、各大学の取り組みを聞くことができる。デザイン、情報の見せ方などに対して投票を行い、最終日に表彰を行う。
      • 印象に残った大学
        • 関西大学Learning Assistant
          • 一般教養教育科目、学部専門科目でラーニング・アシスタント(LA)*2の学生が学びをサポート。履修者20名の講義に3〜4人のLAがついてサポートする。
        • 日本大学文理学部学生FDワーキンググループ
          • マイケル・サンデルの白熱教室を参考に、学生発案型講義「これから、日本の未来の話をしよう。」を企画。プロジェクト教育科目として開設した。
        • 京都文教大学 学生自治会 中央執行委員会
          • 「京都文教入門」という初年次教育科目(必修・2単位)を学生FDスタッフが企画・運営。教職学協働のFSDプロジェクトとも協力しながら、学生が主体的に企画立案・運営している。

2日目(8月25日)

  • 分科会1(敬学館250教室)
    • 大学教育の本丸へ突撃☆真夏の学生FD作戦会議〜大学を変える学生FDの可能性と課題〜(大阪大学パンキョー革命推進チーム)
      • パンキョー(一般教養科目)革命提議書の作成、学生の声を取りまとめて一般教養科目の機構長に提出。「ひとことひろば」の運営、週1回学生と教職員の交流の場を作っている。しかし、学生FDの活動は上記のものだけでいいのか?(FD=Faculty Development)イベントの実施、システムの改善は真に「授業改善」に役立っているのか?学生が企画して満足していることでは、学生FDにはならない。
    • 事例紹介(横浜国立大学
      • 学生FDグループの発足、15名でスタート、第1期は教員推薦と公募で募集した。公募での希望者には小論文を課して学生FDで何をしたいのかを発表してもらった。学生FDグループの位置づけとしての特色は、学生・教職員連携型であること。(学生有志の活動ではなく、正式な大学構成員としての活動)活動が維持されやすい。
      • これまでの活動「学バス」
        • 学生目線のシラバス=学バス、シラバスは学内Webサイトに掲載されており、そもそも学生生活に慣れていない新入生からすると、シラバスを読み込むには厳しい面もある。そこで、上級生のおすすめ授業や学生目線から見た授業の強みなどを紹介している。履修登録の補助資料として活用してもらう。(楽に単位を取るためではない)授業終了後にはおすすめ授業のアンケートを取る、オープンキャンパスで学生講義(60分)を実施している。これは横浜国立大学や大学での学びを紹介するものである。
    • 事例紹介(富山大学
      • UDトークの紹介(UD=University Development)学生、教員、職員に一般市民を加えたUDという考え方を取り入れている。「市民参画型の学生FD」
      • そもそも、北陸地方は学生FDの活動があまり盛んではなかったが、岡山大学で学生FDに長年取り組んできた橋本勝教授が富山大学に赴任してから活動が盛んになってきた。その上で一般市民を巻き込んだUTトークというイベントを実施してきた。
      • 第1回の問題点
        • テーマが分かりにくかった、思ったよりも人数が集まらなかった。その上で第2回からはやり方を変えた。橋本教授の授業履修者にイベント参加を求めるなど。現在のUD mates(学生FDグループ)は十数人で数は少ない。問題点としては、学生FDの目標・方向性が統一されていないために、議論がまとまらないことが多い。
    • グループワーク
      • あなたは学生FDで何をしたいか一言で書いて下さい。そして、なぜそれを目指すのか書いて下さい。
  • 分科会2(敬学館210教室)
    • それでも僕は考えたい 学生FDの「思い」(京都産業大学AC燦(SAN))
      • 分科会の固定概念にとらわれない自由な発想で考えている。一般的な分科会は大学を良くする取り組み、学生FDの大学間連携、具体的な取り組みだが、「思い」の在り方は多様で、教員・職員・学生の立場によって違う。自分の内面を知る+他の参加者のメッセージを感じ取る。
      • 京都産業大学1回生による発表
        • 元々はピアサポーターをしていて、燦の活動を知った。教員・職員と一緒に考える機会が得られるのが魅力的。学生FDが何かを分からずに参加したが、先輩たちが真剣に話している内容のことが分からなかった。合宿に参加して先輩の話を聞くことで、今後の活動に繋げていきたいと感じている。
      • 立命館大学3回生による発表
        • 学生FDスタッフに入ったきっかけは「授業がつまらない」と感じて、自分の周りから良くしていければという気持ちで始めた。学生FDサミットは運営が大変で、立命館大学の場合、大学公認組織だが常設の部屋が与えられず、大学に対する若干の不満を感じるのが正直な気持ちである。
      • 追手門学院大学京都産業大学の4回生による発表
        • FD活動は楽しいことがたくさんあったが、正直つらいこともあり、やめたいと思うこともあった。活動を続けていても給料が貰える訳ではないし、単位が取れる訳でもないので、何のために活動しているのかが分からないという悩みを抱えていたこともあった。最初はメンバーが少なかったが徐々に参加者が増え、やめたいと思う気持ちを受け止めて励ましてくれる教職員の助けがあった。モチベーションを維持できたのは学生FDへの思いがあったから。後輩には、先輩がやってきた前例に縛られずに自分たちが楽しいと思うことを追求してほしい。半年後のサミットに参加していない学生もいると思うが、4年間はすごく短いので、学生FDに限らず、学生時代に打ち込めるものを見つけて欲しい。
  • エンディング
    • 2日間の振り返り(写真スライド)
    • 各分科会担当者からの報告(分科会1、2)
    • ポスターセッション企画の表彰
    • 閉会挨拶
      • 立命館大学教育開発支援課・辰野有 氏
        • 異なる大学の取り組みを知ることで、得られることが多いのではないか。今後も学生FD活動の支援を行っていきたい。
      • 学生FDスタッフ代表
        • 初日の企画説明で行った通り、今回のイベントを通して次の活動に繋げていってほしい。
          • 知る(1日目)
          • 深める(2日目)
          • 実践する(今後の活動)
      • 立命館大学教育開発推進機構教授・木野茂
        • 参加者数が増えたことによって、今年からはやり方を変えたが、うまく行っているのではないか。次回は東洋大学での実施となるので、どうかよろしくお願いしたい。

*1:学生FDスタッフ「燦(SAN)」の取り組み http://www.kyoto-su.ac.jp/outline/approach/excellence/kyouiku/fdstaff.html

*2:授業におけるラーニング・アシスタント活用に関するガイドライン http://www.kansai-u.ac.jp/ctl/guideline_la.pdf