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Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

東京女学館大学が2013年4月から学生募集を停止、2016年3月をもって廃校との報道

Diary

high190です。
東京都町田市にある東京女学館大学が来春から学生募集を停止し、2016年3月をもって廃校するという報道がありました。


東京女学館大(東京都町田市)が来春の新入生の募集を停止し、在校生が卒業する2016年3月で閉校することが29日、分かった。創設が明治期に遡る名門中学・高校のブランド力を背景にして4年制大学の経営に乗り出したが、大学全入時代を迎える中で学生募集がうまく行かず、累積赤字が約25億円に膨らんでいた。私立大の厳しい経営環境が改めて浮き彫りになった。
4年制大学が学生の募集を停止するのは、戦後9校目とみられる。09年には、三重中京大三重県松阪市)や聖トマス大(兵庫県尼崎市)など5校が相次いで発表している。
既に文部科学省には募集停止を報告している。5月1日以降、約300人の在校生らを対象に説明会を開く。併設する小中高校は従来通り運営を続ける。
明治期に伊藤博文渋沢栄一が設立に携わった「女子教育奨励会」が起源。小中高を運営する学校法人の東京女学館(東京・渋谷)が1956年に短大を開校し、02年に4年制大に改組。国際教養学部のみの女子単科大学として開校した。
高校は東京大など難関大に合格者を出すことでも知られる。ブランドを頼みに学生募集を目指したが、ほかの首都圏の女子大と比べて高い学費などがネックになり、開校以来11年連続で定員割れとなった。最近は定員を3〜4割程度下回る状況が続き、今春は定員を115人から95人に減らしたが、入学者は52人にとどまった。

今までは比較的、地方かつ中小規模の私立大学が学生募集を停止していたように思いますが、今回は東京都内の大学であるため大学淘汰がより現実味を持って迫ってきている証だと思います。この報道については大学関係者のみならず多くの人が関心を持っており、既に、関連するブログ記事がいくつか公開されています。*1 *2
まずここで、学生募集を停止する場合の手続きを確認しておきましょう。記事中にもありますが、学生募集を停止する場合には、文部科学大臣宛に報告を行う必要があります。所定様式が決められていて、「大学の設置等に係る提出書類の作成の手引き(平成24年度版)」の189ページに掲載されています。

少なくとも、学生募集の停止を行うにあたっては、理事会及び教授会での意思決定をしておくことが必要になります。学生募集停止の報告を行う時点では決議録の提出を求められることはありませんが、その後に廃止認可等を申請する際に提出することになります。注の欄に記述がありますが、学生募集停止の報告を行うにあたっては、「在校生への教育条件の確保や教職員の身分保障、施設設備の取扱い」などを詳細に記述する必要があります。大学は非営利組織であるため、経営から撤退するにしても、在学生、保証人、卒業生への説明に加え、教職員の処遇をどのように行うかなど、営利組織に比べると格段に対応が難しいと思います。*3
また、定員割れが続くと、日本私立学校振興・共済事業団から大学に交付される「私立大学等経常費補助金」も減額されます。このため小規模大学であるほど定員割れは経営に深刻な影響を及ぼします。補助金の配分基準を示した資料の中に、「学部等ごとの収容定員に対する在籍学生数の割合による増減率表」という項目があるのですが、東京女学館大学の場合、公表されている収容定員充足率は60.4%ですので、減額率はマイナス34%と厳しい状況であったことは否めません。*4

まだ大学側から学生募集停止についての正式なリリースが出ていないため詳しい情報が把握できていませんが、在学生・卒業生にとっては母校がなくなるということはとても寂しいことです。大学が非営利組織であることを鑑みて安定的かつ継続的な経営をしていかなければなりません。先に経済同友会が私立大学のガバナンス強化に関する提言を発表していますが*5、その中で「大学は大学経営に必要な資質・能力を有する経営人材の育成に取り組むべき」との提言が盛り込まれています。少子高齢化で厳しい大学経営を強いられる中、しっかりと大学が継続していけるために力を尽くせる人材こそ今の大学に求められている人材であると思います。

*1:常見陽平氏「東京女学館大学閉校は「権力の暴走」であり「詐欺」である。」 http://agora-web.jp/archives/1452636.html

*2:常見陽平氏「東京女学館大学閉校が物語るもの 学校経営のプロ登場待望論」 http://agora-web.jp/archives/1452552.html

*3:大学経営の撤退時における実務上のポイントは何か http://d.hatena.ne.jp/high190/20100216

*4:東京女学館大学「その他教育研究上の情報」http://www.tjk.ac.jp/guide/cat2/page5.html

*5:私立大学におけるガバナンス改革-高等教育の質の向上を目指して- http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2011/120326a.html