Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

東北大学PDプログラム「特色ある大学を創るために「理念駆動型」の組織マネジメントを」に参加しました

high190です。
10月27日(土)に東北大学で開催された標記セミナーに参加しました。参加記録のメモを公開します。
以下の記録はhigh190が聴講した際に記録したメモです。主観が入っていること、内容に誤りが含まれる可能性があることを予めご了承ください。

特色ある大学を創るために「理念駆動型」の組織マネジメントを(出展:東北大学高度教養教育・学生支援機構)

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  • 開会挨拶 杉本和弘副センター長
    • 柳澤先生は前回のLADでアドバイザーを務めていた。組織を動かすにあたって推進力を内蔵した理念駆動型のマネジメントを学んでいってもらいたい。
  • 現状認識
    • 愛媛大学を辞めて4年になるが、愛媛大学の教職員には理念を大事にする文化があったように思う。現在は岡山理科大学で学長を務めているが、今日のセミナーでお話するのは愛媛大学にて取り組んだ事例である。
    • 吉武博通先生がカレッジマネジメントで連載されている"大学を強くする「大学経営改革」"は有益な示唆が多く含まれているが、Vol.212 Sep.-Oct.2018の「政策を見据えつつ現場主導の改革を−大学は高等教育政策にどう向き合うか」にて分かりやすく論点が整理されているので、抜粋してご紹介する。
      • 「瑞々しい感性や活力を失いつつある。」
      • 「政策を鵜呑みにするのではなく」
      • 「自校の課題と結びつける」
      • 「政策をどのように運営に活かせば大学をより良い方向に向かわせることができるか」
    • 吉武先生には岡山理科大学の外部評価委員をお願いしている。中長期計画などもガチガチにしてしまうとダメ。ストーリー性のある計画が欲しいとのご意見を踏まえて、岡山理科大では計画を策定するようにしている。
    • 「理念駆動型の組織マネジメント」とは
      • 「理念駆動型」となるためには、国の政策の字面を鵜呑みにするのではなく、その背景にある理念を批判的に取捨選択して自らの理念を打ち立て、それに基づいて実行することが肝心である。
      • 政策が揺らぐ現状では、大勢順応型であるよりは「異端」とみなされようとも軸がブレないことの方が大事ではなかろうか。
  • 自己紹介
    • 愛媛大学で大学教員として30年近く勤務。*1
    • これまででのキャリア
      • 平成11〜13年度(大学教育総合センター員)課題:教養部廃止後の共通教育の当て直し
      • 平成12〜16年度(評議員、理学部長)課題:国立大学法人化対応、理学部の教育改革
      • 平成16〜17年度(学長特別補佐、企画・評価担当理事)課題:大学憲章草案作成、法人化後の制度設計、学長が外部評価委員から「愛媛大学の特色を一言で」と言われて答えられず、大学憲章の制定に動いた。こうした経験から大学の理念・制度設計に関係する機会があった。
      • 平成18〜20年度(教育担当理事)
      • 平成21〜26年度(学長)
      • 平成27年度〜岡山理科大学学長
  1. 愛媛大学の概要
    • 7学部6研究科からなる地方国立大学。
      • 7学部と4機構(教育・学生支援機構、先端研究・学術推進機構、社会連携推進機構、国際連携推進機構)縦割りになりがちな学部に対して横軸としての機構。
      • 学長在任中、学内の委員会をすべて廃止し、教育学生支援会議に統合した。審議機関はこれだけ。委員として各学部からは副学部長クラスが出てくるため、各々の責任に応じた対応を求め、「学部に持ち帰って」ということをできないようにした。
      • 教育企画室の設置にあたって、通常事務組織は横並びにするのが普通だが、教育企画室に関しては機構長直属にした。
      • 学部横断的な研究センターの設置。センター数は多いので、研究者は兼任で対応。
    • 愛媛大学の3つの教育・研究拠点
      • 文科省の政策として拠点への資金投下を行っている。愛媛大学でも教職員能力開発拠点が教育関係共同利用拠点に認定された。全国の学長アンケートで上位に入ったが、評価が高いのは愛媛大学教育企画室メンバーは全国の中小規模大学で経験を積んだ者が多いことも影響していると想定。
      • 環境や生命などの得意分野において世界レベルの研究を発信するとともに、他大学から注目される教育、FD/SDを実施している。
  2. 教育改革と教職員能力開発
    • FDの定義とは?(学士課程答申の定義)
      • 授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取り組み。
      • 私立大学では私立大学党改革総合支援事業でFDへの参加率を求められる。しかし、愛媛大学ではFDポリシーを定義し、授業の改善(ミクロ・レベル)、カリキュラムの改善(ミドル・レベル)、組織の整備・改革(マクロ・レベル)の3種に分けて実施している。これは既にSPODで四国地域には定着した概念である。
      • FDポリシーをベースに、教育改革(教育コーディネーター制度)、能力開発(教育企画室)、両者の統合的実践とネットワーク化(ミドル・レベルのFD、SPOD、教育関係共同利用拠点、ミクロ・レベルのFD)
      • FDポリシーの拡大:FDからPD(Professional Development)へ
      • 能力開発(PD)に重点を置いた愛媛大学独自のテニュア・トラック制度の導入。
    • 上記施策の実行で、高等教育開発者に対しての「活躍の場」が与えられた。
      • 現在の教育企画室の体制
      • 小林直人室長・教授、中井俊樹副室長・教授、村田晋也講師、仲道雅輝講師、竹中喜一特任助教、上畠洋祐特任助教
      • 阿部光伸講師(学生支援センター兼任)、高橋平徳講師(教職課程センター兼任)、丸山智子講師(学生支援センター兼任)

(過去の所属教員)佐藤浩章(現・大阪大学全学教育推進機構教育学習支援部准教授)、秦敬治(現・岡山理科大学副学長)、山田剛史(現・京都大学高等教育研究開発推進センター准教授)

      • 特に佐藤氏、秦氏は愛媛大の経験があって全国的な活動ができるようになった面もあると思う。
    • 段階的・継続的なFD活動開発
      • SD活動でも職員が講師をやっているのはメリットがある。自分たちの一歩前を行く人が講師であること、自前ならば講師代がかからないこと。
      • 教育企画室がネットワークリーダーとしての機能を持つようになった。
    • 教育コーディネーター制度
      • 各学部・学科の教育責任者。教育重点型教員。各大学での教務委員に相当するが、標準任期は4年に設定している。通常の教務委員では忙しい若手教員が短期(1〜2年)で交代するため、教育改善につながらない。専門性を高めるために「教育コーディネーター研修会」を年4〜5回実施。外部講師招聘。ファシリテーター教育企画室員が担う。
    • 教育改革と能力開発の統合的な体制づくり
      • 全学的視点で教育改革を議論し、実践できる体制を確立する
      • 全学レベル及び学部レベルで教員の役割分担を明確にする
      • 学部・学科における教育責任者の存在を明確にする。
      • 全学機能を強化するための専門的人材を配置する。
    • SPODの開発、SPODフォーラム*2
    • 愛媛大学テニュア教員育成制度
      • 3年間で100時間の研修プログラムを受講。教育能力開発プログラム、研究能力開発プログラム、マネジメント能力開発プログラム(会議マネジメントが入っていることが興味深い)、総合プログラムから構成。
    • 日本ではテニュア・トラックを文部科学省の研究3局(科学技術・学術制作局、研究振興局、研究開発局)が主管しているため、高等教育局が手を出しにくいのではないか。現在の助教制度は5年程度の任期を付されていることが通例だが「非常にけしからん」制度。若手研究者に対してのサポートが全くない。テニュア・トラックはもっと普及してほしい制度。
  1. DPと学生コンピテンシー
    • DP=学位授与方針、卒業時に達成していることが求められる到達目標。
      • 全学DPを作ろうとすると、学位の専門分野との相当関係において、学部・学科には意味があるが、総花的な内容にしかならないので全学DPにはあまり意味がない。(認証評価用には作る必要があり、愛媛大学でも整備は行った)
      • 現在、アセスメントポリシーの議論がなされているが、4つのポリシーで整合性が取れていなければならないが、DPは実現可能なものでなければならない。
      • よって、愛媛大学では全学DPではなく「愛大学生コンピテンシー」(平成24年7月制定)を制定し、学生として目指すべき方向目標(目指すべき方向)を示した。これは大学側が学生が人間としてトータルに成長することを支援する決意表明をしたもの。
    • 準正課教育(co-curricula)
  2. 地域人材の育成
  • 愛媛大学における地域人材の育成
    • 地域の発展を牽引する人材の養成、地域社会の自律的発展に貢献
      • 地方の大学は地方活性化を企図して設立された事例があるという認識(当時の学長)
      • 憲章に地域人材育成を組み込んだところ、各学部・学科がコース制で特別教育コースと研究センターの設置を進めた(大学執行部からの指示ではない)、こうした取り組みを基盤として文理融合型の新学部「社会共創学部」を設置(平成28年4月)
    • トランスディシプリナリー・アプローチ
      • 研究者が多様なステークホルダーと共に現状分析と問題の原因探索を行い、それを解決するための課題を設定し、その課題解決のための研究を企画し(Co-design)、協働で課題解決のための取組みを実施し(Co-production)、実施の成果を社会に還元して(Co-delivery)、社会の課題を解決しようする手法。
      • 学部ができた際に学部長や学科長が「社会共創学概論」を発行した。


理念を駆動させる仕組み作りなど非常に興味深いお話でした。日本の大学の場合、理念を立てるところまではできる、しかし駆動させる仕組み作りまで行うのが苦手な印象を持っていましたが、愛媛大学が高等教育機関として理念を機能させる制度を実装していった過程が可視化されていると感じました。特に、その駆動を担うのが教育企画室であり、学内の総合的教育支援組織として各部局を支援している体制は非常に興味深かったです。
別の機会に書きたいと思いますが、9月末にカナダ・オンタリオ州のクィーンズ大学に訪問調査をしてきました。その際、訪問先だったのが"Centre for Teaching and Learning(CTL)"という組織です。いわゆるScholarship of Teaching and Learning(SoTL)*3を担う組織です。

Home | Centre for Teaching and Learning

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Queen'sのCTLではPh.D保有で各々専門性を持ったEducational Developer*4が学内の総合的教育支援を担っていました。これと同じ機能を愛媛大学では教育企画室が担っています。愛媛大学では機構長(教育担当理事)の下に教育企画室が置かれていますが、Queen's UniversityではVice-Provost(Teaching and Learning)の下にCTLが置かれています。こうした役割の共通性があること、理念駆動型のマネジメントの態様は各国制度の違いを超越している可能性があること、理念駆動の仕組みが大学の教育改革に繋がるのであり、その中でEducational Developerが所属する機関が理念を現実化させるための駆動役を担う、というモデルがあることなど、柳澤先生のご講演から海外大学調査の気づきを深めるいい機会になったと思います。
日本においても、理念駆動型のマネジメントを推進する上でのカギは日本版SoTLの開発とともに、冒頭で柳澤先生がおっしゃていたように「国の政策の字面を鵜呑みにするのではなく、その背景にある理念を批判的に取捨選択して自らの理念を打ち立て、それに基づいて実行することが肝心」なのだと思います。そのためにも政策立案能力と教職協働を推進できる専門性を持った職員の存在が今後、より重要であることは間違いありません。

*1:https://www.univcoop.or.jp/about/interview/vol26.html

*2:愛媛大学のSPODについては2018年度の大学行政管理学会での報告を是非ご参照ください「愛媛大学のSD事業はなぜ継承できているのか?」http://high190.hatenablog.com/archive/2018/09/06

*3:SoTL関連論文「ポスト・ボイヤーのスカラーシップ論」 http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN0006957X-00000079-0001

*4:https://www.queensu.ca/ctl/about-us

平成30年度第22回大学行政管理学会定期総会・研究集会に参加しました

high190です。
桜美林大学で開催された研究集会に参加したので記録メモを公開します。今年のテーマは「未来予想図を描こう」です。なお、2日間のプログラムの流れについてTogetterでまとめられていますので併せてご確認ください。私の記録メモは2日目の分科会からの記述となります。

2018年度第22回定期総会

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togetter.com

分科会1 テーマ:「大学職員とJUAMの国際化~これまでの20年、そしてこれからの20年~」

「国際化の沿革と学会創設から10年ぐらいまでを振り返る〜アメリカの大学行政管理職員(アドミニストレーター)を目指して〜」澤谷敏行氏(元・関西学院大学国際連携機構事務部長、中国蘇州大学外国語学院訪問教員)

  • JAFSAでの取り組み
    • 中国留学から戻った段階でJAFSA*1に参画した。そこからJUAMが発足したため入会。JUAM第1回大会でも中国の大学行政管理について発表。学会の先輩にはJAFSAで活躍した人が多く、学会自体が国際化と切り離せない状況だった。
    • 現在でもJAFSAは大学の国際交流団体の窓口を務めている。JAFSAとJUAMは競合関係ではなく役割分担する存在。米国での1ヶ月間の研修で国際交流を学んだ。
  • 米国の国際交流の基本姿勢
    • 楽観主義
    • 柔軟性(規定に縛られない柔軟性)
    • 地方分権主義(州単位)
  • 日米の比較
    • 日本の職員と比較すると職員の裁量が多く、かつ専門性が高い。ディレクターはPh.D保持者。
  • 国際交流組織の運営方式。
    • 日本は出島方式で国際交流部門が担当。海外交流にはモジュール型組織(アメリカ型)が適合的だが、日本型組織との摩擦がある。若いうちからスペシャリティを求められる部局で育成された人材を、その後の異動等でどのようにして管理職まで育てるのかという問題がある。
    • 田英夫教授は関西学院大学経営戦略研究科の恩師。
  • 高等教育のビジネス化、学会国際委員会の方針
    • 世界の大学の変化。MBAは基本的にどの国も英語で開講されており、他国での分校設置等も目立つ。JUAMとしては2005年にAUA*2と協定を締結。韓国の大学団体とも共同体制を打ち出した。
    • 学会の当初目標を見失わないための組織(海外大学を見て日本の大学を見つめ直す)
  • 国際委員会の目的
    • NAFSA*3の職員を見ると官僚主導型の高等教育は終わりを告げている。

JUAM創設時からの経緯等も含めた国際交流に関わるお話でした。澤谷さんは現在、中国の蘇州大学にて日本語を教えているそうで、長く国際畑で培ってきた力を教育に投ずる姿勢に職員として尊敬の念を覚えます。個人的にJUAMとJAFSAの関係について詳しく聞きたかったので、興味深くお話を伺いました。
澤谷さんはその他に大学職員に関する書籍も出されているので、ここで紹介します。

続 大学職員のための人材育成のヒント: 失敗事例から学ぶ若手・中堅職員の視点28

続 大学職員のための人材育成のヒント: 失敗事例から学ぶ若手・中堅職員の視点28

大学職員のための人材育成のヒント: 失敗事例から学ぶケースワーク28の視点

大学職員のための人材育成のヒント: 失敗事例から学ぶケースワーク28の視点

大学教職員と学生のための中国留学・教育用語の手引き

大学教職員と学生のための中国留学・教育用語の手引き

「大学職員とJUAMの国際化〜これまでの20年、これからの20年〜」高橋史郎氏(早稲田大学国際教養学部事務長)

  • 大学訪問歴
  • 杉原千畝
  • 留学生に対する現場の感受性
    • それぞれのストーリーを持って日本にくるので寄り添う姿勢が大切。
  • 早稲田の事例
    • グローバル化の到達点は
    • 809大学と協定、8箇所の海外拠点
    • クォーター制
  • 留学生のグローバルな移動
    • 学生の異動はボーダーレスに。異動過程において越境しながら言語と専門知識を習得するで自らの付加価値を着実に高めていく。
    • グローバルな学生のモビリティを柔軟にキャッチするアドミッション制度が非常に重要。留学生受け入れ先進国に遅れを取らない高い開放性と融通性。
    • 専門の海外リクルートチームの編成
    • web出願
    • 常時出願受付、早期出願受付
    • 海外拠点利用入試
  • 現代的課題
    • 病気、メンタルヘルス、人間関係、学習障害LGBT
    • 特別な配慮が重要
    • 特記事項、特別配慮以来はアメリカ、イギリスなどで先行
    • 早稲田として何がどこまでできるかを明示して協定校と協議
  • ミッションの共有
    • 一人一人がミッションについて自問自答→その集積が大学の答えになる→構成員がシンプルな言葉で共有→理想の留学生→Marketing→Recruiting→Enroll Management→Branding
  • 送り出す学生へ
    • 「痛い目」にあってもらいたい。チャレンジする姿勢を大学としてサポート。
    • 「知識を与うるよりも感銘を与えよ。感銘せしむるよりも実践せしめよ。」(坪内逍遥

これまでの大学職員生活の全てを国際関係部門で過ごしてきたプロフェッショナル。海外大学訪問歴からも分かりますが、普通なら行けない大学も訪問されています。*5自著で「世界七五か国で百五十以上の大学を訪れる」と書かれているように、留学の受け入れ・送り出しを通じ、日本の大学の国際化を牽引されてきた方ですね。
お話の中で優秀な留学生の獲得競争について触れられていました。他国と比較したリクルーティングに資する制度改善は重要な指摘だと思います。現在、高大接続改革が議論されていますが、こうした視点も中教審にはフォローしてもらいたいところです。また、開放性と融通性を挙げていらっしゃいましたが、4学期制(クォーター制)の全学標準化やサマースクール、サマーセッションを導入など、教育の質保証に繋がる教学マネジメント面のお話も伺いたかったです。
ミッション共有について非常に分かりすく構造化した図を示されていました。私の方でも作成してみたので参考まで提示します。
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世界の大学―知をめぐる巡礼の旅 (丸善ブックス)

世界の大学―知をめぐる巡礼の旅 (丸善ブックス)

若手海外派遣事業-海外大学調査研修-橋下規孝氏(立命館大学グローバル教養学部設置準備室課長補佐)

  • テーマ
    • 欧州の大学職員におけるモビリティとモチベーションの関係性
    • 対象者:人事部及び教学部門の管理職、教学部門に属するモビリティ経験のある実務者、図書館員など
  • 訪問先
    • ウプサラ大学、SUHF*6スウェーデン王立工科大学、AUA、マンチェスター大学
    • 派遣者5名のうち、4名は米国を希望。ただ欧州への派遣が決定したので、欧州の特徴を理解できるように複数国への訪問を決定。
    • 渡航にあたってメンバー間での意見交換等を積極的に実施。大学職員のグローバル化を考えることの意義があった。

JUAM20周年記念事業で海外大学調査に行かれる橋本さんからのお話でした。私も今度カナダに訪問調査しに行くので、事前準備でのご苦労などについて分科会終了後に質問させていただきました。訪問大学の選定やアポ取りまで全て自分たちで行なったそうです。大きな労力だったと思いますが、それ自体も大きな経験になることは間違いありません。個人的には国際委員会やJUAM事務局側での支援体制がもう少しあると、受講者負担が軽減されてリサーチベースの活動ができるので、次回以降の課題なのかと思います。(それこそJAFSAの協力を得るなどのサポート体制はあってもよいのでは)是非、後日訪問の記録を伺いたいなと思いました。
また、分科会を通じて共通の問題意識であった「国際交流部門の出島化」を打破するために、海外大学訪問時の留意点やポイントなどをまとめ、JUAMを通じて公に提示することも大切かと思います。

「JUAM国際委員会の活動状況」立命館アジア太平洋大学リサーチオフィス課長 篠崎裕二氏

  • バックグラウンド
  • 問題は何か
    • 大学の国際化に関して国際交流部門が出島化している。この点に関して大学自体が自分ごととして捉えていかなければならない。また、日本の高等教育全体でも捉えなければならない。

国際委員会の活動概要についての報告。篠崎さん自身、大阪外国語大学インドネシア語を学び、インドネシアに赴任してこともあるとのこと。大枠の話だったので特筆することは特段ありませんが、国際交流部門が出島化している件は分科会を通じて課題として挙げられていたのが気になったところです。

議論のまとめと質疑応答 宮澤文玄氏 学習院大学学長室経営企画課長

  • JUAMの現状
    • 国内研究に特化していないか?
    • 職員が実際に海外体験をする意味
    • JUAMにおけるグローバル人材育成を担うSD研修の意義
  • 質疑応答
    • 日本の大学の国際化には通用性、開放性、交流性が重要。
    • 「今目の前にいる留学生を見よ」
    • 国内大学間でも共有化できていない部分もあるので、そうしたことを議論できる場の設定も大切。
    • 大学の国際化に関して、対応できる大学と対応できない大学の差異は何か?例えば当該大学の拠点に所在する企業で海外拠点などを持っている企業との連携方策などを通じて、国際化が進展するのではないか。

学習院の宮澤さんによるまとめと質疑応答。フロアからの意見があまり出ませんでしたので、もう少し工夫があってもよかったかもしれません。例えばコメントシートを配付してフロアからのコメントを集約し、コーディネーターが各パネリストに振るなどの方法があると、インタラクティブな議論になったかと思います。しかしながら、分科会全体を通した満足度は高く、参加してよかったと感じました。また、JUAM国際交流委員会・関東地区研究会の活動成果の一つとして、日本学生支援機構の機関誌『留学交流』の掲載論文が紹介されていました。*7

研究・事例研究発表

愛媛大学のSD事業はなぜ継承できているのか?」愛媛大学教育・学生支援機構教育企画室 上畠洋佑氏、愛媛大学教育学生支援部、愛媛大学SD統括コーディネーター 吉田一恵氏

  • 研究の背景
    • SD義務化:SDに関する業務の責任や管轄を巡るセクショナリズムの弊害や組織間の軋轢
    • 愛媛大学で継承できている理由、不定期かつ断続的に起こる字組織の現状や社会的背景を踏まえた課題を組織として克服し結実
    • 吉田氏が人事課でSD担当していたところ、教育支援部に異動した際に業務を移管した経緯。
    • マニュアルの整備
      • 組織における業務の効率化や人材育成、マニュアルを引き継ぎ時に活用、業務に関する情報や知識が継承。10年間にわたって継承できた事例は。
  • 先行研究
    • マニュアルと引き継ぎ
    • オーラル・ヒストリー(口述記録)
  • 研究方法
    • イントラビュー
    • インタビュー
    • 研究者2名での分析結果のディスカッション
  • 結果と考察
    • SDの所管を人事課から教育学生支援部に移すとき、SD業務の経験者を異動させるなど、戦略的人事の視点と働きかけを行った。その背景としては、事業移管変更後すぐにでも平常運転行わなければならない事情があった。協力して取り組む組織文化が愛媛大学には存在している。
  • 事業継承における3層構造
    • 大学組織全体の視点(部長クラス)
    • 課・部レベルの視点(課長クラス)
    • 係・個人レベルの視点(実務担当者)
    • 職務の履歴を後任にも分かりやすく残している職員の習慣「足跡型のマニュアル」が自然に引き継がれている。SPODの立ち上げによって教職員間が立場を超えて自由に発言できる関係性
  • 他大学への示唆
    • 足跡型マニュアルの試行
    • TEAによる各大学・組織の分析
    • 口承マニュアルの導入の試行

TEA(Trajectory Equifinality Approach)=複線径路・等至性アプローチという質的研究の手法を使った分析です。分析手法と先行研究はまとめがあるので、そちらをご確認ください。*8愛媛大学はSPOD事務局として日本のSD活動の先導的モデル大学です。その大学がどうSD活動を継承しているのか分析した発表でした。個人的に興味深いと思ったのは、「SPODの立ち上げによって教職員感が立場を越えて自由に発言できる関係性」が土台にあり、その上に足跡型マニュアルや口承マニュアルが形成されていった点です。
SPOD立ち上げは愛媛大学にとって大きな事業だったことが窺え、内部でも様々な葛藤があったのだと推察します。複数回に渡って組織として葛藤を乗り越える経験してきたことが、現在の強みに繋がっているのだと思います。この点は開学後に定員割れの危機を迎えて乗り越えた共愛学園前橋国際大学と共通性があるように感じました。組織の危機とそれを乗り越えた後の組織的成長に関する先行研究などあれば参照したいところです。

「地方大学におけるアメーバ経営の適応の意義–経営理念の浸透による組織改革」荒木経雄

  • 明らかにしたいこと
    • 厳しい経営環境に置かれている大学経営について、大学特有の組織構造を踏まえ、2010年に経営破綻したJALを再生に導いた京セラ稲盛会長を参考に。
    • 京セラフィロソフィによるアメーバ経営の大学経営への適用について考察。
  • 経営理念の構成要素
    • 上位概念(理念):不変
    • 下位概念(方針):柔軟に変化
  • 経営理念浸透の浸透方策と効果
    • 一時的メカニズム(行為的シンボル)
      • 社長自ら末端の現場で指導することがある
      • 重要な意思決定が、理念や社是のもとに行われる
      • 課長研修のように、ミドルに理念や社是を刻み込む制度がある
      • 経営理念や社是に忠実な人が高く評価される
    • 二次的メカニズム
      • 社長の年頭挨拶や経営方針の発表会
      • 理念や社是にまつわるエピソードが、社内のあちこちで語り継がれている
      • 理念や社是を伝えるパンフレットがある
      • CIが導入された
    • トップが姿勢を見せる、その姿勢を見た管理職の姿勢を末端の教職員は見る。アメーバ経営には、経営者意識を持ったリーダーが不可欠。アメーバ経営の独自性の一つである「時間当たり採算表」。小さなユニットでも一人一人が経営意識を持たなければならない。
    • JAL再生でのアメーバ経営導入の効果とは
    • 組織改革:意識改革・ヒトづくり推進部を設置した。役員全員と部長クラスの経営幹部を対象にしたリーダー教育から意識改革を開始。
    • 単なる労働者ではなく、経営者意識を持つことができるようにしたこと。意識改革。
  • アメーバ経営による再生要因
    • 6つの原則
      1. 自社の文化は自社で作る
      2. リーダーから変わる(リーダーの意識が変われば部下の意識も変わる)
      3. 全社員の一体感を持たせる(本社と現場にいる社員の接点を増やし、ベクトルを揃える)
      4. 現場社員のモチベーションを少しでも高める(現場社員の努力を認め感謝する)
      5. 変化を起こし続けることで本気度を示す
      6. スピード感を重視する(必要なことは一気呵成に実行する)
  • JAL再生におけるフィロソフィ作成およびその浸透過程を参考に、建学の精神見直しのプロセスの提示
    1. リーダー教育の実施
    2. 管理職教育の実施
    3. 「建学の精神見直し検討委員会」の設置
    4. 具体的な見直し作業
    5. 外部環境変化、内部環境変化
    6. 伝わりやすさと分かりやすさ
  • 質疑応答
    • 龍谷大学アメーバ経営を実践している訳ではないが、研究テーマとして大学経営に活かせるのではないかと考えている。

京セラが行っている「アメーバ経営」の優れた点を整理し、大学経営に適用した場合を仮説ベースで研究的にアプローチした発表です。勉強不足でアメーバ経営の概念自体知らないことばかりでしたので入門的部分から説明があり、理解しやすかったです。企業の経営理念に対して私立大学には建学の精神がありますが、特に経営理念浸透は参考にできる内容だと思います。戦略経営のポイントは、各施策が相互調整(アライメント)されていることで、東北大学の大森不二雄教授は「今後の大学経営及び経営人材の在り方を4つのキーワードで表せば,「システム的統合(systemic alignment)」「可視性(visibility)」「流動性(mobility)」「戦略経営(strategic management)」となる。」と述べており、この点も重要です。*9
また、学校法人のアメーバ経営実践例は少ないですが、専門学校での導入例があるので実際の効果と課題を知りたいところです。*10

「大人数を対象とした参加型オリエンテーションの試み」京都産業大学 中原正樹氏

  • 概要
    • 大学視点のオリエンテーションに対し、学生目線での改善を実施。具体的にはオリエンテーションの実態を構造化して、説明事項を分解して事前に提示するとともに、疑似的な反転授業を実施して効果を測定。
  • 背景
    • 大学視点のオリエンテーション
      • 説明が表層的で「なぜ」が伝わっていない
      • 情報や説明時間の増長で集中力が持続していない
      • 学生の理解度にバラつきが発生している
      • 環境の変化(学年歴の狭量化、カリキュラムの複雑化、学生像の多様化)
  • 取組み
    • 環境の変化に対応する改善策の検討
    • 入学前の導入オリエンテーション
      • プレイスメントテスト実施日に「履修要項確認テスト」を配付。学生に学修を指示。
      • オリエンテーション当日スマホを活用した疑似反転授業を実施
    • 学生履修アドバイザーの活用
      • 学生履修アドバイザーを7名配置。事前説明会で趣旨・対応スタンスを共有。
      • 当日に登壇して自己紹介、名札着用。
      • アドバイザーは教員からの氏名・推薦、法学部として15名ほど。
      • 履修アドバイザーは法学部の独自制度。
  • 振り返り
    • 学生の反応
      • 質問内容に質的変化
      • 相談先の主体が変化
      • 相談学生のグループ化が進行
  • 質疑応答
    • (質問)実際の運用上でスマホを持たない学生へのフォローなどはどうしているか
    • (回答)アクセスできない学生には紙媒体でフォローしている
    • (質問)初めての試みとのことだが、来年度以降も継続するのか?他学部ではどのように受け止められたのか。
    • (回答)筆者が法学部事務室所属時に試行的に運用した制度。今後の方向性については現時点では未定。
    • (質問)履修要項確認テストの効果検証として、学生の履修制度への理解度がどの程度深まったかの測定などは行ったか。また、具体的な改善効果はあったか。
    • (回答)測定までは行えていないが制度への理解に関しては一定の効果。

各大学で毎年行われている新入生オリエンテーションに関し、全体構造を分析した上でアクティブラーニング要素を取り入れた改善事例の報告です。私も前職で入学前教育を担当していたため、興味深い実践事例でした。スマートフォンを活用した疑似的な反転授業形式、学生スタッフの活用についての実践事例です。今後の継続性は未定とのことでしたが、全学的な導入に繋げていけることを期待したい取組みです。なお、本研究は機関リポジトリから論文を閲覧可能です。*11

「「未」見える化分野の見える化–新任理事ハンドブック作成の試み–」大学経営評価指標研究会

  • 新任理事ハンドブック研究背景と問題意識
    • 「大学ガバナンスの制度・仕組み・運用に関する実態調査」の考察
    • 理事が最低限知っておくべき知識の体系化
  • 研究目的・手法
    • 民間企業における新任取締役研修の視点の調査
    • 視点別にチェックリスト化
  • 新任理事ハンドブックの内容案
    • 大項目8分類、中項目29分類、小項目90分類に整理
    • 大分類
      1. 理事として配慮すべき価値観・倫理観
      2. 学校法人及び大学の仕組み
      3. 本学について
      4. 理事の業務と報酬
      5. 本学の理事会の運営方法について
      6. 学校法人会計と財務
      7. 教育・研究を見る視点
      8. 大学の組織文化・教職員状況
  • 活用方法
    • ハンドブックを作成して、かつ内容の理解を深める実質化が重要
  • 考察・課題
    • 大学別のカスタマイズは必要。ハンドブックはコンパクトにまとめる必要がある。既存のファクトブック等の資料も連携活用。

新任理事向けのハンドブック作成の試みに関し、報告がありました。興味深い反面、私立大学対象のハンドブック作成の話題ですが、国立大学財務・経営センターが発行している「国立大学法人経営ハンドブック」は参考にしないのかな?と素朴な疑問を感じました。
もっと突っ込んだ意見を述べると、国立大学法人はハンドブックを作成して理事者等への普及を図っているにも関わらず、国立大学経営力戦略*12を踏まえた経営力の強化を国・産業界から強く求められています。ハンドブックはあくまでもツールであり、理事の経営力を高めるトップマネジメント研修の実質化が本質的な課題だと思います。最近では文部科学省イノベーション経営人材育成システム構築事業」により大学トップマネジメント研修*13が、日本私立学校振興・共済事業団によって私学リーダーズセミナー*14が開催されています。諸外国の大学でのリーダーシップ開発の先行研究をまとめた論文*15もありますし、ハーバード大学の学長向けリーダーシップ開発研修*16への新任者派遣なども考えられます。

「国立大学法人経営ハンドブック」第1集 | 独立行政法人 国立大学財務・経営センター
「国立大学法人経営ハンドブック」第2集 | 独立行政法人 国立大学財務・経営センター
「国立大学法人経営ハンドブック」第3集 | 独立行政法人 国立大学財務・経営センター

以上、簡単に振り返ってきましたが今回の研究集会でも実り多い時間を過ごすことができました。来年度の定期総会・研究集会は東京都渋谷区の実践女子大学渋谷キャンパスにて開催されます。また来年度にお会いしましょう。

*1:特定非営利活動法人JAFSA(国際教育交流協議会) http://www.jafsa.org/

*2:Association of University Administrators https://aua.ac.uk/

*3:NAFSA: Association of International Educators https://www.nafsa.org/

*4:明言されませんでしたが、恐らく金日成総合大学 https://goo.gl/dbGJRS

*5:国際交流のプロ人材組織として幅広いネットワークを駆使し留学生30万人計画のハブとなる (特定非営利活動法人 国際教育交流協議会(JAFSA)常務理事早稲田大学 留学センター 調査役 高橋史郎) http://www.tokyu-nasic.jp/nasic_release/nasic_release_theme/data.php?number=20&eid=00150

*6:Association of Swedish Higher Education Institutions http://www.suhf.se/

*7:大学行政管理学会におけるグローバル人材育成を担うSD研修-関東地区研究会の活動を中心に- https://www.jasso.go.jp/ryugaku/related/kouryu/2018/__icsFiles/afieldfile/2018/08/08/201808miyazawabungen.pdf

*8:複線径路・等至性アプローチ https://sites.google.com/site/kokorotem/

*9:これからの大学経営―誰がどのような役割を担うのか― https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20180330133914.pdf?id=ART0009884214

*10:アメーバ経営推進室」を設置している 学校法人京都中央学院組織図(平成30年度) http://www.yic-kyoto-pet.ac.jp/wp-content/uploads/2016/10/98af027f091b246bc2dba4ee8866d7f8.pdf

*11:大人数を対象とした参加型オリエンテーションの試み https://ksu.repo.nii.ac.jp/index.php?active_action=repository_view_main_item_detail&page_id=13&block_id=21&item_id=10088&item_no=1

*12:国立大学経営力戦略 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/06/24/1359095_02.pdf

*13:http://ttm.grips.ac.jp/

*14:http://www.shigaku.go.jp/s_center_d_lsym.htm

*15:教学管理職を対象としたリーダーシップ能力向上のための研修教材開発 http://emspd.meijo-u.ac.jp/publication/journal05/5_03.pdf

*16:Harvard Seminar for Presidential Leadership https://www.gse.harvard.edu/ppe/program/harvard-seminar-presidential-leadership

学内保育施設を持つ大学一覧

high190です。
つい先日、立命館大学びわこ・くさつキャンパスに学内保育施設を開設するニュースが出ていました。

www.chunichi.co.jp

立命館大びわこ・くさつキャンパスBKC)内に九月から、学内保育施設が開園することになり、二十七日に記念式典と内覧会があった。
同大によると、同様の施設は医学部などを持つ国公立大学ではすでに設置されているところもあり、県内では滋賀医科大にもあるが、私立の総合大学での設置はまだ少ないという。
施設名は「立命館みらい保育園びわこ」で、従来は会議室だった部屋を改築して整備した。延べ床面積は約百六十五平方メートルで、ゼロ~五歳までの最大十九人を受け入れる。開園当初はBKCに務める職員の三歳児一人が入園するという。名古屋大や民間企業の学内保育施設も手掛ける「ポピンズ」(東京)が運営する。
式典で学校法人立命館の森島朋三理事長は「BKCには女性研究者百八十人、女性職員百九十人が勤務している。利用者が教育や研究に生き生きと取り組むことによって、学生の意識も変えられる」と相乗効果を期待した

先行研究等

働き方改革はもちろんのこと、イノベーションの推進役として社会からの期待に応える大学ではダイバーシティの推進役としても存在感を発揮しなければなりません。ところで大学で学内保育施設を持っているところはどの程度あるのか、一覧化されている資料を見たことが無いので自分なりに調べてみました。
選定基準は当該大学の教職員が施設の利用が可能か否かです。新しい情報は随時更新していきたいと思いますので、情報をお寄せください。また、その他として学内保育所は設置していないが、育児支援の制度を持っている大学の情報も掲載します。

国立大学法人

公立大学法人

私立大学

その他

上記をご覧いただければよく分かりますが、国立大学法人が設置する例が多く、公立大学又は私立大学では医学部も保有しているケースが中心的です。男女共同参画推進の組織を持っている大学でも設置している傾向があります。その意味でも、最初にお知らせした立命館大学の取組みは医学部を持たない大学ながら先行していると感じます。また、色々調べていくと、内閣府が主導する「企業主導型保育事業」を活用して事業所内保育所を整備する大学が増えてきていることが分かります。大学単独では難しい事業であっても、民間事業者との連携によって整備できる事例が増えてくれば私立大学での導入も今後進むかもしれません。

www.kigyounaihoiku.jp

また、必要性を認めつつ慎重に検討している事例もありました。社会的責任に鑑みて判断するということで、大学側としても財政面も考慮した綿密なリサーチが必要になるだろうと思います。*2 *3 *4

(2018/09/11追記)
★学校法人会計の広場★(前「学校会計の広場」):【子育て】今はやりの「企業主導型保育事業」って何だ〜?

学校法人が企業主導型保育事業を行う場合の主な条件、対象者、事業所内保育所との相違点などを解説した記事です。補助率では企業主導型保育事業の方が有利なのですね。こういった情報は有益です。また以下の点でなるほど、と思いました。

企業主導型保育事業は、「子育て」に加えて「働き手の確保」の側面が強く出てきました。施設は、認可外保育施設なので監督指導は認可保育所施設ほどありません。ですが、補助金が手厚く出ます。
学校では東京大学や一般の学校法人が手がけ始めています。会計処理については、まだ特段の指示は出ていませんので、従来の学校法人会計の法規類を使って会計処理することになります。

*1:その他、名古屋大学学童保育所「ポピンズアフタースクール」を設置 http://www.kyodo-sankaku.provost.nagoya-u.ac.jp/jst/kids/ccs/pas/

*2:ICUキャンパス内保育所開設の提案書を提出しました http://web.icu.ac.jp/cgs/2007/11/nursery20071107.html

*3:キャンパス内保育施設についての調査結果 http://web.icu.ac.jp/cgs/2008/03/post_4.html

*4:大学内の認可保育所が持つ可能性を探る http://www.ynu.ac.jp/special/glocalreport/vol8/index.html

電子決裁システムを導入している大学のリストを作ってみた

※更新情報 京都精華大学を追加(2018/07/20)

high190です。
先日Twitter上で興味深く拝見したツイートがありました。

大学の場合、稟議書などの決裁文書を紙で回しているところはまだ多いかもしれません。では、電子決裁の仕組みを導入している大学を分かる範囲で調べれば役に立つ資料になるかもしれない、と思って調べてみました。まだまだサンプル数が少ないので、順次更新していきたいと思います。また、導入の有無を確認する方法は以下の方法で行いました。

確認方法

  • 公表されている資料で「電子決裁」を導入していること又は導入の方向性が明確であること

定義

  • 稟議決裁を電子的に実施しているかどうかで判定

海外大学の実例で興味深いと思ったのは「公文書の管理は電子化されており,作成及び決裁もネット上で行われる。決裁が一定期間滞った場合は,その当事者宛に警告メールが送信」といった記述です。実際に電子決裁システムの場合、こうしたアラートを出すことも可能でしょう。関連情報として、大学における業務構造改革をRPA(Robotic Process Automation)のセミナーが7月に行われます。

関心が高く既に満員となったようですが、大学における業務構造改革の波は間違いなく高まっており、新たな施策を取り入れられる大学とそうでない大学の差はますます拡がっていくでしょう。

カナダの高等教育について調べる

high190です。
現在、個人的な事情(具体的には研修のために)カナダの高等教育について調べています。

www.timeshighereducation.com

日本ではアメリカの高等教育事例は学術的なものから留学情報まで様々なメディアで報じられていると思いますが、あまりカナダの取り組みは聞こえてこないように思えます。(これは私の不勉強も一因にあるとは思うのですが)

しかしながら、上記のTHEランキングなどを眺めると世界的にも優れた大学が多いことが分かります。「高等教育大国」の米国の隣で、どのようにしてカナダは高等教育を行なっているのか、また大学間の連携はどうなっているのか。加えて、大学経営に関してどのように戦略計画・IRが関わっているのかなど、興味は尽きません。本当に基礎的な部分でしかないのですが、いくつかの資料を読みながら大枠だけでも早いうちに掴んでおきたいと思っています。

質保証関係

遠隔学習関係

国際化関係

高等教育制度関係

その他

ジョン・ヘンリー・ニューマンの「大学の理念」を巡って

high190です。
先日某所で標記の人物に関する講演を聞くことができました。

ジョン・ヘンリー・ニューマン - Wikipedia

ジョン・ヘンリー・ニューマンはイギリスの神学者で、当初はイギリス国教会(現在の聖公会)に属し、オックスフォード大学のトリニティカレッジなどで神学研究をしていたそうなのですが、その後カトリックに改宗して晩年には枢機卿となった人物です。カトリック改宗後、アイルランドカトリック大学を創設するよう司教団から学長に任命されたそうなのですが、*1その際に発表したのが「大学の理念(The Idea of a University)」と呼ばれる書籍です。

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恐らく日本語での解説論文などがあるだろうと思って調べてみましたが、原文がWEB公開されていたので引用します。ニューマンを研究する機関があることも、*2ニューマンの名を冠した大学がイギリスとアメリカにあることも調べるうちに分かりました。*3 *4

日本語での解説論文については、以下の二つが見つかりましたので引用します。それぞれの解説論文を読むと以下のような箇所が出てきます。

中世の初期に確立されたリベラルアーツは、カロリング・ルネサンスの産物であり、貴族の子弟たちが、聖職者や官吏として活躍できるよう、教会附属の学校で教育したことに端を発する。その目標とすることは、(1)リーダーの育成、(2)徳育主義、(3)教育重視、(4)人格形成、(5)古典主義、(6)教条主義、(7)教育のための教育であり(Kimball,1995,pp.53-55)、ほぼ、ニューマンの理想と重なる。
(中略)
ただし、ニューマンの主張は、ヨーロッパ中世のリベラルアーツ観によって、すべて説明できるものでもない。次に述べるように、ニューマンの理想には、イギリス人として、16世紀以降に登場したイギリスにおける「紳士」の伝統が色濃く反映されており、特に、彼が強調する統合力や人格的影響力は、イギリスにおける「紳士」の伝統を抜きに語ることはできない。

そこで、今日、必要なことは、ロバーツのように、ニューマンの時代と現代との社会情勢の違いを指摘して、ニューマンの議論はすでに妥当性を失っているとするのではなく、彼の理念を現代の状況に読み替えることであろう。
(中略)
最後に、探究心や批判精神を推奨する近代の大学は、知性の開発や研究活動の推進に比較して、人生観や宗教観など人格形成に関わる部分において、文化の継承を行なっておらず、学生を精神的には放置しているという事実があげられる。この問題は、今日、より深刻になっており、かつてのヨーロッパや日本の大学が主張していたように、人格形成は中等教育段階までで完成すべきであるという原則論では対応できないのが実情である。
そこで、大学における宗教や神学の役割が重要になるのであるが、ニューマンの述べるように、宗教の理念を徹底することによって、寛容性や多様性を実現するという主張は、キリスト教的基盤を持っていた欧米の大学においても困難になりつつある。そのため、マースデンが述べるように、むしろ多元主義の一環として、科学的・実証主義的な思考と宗教的な思考の特性・限界を理解することと、せめて大学が宗教的な議論を行う余地を認めることが必要であろう。この点に関して、ニューマンの『大学論』自体が、カトリシズムの視点によって、近代主義を克服するという貴重な事例を提供していると思われる。


-ジョン・ヘンリー・ニューマンの「大学の理念」(出典:片山寛,西南学院大学学術研究所神学論集68巻,2011年3月)

私たちが勤務する近代の大学というものは,基本的にはこのような理念に基づいて誕生したのです。いわば大学の理念の原型というべき思想がここにはあります。
(中略)
1854年からアイルランドのダブリンに創設されましたカトリック大学の総長に就任しましたが,ダブリンの大司教と対立したために,一期だけで辞任しました。背景には複雑な事情があります。当時は,アイルランドはまだ英国に合併されておりまして,独自の議会を持つことも許されませんでした。カトリック教会も厳しい状況にありました。17世紀にクロムウェルアイルランドを征服したときに,カトリック教会の教会領は数多く没収されていたのです。アイルランドの人口の90%以上がカトリックだったのですが,教会経済は厳しかった。そんな中でダブリンにカトリック大学を創立することは,カトリック教会にとっても大きな決意を要することでしたし,またそれはアイルランド独立運動とも結びついていたのです。ニューマンは,そのような事情は当然よく知っていたのですが,大学を教会の支配下に置くことに対しては抵抗します。『大学の理念』を読めばよくわかりますが,ニューマンは,大学における教育は国家や教会に支配されない,自由なものでなければならないと考えていました。

片山先生はニューマンの大学の理念で「大学論として多くの国の教育制度に影響を与えたのは,主に5,6,7講」と述べておられまして、その中で特に大学教育に必要と思われる箇所について翻訳を以下のように紹介しています。また、ニューマンは長年オックスフォードで教鞭をとっていましたが、カトリック教会に改宗した際、オックスフォードから離れざるを得ませんでした。しかしながら、カトリックの大学創設にあたってもオックスフォードの理念、学問の自由を強調したことにポイントがあると思います。
また、片山先生はニューマンが捉えていた大学の目的を以下のように説明しています。

「リベラルな教育は,キリスト教徒を養成するのでもなく,カトリックを養成するのでもなく,紳士(gentleman)を養成するのである。紳士になるのもよし,教養ある知性,デリケートな趣味,率直で公平で冷静な精神,処世において高貴で礼節ある態度を持つこともよい。これらは,広大な知識から同時に生ずる性質である。これらこそ,大学の目的なのである。」(p.89)
(中略)
大学の知性的訓練の目的は,学習(Learning)や獲得(Acquirement)ではなく,むしろ知識の上に訓練される思想(Thought)あるいは理性(Reason)である。それは哲学(Philosophy)と呼んでもよいものである。」(p.101)

大学の目的は,学生の精神を拡張することであり,広い視野からものごとを判断する力を養成することです。その目的のためには,定期試験や単位取得制度によって学生を管理する,つまり私たちの現代の大学がまさにそのようであるような大学よりも,ただ数年間を先達(チューター)と共に生活しながら学ぶことのできる,カレッジ(学寮)の方がはるかに優れている,とニューマンは考えていました。
(中略)
ニューマンが否定しているのは,それらの技能が教育の目的だとする功利主義(utilitarianism)の考え方であります。つまりそれらの職業的技能はもちろん大切でありますが,知的訓練の結果としての知識(knowledge)は,それらの技能をどのように用いるべきかという,統御(rule)に関わっているというのです。この知性そのものの訓練に関わる教育は,一般教養(Liberal Education)と呼ばれます。私たちは一般教養と言うと,大学教育の基礎課程であって,専門教育の方が上位にあると考えがちですが,ニューマンは,これは基礎でありつつ大学教育の最終目的でもあると考えているのです。

大学の理念の原型として知られるニューマンの説について、私自身が不勉強であることが大きいとは思うのですが、あまり日本では知られていないように感じます。吉永、片山の両先生が解説しているように教授した知識の統合こそリベラルエデュケーションだと思いますし、ニューマンの理念は現代の大学にも通じる根本的な意義を問いかけているように感じます。その反面、吉永先生が指摘するようにニューマンの理念を現代的に読み直すこと、具体的には各大学が「大学の理念」に照らして現代的な意義を捉え直すことが必要です。

また、論文中に出てくるチュートリアルやカレッジシステムについては、苅谷剛彦先生が書いている「イギリスの大学・ニッポンの大学」で詳しく紹介されていますので、興味がある方はご一読ください。ニューマンが優れているとしたチュートリアルやカレッジシステムは、現代でもオックスフォードやケンブリッジに生きています。それを支える仕組みがどうなっているかを知ることは意味のあることです。
直接的にはニューマンと関係しませんが、今年のTimes Higher Educationの"World University Rankings 2018"ではオックスフォードが1位、ケンブリッジが2位となっています。*5

以上のように、ニューマンの「大学の理念」からは大学教育への現代的な示唆が多く含まれていると私は思います。拝聴した講演は高等教育にフォーカスしたものではなかったのですが、オックスフォードでの教授生活、学長として発表した「大学の理念」など、教育機関で働く者の一人として興味深く聞くことができました。講演を伺ってその他に面白い、と思ったことをいくつか書いておきます。

  • ニューマンの霊性を知るためには、単一の著作のみで理解することが難しく、複数の著作を年代別に見て背景をよく知らなければ正しく理解することができないこと。
  • ニューマンの霊性を形作ったのは「疑いに向き合う態度」であり、探求すること、理解することが核であること
  • ニューマンと対立したマニング枢機卿がレールム・ノヴァールム*6 *7の基礎となる活動をしたこと
  • グラッドストーンイギリス前首相が出した教皇不可謬の宣言に対する反論「ノーフォーク公への手紙」によって、実質的な政教分離に繋がったこと
  • 有名な言葉:to live is to change, and to be perfect is to have changed often. (生きることは変わること、完全とは何度も変わることである)

ニューマンのことを知ることができたいい講演会でした。*8現在の日本の大学は政策的にも岐路にある場面ですので、古典から大学の本質を捉え直す努力を積み重ねていかないといけない、そのためのきっかけを私に与えてくれたのではないかと思っています。
ちなみに今回のブログを書くにあたって、Twitterでいいサジェッションを頂戴したことに感謝します。

「大学マネジメント・業務スキル基準表」の研究会に参加しました(大学行政管理学会)

high190です。
2017年7月8日に早稲田大学で行われた大学行政管理学会関東地区(第2回)、北関東・信越地区(第1回)合同研究会に参加しました。
今回の研究会ではNPO法人実務能力認定機構(ACPA)が策定・公表している大学マネジメント・スキル基準表についての内容説明、導入事例の報告が行われました。今回も参加した記録をまとめておきます。

ACPA 実務能力認定機構 大学マネジメント・業務スキル基準表

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  • 会場校代表挨拶 JUAM副会長 高橋史郎氏(早稲田大学国際教養学部事務長)
    • 早稲田でJUAMのイベントをやるのは10年振り。
    • 早稲田でスキル基準表を運用し始めて何年か。個人でスキル基準を毎年作成して提出している。
  • NPO法人 実務能力認定機構(ACPA)理事長挨拶 早稲田大学理工学術院 教授・図書館長 深澤良彰氏
    • ACPAは10年ぐらい前に創立した。大学で教える教育内容と実務能力との関わりを取り扱うことから始まった。そこから大学職員の能力開発・スキル標準を策定する事を射程に含めた。この取り組みが他大学の参考になればと思う。

「ACPA大学基準表を活用した大学業務改革について」ACPA事務局長 内山博夫氏

  • ACPAとは実務能力認証認定制度により授業科目などの質保証を推進している。2012年に大学マネジメント・業務スキル基準表を、2015年に大学マネジメント・業務/基礎(知識・能力)編の公開を開始した。
    • 大学マネジメント・業務スキル基準表:大学の職員業務を可視化し、役割像を共有化。
    • 大学マネジメント・業務/基礎(知識・能力):業務知識・能力の共有化ツール。
    • 早稲田の学内プロジェクト活動(職員業務構造改革WG)に当初から参画
      • 大学が外部環境の変化に適応できるようにするため、業務構造改革が必要であり、職員業務のあり方を見直すことが必要。大学運営に必要なスキルの把握と育成。人事政策の基本情報づくり。
      • 専任職員の業務を定型から非定型に転換させたい。
  • 「大学職員の高付加価値業務」
    • ルーチンワーク・提携業務➡判断業務・企画業務・専門業務(学士課程答申からの抜粋)
    • 大学基準表の活用目的
      • 担当業務ごとの遂行能力を本人と上司が診断(自己診断+上司補正)
    • 早稲田大学の事例
      • 業務改革への活用(業務内容の平準化、効率化)
      • 人材配置への活用(業務切り分け、雇用区分に応じた業務体制)➡外部委託可能と判断できる業務は、業務運用マニュアルと管理体制を整備し委託実施
  • 運用手順(通年スケジュール)
    • 1〜3月 基準表内容とスキルマトリクスの見直し、現状業務の差異分析、業務委託の活用(随時)
    • 5月 個人スキルの本人評価および上司判定
    • 6月 人事異動/人員配置の見直し
    • 7月 個人スキル判定表の人事課提出、人事異動に伴う部門別関係帳票の修正
    • 12月 人事異動/人員配置の見直し
  • 担当業務の役割状況
    • ベンチマーク(ACPA基準値)との差異把握
    • 【差異補正についての考え方】
      • 役割像(ベンチマーク)に向けた人材シフトの検討、外部委託化の推進。
      • より具体的には当該業務の遂行に必要な人材が配置されているか、また当該人材のスキルは当該業務の遂行に必要かを測定できる。
      • 上司補正の結果は部下にフィードバックされるのか。その際にどのような点について留意して伝えているか。また、当該職員が補正結果を踏まえて当該業務を達成できるようになるために、上司としてのアドバイス等を行う際の基準などは設けているのか。
      • 基礎/知識・能力編で対応している。
  • 今後の展開
    • 大学基準表活用勉強会(仮称)を設置予定
      • 勉強会メンバーを募集中
      • 活動内容として、SDおよび大学業務改革に関するセミナー開催、ワークショップ/活用実践演習など
    • 大学基準表活用サポート企業(協力企業を探して巻き込みたい)
      • サポート領域:大学経営コンサルタント、人材派遣(嘱託職員、契約職員、アルバイトなど)、大学業務委託/アウトソーシング、大学職員研修、ITベンダー(タレントマネジメント、大学業務システムなど)
      • 共通の物差しと目標値の設定

講演の内容に関して、大学マネジメント・業務スキル基準表については公表されている資料を前に読んだ事もありましたので、その内容に沿った説明がなされましたが、個人的には「大学基準表活用勉強会(仮称)」と「大学基準表活用サポート企業」に関する動きが気になりました。今後、各大学では一層業務改善に向けた取り組みが進展していくと思われますので、こうした動きは押さえておきたいところです。個人的には、大学基準表活用サポート企業として早稲田大学アカデミックソリューションあたりが関わってくるのかな?と思います。

早稲田大学における職員業務の構造改革と人材育成」早稲田大学人事部部長 三浦暁氏

  • 早稲田大学の専任職員数:約800人、常勤嘱託約350名、非常勤嘱託約150名、派遣職員約450名・・・合計で約1900人
  • 職員を巡る議論の変遷
    • 大学経営における諸制度の高度化、多様化、複雑化に対応できる資質の向上
    • 教員と職員が協働して担う領域をカバーできる力量の向上
    • これまで以上に教育研究への深い理解、従来とは異なった資質・能力
      • Waseda Next 125までは同じ議論の繰り返しだった。
      • 新しいタイプのアカデミック・アドミニストレーターが必要(各ファンクションで「調査・分析・企画・立案・実行・評価」できるプロジェクト型職員へ)
  • WASEDA VISION 150の推進
    • 核心戦略を実現させるために76のプロジェクトが動いている
    • プロジェクトのPDCAサイクル管理(高い目標と強い意志)
      • vision150推進本部の設置、ロードマップの策定、週1回の推進会議、数値目標、年度計画・評価・報告・改善
      • 他部門との協働・教職協働による新しい効果
      • 全体戦略の中における教職員自身の役割の重要性の理解◎
  • 職員の業務構造改革
    • 業務を4つに分割(サービス型業務、意思決定支援業務、高度専門的な管理運営型業務、渉外業務)
    • 定型化、仕様定義、専門人材活用を専任職員がマネジメントする体系。しかしながら必ずしも業務の担い手が切り分けられている訳でもない
      • 業務のやり方、組織のあり方等を見直し
      • 業務の効率化、大学に求められる機能の実現
      • スキルマトリクスを整備する事で全体業務の見える化を推進
    • 全学の仕事を「見える化」➡業務分析➡業務改革(適材適所の人材配置、適正な要員配置、分散業務の集中化、業務委託の活用、組織の見直し)
    • スキル項目説明書を元に、現状との差異分析(外部委託計画の策定、業務役割分析、スキルレベルの判定)
    • 個人スキル判定表(自己申告をベースに上司が判定している)、活用目的(戦略的なタレントマネジメント、目標と現状のギャップを育成計画に活用、人材ポートフォリオの構築、採用する人材要件の明確化)
  • プロジェクト型業務の推進
    • 職員がプロジェクトで仕事をした経験。プロジェクトは、新規事業の展開や新しい業務創造に適したスタイルである(業務スタイルの改革)
      • 組織(部門・課・係等)の壁を越え、必要なタイミングに必要な人材を柔軟に活用できる。「大学は「プロジェクト」でこんなに変わる」
    • WISDOMによる企画立案*1
      • 大学の経営改革に資する戦略や業務改革、プロジェクト企画立案のために開発した手法〜理想(あるべき姿)を考え新しい価値を創造する〜
      • 早稲田大学アカデミックソリューションで提供している
      • 一泊二日の研修を夏に2回(関西・西南・中央・法政・龍谷早稲田大学合同職員研修)
  • 授業運営支援(教職協働)研修
    • 1年目の職員全員を対象に実施。グループで授業の運営を支援する。職員が教育・学習支援においてどのような役割を担い、業務創造していくべきかを考察する。
  • プロフェッショナルズ・ワークショップ
    • 企業・自治体、学生の双方にメリットを生み出す新しい形の産官学連携実践型教育プロジェクト
    • 参加者の満足度調査を実施すると、学生、企業、職員いずれの評価も高い
  • 職員の育成方針
    • 早稲田大学の職員が目指す20年後については、組合からいつ決めた?と怒られている。
    • 職員に求められる役割と専門性の対照表を作成
    • 2017年度職員育成カテゴリー
      • 段階的なマネジメント力・リーダーシップ力の養成、プロジェクト・教職協働を通したマネジメント・処理力の養成、大学職員全般に求められる専門力の養成、職員個々の専門性に対応した専門力の養成、グローバル人材の育成、マインドの醸成、その他
  • 語学研修プログラムの充実化
    • 語学検定(TOEIC等)の受験による英語力の把握(3年に1回実施)
  • これから着手すること
    • 人事制度の改革に向けて、組合との交渉を行う予定。
    • 主な内容として、これまでは単線型のキャリア・年功序列だったが、これからは昇進・昇格時にも審査を行うようにしたい。職員個人が自らのキャリアを選択できるような制度に変えていきたい。来年4月の実施に向けて組合とも意見交換しているところである。

早稲田大学におけるスキル基準表の活用状況についての事例報告でした。
この後の質疑応答でも議論がありましたが、スキル基準表を導入する事によって業務負担の軽減には必ずしも繋がっていないということでしたが、全体的な業務の棚卸しができること、「全体戦略の中における教職員自身の役割の重要性の理解」に繋がるということは大切なポイントだと思います。その他の早稲田大学の取り組みについても、さすがだなと思いましたが、語学検定の受験による英語力の把握を3年に1回実施する事など、今後のグローバル化対応に向けた覚悟を感じる施策だと感じました.

質疑応答

  • スキル表の活用に課題があるとの事だが、どのようにすれば活用が進むと思うのか。また、プロジェクト型業務について個人で実施する場合の作り方を教えて欲しい。
    • 人事評価には使用していないが、課題の一つである。人事評価に使わないと真剣にスキル基準表が活用されないのではないかと思う。ちなみにスキル基準表の活用は若手職員(3年目程度の職員複数名)から発案されたものだった。その理由として担当すべき業務の知識等が分からないということが問題意識。人事部としてはもう少し活用を進めていきたい。
    • プロジェクトのほとんどは各職員からの提案を起点としている。
  • 業務構造改革に関しては、具体的に切迫した理由があって改革を進めたのか。
    • 若い職員から閉塞感があるという意見があった。理想を持って職員になったが、ルーティンワークばかり。こうした声を受けて組合とも協議して大学としての新しい価値を創造する機会を設定した。
  • 所属大学で教職協働を担当しているが、業務のきり分けを通じて既存業務をスクラップしたような事例があるのか。
    • 大学は業務のスクラップが難しく悩みどころである。ただし、業務の担い手を専任職員から嘱託職員に変更するなどの対応をしている。
  • 職員の専門性獲得のため、資格取得等とは異なる方法などを教えてもらいたい。
    • 資格取得なども促進していきたいと考えているが、職員育成の一環であってそれが全てではないと思っている。先ほど人事制度の話をしたが、将来的にはマネジメントと専門性のどちらを志向するでその後のキャリアが分かれるような人事制度を検討している。
  • スキル基準表を導入した事で顕在した長所、短所はあるか。導入から根付くまでにどの程度の時間がかかったか、導入によって労働時間の縮減に繋がったのかをお聞きしたい。
    • 早稲田大学の定期人事異動は6月、12月なのでそれにあわせている。
    • 技術的な問題として、スキル基準表は全てエクセルで管理していて、膨大な量になってしまうのがネックである。スキル判定を毎年実施しているため、シートがどんどん横に広がっていくので使いにくい。よってシステム化を検討している。当初ワークスアプリケーションズのパッケージでの対応を考えていたが、それでも難しそうな問題があるので、独自で開発する方向ではないか。
    • スキル基準表をゼロから導入した。一通りの業務をまとめるのに2年ぐらいかかっている。その際にはACPAや他大学からの意見も踏まえて、まとめた。ACPAで作っているのは汎用的なものであるので、各大学の実情にあわせてカスタマイズする必要があるのだが、そのためには一定のコストはかかる。しかしながら、スキル基準表の導入で全体が可視化され、業務内容への理解が進むということはある。スキル基準表の導入で労働時間が縮減される事は無く、別の仕掛けが必要と認識している。
    • 他大学での導入事例などを考慮すると、いきなり全学的導入は難しいので、法人事務局にテストケースで試行導入していくことが良いのではないか。カスタマイズについても、全ての文言等を各大学に合わせるなどのことは必要ではない。
    • (ACPA深澤理事長)ACPAに問い合わせが来る際、執行部と現場の教職員から問い合わせが来るケースがある。執行部からは「何人人減らしができる?」という問い合わせが来るが、それには答えにくい。反面、現場の教職員からは「業務を整理したい」という名目で照会が来るが、その点についてもどこからそのための時間や手間を捻出するのかという課題がある。
  • 大学の規模に応じて費用対効果の問題があると思う。また、給与に連動していないスキル基準表ということだが、現場の職員にはフィードバックされているのか。管理職者の異動等によって業務理解が浅い場合、適切に補正できるのか。
    • 「スキル基準表」という既にできたものを活用するので、それほど労力も費用も掛からない。ただし、メンテナンスは必要だと思っている。
    • スキル判定については本人が自己申告して、その点を上司が補正判定している。また、人事制度の変更時には異動等の基礎資料として活用したいと考えている。
  • 三浦部長がずっと人事に携わってきて、またここ数年の早稲田大学での色々な改革を踏まえて、早稲田の職員がどのように変わってきたと感じているのか。また、こういった制度変更を伴う改革によって、早稲田の職員がどう変わったのか。
    • (三浦部長)若手職員が閉塞感を感じていた時代があったと申し上げたが、現在では随分変わったと思う。大学設置基準の大綱化移行、高度化をしてきている。ルーティンのみを行う職員はいらないという方針で採用しているし、40代までの職員は劇的に変わったという自己評価である。
    • (高橋事務長)国際畑の仕事が長いが、国際では大きな業務委託をした。そのチームが全て担当している。よって、専任職員は外部資金獲得のためにスーパーグローバルなどにチャレンジし続けている。危機管理等についても専任職員が一定程度経験した事を嘱託に任せている。専任職員は数値目標の達成として、外部資金の獲得というベンチャーのような仕事を行ってきている。新しいことにチャレンジし続けることができるのも、強い業務委託のチームの存在あってのこと。そういった業務委託のチームを専任職員が開発してきた。専任職員の業務が今後どうなるか、という点で色々と思うことはある。

質疑応答で印象的だったのは、ACPAの業務スキル基準表を導入する事で外部委託化の促進や人事評価との整合性などについての質問が多かった事です。しかしながら、人事制度との連動性が重要になるので、まだそこまでは取り組んでいないというところでした。人事制度の改革は教職員組合との調整も必要ですし、一度変更すると容易に変えられないこともありますので、労使間でのすり合わせなども考慮して検討することが必要と思います。
私自身が捉えたスキル基準表の活用方策としては、個々の職員が自らのキャリアを展望する際、現状でできていること・できていないことは何かを捉える参考になるという事、自分自身の強みと弱みを把握する事に繋がり得るということです。あと、スキル基準表では各業務を羅列した状態になっていますが、各大学で共通する業務であっても、実施する手順などはそれぞれ異なりますので、業務手順書の整備を行う事が大切だということです。外部委託化の推進を行うとしても、実際の手順を明らかにしておいて、誰にでもできるようにしておくことが大切だと思います。
以上の理由から、スキル基準表とあわせて文章化されたマニュアルを整備されているといいのではないかと感じました。大学におけるマニュアル整備については以下の論文が参考になると思います。著者の松丸英治さんはこれまでも大学におけるマニュアルの活用について、大学行政管理学会で発表を行なっています。私のブログでも何度か記事にさせてもらいましたので、是非ご参照ください。*2 *3 *4

swu.repo.nii.ac.jp
(出展:昭和女子大学現代ビジネス研究所紀要)

あとは、業務改善のための手法として、総務省が「業務フロー・コスト分析に係る手引き」を公表しているので、こちらも参考にしながら業務改善と仕事の棚卸のことを引き続き考えていきたいと思います。

【SD】2402B「始めよう、仕事の整理と協働」|SPOD – 四国地区大学教職員能力開発ネットワーク

最後に早稲田大学の問題解決手法"Wisdom"などを紹介した以下の書籍を再読したくなりました。

*1:なぜ、早稲田大学は大学改革に挑むのか~ビッグデータで見えてきた大学の新しい可能性~ wisdom.nec.com

*2:high190.hatenablog.com

*3:high190.hatenablog.com

*4:high190.hatenablog.com