Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

中央教育審議会会長にはどのような人物が選ばれるのか

high190です。

www.asahi.com

上記のニュースで新しい中央教育審議会長が決定したことを知りました。日本の教育政策の司令塔であり、決定機関でもある中央教育審議会についてですが、私自身もあまり詳しく調べたことはありませんでした。しかしながら、会長決定のニュースに触れてふとあることに気がつきました。

ということで、中央教育審議会の歴代会長にはどんな人物が選ばれているのかを調べてみます。

1.中央教育審議会とは何か

中央教育審議会に関わる法令を調べてみました。文部科学省組織令第76条に規定があるとともに、中央教育審議会令が定められています。

文部科学省組織令(平成十二年政令第二百五十一号)】*1
中央教育審議会
第七十六条 中央教育審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 文部科学大臣の諮問に応じて教育の振興及び生涯学習の推進を中核とした豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に関する重要事項(第三号に規定するものを除く。)を調査審議すること。
二 前号に規定する重要事項に関し、文部科学大臣に意見を述べること。
三 文部科学大臣の諮問に応じて生涯学習に係る機会の整備に関する重要事項を調査審議すること。
四 前号に規定する重要事項に関し、文部科学大臣又は関係行政機関の長に意見を述べること。
五 生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律(平成二年法律第七十一号)、理科教育振興法(昭和二十八年法律第百八十六号)第九条第一項、産業教育振興法(昭和二十六年法律第二百二十八号)、教育職員免許法(昭和二十四年法律第百四十七号)、学校教育法及び社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)の規定に基づきその権限に属させられた事項を処理すること。
六 理科教育振興法施行令(昭和二十九年政令第三百十一号)第二条第二項、産業教育振興法施行令(昭和二十七年政令第四百五号)第二条第三項及び学校教育法施行令(昭和二十八年政令第三百四十号)第二十三条の二第三項の規定によりその権限に属させられた事項を処理すること。
2 前項に定めるもののほか、中央教育審議会に関し必要な事項については、中央教育審議会令(平成十二年政令第二百八十号)の定めるところによる。

中央教育審議会令】*2
第四条 審議会に,会長を置き,委員の互選により選任する。
2 会長は,会務を総理し,審議会を代表する。
3 会長に事故があるときは,あらかじめその指名する委員が,その職務を代理する。

より詳細には別の大学職員ブロガーがまとめた記事がありますので、そちらをご参照ください。

kakichirashi.hatenadiary.jp

2.中央教育審議会の歴代会長

ここでは歴代会長を文科省の委員名簿から洗い出します。*3前記のブログにあるように中教審は2001年に設置されたのですが、委員名簿は2003年分からのみ公表のようです。以下、発令年別に会長が変更になった部分のみを抜粋して掲載します。

三村明夫会長時代に、多忙のため安西祐一郎さんが会長を交代しましたが、近年は実業界から続けて会長が選出されています。教育は社会全体に関わる事項なので、主として教育に直接関わらない人をあえて会長に選出しているのでしょうか。審議会令では会長は委員の互選により選任とありますが、しばらくの間、教育関係者以外からの選出が続いていることの背景を知りたいところです。なお、実業界から選出された会長の所属先はTOPIX100に含まれる大企業のみです。
なお、現政権になってから内閣の下に置かれて教育改革の推進を担う会議体が「教育再生実行会議」です。中央教育審議会国家行政組織法に設置根拠がありますが、内閣が直接的に教育改革を主導する点に特徴があります。個人的には政策面での整合性をどのように取っているのか気になるところですが、中央教育審議会教育再生実行会議の意見交換は2015年に1度だけ行われています。

www.mext.go.jp

こういった内容は政策形成過程分析、教育行政学の守備範囲かと思いますが、教育政策の政策形成過程を考える上でも、中央教育審議会長の人事には引き続き関心を持っておきたいところです。

大学設置認可制度の先行研究

※更新情報 行政手続法に関するリンクを追加(2019/01/05)

high190です。

これまでの職員人生で大きなターニングポイントになったのが設置認可申請業務を担当したことでした。業務を通じて大学の制度を幅広く実践的に学ぶことができましたし、大学設置基準に代表される関係法令を読み解く訓練にも繋がりました。業務自体は結構大変ですが、大学職員として学べることが多く、これからも継続して学びたいと思っています。実務的には以下から得られる資料に目を通すことが重要です。

そんな大学設置認可制度について、学術的な研究などはなされているのでしょうか。私自身の勉強も含めて、先行研究にどんなものがあるのかを調べてみました。直接的に設置認可制度を扱わない大学評価等に関しても参考資料として掲載しています。その他、以下に挙げていないものでも適宜追加するので、コメント等でお知らせいただけるとありがたいです。先行研究についてはCiNii ArticlesとGoogle Scholarで調べたものになります。

また、「大学設置認可制度」についてはNIAD-QE Glossaryで定義の解説が日英語で公表されています。*1 *2

以上について、今後も追加していきますが私が調べたリストです。
個人的には大学設置基準大綱化、準則主義など時系列での変遷を知ることができる塩野宏氏の「日本の行政過程の特色−大学設置認可過程(平成二十四年)を素材として」が最も分かりやすいと思います。この論文は2012年の大学設置認可において、田中真紀子文部科学大臣(当時)が大学設置・学校法人審議会の認可答申を保留にした点を日本の行政過程の特色として設置認可制度を行政法の観点から述べたものです。なお、第181回国会の衆議院文教委員会、総務委員会及び予算委員会にて当該大学等の認可についての質疑が行われており、議事録が残っています。大学設置認可制度の政策過程の一端に当たるものなので、脚注にリンクを掲載しておきます。*3 *4 *5
大学設置認可制度は、行政手続法との関連もあるため関係する情報も追加していきたいと思います。*6 *7
なお、大学設置認可制度に関係する内容は拙ブログでも以前に記事にしました。

high190.hatenablog.com


他の大学職員ブロガーも設置認可関係の記事を書かれています。いくつか参考として掲載しておきます。

www.daigaku23.com


設置認可申請にあたっては設置形態によって手続きが異なるケースがあります。国立大学法人についての取り扱いは、以下の記事を参照されると良いです。

kakichirashi.hatenadiary.jp

その他、読みたいけれども読めていない書籍関係の情報です。

日本の高等教育政策―決定のメカニズム (高等教育シリーズ)

日本の高等教育政策―決定のメカニズム (高等教育シリーズ)

*1:日本語版 https://goo.gl/AY8Fme

*2:英語版 https://goo.gl/wZRqLn

*3:第181回国会 文部科学委員会 第2号(平成24年11月7日(水曜日)) http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/009618120121107002.htm

*4:第181回国会 総務委員会 第2号(平成24年11月8日(木曜日)) http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/009418120121108002.htm

*5:第181回国会 予算委員会 第1号(平成24年11月12日(月曜日)) http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/001818120121112001.htm

*6:行政手続法Q&A http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/tetsuzukihou/faq.html

*7:大学の設置等の認可の申請及び届出に係る手続等に関する規則の一部を改正する省令案に対する意見公募手続パブリック・コメント)に対して寄せられたご意見等について(平成21年3月19日) http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000050485

東北大学SDPセミナー「AI時代の大学の働き方改革と経営革新の切り札?〜業務自動化とロボットと市場化テストの可能性〜」に参加しました

high190です。
11月9日(金)に東北大学で開催された標記セミナーに参加しました。参加記録のメモを公開します。
RPA(Robotic Process Automation)の大学業務への活用は、労働力減少や業務効率向上に直接的効果があるものとして、現在の大学業界でホットトピックのひとつです。大学での具体的な活用どう行えるのかを知りたくセミナーに参加しました。以下は記録メモです。主観が入っていること、内容に誤りが含まれる可能性があることを予めご了承ください。

www.ihe.tohoku.ac.jp

開会挨拶:齋藤仁(東北大学事務機構長)

  • 高等教育を取り巻く外部環境の変化に伴い、東北大学でも事務改革の必要性が内外から指摘されている。そうした折、高度教養教育・学生支援機構の大森先生からセミナーの案内が来たので、事務機構も協力する形での開催となった。大学の事務職員に求められる成果の達成に向けて、業務の効率化に向けて何ができるのかを考えていってもらいたい。

趣旨説明:大森不二雄(東北大学高度教養教育・学生支援機構教授、大学教育支援センター長)

  • 今日は理事、事務機構長も含めて東北大学から多数の参加者がいる。遠くは九州からも来ていただいている。本セミナーはSDPシリーズとして開催しているが、大学設置基準で義務化されたSD、教育・研究力強化のための大学運営力として教職員の資質向上を図るものである。今回のテーマはRPA・市場化テストという先端テーマを選んだ。今日、日本の大学は人手も資金も足りない状況であり、政府に対して財政的な支援を求めていてこれは今後も継続すべきだが、外部環境の変化(少子化・人口減・低成長)に対応するために、業務効率の向上・改善は不可欠である。
  • これは日本の他組織では既に行われており、大学は必要に迫られているにも関わらず対応が遅れているのが現状である。本テーマの2つはまさに直面している問題を解決する切り札になり得る。

講演:高等教育機関におけるRPAによる定型業務の自動化と創造的業務への集中 村山典久氏(スカイライトコンサルティング株式会社事業開発特別顧問)

  • 自己紹介
    • 現状の「やりたくない仕事(定型業務)」を「やりたい仕事(創造的業務)」に振り分けていけるか、RPAを活用した事例として紹介したい。
    • コンサルタントとしてキャリアをスタート。2004年に国立大学法人滋賀医科大学で経営担当理事として10年ほど勤務。その後にアクセンチュアに戻り、スピンアウトで設立されたスカイライトコンサルティングにて業務改善などのコンサルティングを行っている。
    • 民間企業では2014年頃から金融機関を中心にRPA導入が始まり、製造業・サービス業にも波及している。しかし、高等教育機関ではまだ導入が進んでいない。企業から3周ぐらい遅れている。中教審のグランドデザイン、*1他業種の動向も踏まえて大学の現在の状況を整理する必要がある。
  • 日本が抱える本質的課題
    • 先進7カ国の労働生産性が最下位。直接的業務よりも間接的業務への比重が大きい。労働力人口の減少が見込まれ、中長期で事業体の持続的成長の危機に直面。
  • 課題解決に向けた方向性 RPA(Robotic Process Automation)の活用
    • 主にバックオフィスのホワイトカラー業務の代行。ロボットによる業務自動化。人間が行う業務処理手順を操作画面上から登録。知的労働者の業務はより多様化・高度化。タスク・シフティング。
  • RPAツールのデモ
    • 日常的にPC上で操作しているシステムへの入力等の業務を、RPAで解決している事例を紹介する。システム場の業務手順をフロー化。手順をロボットにシステム上で学習させ、自動化する。Web・内部システムからの情報の取得を自動化してExcelにリスト作成。システム上の情報入力について、Excelからデータを読みだして、Web上のシステムへの入力を自動化する。自動化にはHTML・画像認識などの技術を活用して行う。東京慈恵会医科大学で学長アドバイザーをしており、実際に慈恵医科大でRPA導入したところ、70分かかっていた入力が12分程度で終わる。5倍の生産性向上。
    • RPAの特徴
      • 代行:人間のルーチン作業を代行、人間の貴重なエネルギーをルーチン作業から解放
      • 能力:人間と比べて、圧倒的な作業スピードと正確性、24時間365日は炊き続け、辞めることもない
      • 変化:システムは、事業・業務の変化のスピードについてこられない。変化に柔軟かつスピーディな対応が可能。
    • ザ・トップリーダーズでの放送事例#11
      • 業務フローの定義・統一的見解がなければ自動化も危うい?まずは定義することが重要ではないか。
  • 高等教育機関における労働力上の課題とRPAの適用可能性
    • 事務職員
      • 労働力人口の低下、2018年問題による志願者減、補助金減による総事業費減少。しかし高等教育機関のサービスが継続される限り事務量は減少しないので、事務職員へのしわ寄せ等複雑な課題が逼迫。優秀な人材に仕事が集中。特定分野の業務経験を積み重ね、専門能力を向上させ、マネジメントリーダーになるべき人材の開発ができなくなる。そのための時間的リソースを作る出す必要性。定型業務を自動化して企画・マネジメント業務にシフト。
    • 教員
      • 高等教育機関コンプライアンス、ガバナンス、所轄省庁などからの圧力で管理運営業務に割く時間が増加。研究の質的向上の阻害要因。RPAを活用して教育・研究へのシフト。
  • 高等教育機関におけるRPAを活用した業務効率化の可能性
    • 適用可能領域
      • インパクト大:企画事務領域、総務・人事事務領域、財務・経理・契約事務領域、教員業務サポート機能、附属病院事務領域
      • インパクト中:教務・学生事務領域、監査領域、施設事務領域
      • インパクト小:研究事務領域
  • 高等教育機関におけるRPAを活用した業務拡張の可能性
    • 学生の継続的な授業欠席者監視ロボット(エンロールマネジメントの支援)、教員に最適な競争的研究公募情報の案内ロボット(競争的資金の獲得支援、URAの業務を一部代替)-
  • デジタルレイバーとの共存時代へ
    • 任せるべき仕事の選定
      1. やりたくない仕事
      2. やりたくてもやれない仕事(毎週、学生の授業出席状況をチェックし、学生のフォローをしていきたいが負担が大きすぎる)
      3. 人間が気づきにくい仕事(新たしい公募事業が出された、ソーシャルメディア等での情報)
      4. 人間が忘れやすい仕事(申請書や書類を期日内に出し忘れた)
      5. 人間が間違えやすい仕事(ル—チンのチェック業務)
    • まずはフィージビリティスタディから始める。
      • 定型業務をデジタルレイバーに代行させ、真に大学発展に寄与する付加価値の高い業務へとタスク・シフティング
      • 高等教育においてRPAを活用した業務効率化の余地は極めて大きい
      • デジタルレイバーは業務効率化だけではなく業務の拡張(オペレーティング・オーグメーション)にも貢献
      • RPAを導入しても、決してやりがいのある仕事が無くなるわけではない。(現在は労働力不足の時代)
  • 質疑応答
    • 導入コスト・メンテナンスコストは?
      • 様々なソフトウェアがあるので、何を選ぶか、またどの程度代替させるかによるが、概ねライセンス料・年間500〜1,000万円程度である。ライセンスの中であればコストの上積みはない。しかし、代替させる領域が増えればその分、当該業務のロボット開発がある。RPAも自ら開発するものと、業者に開発してもらうケースがある。業者に開発させる場合、そのコストがかかる。

講演中にYouTube動画が放映されましたので、以下にURLを貼っておきます。
www.youtube.com

また、大学業務へのRPA活用は先行事例等もいくつかあります。2018/07/25に早稲田大学で開催された「大学における業務構造改革の実践~RPA活用の可能性~」の資料が公表されているので、参考まで掲載します。加えて、リクルートカレッジマネジメントで吉武博通先生が書かれた論稿が非常に参考になるので、掲載します。

RPAの適用可能領域についての話がありましたが、いわゆるバックオフィスで効果が大きく、他業種で先行導入が進んでいるので事例として参考にすると良いと思います。しかしながら、講演を聞きながら感じた事のひとつに「まずは各大学が自学の業務を定義しないと前に進めないのではないか?」という点です。吉武先生のカレッジマネジメントでは日本生命保険相互会社のRPA導入経緯、導入後の事例が紹介されており、大学にも当てはまるRPA導入の本質です。

www.nissay.co.jp

  • RPAを早い段階から経営に導入しているようだが、現在の業務のデジタル化の状況は。また、それが職員の働き方をどのように変えていくか。
    • 当社は、RPAの導入に、2014年から取り組んできたが、何度も失敗している。重要なことは2つあると考えており、1つ目は、人間が行う実務やノウハウの見える化である。実務を熟知していなければ、ロボットに置きかえようとしても、イレギュラーケースに対応できず失敗してしまう。2つ目は、実務の変化に応じてAIやロボットを育てること、また、そのAIやロボットを育てる人のマインドを醸成することである。例えば、当社ではRPAに「ロボ美」と名前を付け職員名簿にも載せることで、職員がロボットを仲間として育てるようになってきている。現在では、53台のロボットが各業務において活躍している。
    • なお、単にデジタル技術だけを導入しても、業務全体への効果は薄いと考えている。新たなデジタル技術に加え、これまでのシステムや、人が介在するプロセス、この三つを業務プロセス全体にどのように組込み、どう変えていくかが重要である。プロセス全体の見直しによって、それに携わる一人ひとりの働き方が効率的になり、生産性が上がっていく。
    • また、それによって、資源を成長分野やお客様サービスにシフトすることができると考えており、そのような点も念頭に置いて、会社全体の効率性、生産性を上げていきたい。

失敗経験から成功に繋げるまでのストーリーはどの業種にも共通するものでしょう。

講演:「市場化テスト(民間競争入札)」で経費の削減とサービスの質の向上を 仁木俊二(総務省官民競争入札等監理委員会事務局参事官補佐)

  • 自己紹介
  • 社会の流れの中の国立大学
    • 第二次大戦後、教育制度の改革:複線型から単線型の制度に移行
    • 高度経済成長で国立大学は施設の拡大と大学数の増加
    • 経済の安定成長・財政再建
      • 行政・行財政改革を志向。3公社の民営化、官から民への移行。独立行政法人制度(エージェンシー化)。
      • 21世紀:巨大独立行政法人2004年(国立病院機構)、国立大学の統合(国立医科大と地元国立大の統合、機能別の統合:筑波大+図書館情報大、大阪大+大阪外大)
    • 国立大学の法人化(2004年)
  • 入札とは
  • 市場化テストとは
    • 1970年代から米国、英国、豪州等で公共サービスを官と民が競争入札する「市場化テスト」取り組みが開始。
    • 我が国「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(2009年)、対象行政機関等には独立行政法人国立大学法人も含まれる。
      • 我が国の市場化テスト:官民競争入札が2%、民間競争入札が98%
      • 市場化テスト(民間競争入札)」で大学の事業・業務の見直しを。
      • 施設管理:設備の点検管理、警備、清掃、植栽などを1事業にまとめ、複数年度化する。専門家に諮って充実。経費節約・サービスの質向上。統合・複数年度化することで入札関係業務の効率化に。
      • 有識者による第三者委員会(監理委員会)の助言・チェックを受ける
  • 施設管理・運営の経費削減等の例
  • (公共サービス改革法による)市場化テスト(民間競争入札)とは
    • 普通の入札とどう違うのか。
      • 対象事業・業務を学内関係者が改めて見直すことから始める
      • 入札実施の「標準例」を総務省で作成。(競争性や業者の創意工夫などサービス向上の視点)
      • 有識者による第三者委員会(監理委員会)の助言・チェックを受ける(監理委員会の小委員会で入札実施要項を確認し、公認会計士・弁護士・大学教員がアドバイス。要項案の審議は1度)
  • まとめ
    • 入札事務・内部関係者だけでは、その事業の見直しや入札に関する情報収集、競争性を高める工夫が限定される。
    • サービス事業の「経費の削減とサービスの向上を図る」には、市場化テスト(民間競争入札)の活用が有効
    • 長年の入札充実のノウハウによる要項案づくり。専門家のチェックを受けることで要項案が充実。
    • 事業、業務を改めて見直すきっかけに。
    • 競争性を高める。
    • 経費削減・サービスの質向上を。
    • 契約事務の省力化
  • 質疑応答
    • 良い制度だと思うが、アンケートの満足度は90%となっている。残りの10%をどのようにするかが課題と思うが、どうか。
      • 様々な事業を実施するので、全て満足というわけにはいかない部分ではあるが、概ね満足いただいているのではないか。
    • 市場化テスト自体は良い制度だと思うが、具体的な費用などはどの程度かかるのか。
      • 基本的に小委員会は東京で開催される。各大学の担当者が小委員会での審議の折、旅費等の実費のみがかかる。コンサルティング料などは要しない。

主に国立大学法人が対象の内容だと思いますが、調達関係業務の効率化に「市場化テスト」が有効活用できる可能性との講演でした。講演者の仁木さんが文科省から内閣府に出向している点もポイントです。
国立大学法人の場合、大学の規模にもよりますが広大な敷地・施設を保有しているケースが多いと思われ、維持管理コストだけでも相当の金額になルことは容易に想像できます。市場化テストを通じて、民間競争入札を活用した適切なコストでの業務委託実現は、運営費交付金が削減され続けている国立大学法人の経営に大きなインパクトがあると感じました。

-討議(大森不二雄教授、村山典久氏、仁木俊二氏)

    • 大学で入札を行なっているが、市場化テストを活用する場合、パッケージ化や複数年化することが大切だと書かれているのだが、それ以外に委員会などでは具体例をもう少し教えて欲しい。
      • 業務の複数年化と包括化の話が出たが、それ以外に分割するという例もある。それぞれの業務が個別に大きく、包括化することで事業全体の規模が大きくなると体力のある事業者のみになってしまい、1社応札になるケースがある。その場合分割した方がメリットがでるので、そうした点を小委員会ではアドバイスする。基本としては今のようなケースもある。小委員会では柔軟に中身を見ていると思われる。
    • RPAの仕組みは業務の改善に繋がると思うが、各ユーザーがやってみよう・使ってみようと思うのが大事。ユーザー側が自動化にあたって推進しようとする仕掛けが必要だと思うが、どうか。
      • 現在市場にあるRPAでも自分たちで作るものもあれば、業者に開発を委託するケースもある。各大学によって事情が異なるが、自分たちで開発していきたいという意見が多い。20〜30代の若手職員、女性職員が推進するケースが多い。ユーザビリティはどのソフトウェアでも機能面比較は重要だが、厳密な比較などをやるのではなく、まずはデモを含めたテストなど、実際のシステムに触れてみることから始めるのが良いと思う。個別大学の職員のICTリテラシーによって異なる。東北大のような大規模大学の場合、部局によっても異なると思うので、全学的導入をいきなり考えなくても良いかもしれない。少なくともMicrosoft Officeが使える程度の知識は必要。RPA作成にあたっても、業務フローが簡易に構築できるケースであれば問題ないが、附属病院業務などの場合は電子カルテなどの専門的知識が必要になるので、そういった内容であれば外部の専門業者の支援が必要である。
    • RPA化対象業務の選定事例について、RPAに向くものとそうでないものがあると思う。具体的な選定作業の手法を教えて欲しい。
      • 個別の大学によって異なるが、この事例ではまずデモを見せた。また6つのコンポーネントを提示し、転機・情報収集・データのチェック・メール操作・大量印刷などがないか?と問いかけた。その問いに対して、RPA化できそうなものを出してもらい、その内容をコンサル側でできる・できないを判断していった。一番進まないのは、洗い出しが進まないケースである。その場合にはコンサル側が業務ヒアリングを行い、コンサル側が洗い出しを行ったケースもある。これは非常に時間がかかる。事業体によって洗い出しのレベルは異なるが、国立大学法人・大規模私立大学はスムーズ。小規模の私立大学の方が戸惑うケースが多かった。このケースでは課長級が会議に参集され、各課で情報を収集していた。
    • RPA導入にあたり、ルールというか業務フローの整備が先ではないかと思う。実は業務フロー整備ができているかいないかが重要なのではないかと思うが、どうか。
      • 学内の業務標準化がなされていた方が早い。ある大規模大学で部局の会計業務を本部に集約したかったが、部局ごとにバラバラだった。まずは業務の標準化をする必要があったが、RPA化とあわせて実施したので、大きな削減効果があった。
    • 国立大学や大規模私大で業務標準化を行うのは相当のパワーが必要なので、まずは部局別に初めてそこから広げていく手法が良いのでは。
      • 市場化テストを使うことでコスト削減に繋がった事例があると思う。これが国立大学に広がっていかない理由は何か。市場化テストを大学側がさらに活用するためには何が必要なのか。
    • 全体的にはいい仕組みだと思うが、個別のケースに応じて状況が変化することはある。例えば東北大学の場合、規模が大きいゆえに包括化が難しい面がある。
      • しかし、中小の大学は地方所在のことが多いので、そもそも応じられる事業者が少ないということもある。これは個々の職員が「やる気がない」訳では決してないが、様々な部局で働く職員がアイデアを出していくと良いのではないか。色々やってみて、1社応札が回避できず、市場化テストを取りやめたケースもある。また、各大学の担当者が「新しいことに取り組むと仕事が増える」という認識を持っていることも広がらない一因もあると思う。
    • 導入時の洗い出し作業と同時に、実際に使用者がトレーニングを受けていたという話だが、こうしたトレーニングコースの期間・所要経費などはどの程度か。
      • 職員が作っていく場合、トレーニングは必要。職員のスキルセット、大学の懐事情によるが、一番お金がかからないのはeラーニングでの学習だが、スキルセットの高い人が受講するケースが多い。これは無償である。その次は3日の研修+eラーニングの組み合わせ。これは数十万から100万円程度。その次はPOC・実証実験。3日間の研修を受けたのち、簡単なRPAロボット作成を行う。その後に実際の運用をしてみて、ということ。RPAのシステムに関しても、大学の規模などに応じて最適なソリューションを設定することが重要だと思う。役員・現場の両方が必要性を認識している場合、導入がうまく進むと思われる。
    • 例外的な業務書類の場合、RPAはどう動くのか。
      • 実際にそうしたケースは結構ある。RPA導入しても、1割程度はデータ投入できないケースもある。RPA作成を改善して解決するケースもあるが、例外の場合の作業手順を把握しておくことが重要。
      • Web上からデータ取得する場合などは例外処理が起きにくいが、属人での作業が介在する場合には入力ミス等の可能性を排除できないので、その点は難しい。
    • RPA化の業務洗い出しで、業務平準化の話が出た。東北大学でも業務平準化の必要性は認識しつつ、部局によって文化が異なることは苦慮している。RPA導入を進めるにあたり、標準化を浸透していくやり方などもあると思う。事例などあれば教えて欲しい。
      • 業務標準化とRPAは並行して進むケースもある。ある企業での事例だが、RPA導入にあたってRPA導入・業務改善・業務標準化を三位一体で進めていたケースもある。加えて業務必要性を洗い出し、事業継続性についてのコンサルティングなどを行なっているケースもある。

以上、業務改善についての興味深い話を聞くことができました。特にRPAについては以前から興味を持って情報を収集していたので、概要だけでも分かったことは収穫です。RPA活用によって業務効率化は図れると思いますが、以前当ブログでも取り上げた「大学マネジメント・業務スキル基準表」の活用など業務プロセス可視化とセットで考えないと、導入しても失敗する可能性が高いことが想定されます。業務構造の質的転換のためにもRPAをきっかけにしたアプローチは今後増えていくでしょうが、業務プロセス可視化とセットであることは重要なポイントです。また電子決裁システムの導入なども可視化に必要なプロセスだろうと考えられます。

high190.hatenablog.com
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まず業務の可視化に手を付けないとRPAのようなテクノロジーの恩恵を受けることすらできないこと、大学マネジメント層がここに目を向け、RPA活用も含めた業務改善のビジョン・アクションプラン策定を行えるか否か。少子高齢化時代を生き残れる大学かどうか、大きな分かれ目だと考えます。先だってご紹介した吉武先生の記事に核心を突いたコメントがあるので、以下に引用して終わりにします。

「業務の可視化」は業務改革における最大の課題であり、ITベンダーやコンサルティングを活用したとしても、業務担当者が当事者意識を持って能動的に関わらない限り、期待通りの成果を得ることは難しい。業務改革の経験に乏しい大学にとっては、RPA導入に当たっての最大の関門になると思われる。そのためにも、業務改革がなぜ必要か、RPAとは何か、組織と個人に如何なるメリットをもたらすか等について、担当者の理解を得るまで根気強く説明する必要がある。加えて、基礎的な業務分析手法の習得を含めた研修を行う必要がある。

*1:2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)について http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/11/1411368.htm

東北大学PDプログラム「特色ある大学を創るために「理念駆動型」の組織マネジメントを」に参加しました

high190です。
10月27日(土)に東北大学で開催された標記セミナーに参加しました。参加記録のメモを公開します。
以下の記録はhigh190が聴講した際に記録したメモです。主観が入っていること、内容に誤りが含まれる可能性があることを予めご了承ください。

特色ある大学を創るために「理念駆動型」の組織マネジメントを(出展:東北大学高度教養教育・学生支援機構)

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開会挨拶 杉本和弘副センター長

  • 柳澤先生は前回のLADでアドバイザーを務めていた。組織を動かすにあたって推進力を内蔵した理念駆動型のマネジメントを学んでいってもらいたい。

特色ある大学を創るために「理念駆動型」の組織マネジメントを

  • 現状認識
    • 愛媛大学を辞めて4年になるが、愛媛大学の教職員には理念を大事にする文化があったように思う。現在は岡山理科大学で学長を務めているが、今日のセミナーでお話するのは愛媛大学にて取り組んだ事例である。
    • 吉武博通先生がカレッジマネジメントで連載されている"大学を強くする「大学経営改革」"は有益な示唆が多く含まれているが、Vol.212 Sep.-Oct.2018の「政策を見据えつつ現場主導の改革を−大学は高等教育政策にどう向き合うか」にて分かりやすく論点が整理されているので、抜粋してご紹介する。
      • 「瑞々しい感性や活力を失いつつある。」
      • 「政策を鵜呑みにするのではなく」
      • 「自校の課題と結びつける」
      • 「政策をどのように運営に活かせば大学をより良い方向に向かわせることができるか」
    • 吉武先生には岡山理科大学の外部評価委員をお願いしている。中長期計画などもガチガチにしてしまうとダメ。ストーリー性のある計画が欲しいとのご意見を踏まえて、岡山理科大では計画を策定するようにしている。
    • 「理念駆動型の組織マネジメント」とは
      • 「理念駆動型」となるためには、国の政策の字面を鵜呑みにするのではなく、その背景にある理念を批判的に取捨選択して自らの理念を打ち立て、それに基づいて実行することが肝心である。
      • 政策が揺らぐ現状では、大勢順応型であるよりは「異端」とみなされようとも軸がブレないことの方が大事ではなかろうか。
  • 自己紹介
    • 愛媛大学で大学教員として30年近く勤務。*1
    • これまででのキャリア
      • 平成11〜13年度(大学教育総合センター員)課題:教養部廃止後の共通教育の当て直し
      • 平成12〜16年度(評議員、理学部長)課題:国立大学法人化対応、理学部の教育改革
      • 平成16〜17年度(学長特別補佐、企画・評価担当理事)課題:大学憲章草案作成、法人化後の制度設計、学長が外部評価委員から「愛媛大学の特色を一言で」と言われて答えられず、大学憲章の制定に動いた。こうした経験から大学の理念・制度設計に関係する機会があった。
      • 平成18〜20年度(教育担当理事)
      • 平成21〜26年度(学長)
      • 平成27年度〜岡山理科大学学長
  1. 愛媛大学の概要
    • 7学部6研究科からなる地方国立大学。
      • 7学部と4機構(教育・学生支援機構、先端研究・学術推進機構、社会連携推進機構、国際連携推進機構)縦割りになりがちな学部に対して横軸としての機構。
      • 学長在任中、学内の委員会をすべて廃止し、教育学生支援会議に統合した。審議機関はこれだけ。委員として各学部からは副学部長クラスが出てくるため、各々の責任に応じた対応を求め、「学部に持ち帰って」ということをできないようにした。
      • 教育企画室の設置にあたって、通常事務組織は横並びにするのが普通だが、教育企画室に関しては機構長直属にした。
      • 学部横断的な研究センターの設置。センター数は多いので、研究者は兼任で対応。
    • 愛媛大学の3つの教育・研究拠点
      • 文科省の政策として拠点への資金投下を行っている。愛媛大学でも教職員能力開発拠点が教育関係共同利用拠点に認定された。全国の学長アンケートで上位に入ったが、評価が高いのは愛媛大学教育企画室メンバーは全国の中小規模大学で経験を積んだ者が多いことも影響していると想定。
      • 環境や生命などの得意分野において世界レベルの研究を発信するとともに、他大学から注目される教育、FD/SDを実施している。
  2. 教育改革と教職員能力開発
    • FDの定義とは?(学士課程答申の定義)
      • 授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取り組み。
      • 私立大学では私立大学党改革総合支援事業でFDへの参加率を求められる。しかし、愛媛大学ではFDポリシーを定義し、授業の改善(ミクロ・レベル)、カリキュラムの改善(ミドル・レベル)、組織の整備・改革(マクロ・レベル)の3種に分けて実施している。これは既にSPODで四国地域には定着した概念である。
      • FDポリシーをベースに、教育改革(教育コーディネーター制度)、能力開発(教育企画室)、両者の統合的実践とネットワーク化(ミドル・レベルのFD、SPOD、教育関係共同利用拠点、ミクロ・レベルのFD)
      • FDポリシーの拡大:FDからPD(Professional Development)へ
      • 能力開発(PD)に重点を置いた愛媛大学独自のテニュア・トラック制度の導入。
    • 上記施策の実行で、高等教育開発者に対しての「活躍の場」が与えられた。
      • 現在の教育企画室の体制
      • 小林直人室長・教授、中井俊樹副室長・教授、村田晋也講師、仲道雅輝講師、竹中喜一特任助教、上畠洋祐特任助教
      • 阿部光伸講師(学生支援センター兼任)、高橋平徳講師(教職課程センター兼任)、丸山智子講師(学生支援センター兼任)

(過去の所属教員)佐藤浩章(現・大阪大学全学教育推進機構教育学習支援部准教授)、秦敬治(現・岡山理科大学副学長)、山田剛史(現・京都大学高等教育研究開発推進センター准教授)

      • 特に佐藤氏、秦氏は愛媛大の経験があって全国的な活動ができるようになった面もあると思う。
    • 段階的・継続的なFD活動開発
      • SD活動でも職員が講師をやっているのはメリットがある。自分たちの一歩前を行く人が講師であること、自前ならば講師代がかからないこと。
      • 教育企画室がネットワークリーダーとしての機能を持つようになった。
    • 教育コーディネーター制度
      • 各学部・学科の教育責任者。教育重点型教員。各大学での教務委員に相当するが、標準任期は4年に設定している。通常の教務委員では忙しい若手教員が短期(1〜2年)で交代するため、教育改善につながらない。専門性を高めるために「教育コーディネーター研修会」を年4〜5回実施。外部講師招聘。ファシリテーター教育企画室員が担う。
    • 教育改革と能力開発の統合的な体制づくり
      • 全学的視点で教育改革を議論し、実践できる体制を確立する
      • 全学レベル及び学部レベルで教員の役割分担を明確にする
      • 学部・学科における教育責任者の存在を明確にする。
      • 全学機能を強化するための専門的人材を配置する。
    • SPODの開発、SPODフォーラム*2
    • 愛媛大学テニュア教員育成制度
      • 3年間で100時間の研修プログラムを受講。教育能力開発プログラム、研究能力開発プログラム、マネジメント能力開発プログラム(会議マネジメントが入っていることが興味深い)、総合プログラムから構成。
    • 日本ではテニュア・トラックを文部科学省の研究3局(科学技術・学術制作局、研究振興局、研究開発局)が主管しているため、高等教育局が手を出しにくいのではないか。現在の助教制度は5年程度の任期を付されていることが通例だが「非常にけしからん」制度。若手研究者に対してのサポートが全くない。テニュア・トラックはもっと普及してほしい制度。
  1. DPと学生コンピテンシー
    • DP=学位授与方針、卒業時に達成していることが求められる到達目標。
      • 全学DPを作ろうとすると、学位の専門分野との相当関係において、学部・学科には意味があるが、総花的な内容にしかならないので全学DPにはあまり意味がない。(認証評価用には作る必要があり、愛媛大学でも整備は行った)
      • 現在、アセスメントポリシーの議論がなされているが、4つのポリシーで整合性が取れていなければならないが、DPは実現可能なものでなければならない。
      • よって、愛媛大学では全学DPではなく「愛大学生コンピテンシー」(平成24年7月制定)を制定し、学生として目指すべき方向目標(目指すべき方向)を示した。これは大学側が学生が人間としてトータルに成長することを支援する決意表明をしたもの。
    • 準正課教育(co-curricula)
  2. 地域人材の育成
  • 愛媛大学における地域人材の育成
    • 地域の発展を牽引する人材の養成、地域社会の自律的発展に貢献
      • 地方の大学は地方活性化を企図して設立された事例があるという認識(当時の学長)
      • 憲章に地域人材育成を組み込んだところ、各学部・学科がコース制で特別教育コースと研究センターの設置を進めた(大学執行部からの指示ではない)、こうした取り組みを基盤として文理融合型の新学部「社会共創学部」を設置(平成28年4月)
    • トランスディシプリナリー・アプローチ
      • 研究者が多様なステークホルダーと共に現状分析と問題の原因探索を行い、それを解決するための課題を設定し、その課題解決のための研究を企画し(Co-design)、協働で課題解決のための取組みを実施し(Co-production)、実施の成果を社会に還元して(Co-delivery)、社会の課題を解決しようする手法。
      • 学部ができた際に学部長や学科長が「社会共創学概論」を発行した。


理念を駆動させる仕組み作りなど非常に興味深いお話でした。日本の大学の場合、理念を立てるところまではできる、しかし駆動させる仕組み作りまで行うのが苦手な印象を持っていましたが、愛媛大学は高等教育機関として理念を駆動させる制度の実装過程が可視化されていると感じました。特に、その駆動を担うのが教育企画室であり、学内の総合的教育支援組織として各部局を支援している体制は非常に興味深かったです。
別の機会に書きたいと思いますが、9月末にカナダ・オンタリオ州のクィーンズ大学に訪問調査をしてきました。その際、訪問先だったのが"Centre for Teaching and Learning(CTL)"という組織です。いわゆるScholarship of Teaching and Learning(SoTL)*3を担う組織です。

Home | Centre for Teaching and Learning

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Queen'sのCTLでは各々専門性を持ったPh.D保有のEducational Developer*4が学内の総合的教育支援を担っていました。これと同じ機能を愛媛大学では教育企画室が担っています。愛媛大学では機構長(教育担当理事)の下に教育企画室が置かれていますが、Queen's UniversityではVice-Provost(Teaching and Learning)の下にCTLが置かれており、こうした役割には共通性があること、理念駆動型マネジメントの態様は各国制度の違いを超越している可能性があること、理念駆動の仕組みが大学の教育改革に繋がるのであり、その中でEducational Developerが所属する機関が理念を現実化させるための駆動役を担うモデルがあることなど、柳澤先生のご講演から海外大学調査の気づきを深めるいい機会になったと思います。
日本における理念駆動型マネジメントを推進する上でのカギは日本版SoTLの開発とともに、冒頭で柳澤先生がおっしゃっていたように「国の政策の字面を鵜呑みにするのではなく、その背景にある理念を批判的に取捨選択して自らの理念を打ち立て、それに基づいて実行することが肝心」なのだと思います。そのためにも政策立案能力と教職協働を推進できる専門性を持った職員の存在が今後、より重要であることは間違いありません。

*1:https://www.univcoop.or.jp/about/interview/vol26.html

*2:愛媛大学のSPODについては2018年度の大学行政管理学会での報告を是非ご参照ください「愛媛大学のSD事業はなぜ継承できているのか?」http://high190.hatenablog.com/archive/2018/09/06

*3:SoTL関連論文「ポスト・ボイヤーのスカラーシップ論」 http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN0006957X-00000079-0001

*4:https://www.queensu.ca/ctl/about-us

平成30年度第22回大学行政管理学会定期総会・研究集会に参加しました

high190です。
桜美林大学で開催された研究集会に参加したので記録メモを公開します。今年のテーマは「未来予想図を描こう」です。なお、2日間のプログラムの流れについてTogetterでまとめられていますので併せてご確認ください。私の記録メモは2日目の分科会からの記述となります。

2018年度第22回定期総会

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togetter.com

分科会1 テーマ:「大学職員とJUAMの国際化~これまでの20年、そしてこれからの20年~」

「国際化の沿革と学会創設から10年ぐらいまでを振り返る〜アメリカの大学行政管理職員(アドミニストレーター)を目指して〜」澤谷敏行氏(元・関西学院大学国際連携機構事務部長、中国蘇州大学外国語学院訪問教員)

  • JAFSAでの取り組み
    • 中国留学から戻った段階でJAFSA*1に参画した。そこからJUAMが発足したため入会。JUAM第1回大会でも中国の大学行政管理について発表。学会の先輩にはJAFSAで活躍した人が多く、学会自体が国際化と切り離せない状況だった。
    • 現在でもJAFSAは大学の国際交流団体の窓口を務めている。JAFSAとJUAMは競合関係ではなく役割分担する存在。米国での1ヶ月間の研修で国際交流を学んだ。
  • 米国の国際交流の基本姿勢
    • 楽観主義
    • 柔軟性(規定に縛られない柔軟性)
    • 地方分権主義(州単位)
  • 日米の比較
    • 日本の職員と比較すると職員の裁量が多く、かつ専門性が高い。ディレクターはPh.D保持者。
  • 国際交流組織の運営方式。
    • 日本は出島方式で国際交流部門が担当。海外交流にはモジュール型組織(アメリカ型)が適合的だが、日本型組織との摩擦がある。若いうちからスペシャリティを求められる部局で育成された人材を、その後の異動等でどのようにして管理職まで育てるのかという問題がある。
    • 田英夫教授は関西学院大学経営戦略研究科の恩師。
  • 高等教育のビジネス化、学会国際委員会の方針
    • 世界の大学の変化。MBAは基本的にどの国も英語で開講されており、他国での分校設置等も目立つ。JUAMとしては2005年にAUA*2と協定を締結。韓国の大学団体とも共同体制を打ち出した。
    • 学会の当初目標を見失わないための組織(海外大学を見て日本の大学を見つめ直す)
  • 国際委員会の目的
    • NAFSA*3の職員を見ると官僚主導型の高等教育は終わりを告げている。

JUAM創設時からの経緯等も含めた国際交流に関わるお話でした。澤谷さんは現在、中国の蘇州大学にて日本語を教えているそうで、長く国際畑で培ってきた力を教育に投ずる姿勢に職員として尊敬の念を覚えます。個人的にJUAMとJAFSAの関係について詳しく聞きたかったので、興味深くお話を伺いました。
澤谷さんはその他に大学職員に関する書籍も出されているので、ここで紹介します。

続 大学職員のための人材育成のヒント: 失敗事例から学ぶ若手・中堅職員の視点28

続 大学職員のための人材育成のヒント: 失敗事例から学ぶ若手・中堅職員の視点28

大学職員のための人材育成のヒント: 失敗事例から学ぶケースワーク28の視点

大学職員のための人材育成のヒント: 失敗事例から学ぶケースワーク28の視点

大学教職員と学生のための中国留学・教育用語の手引き

大学教職員と学生のための中国留学・教育用語の手引き

「大学職員とJUAMの国際化〜これまでの20年、これからの20年〜」高橋史郎氏(早稲田大学国際教養学部事務長)

  • 大学訪問歴
  • 杉原千畝
  • 留学生に対する現場の感受性
    • それぞれのストーリーを持って日本にくるので寄り添う姿勢が大切。
  • 早稲田の事例
    • グローバル化の到達点は
    • 809大学と協定、8箇所の海外拠点
    • クォーター制
  • 留学生のグローバルな移動
    • 学生の異動はボーダーレスに。異動過程において越境しながら言語と専門知識を習得するで自らの付加価値を着実に高めていく。
    • グローバルな学生のモビリティを柔軟にキャッチするアドミッション制度が非常に重要。留学生受け入れ先進国に遅れを取らない高い開放性と融通性。
    • 専門の海外リクルートチームの編成
    • web出願
    • 常時出願受付、早期出願受付
    • 海外拠点利用入試
  • 現代的課題
    • 病気、メンタルヘルス、人間関係、学習障害LGBT
    • 特別な配慮が重要
    • 特記事項、特別配慮以来はアメリカ、イギリスなどで先行
    • 早稲田として何がどこまでできるかを明示して協定校と協議
  • ミッションの共有
    • 一人一人がミッションについて自問自答→その集積が大学の答えになる→構成員がシンプルな言葉で共有→理想の留学生→Marketing→Recruiting→Enroll Management→Branding
  • 送り出す学生へ
    • 「痛い目」にあってもらいたい。チャレンジする姿勢を大学としてサポート。
    • 「知識を与うるよりも感銘を与えよ。感銘せしむるよりも実践せしめよ。」(坪内逍遥

これまでの大学職員生活の全てを国際関係部門で過ごしてきたプロフェッショナル。海外大学訪問歴からも分かりますが、普通なら行けない大学も訪問されています。*5自著で「世界七五か国で百五十以上の大学を訪れる」と書かれているように、留学の受け入れ・送り出しを通じ、日本の大学の国際化を牽引されてきた方ですね。
お話の中で優秀な留学生の獲得競争について触れられていました。他国と比較したリクルーティングに資する制度改善は重要な指摘だと思います。現在、高大接続改革が議論されていますが、こうした視点も中教審にはフォローしてもらいたいところです。また、開放性と融通性を挙げていらっしゃいましたが、4学期制(クォーター制)の全学標準化やサマースクール、サマーセッションを導入など、教育の質保証に繋がる教学マネジメント面のお話も伺いたかったです。
ミッション共有について非常に分かりすく構造化した図を示されていました。私の方でも作成してみたので参考まで提示します。
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世界の大学―知をめぐる巡礼の旅 (丸善ブックス)

世界の大学―知をめぐる巡礼の旅 (丸善ブックス)

若手海外派遣事業-海外大学調査研修-橋下規孝氏(立命館大学グローバル教養学部設置準備室課長補佐)

  • テーマ
    • 欧州の大学職員におけるモビリティとモチベーションの関係性
    • 対象者:人事部及び教学部門の管理職、教学部門に属するモビリティ経験のある実務者、図書館員など
  • 訪問先
    • ウプサラ大学、SUHF*6スウェーデン王立工科大学、AUA、マンチェスター大学
    • 派遣者5名のうち、4名は米国を希望。ただ欧州への派遣が決定したので、欧州の特徴を理解できるように複数国への訪問を決定。
    • 渡航にあたってメンバー間での意見交換等を積極的に実施。大学職員のグローバル化を考えることの意義があった。

JUAM20周年記念事業で海外大学調査に行かれる橋本さんからのお話でした。私も今度カナダに訪問調査しに行くので、事前準備でのご苦労などについて分科会終了後に質問させていただきました。訪問大学の選定やアポ取りまで全て自分たちで行なったそうです。大きな労力だったと思いますが、それ自体も大きな経験になることは間違いありません。個人的には国際委員会やJUAM事務局側での支援体制がもう少しあると、受講者負担が軽減されてリサーチベースの活動ができるので、次回以降の課題なのかと思います。(それこそJAFSAの協力を得るなどのサポート体制はあってもよいのでは)是非、後日訪問の記録を伺いたいなと思いました。
また、分科会を通じて共通の問題意識であった「国際交流部門の出島化」を打破するために、海外大学訪問時の留意点やポイントなどをまとめ、JUAMを通じて公に提示することも大切かと思います。

「JUAM国際委員会の活動状況」立命館アジア太平洋大学リサーチオフィス課長 篠崎裕二氏

  • バックグラウンド
  • 問題は何か
    • 大学の国際化に関して国際交流部門が出島化している。この点に関して大学自体が自分ごととして捉えていかなければならない。また、日本の高等教育全体でも捉えなければならない。

国際委員会の活動概要についての報告。篠崎さん自身、大阪外国語大学インドネシア語を学び、インドネシアに赴任してこともあるとのこと。大枠の話だったので特筆することは特段ありませんが、国際交流部門が出島化している件は分科会を通じて課題として挙げられていたのが気になったところです。

議論のまとめと質疑応答 宮澤文玄氏 学習院大学学長室経営企画課長

  • JUAMの現状
    • 国内研究に特化していないか?
    • 職員が実際に海外体験をする意味
    • JUAMにおけるグローバル人材育成を担うSD研修の意義
  • 質疑応答
    • 日本の大学の国際化には通用性、開放性、交流性が重要。
    • 「今目の前にいる留学生を見よ」
    • 国内大学間でも共有化できていない部分もあるので、そうしたことを議論できる場の設定も大切。
    • 大学の国際化に関して、対応できる大学と対応できない大学の差異は何か?例えば当該大学の拠点に所在する企業で海外拠点などを持っている企業との連携方策などを通じて、国際化が進展するのではないか。

学習院の宮澤さんによるまとめと質疑応答。フロアからの意見があまり出ませんでしたので、もう少し工夫があってもよかったかもしれません。例えばコメントシートを配付してフロアからのコメントを集約し、コーディネーターが各パネリストに振るなどの方法があると、インタラクティブな議論になったかと思います。しかしながら、分科会全体を通した満足度は高く、参加してよかったと感じました。また、JUAM国際交流委員会・関東地区研究会の活動成果の一つとして、日本学生支援機構の機関誌『留学交流』の掲載論文が紹介されていました。*7

研究・事例研究発表

愛媛大学のSD事業はなぜ継承できているのか?」愛媛大学教育・学生支援機構教育企画室 上畠洋佑氏、愛媛大学教育学生支援部、愛媛大学SD統括コーディネーター 吉田一恵氏

  • 研究の背景
    • SD義務化:SDに関する業務の責任や管轄を巡るセクショナリズムの弊害や組織間の軋轢
    • 愛媛大学で継承できている理由、不定期かつ断続的に起こる字組織の現状や社会的背景を踏まえた課題を組織として克服し結実
    • 吉田氏が人事課でSD担当していたところ、教育支援部に異動した際に業務を移管した経緯。
    • マニュアルの整備
      • 組織における業務の効率化や人材育成、マニュアルを引き継ぎ時に活用、業務に関する情報や知識が継承。10年間にわたって継承できた事例は。
  • 先行研究
    • マニュアルと引き継ぎ
    • オーラル・ヒストリー(口述記録)
  • 研究方法
    • イントラビュー
    • インタビュー
    • 研究者2名での分析結果のディスカッション
  • 結果と考察
    • SDの所管を人事課から教育学生支援部に移すとき、SD業務の経験者を異動させるなど、戦略的人事の視点と働きかけを行った。その背景としては、事業移管変更後すぐにでも平常運転行わなければならない事情があった。協力して取り組む組織文化が愛媛大学には存在している。
  • 事業継承における3層構造
    • 大学組織全体の視点(部長クラス)
    • 課・部レベルの視点(課長クラス)
    • 係・個人レベルの視点(実務担当者)
    • 職務の履歴を後任にも分かりやすく残している職員の習慣「足跡型のマニュアル」が自然に引き継がれている。SPODの立ち上げによって教職員間が立場を超えて自由に発言できる関係性
  • 他大学への示唆
    • 足跡型マニュアルの試行
    • TEAによる各大学・組織の分析
    • 口承マニュアルの導入の試行

TEA(Trajectory Equifinality Approach)=複線径路・等至性アプローチという質的研究の手法を使った分析です。分析手法と先行研究はまとめがあるので、そちらをご確認ください。*8愛媛大学はSPOD事務局として日本のSD活動の先導的モデル大学です。その大学がどうSD活動を継承しているのか分析した発表でした。個人的に興味深いと思ったのは、「SPODの立ち上げによって教職員感が立場を越えて自由に発言できる関係性」が土台にあり、その上に足跡型マニュアルや口承マニュアルが形成されていった点です。
SPOD立ち上げは愛媛大学にとって大きな事業だったことが窺え、内部でも様々な葛藤があったのだと推察します。複数回に渡って組織として葛藤を乗り越える経験してきたことが、現在の強みに繋がっているのだと思います。この点は開学後に定員割れの危機を迎えて乗り越えた共愛学園前橋国際大学と共通性があるように感じました。組織の危機とそれを乗り越えた後の組織的成長に関する先行研究などあれば参照したいところです。

「地方大学におけるアメーバ経営の適応の意義–経営理念の浸透による組織改革」荒木経雄

  • 明らかにしたいこと
    • 厳しい経営環境に置かれている大学経営について、大学特有の組織構造を踏まえ、2010年に経営破綻したJALを再生に導いた京セラ稲盛会長を参考に。
    • 京セラフィロソフィによるアメーバ経営の大学経営への適用について考察。
  • 経営理念の構成要素
    • 上位概念(理念):不変
    • 下位概念(方針):柔軟に変化
  • 経営理念浸透の浸透方策と効果
    • 一時的メカニズム(行為的シンボル)
      • 社長自ら末端の現場で指導することがある
      • 重要な意思決定が、理念や社是のもとに行われる
      • 課長研修のように、ミドルに理念や社是を刻み込む制度がある
      • 経営理念や社是に忠実な人が高く評価される
    • 二次的メカニズム
      • 社長の年頭挨拶や経営方針の発表会
      • 理念や社是にまつわるエピソードが、社内のあちこちで語り継がれている
      • 理念や社是を伝えるパンフレットがある
      • CIが導入された
    • トップが姿勢を見せる、その姿勢を見た管理職の姿勢を末端の教職員は見る。アメーバ経営には、経営者意識を持ったリーダーが不可欠。アメーバ経営の独自性の一つである「時間当たり採算表」。小さなユニットでも一人一人が経営意識を持たなければならない。
    • JAL再生でのアメーバ経営導入の効果とは
    • 組織改革:意識改革・ヒトづくり推進部を設置した。役員全員と部長クラスの経営幹部を対象にしたリーダー教育から意識改革を開始。
    • 単なる労働者ではなく、経営者意識を持つことができるようにしたこと。意識改革。
  • アメーバ経営による再生要因
    • 6つの原則
      1. 自社の文化は自社で作る
      2. リーダーから変わる(リーダーの意識が変われば部下の意識も変わる)
      3. 全社員の一体感を持たせる(本社と現場にいる社員の接点を増やし、ベクトルを揃える)
      4. 現場社員のモチベーションを少しでも高める(現場社員の努力を認め感謝する)
      5. 変化を起こし続けることで本気度を示す
      6. スピード感を重視する(必要なことは一気呵成に実行する)
  • JAL再生におけるフィロソフィ作成およびその浸透過程を参考に、建学の精神見直しのプロセスの提示
    1. リーダー教育の実施
    2. 管理職教育の実施
    3. 「建学の精神見直し検討委員会」の設置
    4. 具体的な見直し作業
    5. 外部環境変化、内部環境変化
    6. 伝わりやすさと分かりやすさ
  • 質疑応答
    • 龍谷大学アメーバ経営を実践している訳ではないが、研究テーマとして大学経営に活かせるのではないかと考えている。

京セラが行っている「アメーバ経営」の優れた点を整理し、大学経営に適用した場合を仮説ベースで研究的にアプローチした発表です。勉強不足でアメーバ経営の概念自体知らないことばかりでしたので入門的部分から説明があり、理解しやすかったです。企業の経営理念に対して私立大学には建学の精神がありますが、特に経営理念浸透は参考にできる内容だと思います。戦略経営のポイントは、各施策が相互調整(アライメント)されていることで、東北大学の大森不二雄教授は「今後の大学経営及び経営人材の在り方を4つのキーワードで表せば,「システム的統合(systemic alignment)」「可視性(visibility)」「流動性(mobility)」「戦略経営(strategic management)」となる。」と述べており、この点も重要です。*9
また、学校法人のアメーバ経営実践例は少ないですが、専門学校での導入例があるので実際の効果と課題を知りたいところです。*10

「大人数を対象とした参加型オリエンテーションの試み」京都産業大学 中原正樹氏

  • 概要
    • 大学視点のオリエンテーションに対し、学生目線での改善を実施。具体的にはオリエンテーションの実態を構造化して、説明事項を分解して事前に提示するとともに、疑似的な反転授業を実施して効果を測定。
  • 背景
    • 大学視点のオリエンテーション
      • 説明が表層的で「なぜ」が伝わっていない
      • 情報や説明時間の増長で集中力が持続していない
      • 学生の理解度にバラつきが発生している
      • 環境の変化(学年歴の狭量化、カリキュラムの複雑化、学生像の多様化)
  • 取組み
    • 環境の変化に対応する改善策の検討
    • 入学前の導入オリエンテーション
      • プレイスメントテスト実施日に「履修要項確認テスト」を配付。学生に学修を指示。
      • オリエンテーション当日スマホを活用した疑似反転授業を実施
    • 学生履修アドバイザーの活用
      • 学生履修アドバイザーを7名配置。事前説明会で趣旨・対応スタンスを共有。
      • 当日に登壇して自己紹介、名札着用。
      • アドバイザーは教員からの氏名・推薦、法学部として15名ほど。
      • 履修アドバイザーは法学部の独自制度。
  • 振り返り
    • 学生の反応
      • 質問内容に質的変化
      • 相談先の主体が変化
      • 相談学生のグループ化が進行
  • 質疑応答
    • (質問)実際の運用上でスマホを持たない学生へのフォローなどはどうしているか
    • (回答)アクセスできない学生には紙媒体でフォローしている
    • (質問)初めての試みとのことだが、来年度以降も継続するのか?他学部ではどのように受け止められたのか。
    • (回答)筆者が法学部事務室所属時に試行的に運用した制度。今後の方向性については現時点では未定。
    • (質問)履修要項確認テストの効果検証として、学生の履修制度への理解度がどの程度深まったかの測定などは行ったか。また、具体的な改善効果はあったか。
    • (回答)測定までは行えていないが制度への理解に関しては一定の効果。

各大学で毎年行われている新入生オリエンテーションに関し、全体構造を分析した上でアクティブラーニング要素を取り入れた改善事例の報告です。私も前職で入学前教育を担当していたため、興味深い実践事例でした。スマートフォンを活用した疑似的な反転授業形式、学生スタッフの活用についての実践事例です。今後の継続性は未定とのことでしたが、全学的な導入に繋げていけることを期待したい取組みです。なお、本研究は機関リポジトリから論文を閲覧可能です。*11

「「未」見える化分野の見える化–新任理事ハンドブック作成の試み–」大学経営評価指標研究会

  • 新任理事ハンドブック研究背景と問題意識
    • 「大学ガバナンスの制度・仕組み・運用に関する実態調査」の考察
    • 理事が最低限知っておくべき知識の体系化
  • 研究目的・手法
    • 民間企業における新任取締役研修の視点の調査
    • 視点別にチェックリスト化
  • 新任理事ハンドブックの内容案
    • 大項目8分類、中項目29分類、小項目90分類に整理
    • 大分類
      1. 理事として配慮すべき価値観・倫理観
      2. 学校法人及び大学の仕組み
      3. 本学について
      4. 理事の業務と報酬
      5. 本学の理事会の運営方法について
      6. 学校法人会計と財務
      7. 教育・研究を見る視点
      8. 大学の組織文化・教職員状況
  • 活用方法
    • ハンドブックを作成して、かつ内容の理解を深める実質化が重要
  • 考察・課題
    • 大学別のカスタマイズは必要。ハンドブックはコンパクトにまとめる必要がある。既存のファクトブック等の資料も連携活用。

新任理事向けのハンドブック作成の試みに関し、報告がありました。興味深い反面、私立大学対象のハンドブック作成の話題ですが、国立大学財務・経営センターが発行している「国立大学法人経営ハンドブック」は参考にしないのかな?と素朴な疑問を感じました。
もっと突っ込んだ意見を述べると、国立大学法人はハンドブックを作成して理事者等への普及を図っているにも関わらず、国立大学経営力戦略*12を踏まえた経営力の強化を国・産業界から強く求められています。ハンドブックはあくまでもツールであり、理事の経営力を高めるトップマネジメント研修の実質化が本質的な課題だと思います。最近では文部科学省イノベーション経営人材育成システム構築事業」により大学トップマネジメント研修*13が、日本私立学校振興・共済事業団によって私学リーダーズセミナー*14が開催されています。諸外国の大学でのリーダーシップ開発の先行研究をまとめた論文*15もありますし、ハーバード大学の学長向けリーダーシップ開発研修*16への新任者派遣なども考えられます。

「国立大学法人経営ハンドブック」第1集 | 独立行政法人 国立大学財務・経営センター
「国立大学法人経営ハンドブック」第2集 | 独立行政法人 国立大学財務・経営センター
「国立大学法人経営ハンドブック」第3集 | 独立行政法人 国立大学財務・経営センター

以上、簡単に振り返ってきましたが今回の研究集会でも実り多い時間を過ごすことができました。来年度の定期総会・研究集会は東京都渋谷区の実践女子大学渋谷キャンパスにて開催されます。また来年度にお会いしましょう。

*1:特定非営利活動法人JAFSA(国際教育交流協議会) http://www.jafsa.org/

*2:Association of University Administrators https://aua.ac.uk/

*3:NAFSA: Association of International Educators https://www.nafsa.org/

*4:明言されませんでしたが、恐らく金日成総合大学 https://goo.gl/dbGJRS

*5:国際交流のプロ人材組織として幅広いネットワークを駆使し留学生30万人計画のハブとなる (特定非営利活動法人 国際教育交流協議会(JAFSA)常務理事早稲田大学 留学センター 調査役 高橋史郎) http://www.tokyu-nasic.jp/nasic_release/nasic_release_theme/data.php?number=20&eid=00150

*6:Association of Swedish Higher Education Institutions http://www.suhf.se/

*7:大学行政管理学会におけるグローバル人材育成を担うSD研修-関東地区研究会の活動を中心に- https://www.jasso.go.jp/ryugaku/related/kouryu/2018/__icsFiles/afieldfile/2018/08/08/201808miyazawabungen.pdf

*8:複線径路・等至性アプローチ https://sites.google.com/site/kokorotem/

*9:これからの大学経営―誰がどのような役割を担うのか― https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20180330133914.pdf?id=ART0009884214

*10:アメーバ経営推進室」を設置している 学校法人京都中央学院組織図(平成30年度) http://www.yic-kyoto-pet.ac.jp/wp-content/uploads/2016/10/98af027f091b246bc2dba4ee8866d7f8.pdf

*11:大人数を対象とした参加型オリエンテーションの試み https://ksu.repo.nii.ac.jp/index.php?active_action=repository_view_main_item_detail&page_id=13&block_id=21&item_id=10088&item_no=1

*12:国立大学経営力戦略 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/06/24/1359095_02.pdf

*13:http://ttm.grips.ac.jp/

*14:http://www.shigaku.go.jp/s_center_d_lsym.htm

*15:教学管理職を対象としたリーダーシップ能力向上のための研修教材開発 http://emspd.meijo-u.ac.jp/publication/journal05/5_03.pdf

*16:Harvard Seminar for Presidential Leadership https://www.gse.harvard.edu/ppe/program/harvard-seminar-presidential-leadership

学内保育施設を持つ大学一覧

high190です。
立命館大学びわこ・くさつキャンパスに学内保育施設を開設するニュースが出ていました。

http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20180828/CK2018082802000003.htmlwww.chunichi.co.jp

立命館大びわこ・くさつキャンパスBKC)内に九月から、学内保育施設が開園することになり、二十七日に記念式典と内覧会があった。
同大によると、同様の施設は医学部などを持つ国公立大学ではすでに設置されているところもあり、県内では滋賀医科大にもあるが、私立の総合大学での設置はまだ少ないという。
施設名は「立命館みらい保育園びわこ」で、従来は会議室だった部屋を改築して整備した。延べ床面積は約百六十五平方メートルで、ゼロ~五歳までの最大十九人を受け入れる。開園当初はBKCに務める職員の三歳児一人が入園するという。名古屋大や民間企業の学内保育施設も手掛ける「ポピンズ」(東京)が運営する。
式典で学校法人立命館の森島朋三理事長は「BKCには女性研究者百八十人、女性職員百九十人が勤務している。利用者が教育や研究に生き生きと取り組むことによって、学生の意識も変えられる」と相乗効果を期待した。

先行研究等

働き方改革はもちろんのこと、イノベーション推進役として社会の期待に応えることを要請される大学は、ダイバーシティの推進役としても存在感を発揮しなければなりません。学内保育施設を持っている大学はどの程度あるのか、一覧化されている資料を見たことが無いので自分なりに調べてみました。
選定基準は当該大学教職員の施設利用可否です。情報は随時更新しますので、情報をお寄せください。また、その他学内保育所は設置していないが、育児支援制度を持つ大学の情報も掲載します。
※更新情報 学校法人上智学院、学校法人共立女子学園を追加(2018/12/14)

国立大学法人

公立大学法人

私立大学

その他

上記をご覧いただくと国立大学法人の設置例が多く、公立大学又は私立大学は医学部を持つ大学のケースが中心的です。また、男女共同参画推進組織を持つ大学も設置している傾向があります。色々調べると、内閣府が主導する「企業主導型保育事業」を活用して事業所内保育所を整備する大学が増えていることが分かります。大学単独では難しい事業であっても、民間事業者との連携で整備できる事例が増えてくれば私立大学での導入も今後進むかもしれません。

www.kigyounaihoiku.jp

また、学内保育施設の必要性を認めつつ慎重に検討している事例もありました。社会的責任に鑑みて判断することで、大学側としても財政面も考慮した綿密なリサーチが必要になるだろうと思います。*3 *4 *5

(2018/09/11追記)
★学校法人会計の広場★(前「学校会計の広場」):【子育て】今はやりの「企業主導型保育事業」って何だ〜?

学校法人が企業主導型保育事業を行う場合の主な条件、対象者、事業所内保育所との相違点などを解説した記事です。補助率では企業主導型保育事業の方が有利なのですね。こういった情報は有益です。また以下の点でなるほど、と思いました。

企業主導型保育事業は、「子育て」に加えて「働き手の確保」の側面が強く出てきました。施設は、認可外保育施設なので監督指導は認可保育所施設ほどありません。ですが、補助金が手厚く出ます。
学校では東京大学や一般の学校法人が手がけ始めています。会計処理については、まだ特段の指示は出ていませんので、従来の学校法人会計の法規類を使って会計処理することになります。

*1:その他、名古屋大学学童保育所「ポピンズアフタースクール」を設置 http://www.kyodo-sankaku.provost.nagoya-u.ac.jp/jst/kids/ccs/pas/

*2:上智大学の学生も託児所を利用可能です 学内託児室の利用 | キャンパスライフ | 上智大学 Sophia University

*3:ICUキャンパス内保育所開設の提案書を提出しました http://web.icu.ac.jp/cgs/2007/11/nursery20071107.html

*4:キャンパス内保育施設についての調査結果 http://web.icu.ac.jp/cgs/2008/03/post_4.html

*5:大学内の認可保育所が持つ可能性を探る http://www.ynu.ac.jp/special/glocalreport/vol8/index.html

電子決裁システムを導入している大学のリストを作ってみた

※更新情報 近畿大学を追加(2019/01/04)

high190です。
先日Twitter上で興味深く拝見したツイートがありました。

大学の場合、稟議書などの決裁文書を紙で回しているところはまだ多いかもしれません。では、電子決裁の仕組みを導入している大学を分かる範囲で調べれば役に立つ資料になるかもしれない、と思って調べてみました。まだまだサンプル数が少ないので、順次更新していきたいと思います。また、導入の有無を確認する方法は以下の方法で行いました。

確認方法

  • 公表されている資料で「電子決裁」を導入していること又は導入の方向性が明確であること

定義

  • 稟議決裁を電子的に実施しているかどうかで判定

海外大学の実例で興味深いと思ったのは「公文書の管理は電子化されており,作成及び決裁もネット上で行われる。決裁が一定期間滞った場合は,その当事者宛に警告メールが送信」といった記述です。実際に電子決裁システムの場合、こうしたアラートを出すことも可能でしょう。関連情報として、大学における業務構造改革をRPA(Robotic Process Automation)のセミナーが7月に行われます。

関心が高く既に満員となったようですが、大学における業務構造改革の波は間違いなく高まっており、新たな施策を取り入れられる大学とそうでない大学の差はますます拡がっていくでしょう。