Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

電子決裁システムを導入している大学のリストを作ってみた

high190です。
先日Twitter上で興味深く拝見したツイートがありました。

大学の場合、稟議書などの決裁文書を紙で回しているところはまだ多いかもしれません。では、電子決裁の仕組みを導入している大学を分かる範囲で調べれば役に立つ資料になるかもしれない、と思って調べてみました。まだまだサンプル数が少ないので、順次更新していきたいと思います。また、導入の有無を確認する方法は以下の方法で行いました。

確認方法

  • 公表されている資料で「電子決裁」を導入していること又は導入の方向性が明確であること

定義

  • 稟議決裁を電子的に実施しているかどうかで判定

海外大学の実例で興味深いと思ったのは「公文書の管理は電子化されており,作成及び決裁もネット上で行われる。決裁が一定期間滞った場合は,その当事者宛に警告メールが送信」といった記述です。実際に電子決裁システムの場合、こうしたアラートを出すことも可能でしょう。関連情報として、大学における業務構造改革をRPA(Robotic Process Automation)のセミナーが7月に行われます。

関心が高く既に満員となったようですが、大学における業務構造改革の波は間違いなく高まっており、新たな施策を取り入れられる大学とそうでない大学の差はますます拡がっていくでしょう。

カナダの高等教育について調べる

high190です。
現在、個人的な事情(具体的には研修のために)カナダの高等教育について調べています。

www.timeshighereducation.com

日本ではアメリカの高等教育事例は学術的なものから留学情報まで様々なメディアで報じられていると思いますが、あまりカナダの取り組みは聞こえてこないように思えます。(これは私の不勉強も一因にあるとは思うのですが)

しかしながら、上記のTHEランキングなどを眺めると世界的にも優れた大学が多いことが分かります。「高等教育大国」の米国の隣で、どのようにしてカナダは高等教育を行なっているのか、また大学間の連携はどうなっているのか。加えて、大学経営に関してどのように戦略計画・IRが関わっているのかなど、興味は尽きません。本当に基礎的な部分でしかないのですが、いくつかの資料を読みながら大枠だけでも早いうちに掴んでおきたいと思っています。

ci.nii.ac.jp
ci.nii.ac.jp
ci.nii.ac.jp

ジョン・ヘンリー・ニューマンの「大学の理念」を巡って

high190です。
先日某所で標記の人物に関する講演を聞くことができました。

ジョン・ヘンリー・ニューマン - Wikipedia

ジョン・ヘンリー・ニューマンはイギリスの神学者で、当初はイギリス国教会(現在の聖公会)に属し、オックスフォード大学のトリニティカレッジなどで神学研究をしていたそうなのですが、その後カトリックに改宗して晩年には枢機卿となった人物です。カトリック改宗後、アイルランドカトリック大学を創設するよう司教団から学長に任命されたそうなのですが、*1その際に発表したのが「大学の理念(The Idea of a University)」と呼ばれる書籍です。

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恐らく日本語での解説論文などがあるだろうと思って調べてみましたが、原文がWEB公開されていたので引用します。ニューマンを研究する機関があることも、*2ニューマンの名を冠した大学がイギリスとアメリカにあることも調べるうちに分かりました。*3 *4

日本語での解説論文については、以下の二つが見つかりましたので引用します。それぞれの解説論文を読むと以下のような箇所が出てきます。

中世の初期に確立されたリベラルアーツは、カロリング・ルネサンスの産物であり、貴族の子弟たちが、聖職者や官吏として活躍できるよう、教会附属の学校で教育したことに端を発する。その目標とすることは、(1)リーダーの育成、(2)徳育主義、(3)教育重視、(4)人格形成、(5)古典主義、(6)教条主義、(7)教育のための教育であり(Kimball,1995,pp.53-55)、ほぼ、ニューマンの理想と重なる。
(中略)
ただし、ニューマンの主張は、ヨーロッパ中世のリベラルアーツ観によって、すべて説明できるものでもない。次に述べるように、ニューマンの理想には、イギリス人として、16世紀以降に登場したイギリスにおける「紳士」の伝統が色濃く反映されており、特に、彼が強調する統合力や人格的影響力は、イギリスにおける「紳士」の伝統を抜きに語ることはできない。

そこで、今日、必要なことは、ロバーツのように、ニューマンの時代と現代との社会情勢の違いを指摘して、ニューマンの議論はすでに妥当性を失っているとするのではなく、彼の理念を現代の状況に読み替えることであろう。
(中略)
最後に、探究心や批判精神を推奨する近代の大学は、知性の開発や研究活動の推進に比較して、人生観や宗教観など人格形成に関わる部分において、文化の継承を行なっておらず、学生を精神的には放置しているという事実があげられる。この問題は、今日、より深刻になっており、かつてのヨーロッパや日本の大学が主張していたように、人格形成は中等教育段階までで完成すべきであるという原則論では対応できないのが実情である。
そこで、大学における宗教や神学の役割が重要になるのであるが、ニューマンの述べるように、宗教の理念を徹底することによって、寛容性や多様性を実現するという主張は、キリスト教的基盤を持っていた欧米の大学においても困難になりつつある。そのため、マースデンが述べるように、むしろ多元主義の一環として、科学的・実証主義的な思考と宗教的な思考の特性・限界を理解することと、せめて大学が宗教的な議論を行う余地を認めることが必要であろう。この点に関して、ニューマンの『大学論』自体が、カトリシズムの視点によって、近代主義を克服するという貴重な事例を提供していると思われる。


-ジョン・ヘンリー・ニューマンの「大学の理念」(出典:片山寛,西南学院大学学術研究所神学論集68巻,2011年3月)

私たちが勤務する近代の大学というものは,基本的にはこのような理念に基づいて誕生したのです。いわば大学の理念の原型というべき思想がここにはあります。
(中略)
1854年からアイルランドのダブリンに創設されましたカトリック大学の総長に就任しましたが,ダブリンの大司教と対立したために,一期だけで辞任しました。背景には複雑な事情があります。当時は,アイルランドはまだ英国に合併されておりまして,独自の議会を持つことも許されませんでした。カトリック教会も厳しい状況にありました。17世紀にクロムウェルアイルランドを征服したときに,カトリック教会の教会領は数多く没収されていたのです。アイルランドの人口の90%以上がカトリックだったのですが,教会経済は厳しかった。そんな中でダブリンにカトリック大学を創立することは,カトリック教会にとっても大きな決意を要することでしたし,またそれはアイルランド独立運動とも結びついていたのです。ニューマンは,そのような事情は当然よく知っていたのですが,大学を教会の支配下に置くことに対しては抵抗します。『大学の理念』を読めばよくわかりますが,ニューマンは,大学における教育は国家や教会に支配されない,自由なものでなければならないと考えていました。

片山先生はニューマンの大学の理念で「大学論として多くの国の教育制度に影響を与えたのは,主に5,6,7講」と述べておられまして、その中で特に大学教育に必要と思われる箇所について翻訳を以下のように紹介しています。また、ニューマンは長年オックスフォードで教鞭をとっていましたが、カトリック教会に改宗した際、オックスフォードから離れざるを得ませんでした。しかしながら、カトリックの大学創設にあたってもオックスフォードの理念、学問の自由を強調したことにポイントがあると思います。
また、片山先生はニューマンが捉えていた大学の目的を以下のように説明しています。

「リベラルな教育は,キリスト教徒を養成するのでもなく,カトリックを養成するのでもなく,紳士(gentleman)を養成するのである。紳士になるのもよし,教養ある知性,デリケートな趣味,率直で公平で冷静な精神,処世において高貴で礼節ある態度を持つこともよい。これらは,広大な知識から同時に生ずる性質である。これらこそ,大学の目的なのである。」(p.89)
(中略)
大学の知性的訓練の目的は,学習(Learning)や獲得(Acquirement)ではなく,むしろ知識の上に訓練される思想(Thought)あるいは理性(Reason)である。それは哲学(Philosophy)と呼んでもよいものである。」(p.101)

大学の目的は,学生の精神を拡張することであり,広い視野からものごとを判断する力を養成することです。その目的のためには,定期試験や単位取得制度によって学生を管理する,つまり私たちの現代の大学がまさにそのようであるような大学よりも,ただ数年間を先達(チューター)と共に生活しながら学ぶことのできる,カレッジ(学寮)の方がはるかに優れている,とニューマンは考えていました。
(中略)
ニューマンが否定しているのは,それらの技能が教育の目的だとする功利主義(utilitarianism)の考え方であります。つまりそれらの職業的技能はもちろん大切でありますが,知的訓練の結果としての知識(knowledge)は,それらの技能をどのように用いるべきかという,統御(rule)に関わっているというのです。この知性そのものの訓練に関わる教育は,一般教養(Liberal Education)と呼ばれます。私たちは一般教養と言うと,大学教育の基礎課程であって,専門教育の方が上位にあると考えがちですが,ニューマンは,これは基礎でありつつ大学教育の最終目的でもあると考えているのです。

大学の理念の原型として知られるニューマンの説について、私自身が不勉強であることが大きいとは思うのですが、あまり日本では知られていないように感じます。吉永、片山の両先生が解説しているように教授した知識の統合こそリベラルエデュケーションだと思いますし、ニューマンの理念は現代の大学にも通じる根本的な意義を問いかけているように感じます。その反面、吉永先生が指摘するようにニューマンの理念を現代的に読み直すこと、具体的には各大学が「大学の理念」に照らして現代的な意義を捉え直すことが必要です。

また、論文中に出てくるチュートリアルやカレッジシステムについては、苅谷剛彦先生が書いている「イギリスの大学・ニッポンの大学」で詳しく紹介されていますので、興味がある方はご一読ください。ニューマンが優れているとしたチュートリアルやカレッジシステムは、現代でもオックスフォードやケンブリッジに生きています。それを支える仕組みがどうなっているかを知ることは意味のあることです。
直接的にはニューマンと関係しませんが、今年のTimes Higher Educationの"World University Rankings 2018"ではオックスフォードが1位、ケンブリッジが2位となっています。*5

以上のように、ニューマンの「大学の理念」からは大学教育への現代的な示唆が多く含まれていると私は思います。拝聴した講演は高等教育にフォーカスしたものではなかったのですが、オックスフォードでの教授生活、学長として発表した「大学の理念」など、教育機関で働く者の一人として興味深く聞くことができました。講演を伺ってその他に面白い、と思ったことをいくつか書いておきます。

  • ニューマンの霊性を知るためには、単一の著作のみで理解することが難しく、複数の著作を年代別に見て背景をよく知らなければ正しく理解することができないこと。
  • ニューマンの霊性を形作ったのは「疑いに向き合う態度」であり、探求すること、理解することが核であること
  • ニューマンと対立したマニング枢機卿がレールム・ノヴァールム*6 *7の基礎となる活動をしたこと
  • グラッドストーンイギリス前首相が出した教皇不可謬の宣言に対する反論「ノーフォーク公への手紙」によって、実質的な政教分離に繋がったこと
  • 有名な言葉:to live is to change, and to be perfect is to have changed often. (生きることは変わること、完全とは何度も変わることである)

ニューマンのことを知ることができたいい講演会でした。*8現在の日本の大学は政策的にも岐路にある場面ですので、古典から大学の本質を捉え直す努力を積み重ねていかないといけない、そのためのきっかけを私に与えてくれたのではないかと思っています。
ちなみに今回のブログを書くにあたって、Twitterでいいサジェッションを頂戴したことに感謝します。

「大学マネジメント・業務スキル基準表」の研究会に参加しました(大学行政管理学会)

high190です。
2017年7月8日に早稲田大学で行われた大学行政管理学会関東地区(第2回)、北関東・信越地区(第1回)合同研究会に参加しました。
今回の研究会ではNPO法人実務能力認定機構(ACPA)が策定・公表している大学マネジメント・スキル基準表についての内容説明、導入事例の報告が行われました。今回も参加した記録をまとめておきます。

ACPA 実務能力認定機構 大学マネジメント・業務スキル基準表

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  • 会場校代表挨拶 JUAM副会長 高橋史郎氏(早稲田大学国際教養学部事務長)
    • 早稲田でJUAMのイベントをやるのは10年振り。
    • 早稲田でスキル基準表を運用し始めて何年か。個人でスキル基準を毎年作成して提出している。
  • NPO法人 実務能力認定機構(ACPA)理事長挨拶 早稲田大学理工学術院 教授・図書館長 深澤良彰氏
    • ACPAは10年ぐらい前に創立した。大学で教える教育内容と実務能力との関わりを取り扱うことから始まった。そこから大学職員の能力開発・スキル標準を策定する事を射程に含めた。この取り組みが他大学の参考になればと思う。

「ACPA大学基準表を活用した大学業務改革について」ACPA事務局長 内山博夫氏

  • ACPAとは実務能力認証認定制度により授業科目などの質保証を推進している。2012年に大学マネジメント・業務スキル基準表を、2015年に大学マネジメント・業務/基礎(知識・能力)編の公開を開始した。
    • 大学マネジメント・業務スキル基準表:大学の職員業務を可視化し、役割像を共有化。
    • 大学マネジメント・業務/基礎(知識・能力):業務知識・能力の共有化ツール。
    • 早稲田の学内プロジェクト活動(職員業務構造改革WG)に当初から参画
      • 大学が外部環境の変化に適応できるようにするため、業務構造改革が必要であり、職員業務のあり方を見直すことが必要。大学運営に必要なスキルの把握と育成。人事政策の基本情報づくり。
      • 専任職員の業務を定型から非定型に転換させたい。
  • 「大学職員の高付加価値業務」
    • ルーチンワーク・提携業務➡判断業務・企画業務・専門業務(学士課程答申からの抜粋)
    • 大学基準表の活用目的
      • 担当業務ごとの遂行能力を本人と上司が診断(自己診断+上司補正)
    • 早稲田大学の事例
      • 業務改革への活用(業務内容の平準化、効率化)
      • 人材配置への活用(業務切り分け、雇用区分に応じた業務体制)➡外部委託可能と判断できる業務は、業務運用マニュアルと管理体制を整備し委託実施
  • 運用手順(通年スケジュール)
    • 1〜3月 基準表内容とスキルマトリクスの見直し、現状業務の差異分析、業務委託の活用(随時)
    • 5月 個人スキルの本人評価および上司判定
    • 6月 人事異動/人員配置の見直し
    • 7月 個人スキル判定表の人事課提出、人事異動に伴う部門別関係帳票の修正
    • 12月 人事異動/人員配置の見直し
  • 担当業務の役割状況
    • ベンチマーク(ACPA基準値)との差異把握
    • 【差異補正についての考え方】
      • 役割像(ベンチマーク)に向けた人材シフトの検討、外部委託化の推進。
      • より具体的には当該業務の遂行に必要な人材が配置されているか、また当該人材のスキルは当該業務の遂行に必要かを測定できる。
      • 上司補正の結果は部下にフィードバックされるのか。その際にどのような点について留意して伝えているか。また、当該職員が補正結果を踏まえて当該業務を達成できるようになるために、上司としてのアドバイス等を行う際の基準などは設けているのか。
      • 基礎/知識・能力編で対応している。
  • 今後の展開
    • 大学基準表活用勉強会(仮称)を設置予定
      • 勉強会メンバーを募集中
      • 活動内容として、SDおよび大学業務改革に関するセミナー開催、ワークショップ/活用実践演習など
    • 大学基準表活用サポート企業(協力企業を探して巻き込みたい)
      • サポート領域:大学経営コンサルタント、人材派遣(嘱託職員、契約職員、アルバイトなど)、大学業務委託/アウトソーシング、大学職員研修、ITベンダー(タレントマネジメント、大学業務システムなど)
      • 共通の物差しと目標値の設定

講演の内容に関して、大学マネジメント・業務スキル基準表については公表されている資料を前に読んだ事もありましたので、その内容に沿った説明がなされましたが、個人的には「大学基準表活用勉強会(仮称)」と「大学基準表活用サポート企業」に関する動きが気になりました。今後、各大学では一層業務改善に向けた取り組みが進展していくと思われますので、こうした動きは押さえておきたいところです。個人的には、大学基準表活用サポート企業として早稲田大学アカデミックソリューションあたりが関わってくるのかな?と思います。

早稲田大学における職員業務の構造改革と人材育成」早稲田大学人事部部長 三浦暁氏

  • 早稲田大学の専任職員数:約800人、常勤嘱託約350名、非常勤嘱託約150名、派遣職員約450名・・・合計で約1900人
  • 職員を巡る議論の変遷
    • 大学経営における諸制度の高度化、多様化、複雑化に対応できる資質の向上
    • 教員と職員が協働して担う領域をカバーできる力量の向上
    • これまで以上に教育研究への深い理解、従来とは異なった資質・能力
      • Waseda Next 125までは同じ議論の繰り返しだった。
      • 新しいタイプのアカデミック・アドミニストレーターが必要(各ファンクションで「調査・分析・企画・立案・実行・評価」できるプロジェクト型職員へ)
  • WASEDA VISION 150の推進
    • 核心戦略を実現させるために76のプロジェクトが動いている
    • プロジェクトのPDCAサイクル管理(高い目標と強い意志)
      • vision150推進本部の設置、ロードマップの策定、週1回の推進会議、数値目標、年度計画・評価・報告・改善
      • 他部門との協働・教職協働による新しい効果
      • 全体戦略の中における教職員自身の役割の重要性の理解◎
  • 職員の業務構造改革
    • 業務を4つに分割(サービス型業務、意思決定支援業務、高度専門的な管理運営型業務、渉外業務)
    • 定型化、仕様定義、専門人材活用を専任職員がマネジメントする体系。しかしながら必ずしも業務の担い手が切り分けられている訳でもない
      • 業務のやり方、組織のあり方等を見直し
      • 業務の効率化、大学に求められる機能の実現
      • スキルマトリクスを整備する事で全体業務の見える化を推進
    • 全学の仕事を「見える化」➡業務分析➡業務改革(適材適所の人材配置、適正な要員配置、分散業務の集中化、業務委託の活用、組織の見直し)
    • スキル項目説明書を元に、現状との差異分析(外部委託計画の策定、業務役割分析、スキルレベルの判定)
    • 個人スキル判定表(自己申告をベースに上司が判定している)、活用目的(戦略的なタレントマネジメント、目標と現状のギャップを育成計画に活用、人材ポートフォリオの構築、採用する人材要件の明確化)
  • プロジェクト型業務の推進
    • 職員がプロジェクトで仕事をした経験。プロジェクトは、新規事業の展開や新しい業務創造に適したスタイルである(業務スタイルの改革)
      • 組織(部門・課・係等)の壁を越え、必要なタイミングに必要な人材を柔軟に活用できる。「大学は「プロジェクト」でこんなに変わる」
    • WISDOMによる企画立案*1
      • 大学の経営改革に資する戦略や業務改革、プロジェクト企画立案のために開発した手法〜理想(あるべき姿)を考え新しい価値を創造する〜
      • 早稲田大学アカデミックソリューションで提供している
      • 一泊二日の研修を夏に2回(関西・西南・中央・法政・龍谷早稲田大学合同職員研修)
  • 授業運営支援(教職協働)研修
    • 1年目の職員全員を対象に実施。グループで授業の運営を支援する。職員が教育・学習支援においてどのような役割を担い、業務創造していくべきかを考察する。
  • プロフェッショナルズ・ワークショップ
    • 企業・自治体、学生の双方にメリットを生み出す新しい形の産官学連携実践型教育プロジェクト
    • 参加者の満足度調査を実施すると、学生、企業、職員いずれの評価も高い
  • 職員の育成方針
    • 早稲田大学の職員が目指す20年後については、組合からいつ決めた?と怒られている。
    • 職員に求められる役割と専門性の対照表を作成
    • 2017年度職員育成カテゴリー
      • 段階的なマネジメント力・リーダーシップ力の養成、プロジェクト・教職協働を通したマネジメント・処理力の養成、大学職員全般に求められる専門力の養成、職員個々の専門性に対応した専門力の養成、グローバル人材の育成、マインドの醸成、その他
  • 語学研修プログラムの充実化
    • 語学検定(TOEIC等)の受験による英語力の把握(3年に1回実施)
  • これから着手すること
    • 人事制度の改革に向けて、組合との交渉を行う予定。
    • 主な内容として、これまでは単線型のキャリア・年功序列だったが、これからは昇進・昇格時にも審査を行うようにしたい。職員個人が自らのキャリアを選択できるような制度に変えていきたい。来年4月の実施に向けて組合とも意見交換しているところである。

早稲田大学におけるスキル基準表の活用状況についての事例報告でした。
この後の質疑応答でも議論がありましたが、スキル基準表を導入する事によって業務負担の軽減には必ずしも繋がっていないということでしたが、全体的な業務の棚卸しができること、「全体戦略の中における教職員自身の役割の重要性の理解」に繋がるということは大切なポイントだと思います。その他の早稲田大学の取り組みについても、さすがだなと思いましたが、語学検定の受験による英語力の把握を3年に1回実施する事など、今後のグローバル化対応に向けた覚悟を感じる施策だと感じました.

質疑応答

  • スキル表の活用に課題があるとの事だが、どのようにすれば活用が進むと思うのか。また、プロジェクト型業務について個人で実施する場合の作り方を教えて欲しい。
    • 人事評価には使用していないが、課題の一つである。人事評価に使わないと真剣にスキル基準表が活用されないのではないかと思う。ちなみにスキル基準表の活用は若手職員(3年目程度の職員複数名)から発案されたものだった。その理由として担当すべき業務の知識等が分からないということが問題意識。人事部としてはもう少し活用を進めていきたい。
    • プロジェクトのほとんどは各職員からの提案を起点としている。
  • 業務構造改革に関しては、具体的に切迫した理由があって改革を進めたのか。
    • 若い職員から閉塞感があるという意見があった。理想を持って職員になったが、ルーティンワークばかり。こうした声を受けて組合とも協議して大学としての新しい価値を創造する機会を設定した。
  • 所属大学で教職協働を担当しているが、業務のきり分けを通じて既存業務をスクラップしたような事例があるのか。
    • 大学は業務のスクラップが難しく悩みどころである。ただし、業務の担い手を専任職員から嘱託職員に変更するなどの対応をしている。
  • 職員の専門性獲得のため、資格取得等とは異なる方法などを教えてもらいたい。
    • 資格取得なども促進していきたいと考えているが、職員育成の一環であってそれが全てではないと思っている。先ほど人事制度の話をしたが、将来的にはマネジメントと専門性のどちらを志向するでその後のキャリアが分かれるような人事制度を検討している。
  • スキル基準表を導入した事で顕在した長所、短所はあるか。導入から根付くまでにどの程度の時間がかかったか、導入によって労働時間の縮減に繋がったのかをお聞きしたい。
    • 早稲田大学の定期人事異動は6月、12月なのでそれにあわせている。
    • 技術的な問題として、スキル基準表は全てエクセルで管理していて、膨大な量になってしまうのがネックである。スキル判定を毎年実施しているため、シートがどんどん横に広がっていくので使いにくい。よってシステム化を検討している。当初ワークスアプリケーションズのパッケージでの対応を考えていたが、それでも難しそうな問題があるので、独自で開発する方向ではないか。
    • スキル基準表をゼロから導入した。一通りの業務をまとめるのに2年ぐらいかかっている。その際にはACPAや他大学からの意見も踏まえて、まとめた。ACPAで作っているのは汎用的なものであるので、各大学の実情にあわせてカスタマイズする必要があるのだが、そのためには一定のコストはかかる。しかしながら、スキル基準表の導入で全体が可視化され、業務内容への理解が進むということはある。スキル基準表の導入で労働時間が縮減される事は無く、別の仕掛けが必要と認識している。
    • 他大学での導入事例などを考慮すると、いきなり全学的導入は難しいので、法人事務局にテストケースで試行導入していくことが良いのではないか。カスタマイズについても、全ての文言等を各大学に合わせるなどのことは必要ではない。
    • (ACPA深澤理事長)ACPAに問い合わせが来る際、執行部と現場の教職員から問い合わせが来るケースがある。執行部からは「何人人減らしができる?」という問い合わせが来るが、それには答えにくい。反面、現場の教職員からは「業務を整理したい」という名目で照会が来るが、その点についてもどこからそのための時間や手間を捻出するのかという課題がある。
  • 大学の規模に応じて費用対効果の問題があると思う。また、給与に連動していないスキル基準表ということだが、現場の職員にはフィードバックされているのか。管理職者の異動等によって業務理解が浅い場合、適切に補正できるのか。
    • 「スキル基準表」という既にできたものを活用するので、それほど労力も費用も掛からない。ただし、メンテナンスは必要だと思っている。
    • スキル判定については本人が自己申告して、その点を上司が補正判定している。また、人事制度の変更時には異動等の基礎資料として活用したいと考えている。
  • 三浦部長がずっと人事に携わってきて、またここ数年の早稲田大学での色々な改革を踏まえて、早稲田の職員がどのように変わってきたと感じているのか。また、こういった制度変更を伴う改革によって、早稲田の職員がどう変わったのか。
    • (三浦部長)若手職員が閉塞感を感じていた時代があったと申し上げたが、現在では随分変わったと思う。大学設置基準の大綱化移行、高度化をしてきている。ルーティンのみを行う職員はいらないという方針で採用しているし、40代までの職員は劇的に変わったという自己評価である。
    • (高橋事務長)国際畑の仕事が長いが、国際では大きな業務委託をした。そのチームが全て担当している。よって、専任職員は外部資金獲得のためにスーパーグローバルなどにチャレンジし続けている。危機管理等についても専任職員が一定程度経験した事を嘱託に任せている。専任職員は数値目標の達成として、外部資金の獲得というベンチャーのような仕事を行ってきている。新しいことにチャレンジし続けることができるのも、強い業務委託のチームの存在あってのこと。そういった業務委託のチームを専任職員が開発してきた。専任職員の業務が今後どうなるか、という点で色々と思うことはある。

質疑応答で印象的だったのは、ACPAの業務スキル基準表を導入する事で外部委託化の促進や人事評価との整合性などについての質問が多かった事です。しかしながら、人事制度との連動性が重要になるので、まだそこまでは取り組んでいないというところでした。人事制度の改革は教職員組合との調整も必要ですし、一度変更すると容易に変えられないこともありますので、労使間でのすり合わせなども考慮して検討することが必要と思います。
私自身が捉えたスキル基準表の活用方策としては、個々の職員が自らのキャリアを展望する際、現状でできていること・できていないことは何かを捉える参考になるという事、自分自身の強みと弱みを把握する事に繋がり得るということです。あと、スキル基準表では各業務を羅列した状態になっていますが、各大学で共通する業務であっても、実施する手順などはそれぞれ異なりますので、業務手順書の整備を行う事が大切だということです。外部委託化の推進を行うとしても、実際の手順を明らかにしておいて、誰にでもできるようにしておくことが大切だと思います。
以上の理由から、スキル基準表とあわせて文章化されたマニュアルを整備されているといいのではないかと感じました。大学におけるマニュアル整備については以下の論文が参考になると思います。著者の松丸英治さんはこれまでも大学におけるマニュアルの活用について、大学行政管理学会で発表を行なっています。私のブログでも何度か記事にさせてもらいましたので、是非ご参照ください。*2 *3 *4

swu.repo.nii.ac.jp
(出展:昭和女子大学現代ビジネス研究所紀要)

あとは、業務改善のための手法として、総務省が「業務フロー・コスト分析に係る手引き」を公表しているので、こちらも参考にしながら業務改善と仕事の棚卸のことを引き続き考えていきたいと思います。

【SD】2402B「始めよう、仕事の整理と協働」|SPOD – 四国地区大学教職員能力開発ネットワーク

最後に早稲田大学の問題解決手法"Wisdom"などを紹介した以下の書籍を再読したくなりました。

*1:なぜ、早稲田大学は大学改革に挑むのか~ビッグデータで見えてきた大学の新しい可能性~ wisdom.nec.com

*2:high190.hatenablog.com

*3:high190.hatenablog.com

*4:high190.hatenablog.com

日本高等教育学会第20回大会に参加しました

high190です。
5/27,28の二日間、東北大学で開催された日本高等教育学会の第20回大会に参加しました。私は会員ではないのですが、大会のみに参加する事は可能という事で大学教育学会、大学行政管理学会に続いて学会に参加してきた記録です。以下の記録についてはhigh190が各講演者の発表等を聞きながら内容をまとめたものですので、予めご了承下さい。

日本高等教育学会第20回大会


Day1(2017-05-27)自由研究発表Ⅰ・Ⅱ

現代の大学教育における「教養」概念の一考察-教養系学部の基本情報の分析を通じて-(玉川大学 栗原郁太 氏)

  • 「教養」「リベラルアーツ」の定義にまつわる議論は多くあり、多義性と一般性を併せ持つマジックワードに。意味が拡散・整理しにくい。
  • 全国大学一覧、大学ポートレート、各大学のWEBからデータを収集してKH Coderで計量テキスト分析。
    • 学位に着目して関連する概念の分析。DP,CP内容の概観のための計量テキスト分析。共起ネットワーク図で示すとDPでは「国際教養」学部のインパクトが強い。関連して英語運用能力、論理的思考力などが関連。CPで言語力をベーストした文化・社会の理解、留学語学研修の重視、情報収集などが頻出。頻出後をクラスター分析。世界・国際文化を理解。社会における問題解決力、外国語を用いたコミュニケーション能力。
    • CPのクラスター分析。国際教養学部だと留学等を含めたカリキュラムの特徴、教養系学部だと社会・文化、理解すべき事象、能力観などが出てくる。その他の教養系学部では情報スキルが出てくる。
    • DP・CPの分析を通じて、大学教育の理念的な文脈からは、「学び方としての教養」の概念が検証。各教養系学部がDP,CP策定の際に依拠している文書は?
      • これまでの答申等「新しい時代における教養教育の在り方について(答申)」などで頻出された単語。
  • 結論
    • 「専門としての教養」に着目して分析すると、
    • 学芸・科学分野
      • 文学、国語・国文学、英語・英文学、英語・英米文学、歴史学、心理学、社会学、教養・学芸、地域研究、国際関係、経済学、理学及び音楽
    • 職業分野
      • 教育学、法学、商学
  • 大学教育における「教養」のディシプリンの範囲
  • 質疑:
    • 結論部分の学問分野の括りが大雑把では。
      • 学位授与機構が発行している新しい学士への道で提示されている分類を使用した。
    • AAC&Uの文書はアメリカにおけるリベラルアーツの研究論文を回顧したものではないので、先行研究として扱うべきでない。AAC&Uは業界団体。アメリカの教養教育に関する参考文献が少ない。AAC&Uの教養教育に関する文書*1など*2、もう少し広く文献に当たる必要なのではないか。歴史学を取っても日本とアメリカでは異なるので、その点はもう少し整理する事。結論1から結論2までの議論の以降を整理する事。
      • 「先行研究」ではなく「背景」とすべきだったとコメントあり。

教養教育については私もまだ知らない事が多いので、興味深く拝聴しました。KHCoderは誰でも使える計量テキスト分析のソフトですので、興味がある方は使ってみてはいかがでしょうか。研究で使用された事例も公開されていますので、こちらも参考になるかと思います。*3あとは教養教育という点で、個人的に関心を持っているのはコロンビア大学のコアカリキュラムについてですが、その点については過去記事で言及していますので、そちらをご覧いただければ幸いです。*4

私立大学等改革総合支援事業が私立大学の教育活動に与える影響に関する実証研究(神戸学院大学 松宮慎治 氏*5

  • 先行研究
    1. 私学経営と関連づける研究
    2. 政府との関係に着目する研究
    3. 至近の政策に着目した研究をレビュー
  • 命題:私学助成の競争的配分と私立大学のガバナンス集権化かが、私立大学の教育活動に与える効果の検証
  • 仮説:私立大学等改革総合支援事業タイプ1への選定は、私立大学に脱連結*6によるアプローチを促すため、教育の質向上に貢献しえない。ガバナンスも教育の質向上に意味を持たない。
    • 仮説設定の理由:本事業の設計は、現場の教育活動の改善以上に「選定されるか否か」に目が向きやすい。この状態は新制度派組織論の「脱連結」現象に枠づけられる。また具体的な脱連結行動としては、本来の目的と異なる趣旨での現象拡大を扱う政策過程研究、特に「準拠集団の模倣」や「水平・垂直的波及」等と親和的である。さらに先行研究に鑑みて、ガバナンスの集権化が教育改善等に効果があるとは考えがたい。
  • 結論
    • ガバナンス改革を改革総合支援事業で行ったが、結論的にはガバナンスよりも組織にあったマネジメントの重要性があげられる。プロセスが大事なのであれば、GP事業を再評価できる可能性がある。
  • 質疑
    • この研究で得られたインプリケーションを再度整理してもらいたい。
      • 私立大学に対して競争的に資金配分する流れは止められないと思うが、私立大学側がそれに適う行動を取れるのかどうかを考慮する必要がある。

私立大学関係者ならば皆が気にする改革総合支援事業についての政策的効果を示した研究です。個人的にはGP事業の再評価という意見が出た事に関心を持ちました。また、「ガバナンスよりも組織にあったマネジメントが重要」という点はその通りだと思います。ガバナンスは仕組みであって、それを回すマネジメントを改善しない事には、大学経営の効率性は向上しないと最近は感じています。

「第三の領域に属する教職員養成の政策実施過程−分野を横断しての事例分析」(群馬大学 二宮祐 氏、玉川大学 小島佐恵子 氏、同志社大学 浜島幸司氏、山梨学院大学 児島功和 氏)

  • FDer
    • 活用状況を見ても、自大学の専門家を活用する例は少ない。(大学における教育内容の改革状況調査)
    • インタビュー調査
      • アイデンティティの不安定さ。専門職なのか非常に疑問。専門分野関わらず就ける。※これで専門性と言えるのか。
      • 求められる業務が非常に多様。業績評価指標が非常に曖昧。
      • 教員と職員の中間を担う「ノンアカデミック」「ノンファカルティ」の職の重要性を指摘。しかしながら、そういった業務を担う者は冷遇。
  • キャリア支援・教育担当者
    • 文科省厚労省の政策動向によって、かなり引っ張られている。
    • インタビュー調査
      • 安定しない雇用と先の見えなさ。部局間の壁を越えるのが難しい。学内に仲間がいない。学部特性などが分からないと学生に対する効果的なアドバイスが難しい。特任教員を重要視していない。非常勤講師や任期付雇用の教員はカリキュラム作成に関与できないので、その点が難しい。
  • リサーチ・アドミニストレーション担当者(URA)
    • 他の専門職と比較すると、職能団体が発足している。
    • URAに関してはスキル標準が定められている。2013年度に東京大学に委託。早稲田大学に「研修・教育プログラムの作成」を委託。
      • 目的が曖昧ながらも、従事しながら主たる業務を理解していく。
      • 現場での混乱が拭えない。
      • 自ら業務を増やしていく。
      • 同僚との関わりから最適解を導こうとする
      • サービスとしての研究者以上のコミュニケーション
    • URAには研究者以上のコミュニケーション能力が求められる?
      • 他の専門職よりも制度的な整備が進んでいるように思われる。
  • 産官学連携コーディネーター担当者
    • 政策形成の経緯
      • 法整備の後、文科省経産省が産官学連携を進展させるための政策形成。専門職団体がある。産学連携学会、日本知財学会。ネットワーク化が他の専門職と比較すると進んでいる。
      • 企業出身者の専門職が大学の慣行に悩む例が散見される。技術移転に関しての専門家を育成するためには時間がかかる。
    • 専門職に視点を当てると、そもそもが組織としてどのようにその専門職を活用したいのか、その成果設定が上手く行っていない。
  • 政策形成とその実施、と言う点では
    1. 「第三の領域における教職員の必要性」が指摘される。
    2. 政策形成されて予算措置される
    3. 教職員の短期養成、他分野から移籍する教職員
    4. 時限付き予算による任期終了、不透明な契約更新の可能性、職能形成の課題。資源不足や曖昧な目標による職務遂行上の問題(「現場」での苦境)
  • 専門職団体の有無がストリート・レベルの官僚制を解消するか。URAの事例が最もうまくいっているように感じたが、その点についてはどうなのか。また、人材労働市場が整備されると良いのでは。
    • 仕事の裁量は広いが、雇用される期間は短い。
    • 職業が形をなす「初期の話」であるところが興味深い。事例としてあればだが、研究対象とした職種で、専門職養成課程をしっかり整えるべきと考える人と、そういったものは必要ないと考えている団体、どちらが強いのか。
      • 今回の対象とした事例は、職能団体は成立しているが、団体としては有機的に機能していないのだと思われる。
    • アメリカは専門職社会だが、アメリカが一般的になる訳ではないので、それ以外の道を模索することも必要である。
    • IRerとして業務を担当しているので、興味深い。自分自身は外部資金で雇用されていて科研費にも応募できる状況にある。今後の研究で、科研費申請の有無などを調べると研究者へのキャリアパスが見られて良いのではないか。
      • 必ずしも全ての専門職が研究に向きたい訳でもない。
    • 今回の研究のフィードバックをどのように行っていくつもりか。
      • 今回の発表に当たっても協力者へのフィードバックを行う必要があると思うので、その点については緊密に連絡を取りながら行っている。
  • 総括討論
    • 専門性よりも同僚性を重視するように感じたが、その点についてはどうか。
      • 東京学芸大学は大学教員の専門性を考慮した伝統的な考え方に基づく専門職養成だが、群馬大学の二宮氏らによる研究は、第三の領域に属する教職員養成の政策実施過程は現状に関連する個別集合体としての大学を考えるか、機能的に役割を果たしている事を良しとするか否か。
    • 専門職という点では、米国の例を見てて感じるのは人件費が上がり、専門職としての利権が発生する可能性はある。30代前半の職員は大概が便利屋になっている。日本においては立派な「政策」は存在しておらず、場当たり的である。専門職が増えると経営側は使いにくくなるということにならないか。
      • 教員養成型大学では、学生満足度と教員就職率が評価指標になる。同僚性に関して内発的・自発的な点に重きを置いているが、既存の教育学研究科が教職大学院化してしまうことに危惧を抱く。
      • キャリアに関する専門職を置くことは、学部内で本来的には学部の教育ディシプリンに基づいた専門性との分断が発生してしまうので、その意味においてはレリバンスの分断をキャリアの専門職が起こしてしまう事から、専門職を置かない方が望ましいとの意見もある。
      • FDについては大学でも定着したが、ポジティブとネガティブな人が分かれている点には着目する必要がある、

今回の発表で事前に聞きたいと思っていたものです。この研究発表は科学研究費補助金にも採択されているもので、研究動向なども公開されています。
*7現在の大学ではこの発表で示されているように第三の領域に属する専門職の方々が多くおられます。私は一事務職員でしかないですが、専門性を有する専門職の方々との協働をどのようにして果たしていくのか、その仕掛けを大学経営の主要課題として捉えることができるかどうかは大きなポイントではないかと思ってます。
個人的には、一般的な大学職員の中でも、設置認可申請業務に関しては経験知識を積み重ねていく業務で、経験が物を言う部分がありますので、新任者を育成するのに時間がかかるという点では似ているように感じました。このように通常の職員業務でも一定の専門性をどのようにして獲得して知識を更新していくのか、大学としての経営資源である人的資源をどのようにして保全していくのかが最近の関心事です。

私立大学における大学運営効率の規定要因に関する実証的研究(広島大学 前田一之 氏)

  • 命題:上意下達型のガバナンスによって、私立大学の運営効率は向上しない
  • 副命題:
    • 非公式組織に関する副命題:集権的な組織文化の醸成および集権的なリーダーシップによって私立大学の運営効率は向上しない
    • 公式組織に関する副命題:公式組織の集権化によって私立大学の運営効率は向上しない
    • 環境要因に関する副命題:私立大学の運営効率に対する環境要因の影響は公式・非公式組織の影響より大きい
    • (アドホクラシー型の組織文化が)適応効率性を重視した方が組織の運営効率は高まる仮説
      • 組合があると運営効率は7%下がる
  • 結論:
    • アドホクラシー型の組織文化への刷新
    • 内部的な財政規律の強化による基本金組入額の確保

DEA(Data envelopment Analysis)=包絡分析法についての発表でした。私はまだこの分野についての学習が足りていないので、あまりコメントできないのですが、仮説の立て方の妥当性について質疑で質問が多く出ていました。(元会長の金子元久先生などから)この分野ですと、京都外国語大学の山崎そのさん*8が第一人者ではないかと思いますので、山崎さんの書籍なども参考にしながら学び直しが必要だなと感じました。

学校法人(私立大学)の持続可能な財政運営のあり方についての実証的研究(國學院大學 篠田隆行 氏)

  • 目的:学校法人会計基準の改正に伴う財務運営における経営行動にどんな影響を及ぼしたか仮説を解明する。人口減少に伴い、私学を取り巻く経営環境が厳しくなる中で、永続的な存続を可能とする財務運営のモデル構築の提唱
    • 帰属収支差額、基本金組入前当年度収支差額
  • 内部留保への経営行動
    • 会計基準の変更は直接的には影響していないが、中長期的には関係がある
    • 東洋経済の財務力ランキングでの算出数値の修正
    • 基本金組入前当期収支差額が黒字であった場合、ステークホルダーから学費の値下げ等の要求があるのではないか。
  • 質疑
    • 基本金組入を「内部留保」と表現するにあたって、第2号基本金と第3号基本金が該当すると思うが、注記をした方が望ましいのではないか。
      • 近年では3号基本金を組み入れる学校法人が増えている。
  • 総括討論
    • DEAモデルが利用されている研究が2つあったが、どのようにしてモデルを組むのかを再度説明して欲しい。
      • 例えば効率性のモデル化として、帰属収入を最大化することを目的としつつ、人件費・ST比を下げることが目的として整合的であるのかをお聞きしたい。また、出力指標に帰属収入という部分が納得できないのだが、その点についてはどうなのか。
      • マスプロ教育がいいと言う訳ではない。大学経営の継続性を担保するために、人件費の抑制と帰属収入の増加を両立させられる大学がどのように存在しているのかを知りたいという意見である。
    • 人件費の最適配分、というtobit分析に関しては諸外国でのコーポレートガバナンス研究などでも使用されていた指標である。
      • 帰無仮説を検定した形で実証できるのだが、その点についてはさらに検証が必要である。
    • 持続可能な財政運営に関連する二つの質問。基本金組入前当年度収支差額ができたが、企業会計の営業収支に当たる教育活動収支差額に着目してはどうか。
      • 施設・設備の貸出のように、本来であれば財務活動に分類されるようなものも教育活動に入ってしまうため、基本金組入前当年度収支差額に注目した。
    • 第2号基本金は学校法人によって計上していない例もあるので、金融資産に着目した方が良いのではないか。ここからBSに発展させていきたい。「教育活動」という決め方が分かりにくかったのではないかと思う。
    • 減価償却費はどこに含まれるのか。
    • 基本金組入については額が大きくなってしまうので社会からの批判の対象にもなるが、一種の資産を保有する形態が予算と決算が示されていて、この際に予算と決算が食い違う場合、どういった理由に基づくのか。基本金は元々必要な額として計上するのか、残余額を基本金として扱うのか、その点はどうなのか。
      • それぞれで統制機能が働いており、一番発生するのは基本金組入である。経営者の計画に基づき、決定しなければならないが、設備投資に伴う金額として影響する。
      • 教育研究経費と管理経費の中に減価償却費が入っていると、学校法人側で減価償却費を操作できてしまう。よってB/Sで見ていかないと財政上の状況は把握できないので、当事者としても発信していかなければならないと思う。
    • 学校法人は企業会計との比較で議論されるが、消費収支計算は学納金設定を原則としていたこと、補助金が入ってくる事なども考慮する必要がある。
    • 業績連動型での運営交付金配分については、配分比率などについては旧帝大を優遇するようなものではなく、当初の国立大学法人化の趣旨を徹底すべきではないかと考える。
      • 回帰分析を行うにあたって、教育プログラム上での特色を持った学校などもあると思うので、その点は定量的分析と定性的分析を組み合わせた方がよいかもしれない。

総括討論での議論も交えてですが、大学経営を考える時に財務関係の知識をもう少し付けないと議論の背景が分からないので、学習が必要だと感じました。これまで財務部門で勤務した事が無いので、今後のキャリアではそういった部署での経験を積む事も必要かも知れません。

Day2(2017-05-27)課題研究「大学の教育マネジメントとガバナンス」

二日目のプログラムは午前中に所用があったため、午後の課題研究のみに参加しました。

金沢大学における教育改革推進体制について(金沢大学国際基幹教育院高等教育開発・支援系/部門 堀井祐介 氏)

  • 教員組織・教員人事制度の改革
    • 学域の設定。専任教員と準専任教員(全ての教員は1つの学類の準専任教員となることができる。専任教員に準じて当該学類の教育を担当する教員)共通教育での統一性に乏しい(アラカルト方式、科目はあるがカリキュラムでない)➡現学長がトップダウン式の改革方針を発表+SGU採択
    • 全ての学類で卒業要件となる共通教育科目を30単位に揃えた
      • 金沢大学<グローバル>スタンダードの5基準の目標に科目を紐づけ
      • 国際基幹教育院を設置し、共通教育機構を所管
  • 教育戦略会議の設置(理事の諮問機関)
    • 教育改革を実現する上での組織的な工夫と課題
    • 工夫
      • 教教分離、機動性の高い教育戦略会議(一貫性のある教育改革)
    • 課題
      • トップダウン型教学マネジメントのため、現場レベルに十分な情報が伝わっていない。制度はできても十分機能していない部分。改革全般に対する教員への情報提供、啓蒙が不十分(SGU、AP、COC、COC+などの補助金頼み。自ら目指す方向性がぶれている?)安定した財政基盤が無いために政策に振り回される。

金沢大学での教員組織改革の事例報告。地方の国立大学における教学改革事例ですが、実際には運営面で様々なご苦労がある事を拝察しました。これも国立大学法人化以後の国立大学法人運営の難しさを示す一例ではないかと思います。

私立総合大学における教育改革-立命館大学の内部質保証システムに着目して-立命館大学の内部質保証システムに着目して-(立命館大学大学評価室/教育改革推進機構 鳥居朋子 氏)

  • 大規模私立総合大学の教育改革事例(教育マネジメントの組織・メカニズム(PDCA)等の現状と課題について整理)学生が約35,000人
  • 大綱的指針
    • 立命館憲章
    • R2020後半期計画(7つの基本目標)「学びのコミュニティ」の形成
  • 第3期認証評価の受審(2018年度)の準備(学習成果、内部質保証)
  • 教育改革に関与する諸機関と実行プロセス
    • 包括的な視点の重要性
    • 内部質保証へのまなざし
    • 立命館大学「内部質保証システム体系図」
      • 3つの階層(大学全体・プログラム・授業)でPDCAを回す
      • カリキュラムマップ、ナンバリングなどのツールの活用
      • メカニズムとしての体制は整ったが、実質化させるのがこれから。
    • 基本的課題に照らした学びの実態の可視化
      • 外国語運用能力が学年進行で下がっていく。カリキュラムに原因を求め、1〜2年時のみであった外国語科目を3〜4年次でも開講するように変更。
      • 学修成果を年次進行で把握できるシステムの存在
      • 間接指標のみではなく、直接指標の開発が喫緊の課題
      • 学部・研究科のカリキュラム改革のタイミングのずれ(ほぼ毎年どこかの学部でカリキュラム改革している。加えて改組・新設等でカリキュラム改革に一定の制約がある)
  • 複雑系組織としての大学のガバナンス・マネジメント、リーダーシップ等を包括的に捉えるための視点
    • 各部局で作成した体系図を持ってきたが、各部署で作成してきた資料には異なりが生じた。体制を整備し、全学的に合意しても落とし込む所まではさらに意識のすり合わせが必要と思われる。
    • 大学において権限の集中化だけで問題は解決しない。シェアドガバナンスを前提としながら、個々の組織の暴走を防ぐ手だての工面・方策の検討。

立命館大学の教学マネジメント事例の紹介でしたが、「内部質保証システム体系図」が印象的でした。学生数が35,000人を超え、大規模大学として教学マネジメントにも様々なご苦労があると思うのですが、内部質保証のエスカレーションルールがA4一枚で分かりやすく整理されていたのが印象的です。こうした体系図の作成に関しても、職員が初期段階から参画しているとのことでしたので、内部質保証に関しても職員力の高さが影響しているのかなと思いました。

地方小規模大学における学生募集政策と出口を切り口に-教育改革の手順を中心に-(尚絅学院大学 黄梅英 氏)

  • 大学改革の成功に資する組織内の要因
    • 意思決定のスタイル
    • 課題に対する認識の共有
      • トップダウンにしてもボトムアップにしても、課題認識の共有を工夫する事が重要(自学の問題点、改革の必要性、他大学の先進的事例)
      • 取り組みの実態を随時報告し、新しい取り組みの効果を検証する事も欠かさない(教職員の継続的な協力が不可欠)
      • 学生の自己評価によるSPレーダー(レーダーチャートを用いた学生評価)

尚絅学院大学の取り組みについては、あまりメモできなかったのですが、小規模大学としての取り組み事例として色々思う所がありました。私自身、前職は小規模大学勤務でしたので。その意味では非常によくやられているのではないかと思う反面、小規模大学であるが故に新しい課題にチャレンジし続けないと他大学との間での競争優位が担保できないと言う点は、どこでも共通する問題なのだなと感じた所です。この点については、大阪経済大学の清水一先生が過去に論じた論考からも読み取れます。*9

指定討論(まとめと論点整理)(東京大学 両角亜希子 氏)

  • 支援センターの役割
    • 大学改革を担う組織の取り組み(従来のFD+IR機能+提案機能?)
    • 既存の組織ではできない業務を担うのか。
  • 教学IRの役割
    • 教学IRを各大学でどのように活用しているか。どのような教育改善・効果憲章等に活用されているのか。また、活用を目的として調査設計などが行われているのか。
  • リーダーシップのスタイル
    • 大学特性の影響、個人特性の影響、行う改革の特徴(既存組織へのインパクトの大きさ等、権限の違い)
    • リーダーシップのスタイル(ビジョンを示す⇄具体策も示す)
  • 教学ガバナンス・マネジメント・リーダーシップ
    • 各所・各層でのリーダーシップの重要性
      • 政策では学長リーダーシップに焦点
      • 実態はどうなのか
        • 学長の権限は学長のリーダーシップ発揮に影響を与えているのか
        • 組織特徴の違いがどのようにマネジメントに影響するのか
  • 教育改革政策の効果
    • 学校教育法の改正は教育マネジメントに影響を与えたか
      • 改革推進のための補助金の効果は?
      • 教育改革ツールの有効性は?(ルーブリック、ナンバリングなど)
  • 教教分離が教育改革に与える効果
    • 大きな制度改革が与えた影響は何か。教員人事制度の改革の効果は?
  • フロアとの質疑応答
  • 中長期計画などの策定には初期から職員が入っている(鳥居先生)
    • 大学評価室は学部の教員と寄り添って問題解決を図っていく。教学に関するリーダーシップは最終的に学長が責任は持つが、教学委員会で各学部の副学部長が出席しており、ミドルレベルのリーダーシップとして権限委譲されている。ポリセントリズム(中心となる組織は複数あるほうがよいという考え方。多中心主義)の議論。高等教育機関はニッチを探しながら競争優位を構築しようとしている。課題課題に即して現場で即座に判断することが望ましいように変わってくるならば、IRのあり様が変わる。しかしながら、これまでの日本ではIRがなかったのではなく、包括的な取りまとめができていなかったことがある。しかし、分散型に移行するためには一度は包括するというモデルを経ないとうまくいかないのではないかと感じる。
      • 日本の大学は学部・学科を基本とした組織でリーダーシップを発揮してきたが、これでは硬直的なので、、、分散してきた(羽田)
      • 教教分離というオルタナティブはあるのか。立命館ではその選択肢は恐らく無い。学部長なども任期が終われば普通の教員に戻る。組合が強い。今後さらに学部が二つ程度増える予定なので、それをどうマネージしていくか。教務部長というポストがあるが、これは非常に責任が重く大変。「内部質保証システム体系図」のひな形は大学基準協会が作成しており、このスキームに入れ込むとなると複雑になってしまう。(鳥居)
  • 職員の関わり方(黄先生)
    • 教務部長、教務課長などSDの強化に取り組んでいる。学長からも強く言われている。尚絅学院大学ではIRの実質化はこれからだが、次年度の予算計画などの策定に関して職員が関与している。
    • 2014年に将来構想プロジェクトを立ち上げた事自体、学長の意思である。ただし、学長が発案するのではなく、ボトムアップでの発案を取り入れるスタイルのリーダーシップを発揮。「生き残るための危機感」
  • 金沢大学の事例
    • 教職協働も行われているが、学内の意見提案としてはパブリックコメント制度の活用などを行っている。
    • 学長集中型のリーダーシップ。理事にも分権されているのだが、学長が決定をひっくり返すこともあるので、その点ではガバナンス上の問題点もあるように思われる。
  • まとめ
    • 評価と統制の問題。外部からの指標が与えられる場合、一致しない場合が多いのでチェックの機能すら働かなくなる。大きな組織で分割されたものをどう統合していくのか。取引コストの低減をどのようにするか。分権化しながらどのようにしてマネジメントしていくのか。
    • 立命館のケースだと、ミドルリーダーシップの権限を強化していくことはひとつのトレンド。質保証は外部性なので、内部を見て顕在化させると教員の授業方法などを画一化していくことになる。内部統制=内部質保証ではない。言葉だけに踊らされないように注意が必要。

内部質保証についての議論なども興味深かったのですが、職員がどのようにして参画していくのかという点について、立命館大学の例は示唆的だと思いました。しかし、これは今に始まった事ではなく、大学経営に職員が直接的に参画している大学の場合、内部質保証にしろ何にしろ、好循環が生まれているように思います。これは大学における教員と職員の関係性によるのだと思いますが、大学組織を永続的に運営していくのは職員組織であって、教員組織ではありません。教員は異動する事が頻繁にありますし、当該大学における教育の質を担保するためにも教員をどう動かすかを職員が真剣に考えている大学がうまくいっているという事なのだと思います。
日本高等教育学会には初めて参加したのですが、研究重視の議論が多く、質疑でも厳しい意見が飛ぶなど個人的には色々な発見がありました。SDにおける教職協働が重要であるとの大学設置基準改正がなされましたが、*10こうした学会に参加する事で教員集団が何を重視し、その中で高等教育をどのように考えているのかを知れることは大切だと思います。大学は教員だけ職員だけで動かせるものではないため、教員文化を知るためにも学会に参加する事は有意義だと思った次第です。

寄り添う学生支援と困難を抱える学生に対する避難所としての「保健室」

high190です。
現在は法人事務局に勤務していて、学生と直接関わる仕事には携わっていませんが、以下の記事を読んで色々考える点がありました。

news.yahoo.co.jp

成人年齢となる時期の学生に対し、手厚いサポートは「甘やかし」だと見る向きもあるだろう。はたして大学に保健室は必要なのか。この10年、帝京短大で学生と向き合ってきた養護教諭の富山先生に問いかけると、「実感として必要だと思います」と即答し、こう続けた。
「昔の子どもは地域や仲間に支えられていたし、何より最後は親が拠りどころになったけど、今は逆に、親が非常に緊張する相手という子も多いです。孤立感や自己否定感を持ったそうした若者に、昔と変わらない若者像を当てはめて同じレベルを要求するのは無理がある。そこに大人や社会が気づくべきです」

前職では学生課、教務課と学生に直接関わる仕事もしてきましたが、率直な感想からして困難を抱える学生は増えているように感じます。それが家庭的な問題であったり、経済的な問題であったりと様々ではありますが、大学に通う学生の一部がそのような困難を抱えている状況にあることは間違いなく増えているように感じます。社会を取り巻く環境は変化し、必然的に大学を取り巻く環境も変化していますので、学生支援にもこれまでにはない取り組みが必要だと感じます。

先に掲載した事例は、東京都の帝京短期大学における保健室に養護教諭を置き、学生支援に役立てた例です。

大学に「保健室」を設置する
授業の片手間では対応しきれないと感じた宍戸教授は、冲永寛子学長にこう相談した。「大学は学生を支援できる最後の砦で、放置すれば彼らは不登校となって、社会で自立していくのが難しくなります。養護教諭のいる保健室を作れないでしょうか」
帝京短大保健室の風景。約35平方メートルとコンパクトだが、小中学校の保健室と共通する気軽に入りやすい雰囲気が漂う(撮影: 長谷川美祈)
養護教諭とは、養護教諭免許を取得した教員のこと。明治時代の学校看護婦にルーツがあるが、1941年に教員となって看護婦免許に関係しない養成課程ができ、戦後の47年に養護教諭という現在の名称になった。応急処置レベルを超えた医療行為はできないが、医学や看護の知識・技能を持ち、子どもの健康問題に日常的に対処する。海外にもいるスクールカウンセラーやスクールナースがそれぞれ心と体に特化しているのに対し、養護教諭はあらゆる心身の健康問題を通してケアと教育を施し、子どもが自立できるよう支える日本独自の専門職だ。
ただ、養護教諭は、小中学校では学校教育法により原則として必置と定められているが(高校は努力義務)、大学では法的根拠がない。養護教諭のいる大学保健室の例は、宍戸教授自身も聞いたことがなかった。
それでも自ら医師でもある冲永学長は、実情を踏まえて快諾した。07年4月、小中学校の養護教諭を35年間務めた富山先生を招き、帝京短大に保健室が開設された。

学長の決定によって設置された保健室が学生にとって居場所となり、そこから無事に社会に巣立っていったという事実を学校職員として心に刻みたいです。私自身も高校時代に悩んだ事がありまして、色々な人に支えられて社会に一歩踏み出す事ができました。社会の構成員となる学生が安心して社会に巣立つための支援策として、こういった取り組みに対する助成などを積極的に検討していただきたいと感じます。少子高齢化社会であることに鑑み、最も大切にしなければならない次の社会を担う人々を大切にすることは社会的使命とも言えましょう。

はてなブログに過去の記事を移行しました

high190です。ご無沙汰しております。
いつかやろう、と思いながら手をつけてこなかったブログの移転を行いました。
はてなダイアリーから、遅まきながらはてなブログに過去記事を移行しまして、今までとは異なるインターフェースに戸惑いながらも現在、記事を書いています。

書きたいネタはたくさんありながらも、日々の業務に忙殺されてしまっていますが、徐々にまとめて開放していきたいと思います。
書き続ける事が自分の力になる事を信じて、これからも続けていきます。