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Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

学位授与の質保証と学位規則の関係を整理する

Diary

high190です。
ここ数日、学位論文の提出がないまま博士号を授与していた大学についてのニュースが飛び交っています。
博士の学位については、博士課程を設置していない大学の職員だとあまり知る機会も少ないと思われるので、学位授与に関しての質保証と制度面での対応について整理しておきたいと思います。


四国大学徳島市応神町古川)が、学位論文の提出がないまま審査し、同大大学院の経営情報学研究科長を務める男性教授(65)と同研究科の男性教授(74)に博士号を与えていたことが9日、徳島新聞の取材で分かった。博士号取得の際には論文を提出し、審査を受けることが学校教育法に基づく文部科学省令「学位規則」に定められている。2人の論文は学位取得時も完成しておらず、審査に提出されたのは「梗概(こうがい)」と呼ばれる概要版だった。文科省大学振興課は「概要版で博士号を授与することはあり得ず、省令違反に当たる」としている。
四国大によると、研究科長は2007年1月、男性教授は09年3月に博士号を取得した。研究科長は学位取得後に論文を仕上げたが、男性教授は論文をまだ完成させていない。
研究科長は06年7月に約50ページの、男性教授は08年12月に約30ページの概要版をそれぞれ提出した。
博士号の学位授与は本来、3人以上の教員でつくる論文審査委員会が論文を審査し、十数人の研究科の教員からなる研究科委員会が可否を判断して決まるが、論文の代わりに提出された概要版を審査していた。
文科省は「概要版で審査はできないし、学位を認定する段階で論文が完成していないといけない」とする。
また省令では、学位授与から1年以内に論文を印刷・公表しなければならない。研究科長の論文は、国立国会図書館四国大学付属図書館にはなく、学会誌への掲載や商業出版もされていなかった。
研究科長は論文を公表していないことを認め、「多忙で論文の資料作成ができなかった。現在、製本しており、12月10日ごろには四国大学付属図書館に収めたい」と話す。
男性教授は「数多くの論文を書いてきており、これまでの実績で学位を与えられるものと思った」と釈明する。
福岡登学長は「事実関係を確認し、対処を考える」と話している。
四国大は1999年に同研究科の修士課程、01年に博士後期課程を設けた。研究科長は06年から経営情報学部長、07年からは経営情報学研究科長を兼任。男性教授は1995年から同学部の教授を務めている。

記事中でも指摘されていますが、学位の授与に関する規定として文部科学省令「学位規則」があります。

学位規則では、博士の学位授与にあたっては、以下のような要件・手続が規定されています。

(博士の学位授与の要件)
第4条 法第68条の2第1項の規定による博士の学位の授与は、大学院を置く大学が、当該大学院の博士課程を修了した者に対し行うものとする。
2 法第68条の2第2項の規定による博士の学位の授与は、前項の大学が、当該大学の定めるところにより、大学院の行う博士論文の審査に合格し、かつ、大学院の博士課程を修了した者と同等以上の学力を有することを確認された者に対し行うことができる。

(論文要旨等の公表)
第8条 大学及び大学評価・学位授与機構は、博士の学位を授与したときは、当該博士の学位を授与した日から三月以内に、当該博士の学位の授与にかかる論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨を公表するものとする。

第9条 博士の学位を授与された者は、当該学位を授与された日から1年以内に、その論文を印刷公表するものとする。ただし、当該学位を授与される前に既に印刷公表したときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、博士の学位を授与された者は、やむを得ない事由がある場合には、当該博士の学位を授与した大学又は大学評価・学位授与機構の承認を受けて、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものを印刷公表することができる。この場合、当該大学又は大学評価・学位授与機構は、その論文の全文を求めに応じて閲覧に供するものとする。

(学位授与の報告)
第12条 大学又は大学評価・学位授与機構は、博士の学位を授与したときは、当該学位を授与した日から三月以内に、それぞれ別記様式第一又は別記様式第二による学位授与報告書を文部科学大臣に提出するものとする。

学内の審査委員会で、学位授与の方針が不明瞭なまま運営されていたことが今回の問題に繋がっているのだと思います。恐らく、設置認可申請時に学位授与に関しての方針・規程を提出したのでしょうが、残念ながら制度が形骸化して事務手続の上で適切な処理がなされていなかったのでしょう。
学位の質保証に係ることについては個別大学の事例であっても、自分の大学がしっかり適切に処理できているかどうかを点検・評価する必要があるでしょうね。規程化するだけではなく、別途事務手続きマニュアルを整備して規程と制度がどのように結び付いているかを可視化するなどの対応が必要では。
また、博士の学位授与に関しては中教審の答申「新時代の大学院教育」に「学位授与のプロセスの透明性の確保等」という形で記載があります。博士の学位授与を促進するという国の方針に対し、各大学が個別に透明性を確保する取り組みを行わなければいけません。