Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

大阪市立大学工学部都市基盤工学科がカリキュラム不備で一級建築士の受験資格を得られない事態に

high190です。
公立大学法人大阪市立大学工学部都市基盤工学科の2005〜08年度に入学した学生が、本来得られる1級建築士の受験資格がカリキュラムの不備で申請できないという事態が起こっていたそうです。


大阪市立大は13日、カリキュラムの不備などが原因で2005〜08年度に工学部都市基盤工学科に入学した学生が、1級建築士試験の受験資格を得られないケースがあったと発表した。
試験は当時、国土交通省が認定した学科を卒業し、2年の実務経験を経るなどすると受験できる制度だった。大学は05年、認定を受けていた土木工学科の名称を都市基盤工学科に変更。国交省との連絡が不十分で再び認定を受けるための申請は09年4月まで遅れていた。
昨年6月、実務経験を終え受験を申し込んだ卒業生に国交省から資格がないと連絡があり、発覚した。

試験を所管する国土交通省が定める基準を、当該学科が満たしていなかったということです。大阪市立大学のWebサイトに事の経緯に関するリリースが出ています。
都市基盤工学科は平成21年4月の学科再編により都市学科に再編されたそうで、大阪市立大学の学部紹介を見ると、現在は工学部建築学科と都市学科で受験資格が得られるようです。


この度、平成17年度から平成19年度に入学した本学工学部「都市基盤工学科」の卒業生の中に、卒業後の所定の実務経験(2年)だけでは一級建築士の受験資格を取得できない者が出てきていることが判明しました。
当時の履修要覧等において、卒業後に所定の実務経験(2年)があれば一級建築士の受験資格が得られる学科と記載していましたが、都市基盤工学科のカリキュラムが「一級建築士の受験資格に係る教育課程認定の運用基準」(平成15年4月改訂)の要件である、住宅や建築物等の設計製図に対応していないことによるものです。

学部学科再編の際に、本来行われるべき手続きがなされなかったことによるものですが、1級建築士の受験資格が得られること知って入学した人にとっては寝耳に水のことでしょう。今後、大学として卒業生にどう説明していくのか、難しい課題だと思います。

大学卒業者の1級建築士の受験資格については、建築士法に次の規定があります。

一級建築士試験の受験資格)
第14条  一級建築士試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、これを受けることができない。

    1. 学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)による大学(短期大学を除く。)又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学において、国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて卒業した者であつて、その卒業後建築に関する実務として国土交通省令で定めるもの(以下「建築実務」という。)の経験を二年以上有する者
    2. 学校教育法 による短期大学(修業年限が三年であるものに限る。)において、国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて卒業した者(夜間において授業を行う課程を修めて卒業した者を除く。)であつて、その卒業後建築実務の経験を三年以上有する者
    3. 学校教育法 による短期大学若しくは高等専門学校又は旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校において、国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて卒業した者であつて、その卒業後建築実務の経験を四年以上有する者(前号に掲げる者を除く。)
    4. 二級建築士として設計その他の国土交通省令で定める実務の経験を四年以上有する者
    5. 国土交通大臣が前各号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認める者

課程認定は学生募集上の魅力にもなり、色々な大学が様々な認定を受けていることと思いますが、今回のように「知らなかった」ことによって学生の不利益になることは避けなければなりません。学科改変等にあたって、具体的に課程認定の実施根拠となる法令は何かを確認するなどのチェックが必要だったのではないでしょうか。そうしたチェック機能を果たすのは大学職員の仕事です。
どんな仕事でもエビデンスは必要ですが、特に課程認定の関係法令を押さえておくことは必須ではないかと改めて感じます。