Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

課税負担を巡るアメリカの大学と自治体の関係

high190です。
ブルームバーグの記事に、課税負担を巡るプリンストン大学ニュージャージー州の関係についての記事が出ていました。
アメリカの大学も固定資産の非課税措置があるようですが、自治体は大学の財政状況からより多くの課税を求めているそうです。


6月29日(ブルームバーグ): 米アイビーリーグ(米東部名門私立大学)の一つであるプリンストン大学は昨年、ニュージャージー州の地域社会に税金など総額1000万ドル(約8億 8700万円)以上の拠出を行った。それでも、地元の自治体の関係者や住民からはさらなる負担を求める声が出ている。
プリンストン市の市会議員、ケビン・ウィルクス氏によると、プリンストン大学が所有する土地すべてが課税されれば、大学は追加の資産税約2800万ドルを支払う必要があるという。大学が保有する土地は市全体の土地の評価額の43%を占め、隣接するプリンストン・タウンシップの13%を占めるという。
プリンストン市の住民であり、ダウ・ジョーンズで会長および最高経営責任者(CEO)を務めていたピーター・カン氏は、「町の財政は厳しく、学校は教師を解雇しようとしている」と指摘。「それなのにこんな裕福な大学がある。大学は町に対する立派な資金提供者のように見えるが、資産税を支払った場合と比較すれば大した額ではない」との見方を示した。カン氏は現在、市民組織「プリンストン・フューチャー」の共同議長を務めている。
米国では経済危機で打撃を受けた自治体が、財政赤字の削減に向け、保有する不動産がほぼ非課税となっている地元の大学に負担を求めており、自治体と大学の対立が広がっている。大学側は、寄付金の記録的な減少を受け、プログラムや雇用の縮小で支出を削減しており、自治体を助ける立場にはないとしている。 2009年6月30日までの1年間でプリンストン大学は投資リターンが24%のマイナスとなる一方で、寄付金の総額は前年の163億ドルから23%減の 126億ドルとなった。

健全な大学運営にはそれなりの資金が必要だと思いますし、大学は公共性のある非営利組織なので、このような指摘に対してプリンストン大学側がどう対応するのかはなかなか興味深いところです。ただ、現実として大学は税制上の優遇は受けているため、自治体からより課税したいという意見が出てくるのも当然と言えばそうですね。これは日本の大学等においても同様の議論が巻き起こる可能性を示唆していると思います。

ちなみに日本の私立学校関係税制については、文部科学省のWebサイトに概要が掲載されています。

このような議論で大学と自治体の対立が深まることは、長期的に好ましいものではないと思います。しかしながら、地域の一員としての大学を考えた場合、確かに大学が財政面の貢献を求められることついても一理あると言えば一理ある。安定した経済状況の場合、このような議論は起こらないことからも、昨今の状況がいかに厳しいかを物語るニュースであると言えるでしょう。

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