Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

初年次教育はどこまでやるべきなのか

high190です。
山形大学では「話し言葉」をレポート等で使用する学生が増えていることを踏まえ、文章力を付けてもらうための科目を必修化するそうです。
このように最近では初年次教育が大学での流行のようになっていますが、果たして大学はどこまで教育すべきでしょう?リメディアル教育が大学教育の大半を占めてしまうようなことにはならないようにしなければなりません。


「やばい」「微妙に」といった話し言葉を文章でも使う学生が目立つことから、山形大は「話し言葉を書かない」など新入生が大学で学ぶうえでのいろはを教える「スタートアップセミナー」を4月から新入生の必修科目とする。専用テキストを作った立松潔教授(経済学)は「文章能力の衰えを感じる。必修にしないと、基礎的なことができない学生が受講しない」と話している。
立松教授によると、山形大では最近5〜6年で、答案やリポートに話し言葉を使ってしまう学生が目立つようになった。立松教授は「早急に学生のレベルを底上げする必要を感じた。できる学生とそうでない学生に開きがある」と危機感を抱いている。
セミナーは週1回90分にわたって「主語と述語、修飾語と被修飾語は近づける」「話し言葉を持ち込まない」など初歩的な作文方法などを解説。リポートやディベート、情報収集の方法についても図で説明する。今までも似た講座はあったが選択科目だったため、興味のない学生は受講しなかったという。
専用テキストのタイトルは、米沢藩第九代藩主上杉鷹山の名言を借りて「なせば成る!」。840円で新入生全員に購入してもらう。「作文力を高めよう!」「文の書き方の原則」「授業ノートのとり方」など26項目を説明。「文の長さは30〜40字くらいを目安とする」などと記している。文部科学省大学振興課の担当者は「大学生に対し、これほど基礎的なことをテキストまで作って教える例は聞いたことがない」と話している。

実際問題として、大学に入学してきた学生をしっかり教育して卒業させる責任が大学にはあります。中央教育審議会がアドミッションポリシー、ディプロマポリシーを定めるよう、大学に求めているのは高等教育の質を保証するために他なりません。しかしながら、これは高等教育だけの問題ではなく、初等・中等教育と連動した問題であるはずです。平成17年1月28日に公表された中央教育審議会の答申「我が国の高等教育の将来像」に、高等教育と初等中等教育との接続について、次の記述があります。

高等教育は,初等中等教育を基礎として成り立つものであると同時に,初等中等教育の在り方に大きな影響を及ぼすものである。また,両者の接点である大学入学者選抜を取り巻く環境も,急速な少子化の進行等を背景として大きく変化し,私立の4年制大学のうち約3割,短期大学では約4割が定員割れを起こしている。中には,入学者選抜が,本章4(1)で述べる「高等教育の質」の一環としての学生の質に関する選抜機能を十分に果たし得なくなってきている例も見られる。また,進学率の上昇に伴う高等教育の大衆化や高等学校段階までの履修内容の変化等によって,入学者について履修歴の多様化が一層進み,このことが学生の知識・能力の低下や多様化を招いているのではないかといった指摘もある。このような状況をも踏まえて,高等教育の質の確保・向上等に努める必要が出てきている。

大学の入学者選抜が一部の大学では本来の機能を果たさせなくなってきていることから、大学は学生の質を担保しつつ、留年者を極力出さないようにして卒業させるという難しい舵取りが必要になります。ただし、大学生活は4年間しかありませんので、その中でできることは必然的に限られてしまいます。だからこそ、初等中等教育段階での教育内容と高等教育段階の教育が連結していなければならないのです。
高大連携なども最近では進んできていますが、読み書きの力を付ける上でも、さらなる協力体制の強化が必要になってくるのではないでしょうか。

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