Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

学部・大学院の共同設置、認可申請書の虚偽記載で認可を取り下げ

high190です。
学部・大学院を複数の大学で設置することを可能にした、学部・大学院の共同設置制度。
今年度、5つの女子大が教職大学院の共同設置を認可申請したのですが、初の事例になるはずだったこの申請、申請書の虚偽記載が発覚し、認可申請を取り下げていたことが昨日判明したそうです。


昭和女子大(東京都世田谷区)など都内の五つの女子大が、来年度の開設を目指していた「共同教職大学院」の設置認可申請を取り下げたことが22日、分かった。文部科学省への提出書類に昭和女子大准教授だった男性(61)が虚偽の経歴を記載していたことが発覚したためで、同大は男性を懲戒解雇処分にした。共同教職大学院の教員に同大は3人を申請しており、この男性はトップの教職研究科長に就任する予定だった。【加藤隆寛】
08年の制度改正により、複数大学による学部・大学院の共同設置が可能になった。昭和女子▽大妻女子▽実践女子▽東京家政▽日本女子−−の5大学による共同教職大学院は、この制度を用いて設置認可申請した全国初のケースとして注目されていた。
昭和女子大によると、准教授だった男性の懲戒解雇は今月16日付で、申請取り下げは21日付。文科省への提出書類に記載されていた「岐阜県教育委員会指導主事(97年〜)」「同研修課長・教育センター第2研修部長(02年〜)」「同県立高校長(03年〜)」などの経歴がいずれも虚偽だった。男性は岐阜県立高教諭の経験はあったが、管理職を務めたことはなく、文科省の指摘を受けて大学側が確認したという。
04年に助教授として採用した際も男性は虚偽の経歴を伝えていたが、大学側は気付かなかったという。
大学の担当者は「提出書類に虚偽があれば認可されないので申請を取り下げた。残りの4大学だけで再編して申請し直すには時間がなかった」と説明している。
今後の開設計画は未定だが、大学側が虚偽申請によって設置認可を受けようとした場合、一定期間は学部・研究科の開設を認めないなどのペナルティーがあり、文科省が経緯を精査している。

色々と感じることがありますが、とりあえずいくつか項目として挙げてみたいと思います。

  1. この件で5大学間の連携が今後どうなるのか
  2. 一定期間学部・研究科の開設を認めないペナルティー(最長5年)が科せられる場合、適用範囲は昭和女子大のみなのか、5大学全てなのか
  3. そもそも研究科長就任予定者の略歴が厳密に精査されなかったのは何故か

共同設置制度による申請の場合、責任の所在は全ての大学に及ぶというのが一般的な考え方だとは思いますが、そのような説明で他の4大学は納得が行くのでしょうか?
個人的に最も関心があるのは、この事件によって共同設置を目指していた大学間の信頼関係をどう再構築するかということです。また、他の4大学がどのように公式発表を行うのかが非常に気になります。
7月24日の午前0時時点では、どの大学もこのことについては触れていません。
ちなみに文部科学事務次官は「誠に遺憾なことだし、大学にとっても大変恥ずかしいことだ」と批判の意見を表明しています。
文部科学省側としても、大学の可能性を新たに切り拓く新制度がこのような形でスタートしてしまったことに対して遺憾でしょう。今後は虚偽申請に至った経緯を精査するそうですが、目が離せないトピックです。

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