Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

平成20年度能力開発基本調査結果の概要から見る人材育成のポイント

high190です。
厚生労働省では能力開発基本調査というものを毎年実施しているそうです。目的は「この調査は、我が国の企業、事業所及び労働者の能力開発の実態を正社員・非正社員別に明らかにし、職業能力開発行政に資することを目的とする。」ということだそうなのですが、労働条件及び労働環境を考える上でも面白いデータかも知れません。


平成20年度能力開発基本調査の調査結果を、今般とりまとめいたしましたので公表します。
【調査結果のポイント】

    1. 教育訓練の実施状況をみると、OFF-JT実施率は前年度とほぼ横ばいであるが、計画的なOJT実施率は10ポイント以上上昇している。また、非正社員に対する実施率は正社員の半分以下であり、大きな格差がみられる。特に、非正社員に対する実施率は、業種間での違いが大きい。
    2. 教育訓練の対象として、選抜した労働者の能力を高めること、と労働者全体の能力を高めることのどちらを重視しているかをみると、2年前と比べ、前者が10ポイント以上増加して、後者を上回り、正社員で約6割となっている。
    3. 教育訓練の方法について、外部・アウトソーシングの活用と社内での実施のどちらを重視しているかをみると、正社員はほぼ半々となっているのに対して、非正社員は社内での実施を重視しているものが多い。
    4. 自己啓発を行った者の割合は正社員、非正社員ともに前年度を上回った。自己啓発における問題は、正社員、非正社員ともに、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」、「費用がかかりすぎる」の割合が高い。非正社員は、「家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない」を挙げる者の割合も高い。
    5. 人材育成上何らかの問題があるとした事業所は約7割で、やや低下した。問題として、「指導する人材が不足している」、「人材育成を行う時間がない」、「人材を育成しても辞めてしまう」などが挙げられている。

教育訓練の対象、という部分を見ると過去と比較して「選抜した労働者の能力を高めること」を重視している企業等が増えているということは注目に値します。つまりは、全体の底上げよりも伸びる人・伸びようとする人にはお金をかけて育成するという傾向です。不況の影響で、企業等がそこまで能力開発に資本投下できないということが一番の理由だと思うんですが、パレートの法則がこんなところにも表れているような気がします。
また、自己啓発をすり人が増えているともありますが、上記の「選抜した労働者」と「自己啓発をしている人」の相関関係を調べてみたら面白い結果が出てきそうですね。

ちなみに、こういう調査結果って、就職活動中の学生に見せてもいいんじゃないでしょうか。学生にとっては就職が決まるまでが勝負なのかも知れませんけれど、勤めてからどれだけ能力開発の機会があるのか、また、能力開発に関して社会的な流れはどうなっているのかを考えてもらう上でも、こうした調査結果は有効なような気がするんですけどね。



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