Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

大学への公的支出は増えるか

high190です。
慶應義塾大学の安西塾長など4人が大学への公的支出を増やすという提言を中央教育審議会に提出しました。金額としては現行から5.5兆円の増額が必要とのことです。

近く生まれる子どもたちが大学に進学する2025年には、大学生を1・3倍の375万人に、高等教育への公財政支出も倍増の5・5兆円が必要−。慶応大の安西祐一郎塾長やお茶の水女子大の郷通子学長ら4人が1日までに、数値目標を盛り込んで大学の近未来像を描いた提言を中教審に提出した。
日本の高等教育への公財政支出は年約2兆6000億円。対国内総生産(GDP)比率は先進諸国では最低レベルで、財政難から予算も削減傾向だ。
提言は「財政事情に無理解ではない」としながらも「先進諸国が高等教育への投資を競い合うように伸ばし、量拡大と質向上を追求している現実を無視するのは鎖国的発想」と断じている。
中教審は08年度から5カ年の教育政策目標「教育振興基本計画」を策定中。4人はいずれも中教審の大学分科会と教育振興基本計画特別部会の委員や臨時委員を務めており、提言を計画に反映させたい考えだ。

今回意見を提出した人たちが気にしているのは、先進諸国と日本の高等教育に対する公的支出が大きくかけはなれていることにあります。もはや高等教育も国際的競争の時代に入っていますので、財務的に多額の支出が可能なところによい教育が集中していくという現象が起こってきます。優秀な研究者を招いたり、先進的な研究を行うには多額の投資が必要になります。これは個々の大学だけで賄うには無理があり、国策として高等教育をどのように扱っていくのかを問うために今回の提言が出されたのだと思います。
教育への投資は長いスパンで効果を測定しなければならないこと、つまり効果が現れてくるには時間がかかります。それだけ、早期に高等教育への支出を増やさないと先進諸国との格差は広がるばかりで、その差を埋めることは難しくなります。提言には現在の財政事情に対する一定の理解を示しながらも、危機感が募っているのがよく分かります。競争相手がたくさんいる訳ですから、もはや待ったなしの状況。日本の有力大学のトップ達が募らせる危機感に、行政はどう対応するのでしょうか?

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