Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

資金調達力の違いは大学職員の能力によるのか?

high190です。
外部資金調達や資産運用によって大学財政を健全化・拡大化することに関して、日本の大学はまだまだであるという意見をよく耳にします。確かに、自分の大学がどのような資産運用をしているのか私自身詳細には知りません。(一応、就職したときには有価証券等で運用をしているとの話を聞きました。その内容までは残念ながら分かりませんでしたが)そうした情報をあまりオープンにしないのも日本の大学の特徴なのかもしれません。
さて、日本私立学校振興・共済事業団の調査で私立大学の資産運用の利回りが発表されました。平均利回りは1.6%とのこと。

国内の私立大学が昨年度に資産運用で得た収益は1470億円で、収入全体の2・7%に過ぎず、米国の大学に比べて資金力に大きな差があることが、日本私立学校振興・共済事業団の調査でわかった。
優秀な学生や研究者の確保に使う自前の資金力の差は、大学の競争力の差につながりかねないという。
調べたのは、4年制大学を設置する516法人の決算。その結果、昨年度に運用した資産は計8兆9500億円で、平均利回りは1・6%だった。
一方、米国の調査によると、ハーバード大の3・8兆円、エール大の2・5兆円、スタンフォード大の1・9兆円など、資産運用のために単独で1兆円以上の基金を持つ大学が6校もあった。金融工学を駆使して、金融派生商品ヘッジファンドなどにも投資して、それぞれ年18〜28%の投資収益を上げていた。
早稲田大は、金融機関で活躍したOBを招き、授業料などの収入の中から700億円を債券などで運用。今年度は、収益から30億円を奨学金に支出するが、大出達夫・資金運用担当課長は「大きな含み損は認められず、どうしても保守的になる。米国とは運用に20〜30年の差がある」と認める。国立大の場合、さらに条件は厳しく、運用は預金や国債などに限られている。このため、文部科学省投資信託の解禁を検討している。

米国のアイビー・リーグの大学と比べると、やはり大きな差が出ていますね。昔にはハーバード大学の資産運用実績について、こんな記事も書きました。

この記事は高い資産運用実績を誇るハーバード大学基金が損失を計上する見込み、という内容ですが同時に米国の大学には優秀なファンドマネジャーが在籍し、投資会社さながらの高利回りを実現していることを示すものでもあります。ちなみに株式会社M&Aコンサルティング、いわゆる「村上ファンド」に米国の大学基金が投資していたことも高いリターンを得ていたことの証左ですね。
何故、日本の大学は米国大学のように資産運用できないのか?有名ブロガーの一人である磯崎哲也さんのブログにその答えになりそうなことが書いてありました。

とても分かりやすく解説されているコメント欄の一部を引用します。

一昨年某私立大学の運用担当者に聞いた話では、日本の大学の運用資産は、1位 日大、2位慶応、3位早稲田だそうです。サイズは、ハーバードなどよりずっと小さく最大の日大でも数千億円の下の方だそうです。運用スタイルは、ハーバードがオールタナティブ中心に突っ込んで全盛期30%以上で回したの比べると、日本は国債中心で非常に保守的です。なぜかと聞くと(バブル時やられたこともありますが)、日本の大学は米国と異なり、「寄付金」を運用しているのでなく「学費」を運用しているので、やられるわけにはいかないとのことです。(確かに寄付したことはありませんが(笑)) また、数々の資産運用理論の研究者を輩出している米国と異なり、日本の大学ではそうした研究者(特に実務にも詳しい)が少なく、発言権も弱く、理事会・教授会なども決してファイナンシャル・リテラシーが高くない、という事情があるので、ハーバードは理想ですが、現状では夢の又夢、の状態のようです。

上記の指摘のとおり、日本での資産運用理論に関する研究が米国に比べて盛んでないことと理事会・教授会のファイナンスリテラシーが米国ほど高くないということが日本の大学における資産運用力を表しています。ということは、ファイナンスリテラシーの高い人がトップに就かないと難しいということになります。逆説的に考えると、それだけ説得力のある数字を理事会・教授会に出せていない大学事務組織力の差でもある訳ですね。資産運用を通して、日米の大学職員力が比較されているような気になります。

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