Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

中央教育審議会大学分科会が考える、これからの大学職員像

high190です。
日本では文部科学省が高等教育行政を所管していますが、その中の審議会組織として「中央教育審議会」があります。この審議会の主な内容は下記のとおりです。

(1) 文部科学大臣の諮問に応じて,教育の振興及び生涯学習の推進を中核とした豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に関する重要事項,スポーツの振興に関する重要事項を調査審議し,文部科学大臣に意見を述べること。
(2) 文部科学大臣の諮問に応じて生涯学習に係る機会の整備に関する重要事項を調査審議し,文部科学大臣又は関係行政機関の長に意見を述べること。
(3) 法令の規定に基づき審議会の権限に属させられた事項を処理すること。

この中央教育審議会の分科会である大学分科会で「学士課程教育の再構築に向けて(審議経過報告)」という資料が発表されています。

上記ページの【報告書等】の中に審議経過の文書が公開されています。ページ数が80近くあり、全部読むのはちょっと大変ですが、なかなか読み応えのある内容でした。その中にSD(Staff Development)の項目があります。職員の職能開発という項目なのですが、こちらに掲載されていることは「ふむふむ」と頷くところが多かったです。

高度化・複雑化する課題に対応していく職員として一般的に求められる資質・能力について、上記審議経過報告では次のようにまとめています。ちなみに【これまで】と【これから】に分けているのは、私の考え(恐らく、今後はそのようになっていく)で分けてあります。

【これまで】

  • コミュニケーション能力
  • 戦略的な企画能力、マネジメント能力
  • 複数の業務領域での知見(総務、財務、人事、企画、教務、研究、社会連携、生涯学習


【これから】

  • インストラクショナル・デザイナー(教育方法改革の実践者)
  • 研究コーディネーター
  • 学生生活支援ソーシャルワーカー
  • インスティテューショナル・リサーチャー(学生を含む大学の諸活動に関する調査データを収集・分析する職員)

何故、上記のようにこれまでとこれからを分けたのかというと、OJTで獲得できる能力と専門教育を受けないと獲得できない種類のものであると私は考えるからです。これから、の区分に入る職能は専門職としての教育(大学院)を受けなければなかなか獲得するのは難しいでしょう。ちなみにアメリカの大学職員をしていらっしゃった方のblogに、インスティテューショナル・リサーチャーのことが書かれています。

Institutional Researchとは、おそらく日本の大学でその部署を持っているところは少ないと思いますが、簡単に言うと、3つほどに役割がまとめられると思います。

1.大学首脳が必要な大学の情報を伝える
2.州や連邦政府、または一般企業が行うアンケートに答える(US NEWSとかのアンケートも答えます)
3.大学のデータベースの管理

その他にも、インストラクショナル・デザイナーについて紹介しているblogもあります。

まさしく大学アドミニストレーターの仕事です。こうした形に日本もシフトしていかなければなりませんし、それは中央教育審議会の審議経過報告を見ても明らかです。しかし、おそらく日本の大学の中で公費として大学院への研修費用を負担しているところはほとんどないのではないでしょうか。要は「意識の高い大学職員」が自腹で進学しているということです。そのことの証明なのか、大学アドミニストレーター養成の大学院(東京大学教育学研究科大学経営・政策コース、桜美林大学大学アドミニストレーション専攻)は定員割れの状況だと、両大学の職員の方から伺ったことがあります。
そういった意味では、大学職員向けの奨学金制度なども必要になってくるのかも知れませんね。大学職員サポートセンターという組織もできたことですしね。意識の問題ではなく、本当の意味で大学アドミニストレーターを養成するための議論と、政策面での協議が必要なのではないかと思います。