Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

大学におけるスポーツと広告効果

high190です。
さて、突然ですが大学でのスポーツというと何を思い浮かべるでしょうか?私は箱根駅伝(中央大、駒沢大、順天堂大山梨学院大などなど)とかラグビー慶應、早稲田、明治などなど)なんかが頭に浮かんできます。競技によって自然と大学名が頭に浮かんできますから、それだけスポーツによる広告効果は高いということです。

大学スポーツの現状について、朝日新聞のスポーツフロンティアで特集が組まれています。

(上記記事(1)より抜粋)

「ワセダのブランド力には脱帽だ。数年後には、久々に箱根で優勝するんじゃないか」
最近、首都圏の大学の駅伝関係者から、そんな嘆き節が漏れてくる。無理もない。今夏の全国高校総体の5000メートルで入賞した日本人高校生の上位3人が、そろって早大進学を希望しているという。
90年代後半に体育会が弱体化した早大はスポーツ復活を掲げ、03年にスポーツ科学部を開設した。今春は卓球の福原愛、テニスの杉田祐一というプロ選手が、筆記試験のない「トップアスリート入試」で入学した。トップクラスのスポーツ選手にとっては「狭き門」が広がり、有力選手が吸い寄せられるように集まってくる。
早大のような有名私学のスポーツ進出は、偏差値という尺度で見劣りする大学には脅威だ。学費免除、栄養費支給などの条件を出しても、人材は容易に集まらなくなる。

(上記記事(2)より抜粋)

早大がスポーツ強化に大きくかじを切ったとき、慶大体育会を担当する山崎元・常任理事は「学業がきちんとしたレベルまで達していることが前提。早稲田に追従することは許されない」と学内向けに記した。

(上記記事(3)より抜粋)

立命に追いつけ追い越せという雰囲気」。同大の水田正一スポーツ支援課長は関西の大学スポーツの構図をこう説明。そして「勝利至上主義ではない。でも、本音は勝ってほしい」と漏らした。

これらの記事を読むと各大学の思惑がよく表れていますね。特に早稲田大学はスポーツ重視の戦略に転換して以降、大学のブランド力向上に成功しているようです。

先日、某体育大学の方とお話する機会があったのですが、「早稲田が本気を出したら、うちは潰れてしまう」と非常に大きな危機感を持っていらっしゃいました。ただ、同時に「本学は体育学をメインとする大学で、教員志望の学生が多い。しっかり教育していきたい」ともおっしゃっていました。

慶應義塾大学早稲田大学の戦略に対しては、静観の構えを取っているようです。

私はこうしたスポーツ強化による大学のブランド向上戦略を見て、果たして特待生として採用した学生をどこまでしっかり勉強させることができるのか?という観点で見ています。慶應義塾大学はそのあたりが気になるのでしょうね。
実は本学でも強化スポーツを設けていまして、私は特待生業務を担当しています。しかし、結局のところ、資金的な面でのインセンティブもさることながら、大学としてどういったことで価値を創出しているか・知名度の点でどうかということの方が受験生からすると重要でしょう。

大学の広告効果向上の手段としてスポーツを利用するだけでなく、学生の帰属意識向上にもスポーツは役立ちます。大学のカラーを出す上でスポーツが非常に分かりやすいメッセージを伝えることになるのかも知れません。