Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

バージニア工科大学銃乱射事件の調査報告書

high190です。
今年の4月16日に発生した、米国・バージニア工科大学銃乱射事件の調査報告書が発表されました。
事件当初から問題となっていた、大学側の対応の悪さについて指摘があったようです。

バージニア州のバージニア工科大で今年4月に起き、32人が殺害された米史上最悪の乱射事件で、事件の経緯、予防対策などを調べてきた州の特別調査委員会は30日、韓国出身の学生、チョ・スンヒ容疑者の精神的な問題を事前に察知できなかった大学当局の対応不足を批判する報告書を発表した。
同容疑者は犯行後、自殺しているが、事件前から自殺願望の言動を示していたとされる。また、同容疑者が「脅威」となる可能性があったにもかかわらず、家族との意思疎通も十分でなかったと述べた。
事件では、学生、教員らが殺害され、17人が負傷している。報告書はまた、乱射が発生する前、学生寮で遺体2体が見付かった際、学生や教員らに適切な警戒を出さなかった大学側の失態も指摘。
大学はキャンパス閉鎖の措置も取らず、乱射の危険性を電子メールで学生らに警告したのは遺体発見の2時間半後だったとし、後手に回ったことを批判している。乱射が始まったのはこの20分後だった。
さらに、2遺体の発見について警察が当初、単独の暴力事件との見方を示したのも警告を発することを遅らせた一因と批判した。
報告書は、学生らへの警告がより早ければ、多くの生存者が出た可能性があるとも主張している。その上で報告書は5項目にわたる改善事項を提言し、警告を学生に発する際は「すべての重要な事実を盛り込んで出来るだけ早く発信し、学生にこの伝言を他人にも伝えるよう促すべきだ」などと説いている。
特別調査委は事件発生後、ケーン州知事が設置を命令していた。

国内のメディアでは、産経新聞がこのニュースについて報じています。

いづれのニュースを見ても、大学側の判断にまずさがあったことは否めません。特に今回の事件においては、事前に事件の兆候が起こっていたにも関わらず、そうした事実は見過ごされて事件が発生してしまった感があります。
この問題が発生した理由には、大学運営者の中に事なかれ主義が蔓延していたか、または別の問題を恐れたのか、色々な要因が考えられると思います。しかし、一番問題だったのは、「自分のところは大丈夫」という姿勢だったのではないでしょうか。

特に大学という組織は毎年度、変わらない業務の繰り返しになることが多く、徐々に組織が硬直化していくことがよくあるところだと思います。そうした状況下では、危機管理がうまくいくはずがありません。ある意味では、意図的に危険な状況を作り出して、その問題に対処させるといった対応策も必要かもしれません。

日本でこのニュースを知った大学関係者のほとんどは「アメリカは銃社会だから」とか「うちの大学ではこんな事件は起こらない」と思ったに違いありません。(ちなみに私の職場では、こうしたニュースに対する反応は非常に薄かったです)
しかし、大阪教育大学附属池田小学校のような事件が既に日本では起こっています。学校は安全な場所ではなくなっているという事実があるのです。こうした状況に対して、大学としてどう対処し準備していくのでしょうか。名前ばかりの危機管理など、有事の際には何の役にも立たないことを大学は早く知るべきだと思います。