Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

進化するインターンシップ

high190です。
本学の3年生たちは現在、インターンシップに参加しています。うちの場合、希望者のみの参加ですが、他大学ではほぼ全員に参加させるところも出てきているようです。
これまでもいくつかの記事でインターンシップについて触れてきました。

8割の大学3年生はインターンシップを重視している(2007/06/14)

地域と連携した長期間インターンシップ(2007/08/05)

ここ最近では、自治体へのインターンシップや有料参加!のインターンシップもあるようです。

インターンシップが多様化している。就職活動の前に実際の業務を体験したいという学生の要望に企業や大学が応える形で普及してきた制度。最近は企業での就業体験という枠を超え、行政の場やスポーツイベント、海外の研究機関といった分野へも学生たちが進出を始めた。独自のインターンシップで学校の魅力を高めたい大学側も学生たちの背中を後押しする。
兵庫県三木市は神戸市の北に広がる人口約8万5000人の町。小高い山の頂を切り開いて建てられた市庁舎に、藪本吉秀市長が遊休市有地の視察を終え、汗をかきかき急ぎ足で帰ってきた。小走りでぴたりと続く男女の若者2人と市長室へ。担当職員が遊休地の活用法を説明し始める。「君たちはどう思う」。市長が傍らの2人に問う。
「無計画な土地購入の説明責任があります」と手厳しいのは関西学院大法学部2年の引寺佑輔さん。総合政策学部2年の西村依里子さんが「土地所有の目的が明確でない以上、売却すべきでは」と続ける。無言でうなずく藪本市長。苦笑いを浮かべる職員に次の発言を視線で促す。


●「市の姿が新鮮」

2人は8月の10日間を三木市でのインターンシップに費やす。体験する職種は「市長」。秘書や代理でなく、分身として朝から夕方まで市長に付き従う。市長と同じ目線で動き、人に会い、同じ立場で考える。会議や市の催しに参加し、市民の苦情を聞く。
関学大が“市長インターンシップ”を始めたのは昨年。三木市兵庫県尼崎市に毎夏各1、2人の学生を派遣する。政治と行政への理解を学生に深めてもらう狙いだ。市側も「市民の発想を行政に取り入れたい」(藪本市長)と歓迎。引寺さんは「公務員志望なのですべての体験が有意義」、西村さんは「私は三木市出身。苦情への対応など市長の立場で見る市の姿が新鮮」と感想を述べる。
インターンシップを導入する大学は年々増加し、2006年度で全体の約70%が導入済み。学生の就業先も一般企業にとどまらず、様々な分野に広がっている。受け入れ先は学生に業務を知ってもらえる利点があり、大学側も独自のインターンシップ制度で他校との差別化を打ち出そうとしている。学生の選択肢は拡大する一方だ。
8月の真夏日阪南大の1室で20人近い学生が講義に聴き入った。夏休みのキャンパスにわざわざ足を運んだ学生たちの表情は真剣そのものだ。インターンシップに参加する学生への研修会。大阪で開催中の世界陸上選手権で警備や選手の送迎を担当する。
実はこのインターンシップは2万円の“参加費”が各自のユニホーム代などとして徴収される。「元を取りたい。眠ってなどいられない」。流通学部3年の牧満生さんは真剣な理由を話す。当初は有料と聞いてひるんだが、世界的なイベントに参加でき、有名な選手に接する機会もある。単位が認定され、就職活動の面接の場で独自の体験をアピールできるはずだ――。そう考え、アルバイトで費用を稼いで参加したという。


●あえて有料参加

学生を受け入れるのは近畿日本ツーリスト。選手の輸送と宿泊を請け負う協賛企業だ。2日間で5コマの講義の講師を務めたのは営業担当の石川明彦さん。同社が関係した競技大会の事例を紹介するなどした。「何よりやる気のある学生が欲しい」。石川さんはあえて有料参加にした理由を説明する。文字通り、苦労ならぬインターンシップは買ってでもせよと考える学生が今や珍しくない。
今夏、海外の大学や研究機関へ理科系大学院生を派遣し始めたのは関西大。マレーシアやドイツへ3人の学生を送った。旅費や滞在費を大学が負担し、単位も認定。「就職活動の機会が限られる理系の学生にこそインターンシップは必要」。化学生命工学部の河原秀久准教授は狙いを話す。
インターンシップの多様化に対し「他の学生と違う独自の体験を積みたい」(阪南大流通学部3年の谷野菜穂子さん)、「海外の機関で研究の幅を広げたい」(関西大大学院1年の比嘉桜さん)など、学生たちは一様に意欲的。ユニークなインターンシップであるほど参加自体の魅力も高まる。
近畿大は今春、経営学部にキャリア・マネジメント学科を新設。インターンシップへの参加が必須科目だ。学生の情報交換の場としてサークル「インターンシップ研究会」も発足。学科長の大窪久代教授は「インターンシップは学生、受け入れ先、大学の3者すべてに有益。今後とも広がっていくはずだ」と見る。

有料参加型のインターンシップというのは非常に面白い取り組みだと思います。企業側としても有料にする以上、学生の満足度を高めるように努力されるでしょうし、学生側としては払った分の見返りが欲しいでしょうから、必然的にインターンシップに取り組むモチベーションは高くなります。
インターンシップに参加する学生が増えるのはいいことですが、「やらされている感」があるようでは、せっかくの体験が無駄になってしまいます。賀企業と学生のマッチングを図るためにも、有料化することでwin-winに導こうという訳です。

物事は主体的に取り組むことで、大きく見え方が違ってくるものです。その点では、いかに主体性を持って取り組める環境を整備するのかということが重要になってきます。「本学ではインターンシップを実施しています!」と言っている大学はたくさんありそうですが、内容は企業に丸投げしているところが多いのではないでしょうか。
(ちなみに文部科学省の特色GP・現代GPに採択されるような優れた取り組みもたくさんあります)*1

具体的に何を経験させて、そこで得た知識・経験を就職活動や学生生活にどう活かすのかまで考えている大学は多くないと思います。もっともっと内容を企業と一緒にブラッシュアップして、学生のためになるインターンシップのあり方を模索していく必要があると思います。