Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

地方での学生確保競争が加速し始めた

high190です。
これまでも何回か、各大学の他所への進出についてお知らせしてきました。

[過去記事]
サピアタワー・オープン後の様子(2007/06/07)

長崎県公立大学法人、学生の就職支援を目的に東京駐在職員を新設(2007/06/10)

こうした流れですが、特に上位私大で加速しつつあるようです。

関西の受験生を取り込もうと、早稲田大は14日、大阪市北区のホテルで国際教養学部の模擬講義を開いた。早大が入試説明会以外のPR企画を関西で実施するのは初めて。関西の私大は、逆に東京からも受験生を確保しようと動きを強めており、少子化で減る受験生の争奪戦が激化している。
同学部では講義の大半を英語で行っており、在学中は1年間の海外留学が必修。この日の模擬講義も英語で行われ、英米文学の英国人教授がメディア論について約50分間の講義を行い、高校生と保護者約70人が参加した。京都市左京区の高校3年、和田恵実さん(17)は「第1志望なので雰囲気を知りたかった。説明会で東京まで行くのは大変なのでよかった」と話した。
早大の志願者数は9年連続日本一。今春は昨春より13%多い約12万5000人にのぼったが、担当者は「学部のキーワードは多様性。同じ日本でも、東京とは文化が異なる関西から学生を募りたい」。8月には、オープンキャンパスをライブ中継する初めての取り組みを大阪市内で行う。
すでに早大を含む在京の私立大12校は、関西で合同の入試相談会を開催。大阪などで地方入試を行う大学も増えている。
一方、立命館大は今年11月に「オープンキャンパスin東京」を東京国際フォーラムで開く。入試問題の傾向と対策を解説する講座などを行う予定で、同大広報課は「受験生の約半数は関西圏以外。東京でも立命館の魅力をきめ細かくPRしたい」としている。

ここ数日、高校での合格実績不実記載が問題になっています。
これも大学間競争の煽りを受けて、高校側でもやむなく行わざるを得なかったと見るのが妥当でしょう。

しかしながら、国からの補助金を減額され、経営の自助努力を叫ばれている中で、こうした私立学校の行動に対して、文部科学省としてはどのように抑止をかけていくのでしょうか?今回の件は氷山の一角に過ぎず、今後も表面化することのように思います。
学習指導要領の未履修が全国的に問題となり、今度は合格者の水増しが行われていた…

これが仮に企業であった場合、上場していれば間違いなく上場廃止でしょうし、消費者からの信頼も失って業績は悪化するのが目に見えています。しかし、学校の場合、公益を目的としているため、「市場」のように厳しい自己調整機能が働いていないのです。

過去にはこんな記事も書かせていただきました。
[過去記事] 内部監査部門持つ大学、3校に1校どまり(2007/05/30)

「本当に適切な大学経営」とは何であるのか?

日本の大学において、そろそろ、そうした問題が顕在化しつつあるのかなと感じさせられるニュースでした。