Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

シニア層を大学に囲い込め!

high190です。
私の母が今年の夏に、「シニアサマーカレッジ」に参加したいということで手続きを済ませたそうです。母が若かりし頃、大学に行きたくても家庭の事情で行けなかったそうで「長年の夢が叶う!」と嬉しそうに話していました。

やはり年齢に関係なく「学びたい」と思っている人はたくさんいますし、そうした人たちをどのように受け入れ、教育プログラムを提示していくのかを検討することもこれからの大学に必要なことだと思います。

少子高齢化時代を反映して、各大学は様々な形で高齢者を大学に呼び込もうとしています。

「シニアを大学に呼び込め」――。大学の間で、高齢者層に再び授業に参加してもらおうとする動きが広がっている。住宅メーカーと連携して受講する高齢者向けに専用住宅を用意したり、社会人入試に特別枠を設けたり“ケア”に知恵を絞る。学費の割引制度を導入した大学も。定年後に「知」の刺激を求め、再びキャンパスを目指す高齢者は増えているという。「少子高齢化時代」の新たな活路をシニアに求める思惑も見え隠れする。

「本気で学ぶ人を受け入れたい。世代を超えて交流し、長年培った知識や経験を伝えてほしい」。関西大学の芝井敬司副学長が5月末、大阪市内のホテルに集まった約140人の50代以上のシニア層に呼び掛けた。関西大が住宅メーカーなどと進めるプロジェクト「カレッジリンク型シニア住宅」の説明会だ。70代や80代の参加者も少なくない。

カレッジリンク型シニア住宅とは、大学などが高齢者向けの住宅を準備し、入居者は若い学生と一緒に大学の講義を受講。サークル活動にも参加する。計画を立案した社会開発研究センター(東京)の村田裕之理事長によると、米国では20校近い大学のキャンパス内にシニア向け住宅があり、入居者の要介護率が低下する効果も報告されているという。


●神戸に280戸建設

関西大の計画は日本初の試みで、神戸市灘区に共同住宅(約280戸)を建設。シニア入居者は、来年4月から聴講生や科目等履修生、社会人学生として講義に出席する。必要な単位を取得すれば、卒業証書が授与される。

関西大千里山キャンパス(大阪府吹田市)と共同住宅はシャトルバスで結ぶが、住宅内で受講できる「出張講座」も用意。歴史や芸術などに関心の高い高齢者が多いため、まずは文学部でシニアを受け入れる。

説明会に出席した徳島市の村中弘明さん(80)は「若いころは終戦と重なり、勉強どころではなかった。青春時代を取り戻したい」と入居を検討する。芝井副学長は「若者だけを相手にしてきた大学の姿を変えたい。成功すれば様々な世代が集う知の交流拠点になる」と強調する。

今回のプロジェクトで、関西大は100人以上のシニア学生を誕生させたい考え。しかし、どれだけ集まるかは今も未知数だ。13日から1カ月の予定で始まった体験講義の参加希望者は23人。今秋に発表される住宅の分譲価格もシニア学生の確保に大きく影響する。

「入学時の年齢×1万円を授業料から値引きします」――。大阪商業大(大阪府東大阪市)は今年2月の社会人入試から満55歳以上を対象にこんな減免制度を始めた。通常の学費(初年度)は年間約130万円だが、60歳なら約70万円。今春、57歳から65歳の3人が制度を利用して入学した。

導入理由について、同大事務局は「団塊の世代の起業を応援したかった」と話す。一方で「少子化の影響で将来、定員割れしない保証はない。それに備える意味もある」とも説明。全入時代を迎え、定員割れを防ぐための新学生として中高年世代を迎え入れたいとの“本音”も垣間見える。


●特別選考枠13人
関西国際大(兵庫県三木市)は昨年度入試から原則60歳以上を対象にした「シニア特別選考」を導入した。現在、60歳から74歳までの計13人が在籍し、孫の世代と同じカリキュラムで肩を並べて学ぶ。在学期間を柔軟に設定できるのが特徴で、4年分の学費で最長6年間通える。

昨春、経営学部に入学した三木市の長田智剛さん(67)は6年で卒業するコースを選択した。教材開発会社の経営を息子に任せ会長職に退いたが、時々、中国工場の視察に出かけるためだ。「自分のペースで通えるのはありがたい。あこがれだった学生生活も長く楽しめる」と笑顔を見せる。

もっとも、昨年入学した10人のシニア学生のうち2人はすでに退学。50代後半の専門学校講師の女性は「仕事と学生と主婦の並立は無理」とキャンパスを去った。長谷憲明学長補佐は「様々な事情を抱えるシニア学生にはきめ細かいフォローが必要だった」と振り返る。こうした反省から新たに設けたシニア学生専門のアドバイザーが、ゼミの担当教員らとの情報交換を密にして「キャンパスライフの充実を後押しする」。

シニア世代の学びに対する意欲は旺盛で、大学教育に求める水準も高い。新たな「学び場」作りを模索する大学には、期待に応える教育プログラムの提示が不可欠だ。

高齢者の学びに対する意欲は、大学関係者が考えている以上に深く大きいのかも知れません。
「これからは高齢者を多く大学に呼び込みたい」という安直な考えで広報をしてしまったら、それこそ大学の評判を落としてしまいかねないですね。(記事にもありますが、いわゆる18歳人口の人間よりも高齢者の方が社会を経験している度合いが異なるため、大学を見る目はずっとシビアだと思います。そうした人たちの要望・期待に応えられる教育プログラムが必要であり、募集戦略上のメリットのみを考えてしまうと、大きな失敗に繋がりかねないのでは?)

そのうち、「高齢者のための教育プログラムから考える大学改革」なんて本が出そうなほど、高齢者がこれからの大学に与える影響は大きいものだと思っています。

※ちなみに大学関係のbloggerで最も有名なマイスター氏は、カレッジリンク型シニア住宅について1年以上前に記事を書いていらっしゃいます。これは、情報収集能力の高さとセンスの良さなんでしょうかね。
生涯現役学生主義! 日本初、カレッジリンク型シニア住宅が誕生(出典:大学プロデューサーズ・ノート 2006/07/15)