Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

サピアタワー・オープン後の様子

high190です。
たまに私用で東京駅周辺を通ることがありますが、丸の内は再開発が進行して、高層ビルが一段と増えた感じがします。(新丸ビルにはまだ行っていないのですが、どんな感じなんでしょう?東京ミッドタウンは緑が多くて散歩するのに良さそうなロケーションだと思いました)

大学職員としては、新規開発物件の中でも「サピアタワー」に一番注目しています。
2007/03/11でも書きましたが、多くの大学が東京サテライトキャンパスを開講しているのです。

[過去記事] JR東が東京駅前に高層ビル、大学も拠点設置、官民協力探る(2007/03/11)

オープン後の様子が気になっていたのですが、新聞記事で紹介がありましたので引用します。

JR東京駅前の一等地に「大学村」がお目見えした。3月に完成したばかりの高層ビル「サピアタワー」(35階、高さ166メートル)の中層階に京都大や関西学院大、北海道大など全国14大学の拠点が集まりつつある。社会人向け授業の教室に、就職を控えた在学生の支援拠点にと用途は様々。さて、その「キャンパスライフ」は――
タワー8階の立命館東京キャンパスでは、同大文学部准教授の加藤政洋さんが文化講座「京の色彩(いろどり)」を講義していた。小説や映像を通して祇園先斗町(ぽんとちょう)、上七軒(かみしちけん)など京都の花街を紹介する。大型連休直後の教室では、約50人の「学生」が熱心に耳を傾けていた。
その一人、埼玉県草加市の椛島康夫さん(60)は経済学部の卒業生。1月に定年退職し、4月から妻と一緒に講座に通う。学生時代を過ごした京都がテーマだけに「私のために用意してくれたような講座。京都の奥深さを再発見している」。教室はかつての職場にも近く、通いやすい点がありがたい。
東京駅に隣接するメリットは、教える側にとっても大きい。

◆改札から1分
90分の授業時間が終わる午後3時、加藤さんが時計を気にしながら「夜は大阪で講義があるので、次の新幹線に乗らなければいけません。質問は事務局にお願いします」と謝りながら切り出すと、どっと笑いがおきた。ビルの玄関から最も近い東海道新幹線の改札まで1分足らず。加藤さんはばたばたと資料をかばんにしまい、あっという間に改札の向こうに消えた。
少子化で18歳人口は減り続ける。大学が生き残るには社会人など幅広く学生を集める必要があり、企業やヒトが集中する東京ははずせない。東京キャンパスでは今年「金融と法」など4講座を開くが、京都文化の講座は売り物の一つ。テーマを変えながら通年で開いていく。
埼玉大の東京ステーションカレッジは大学院だ。
経済科学研究科の博士後期課程新設に合わせ、東京駅八重洲口のビルで授業を始めたのが00年で、この4月にタワーへ移った。授業は平日の午後6時半から。前期は29コマあり、うち12コマを証券マンや銀行員、財務、経済産業両省の官僚ら外部の講師が受け持つ。114人の大学院生も大半が社会人だ。
21日夜の「金融基礎」。「その企業ガバナンス(統治)についての説明は一般的ではない」「株主代表訴訟の海外での状況は」。質問を飛ばすのは、講師よりも年上に見える院生だ。伊藤修教授は「昼間の学生とは大違いで、厳しいですよ。それぞれ経験を積んできた方たちですから」。
大手銀行で20年余り働き、今は関連会社で部長を務める男性(57)は、バブル経済とは何だったのか、自分なりに整理したいと考えている。「実にエキサイティング。金融工学など私の学生時代にはなかった新しい考え方を学べます」

◆就職活動にも
タワーを訪れるのは、授業を受ける学生ばかりではない。
9階の関西大東京センター。学生が入ってくると、職員が「いらっしゃいませ」と声をかけ、すぐにお茶を出す。自由に利用できるホールにはテーブルといすがあり、インターネットにつながるパソコンを備える。荷物を預けられるコインロッカーも。就職活動のために上京してきた学生への支援の一環だ。夜行バスで早朝に着いた学生や、面接と面接の間の空き時間をもてあました学生が、くつろいだり情報収集したりして過ごす。
石山博康センター長によると、同大では就職希望者の3割近くが東京で仕事に就く。支援拠点を設けたのは4年前だが、タワーに移ってスペースが3倍余りに広がった。就職活動がピークだった3〜5月には毎日10人ほどが訪れた。
ホールで友人と話していた総合情報学部4年の女子学生(21)は、この日が2回目の利用だった。「関西の学生にとって東京での就職活動は不利。ここにいると気持ちがやすらぐし、すごく心強い」。IT関連など6社から内々定をもらったという。

■集客力向上に、JR東が誘致

サピアタワーを所有するのはJR東日本だ。大学を集めるアイデアは、同社の社長、会長を務めた松田昌士相談役が出した。「サピア」はラテン語で知性を意味するサピエンスからとった。
大学向けに8〜10階の3フロアを用意し、関連会社の担当者が各地の大学を回ったが、当初は門前払い続きだった。誘致の決め手となったのが「アカデミックディスカウント」と名付けた大学向けの値引き。率は非公表だが、関係者によると周辺の物件より4割程度安い例もあるという。収入が目減りしても、情報発信の拠点になれば東京駅自体の魅力も高められる、と考えたようだ。
JR東日本の清野智社長は「トップセールスはしなかった」と話すが、同社の歴代社長の出身大学はすべて入居を決めた。タワーの4〜6階には最大500人が入れるホールのほか貸し会議室があり、27階から上は系列のホテル。大学を呼び水に相乗効果を狙う。

やはり社会人の利用者が多いようですが、関西方面の大学生が東京での就職活動を行う際の活動拠点としても機能しているようですね。普段とは異なる環境での就職活動には、様々な困難が予想できますが、そうしたことについても「東京オフィス」があるだけで、学生の安心度合いもだいぶ違うように思います。

また、私が気になっていたオフィス賃料は当然非公開ですが、「アカデミックディスカウント」という教育機関独自の賃料算定方法があるようです(こうした決定の背景には、大学を呼び込むことの相乗効果を期待しているからなのでしょうね)

今後は日本全国にこうしたサテライトキャンパスが増えていくのでしょうか?