Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

立命館APUの成功の秘訣は?…国際化効果で就職率98%

high190です。
皆さんは「立命館アジア太平洋大学(通称:APU)」をご存知でしょうか?
この大学は大分県別府市にあるのですが、日本の大学には珍しい「ある特色」を持っています。

それは、日本における外国人留学生が日本一ということです。
私のイメージだと、上智大学なんかは外国人留学生が多いような気がしますが、日本一は大分県にあったのですね。
(ちなみに上智大学は外国人教員数では日本一です)

名前からも分かるとおり、設立当初から国際的な教育を行うことに主眼が置かれた大学です。特色ある教育内容としては、英語の習得に加え、アジア太平洋地域の言語を任意で習得できるとのこと。
(中国語、韓国語、マレー・インドネシア語スペイン語タイ語ベトナム語・・・語学が専門の大学ではないのですが、これだけのプログラムを準備しているのですね)

さて、大学の実績を図るには研究・教育が大きな柱ですが、卒業生の就職先及び就職率も外部からすると気になるところでしょう。
APUの就職実績について、こんな記事がありました。

「今年の卒業予定者のうち就職希望者457人の98%が希望の職場につきました」−−。
日本の九州、別府市にある立命館アジア太平洋大学(APU)の薬師寺公夫副学長に1日、会った。ちょうど入学式の日だった。
副総長は「福岡から列車で2時間かかる地方新設大学だが、初めての卒業生を輩出した 2003年に就職率95%を記録し、その後98〜99%を維持している」と話した。日本でも最高水準だ。卒業生たちが就職した企業のうち、日産自動車など上場企業が70%を超える。秘訣は大学の学生募集と就職戦略の緻密さ、地域協力など三位一体にあった。この大学は2000年、京都の立命館大学大分県別府市から敷地などの支援を受けて設立した。

◆国際化特化
設立時から新入生の半分を外国人で満たすという戦略を立てた。現在、学部・大学院生5475人の43%が76カ国出身の外国人だ。東京出身の新入生鳥居佑輝さんは「外国人学生が多いので志願した」と話す。
横山研治入学部長は「ソウル、上海に事務所があって、国際担当職員28人が毎年アジアなど30カ国の高校を訪問し、その外の地域は東京の外国大使館を訪ねて学生を推薦してもらう」と明らかにした。外国人学生の競争率は2.5対1程度。
4年生のチェ・ビョンスさん(経営学)は「入学時は日本語も全然分からなかったが、今は通訳のアルバイトをしている」とし「英語と違う外国語も十分に学ぶことができる」と話した。教授約200人のうち55%が外国人で、講義の63%が英語で行われる。今年「アジア太平洋水サミット」を開くなど、毎年多様な国際行事も開いている。
福谷正信就職部長は「外国進出のために日本語、英語が上手で、外国文化をよく理解している留学生を送ってほしいという企業が多い」と説明した。留学生就職率は100%に近い。卒業後、大和証券SMBCに就職したチョン・ウナさんは「学校で学んだアジアの知識と国際的人脈を生かしてグローバルな人材になる」と話した。松下電工(株)首席入社、VISAインタ−ナショナル最年少入社を果たした韓国人学生もいる。

◆緻密な就業戦略
大学関係者が企業就業担当者を訪れたり、学校に招待して広報したりするのは基本だ。設立前から大学を開放化し、企業などとの連結を強化した。外国大使、企業家など278人で構成された諮問委員会(ACS)を設置し、奨学金40億円造成と卒業生の就業に積極的に活用している。
学校側は学生たちを毎年2度面談、アンケート調査し、成績、語学の実力、資格、希望事項などを分析した「経歴チャート」も作った。2〜3年生を対象に「就職案内講座」も開いている。

◆地域との協力
スリランカ出身のモンテ・カセム学長は「地域と協力して企業と学生を連結することも非常に重要だ」と強調した。AP大学など大分県内の大学と地方自治体・経済団体たちは2004年別府市非営利法人「大学コンソーシアムおおいた」を作り、外国人留学生たちの生活や就職を体系的に支援している。
九州経済産業局は昨年9月、インターンを希望する外国人留学生30人と20企業が画像面接できるよう支援した。現在、同大学は100以上の企業と提携、学生たちをインターン社員として送りこんでいる。

この記事を読むと、アジア圏で複合的に活躍できる人材が求められているのかな・・・と思いました。確かに、いわゆる米国の主要MBAを取得した人材ではなく、ローカルな能力に秀でた人材を育成することこそ、本当の地域貢献であるという考え方も出来ます。特に九州は日本におけるアジアの玄関口に当たり、企業等の国際交流が多い場所です。そうした土地柄を踏まえた人材育成を行うという点では、地域との連携が極めて重要となります。
そして、過去の記事でもご紹介したように、政府方針では今後留学生の受け入れをさらに促進していく方針が固まっています。

■過去記事
アジア留学生増へ戦略会議案 大学連携で単位取りやすく

APUの事例は日本の大学における国際交流・留学生獲得戦略のロールモデルとなるのでしょうか?