Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

「世界の東大」へ変身計画 外国人スタッフ1300人に

何度かご紹介している東京大学の改革事例ですが、国際化に対応するため、外国人スタッフの増員が計画されているようです。

東京大学は国際化を急ぐため、教授や講師、助手らの外国人スタッフを、現在の5倍にあたる1300人規模に増やす方針を明らかにした。世界各地に置く東大の研究所や事務所も5倍強に増やし、人材を発掘して日本に招く。日本の最高学府を自負する東大も、大学の国際比較で2けた順位に甘んじ、海外の人材活用などでは国内の他大学にも後れをとっている。危機感は強く、対策に本腰を入れる。

東大によると、外国人の学術スタッフは現在、約250人。日本人を中心とした全体では約5000人で、外国人比率は5%弱にとどまる。

国内の他の大学では、学術スタッフの範囲や常勤・非常勤の違いなどで統計の取り方が違うものの、外国人比率は上智大が48%、早稲田大で8%前後。東大は、「国際化」への優先課題として、外国人スタッフを充実させることにした。

海外の研究所や事務所は、欧米とアジアを中心に22の拠点があるが、この春で創立130周年を迎えるのにちなんで130カ所まで増やす方針を掲げた。東大の現状は早稲田大の9カ所、慶応大の8カ所などを上回っているが、海外拠点を積極的に増やしてきた京都大の34カ所(06年5月)には及ばない。

海外の人材の受け皿として、外国人向けの宿舎や奨学金の整備も進める。

東京・本郷キャンパスのそばに外国人の研究者と留学生向けに220室規模のゲストハウスを建てるほか、千葉・柏キャンパスのそばにも施設を用意する。都内を中心に既に500室程度の外国人用宿舎を持つものの、「留学生だけで2000人を超しており、整備が追いついていない」(施設企画課)現状を改善する。

国際化対策の概要は、小宮山宏総長がこのほど東京都内で外国人記者向けに行った講演で明らかにした。小宮山氏は「東大の国際化は遅れている。最も懸念していることの一つ」と発言、キャンパス内での英語教育プログラムの充実なども打ち出した。それぞれの目標の達成時期には触れなかった。

東大によると、国際化の程度を含む大学の総合力について、海外の調査機関や雑誌が最近まとめた世界ランキングで、東大は12〜19位にとどまっている。世界第2の経済大国を代表する大学として、対策を急ぐべきだと判断した。

小宮山宏総長のリーダーシップにより、「世界のリーディングユニバーシティ」を目指している東京大学ですが、今までは以外にも外国人スタッフ(教員・職員)が少なかったのですね。東京大学が今後、世界から学生をより獲得するのであれば、外国人スタッフ比率は必然的に高くなければならないでしょう。
ところで記事中で比較対象になっている上智大学では、外国人スタッフ比率が48%!と非常に高いです。
何故、上智大学では外国人スタッフの比率が高いのでしょうか。それは運営母体に関係があります。上智大学の運営主体は学校法人上智学院ですが、この法人はカトリック修道会のイエズス会によって運営されています。
イエズス会は教育に熱心な修道会として知られ、世界中に学校を設置しています。
(例:スペイン・コミリャス大学など世界28ヵ国、114校)
ですから、上智大学イエズス会を通したネットワークを有しているため、外国人スタッフも多く抱えているのです。実は上智大学の先生方にはカトリック司祭が多いです。学問分野としても、神学・哲学・言語学・経済学など幅広い研究者がいます。
上智大学は運営母体がカトリックということもあり、日本の大学では特異な存在です。
今回の東京大学のスタッフ増員計画は、東京大学の世界戦略であり、今後の大学運営にも多くの影響を及ぼすものです。そして東京大学が日本の最高学府である以上、他大学に与える影響も大きいものと思われます。