Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

平成19年4月に開学予定のサイバー大学が人気

サイバー大学に問い合わせ殺到 「IT関係者多い」(出典:J-CASTニュース

2007年4月に開校するサイバー大学への入学に関する問い合わせが殺到している。同大はインターネットだけを使って授業をする初めての4年制大学で、1月26日まで第1期の入学願書を受け付けている。同大広報によると、07年1月24日までに資料請求の問い合わせが約6,600件、メールマガジンの登録者が約9,500にのぼったという。
「IT総合学部」と「世界遺産学部」の2学部を設置しているが、応募はともに社会人が多く、「IT総合学部にはIT会社の人で最新のノウハウを身につけたいという人が多く、世界遺産学部には団塊の世代を中心に生涯学習として学びたいという人が多い」という。同大は各学部600名(第1期)を募集しており、試験は書類選考のみで行う。

今年の4月に開学予定のサイバー大学が人気を集めているようです。この大学は株式会社立大学で、通信複合事業体・ソフトバンクの関連企業である株式会社日本サイバー教育研究所が運営母体となっています。募集の状況を見ると、実務面で学習したい社会人と生涯学習を希望する団塊世代に分かれているようです。

『試験は書類選考のみで行う。』

この点も多くの人の関心を呼ぶ一因かもしれません。特に団塊世代の方は、ご自身が青年時代に大学受験をされてから40年近く経っている場合がほとんどでしょうから、書類のみで合否が決まるという点は魅力的でしょう。

【参考情報】

個人的な懸念としては、ソフトバンクが一枚噛んでいることでしょうか。
プロバイダ事業・携帯キャリアへの参入時にも、制度が未設計で多くの問題点が浮き彫りになりました。
先日、LEC東京リーガルマインド大学に対して文部科学省が改善勧告を出したばかりですが、履修やインフラ面での整備が進捗しているのかどうか、受験をご検討の方は気になるところだと思います。

【先進事例】
インターネットのみで単位取得が可能な大学はアメリカで先進事例があります。アリゾナ州・フェニックスにあるフェニックス大学は、通学課程とオンライン課程を設け、就学機会を向上させた大学として有名です。特にeラーニング・ICT活用の教育に関しては多方面で紹介されています。

このように欧米ではeラーニングを活用した大学が増えているのですが、日本ではまだあまり実例がありません。これには、日本の狭い国土による地理的条件もあるでしょうが、本腰を入れて取り組む大学が今までなかったということが妥当ではないでしょうか。
大学にとって、学生確保の問題は今後もさらに深刻化することは間違いありません。そういったリスクヘッジも含め、いわゆる「上位大学」は附属の中高一貫校を設立して、早期の入学者確保のための戦略を打ち出したり、サテライトキャンパスの活用を考えているのでしょう。

このサイバー大学の事例が他の大学にどれほどのインパクトをもたらすのか、現時点では分かりかねます。しかし、設立の背景には勉学へのニーズがあります。需要と供給のバランスで考えると需要過剰な訳で、新たな参入にはチャンスも大きいはずです。(もちろん、単純な需要供給分析で分かるほど、甘くはないです)
まずは、サイバー大学がどのようにスタートを切るのかを見守りたいと思います。