high190です。
上記のニュースで新しい中央教育審議会長が決定したことを知りました。日本の教育政策の司令塔であり、決定機関でもある中央教育審議会についてですが、私自身もあまり詳しく調べたことはありませんでした。しかしながら、会長決定のニュースに触れてふとあることに気がつきました。
中央教育審議会の会長が数期に渡って実業界から選出されているのが気になる。今の政権になってからは教育を本職としない人が会長を3期連続で務めている訳だが。
— high190 (@high190) February 20, 2019
ということで、中央教育審議会の歴代会長にはどんな人物が選ばれているのかを調べてみます。
1.中央教育審議会とは何か
中央教育審議会に関わる法令を調べてみました。文部科学省組織令第76条に規定があるとともに、中央教育審議会令が定められています。
【文部科学省組織令(平成十二年政令第二百五十一号)】*1
(中央教育審議会)
第七十六条 中央教育審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 文部科学大臣の諮問に応じて教育の振興及び生涯学習の推進を中核とした豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に関する重要事項(第三号に規定するものを除く。)を調査審議すること。
二 前号に規定する重要事項に関し、文部科学大臣に意見を述べること。
三 文部科学大臣の諮問に応じて生涯学習に係る機会の整備に関する重要事項を調査審議すること。
四 前号に規定する重要事項に関し、文部科学大臣又は関係行政機関の長に意見を述べること。
五 生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律(平成二年法律第七十一号)、理科教育振興法(昭和二十八年法律第百八十六号)第九条第一項、産業教育振興法(昭和二十六年法律第二百二十八号)、教育職員免許法(昭和二十四年法律第百四十七号)、学校教育法及び社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)の規定に基づきその権限に属させられた事項を処理すること。
六 理科教育振興法施行令(昭和二十九年政令第三百十一号)第二条第二項、産業教育振興法施行令(昭和二十七年政令第四百五号)第二条第三項及び学校教育法施行令(昭和二十八年政令第三百四十号)第二十三条の二第三項の規定によりその権限に属させられた事項を処理すること。
2 前項に定めるもののほか、中央教育審議会に関し必要な事項については、中央教育審議会令(平成十二年政令第二百八十号)の定めるところによる。
【中央教育審議会令】*2
第四条 審議会に,会長を置き,委員の互選により選任する。
2 会長は,会務を総理し,審議会を代表する。
3 会長に事故があるときは,あらかじめその指名する委員が,その職務を代理する。
より詳細には別の大学職員ブロガーがまとめた記事がありますので、そちらをご参照ください。
2.中央教育審議会の歴代会長
ここでは歴代会長を文科省の委員名簿から洗い出します。*3前記のブログにあるように中教審は2001年に設置されたのですが、委員名簿は2003年分からのみ公表のようです。以下、発令年別に会長が変更になった部分のみを抜粋して掲載します。
- 鳥居泰彦【慶應義塾学事顧問,日本私立学校振興・共済事業団理事長】(2003(平成15)年2月1日発令)
- 山崎正和【LCA大学院大学長、劇作家、評論家、演劇学者】(2007(平成19)年2月1日発令)
- 三村明夫【新日本製鐵株式會社代表取締役会長】(2009(平成21)年2月1日発令)
- 安西祐一郎【独立行政法人日本学術振興会理事長】(2013(平成25)年2月15日発令)
- 北山禎介【三井住友銀行取締役会長】(2015(平成27)年2月15日発令)
- 渡邉光一郎【第一生命ホールディングス株式会社代表取締役会長,第一生命保険株式会社代表取締役会長】
三村明夫会長時代に、多忙のため安西祐一郎さんが会長を交代しましたが、近年は実業界から続けて会長が選出されています。教育は社会全体に関わる事項なので、主として教育に直接関わらない人をあえて会長に選出しているのでしょうか。審議会令では会長は委員の互選により選任とありますが、しばらくの間、教育関係者以外からの選出が続いていることの背景を知りたいところです。なお、実業界から選出された会長の所属先はTOPIX100に含まれる大企業のみです。
なお、現政権になってから内閣の下に置かれて教育改革の推進を担う会議体が「教育再生実行会議」です。中央教育審議会は国家行政組織法に設置根拠がありますが、内閣が直接的に教育改革を主導する点に特徴があります。個人的には政策面での整合性をどのように取っているのか気になるところですが、中央教育審議会と教育再生実行会議の意見交換は2015年に1度だけ行われています。
こういった内容は政策形成過程分析、教育行政学の守備範囲かと思いますが、教育政策の政策形成過程を考える上でも、中央教育審議会長の人事には引き続き関心を持っておきたいところです。