読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

大前研一氏の本を読んで「外部から見た大学の姿」を想像してみる

high190です。
たまには自分の読書記録も記事にしたいと思います。友人に勧められた本なのですが、大前研一氏の本を1冊読んでみました。「マネー力 資産運用力を磨くのはいまがチャンス!」という本で、発行されたのは2009年ですから一昔前ではあるのですが、普段は大学や高等教育に関わる書籍を主に読んでいる私にとって、今まで読んだことがなかった分野の本だったので興味深く読むことができました。(Amazonのレビューを読むとなかなか手厳しいコメントもついているのですが)*1
私にとって大前研一氏のイメージは、コンサルタントとして活躍されていたことはもちろんですが、株式会社立大学のビジネス・ブレークスルー大学*2を開設して学長に就任し、全ての授業をインターネットで提供する日本ではまだ珍しい教育を提供しているという印象が強いです。(その他にはサイバー大学があります。この点については「大学職員の書き散らかしBLOG」さんが詳細にまとめていらっしゃるので、そちらも是非ご参照ください)*3この本ではリーマンショック後の今後の個人による資産運用のあり方などについての意見が述べられていますが、その中で教育に関する指摘も何点か出てきます。その部分を読むとなかなか興味深いので記事にしてみました。

マネー力 (PHPビジネス新書)

マネー力 (PHPビジネス新書)

以下に私が読んでいて気になった部分を抜粋します。表現等は私の方でメモをしながら読んでいたため、本文中と異なる場合があります。

  • 自ら能動的に動くこと。自分の足で歩き自分の目で現実を確かめることの重要性。生き残りたかったら能力・技術を学び、進むべき方向を決めて自分で切り開ける人材になること。中国人の姿勢(いい意味で国に対して面従腹背、したたかさ)に学ぶ。
  • グローバルな視野で考えるためにITと英語をマスターする。「世界で通用する人材」の育成に視野を向けていくべき(大学はこの責務を果たしていない)他国の真似をしても二番煎じで終わる。コミュニケーション×リーダーシップ×プラスアルファの能力が求められる。
  • 資産を自分自身で運用するリスクを負って、国に頼らずに生きるすべを身に着けることの重要性。マネー力は生活の知恵で発展途上国の国民の方が、自らを守るために身に着けている。
  • よいものを使えば耐用年数も上がる好循環へのシフト。長期投資と分散投資。資産形成や運用に最適解はあっても絶対解はない。
  • 本来、金融商品である生命保険をお守りだと考えるのは不適切。
  • 道州制の議論は効率性ではなく統治機構の抜本改革。

国に頼ってはいけない、自分自身で考える力を養う…など生き方と資産との付き合い方について触れられた本です。テンポよく読めますので、すぐに読了できるかと思います。
かなりざっくりとした抜粋なのでイメージが掴みにくいとは思いますが、教育に関連する部分では「世界で通用する人材」についての意見が出てきます。大前氏は教育に関する議論として「世界中の人とコミュニケーションが可能で、どの国の人に対してもリーダーシップを発揮することができ、なおかつ余人をもって代えがたいスキルをもつ人材の育成」が必要だと述べています。これは現在、グローバル人材の育成を目的としてスーパーグローバル大学を始めとした高等教育政策にも合致する部分ですが、コミュニケーション、リーダーシップに加えてプラスアルファのスキルを身に着けるということは、昨年10月に私も参加したGreenhorn Networkのシンポジウムで倉部さんが指摘していたことと同じだと気づきました。*4
また、道州制の導入に関する意見では、効率性ではなく統治機構の抜本改革が必要だと述べています。これは現在進められている国立大学改革にも繋がるように感じます。このように、大前氏の本を読んでいて自分なりに感じたことの一番は「大学を巡る状況は少しずつ変化しているが、根本的な部分では2009年頃とさほど変わっていないでは?」ということです。自分自身は大学の現場で働いているので、細かな制度変更などを気にしながら大学を巡る状況も変わってきているように感じますが、大学を外から眺めている人たちからすると、大学は依然として旧態依然として国に守られているという意識なのではないかと思われているのではないでしょうか。自分たちが変わろうとしている姿勢を、大学はもっともっと発信していかなければならないのかも知れません。
その他、気になった表現として「最適解はあるが絶対解はない」という言葉に感じるものがありました。大学で仕事をしていて、どうも絶対解のようなものを探しているような気になる時があります。前例を踏襲したり、何となく他大学でもそうしているから同じような施策を導入したりといったことです。最適解を導くためには自らの手で大学設置基準などの法令を紐解き、自らの足でマーケットからの評価の現実を知るということを、私自身が本当にできているかどうか。個人的にはマネー力を付けることも大切だと思いましたが、先述したような考え方の部分で共感できるところが多かったです。大学や高等教育以外の本から大学を客観視してみることも大切ですね。