読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

上海日本人学校高等部が創立初の卒業生を輩出。海外からの日本人グローバル人材育成を考える

high190です。
最近はブログを書くにも、推敲しながらでないと筆が進まず、更新が頻繁に出来なくなってきました。記事のクオリティは保ちつつ更新頻度を高められるようにしたいものです。あとは諦めずに続けることですかね。*1
さて、過去に取りあげたニュースは現在進行形で動いているため、昔書いた記事の内容を踏まえながら新しい記事が書けることもブログの醍醐味だと思うのですが、2010年に書いた記事で最近進展があった事例がありました。日本人学校で初の高等部を設置した上海日本人学校高等部が、今年の3月に初の卒業生を輩出しました。その第1期生の進路先を調べると興味深い事実が浮かび上がってきます。


海外に約90校ある日本人学校で初めての高校として、中国上海市に2011年4月に設置された高等部(水野俊夫校長)の1期生35人の卒業式が1日、上海日本人学校浦東校で行われた。日中関係が悪化した中での3年間だったが、水野校長は「1期生として苦難を乗り越えてきた」とたたえた。
上海市は日本企業が派遣した駐在員の家族など約6万人が暮らしている。高等部はグローバルな人材育成の強化策として、英語や中国語の授業に力を入れ、地元高校生との文化交流なども進めてきた。
卒業生の金子祐誠君(18)は「12年秋に何度も頓挫しかけた地元校との日中合同イベントを、みんなで力を合わせてやり遂げたことが忘れられない」と高校生活を振り返った。
高等部は芝浦工業大や法政大、中央大、関西学院大など11大学が、指定校推薦入学枠や教授陣を派遣した特別講座の実施などで協力しており、35人の卒業生のうち19人が協力大学に合格している。

上海日本人学校に高等部が設立されることは、2010年の7月に記事にしていました。*2あれからもう4年経ったと思うと本当にあっという間だと感じます。元々、海外初の日本人学校高等部として注目されていた上海日本人学校高等部ですが、公式サイトを眺めてみると、実は開設にあたって日本国内の大学が深く関わっていたことが分かります。*3


2011年4月開校の上海高等部について、開設までの準備支援と開設後の高校運営ならびに教育支援全般、3年後の卒業生受け入れに至るまで一貫して協力体制を継続し、理想の国際人育成、高校作りに寄与することを目的として設置された任意団体。法政大学、関西学院大学芝浦工業大学上智大学東京理科大学同志社大学明治大学明治学院大学立教大学の9大学がその設立に関わった。
上海日本人学校高等部の大きな特色として、日本有数の大学9校が協働して支援体制を組み、「上海高等部協力大学会議」を設立していることがあります。2009年8月の現地調査に始まり、翌年の文部科学省への認定申請、2011年4月の開校、さらには高校運営ならびに教育支援全般、3年後の卒業生受け入れまで一貫して支援する大学コンソーシアム組織です(2010年10月16日採択)。
現在、議長大学は法政大学、事務局は芝浦工業大学に置かれています。
役員=理事長(議長):徳安彰(法政大学常務理事)。理事:小暮剛一(芝浦工業大学特別顧問)、片山傳生(同志社大学企画部長)、古川佑子(東京理科大学国際化推進センター長)。

協力大学として名前が挙がっているのは、法政大学、関西学院大学芝浦工業大学上智大学東京理科大学同志社大学立教大学中京大学南山大学中央大学日本体育大学の11校です。*4既に第1期生の進路状況もWEB上で公表されており、どうやら全ての卒業生が日本の大学・専門学校に進学するようです。*5卒業生の進路を見ていて、個人的に「なるほど」と思ったのが「協力大学推薦・指定校推薦入学試験」の制度です。
上記リンクにもあるとおり、上海高等部協力大学会議が大学コンソーシアムを組んで支援してきたことは事実ですが、あわせて指定校推薦制度を設けることで、日本の大学進学を容易にしています。なるほど、高校時代を海外で過ごした人材は必然的に異文化に触れており、上記記事中でも「苦難を乗り越えてきた」との記述のとおり、海外で生活することは思った以上に悩みや気づきの多いことだと思います。昨今の日中関係を考えれば、上海日本人学校の生徒達にも様々な面で思いがあっただろうと推察しますが、そうした苦難を乗り越えた人材こそ、現在の日本社会が渇望する「グローバル人材」としての資質を備えていると考えることができます。しかしながら、1大学で海外拠点を設けることは費用面から考えても容易なことではありません。大学コンソーシアム形式だからこそ、このような支援の形ができたと言えるのではないでしょうか。
ちなみに上海のように日本企業が多く進出している場所では、何人ぐらいの日本人が生活しているか興味のあるところですが、こちらは外務省の「海外在留邦人数調査統計」*6から調べることができます。最も新しい統計は平成24年10月1日現在のものですが、*7在留邦人は78,862人おり、このうち、民間企業関係者が65,362人で同居家族は18,821人いることが分かります。中国全体の在留邦人の半数以上を占める数ですので、上海に進出する日本企業が多いことの表れと言えるでしょう。
現在、文部科学省では官民協働で留学を支援する取り組みを始めましたが、*8日本国内から海外に行くだけでなく、海外にいる日本人をグローバル人材として活用する方策も考えなくてはいけないと思います。そういった意味でも、上海日本人学校高等部と上海高等部協力大学会議の取り組みは、今後のグローバル人材育成に一石を投じることになるのでは?と個人的に考えているところです。

【2014/07/11追記】
リクルートのカレッジマネジメントに上海日本人学校運営委員会委員長の小暮剛一氏による「上海日本人学校の課題」という寄稿が掲載されていましたので、こちらもご紹介します。*9

*1:「ブログを続けられるのは特殊技能!?  ブログ仕掛け人が語る個人メディアの未来」"ブログを続けていると、必ず飽きたり炎上したりするので、それが原因で書くことを止めてしまう人がいます。一方で、ネットには新しいブロガーがどんどん登場します。でも、今までブログをやっていた人達に「自分が情報発信しなくても良いんじゃないか」とは思ってほしくないんです。どんな形でもいいから、この情報発信革命に参加し続けて欲しい。" http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2014/03/post_4968/

*2:中国に高卒資格が得られる日本人学校が来春開校 http://d.hatena.ne.jp/high190/20100705

*3:沿革 http://koutoubu.srx3.net/view.php?viewid=12

*4:協力大学紹介 http://koutoubu.srx3.net/view.php?viewid=38

*5:2014年度入試 高等部1期生35名 大学合格状況(2014年3月4日現在)http://koutoubu.srx3.net/data/attachment/article/20140304.pdf

*6:海外在留邦人数調査統計 http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin/

*7:平成25年(2013年)要約版(平成24年10月1日現在) http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000017472.pdf

*8:官民協働留学支援制度 トビタテ!留学JAPAN https://tobitate.jasso.go.jp/

*9:上海日本人学校の課題 http://souken.shingakunet.com/college_m/2014_RCM187_42.pdf