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Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

UMAP(University Mobility in Asia and the Pacific)は何故、日本で広がらないのか?

Diary Foreign

high190です。2014年もよろしくお願いいたします。
第7期中央教育審議会大学分科会に「大学のグローバル化に関するワーキング・グループ」(以下「WG」といいます。)という部会等が設置されていることは、大学関係者の皆様は既にご存じかと思います。このWGでは「我が国の大学のグローバル化の促進に関し,専門的な調査審議を行う」ことを目的として、ダブルディグリー及びジョイントディグリー、留学生の受け入れと送り出し等、日本の大学が今後グローバル化していくにあたっての課題が議論されています。なお、この前段として「我が国の大学と外国の大学間におけるダブル・ディグリー等、組織的・継続的な教育連携関係の構築に関するガイドライン」が2010年に定められる*1など、大学の国際化に向けた取り組みは徐々にですが、制度面からも後押しされてきています。
しかし、大学が国際化することの必要性は急に議論されるようになった訳では無く、実際にアジア太平洋地域での高等教育機関が連携するための仕組みが以前から存在していたことは、あまり知られていないように感じます。今回の記事ではUMAP(University Mobility in Asia and the Pacific)について取り上げたいと思います。


1.現状等
(1)UMAP(University Mobility in Asia and the Pacific:アジア太平洋大学交流機構)は、アジア太平洋地域における高等教育機関間の学生・教職員の交流促進を目的として1991年に発足。国際事務局を東京に設置。
(2)1998年8月、バンコクで開催されたUMAP総会において、日本が提案した「UMAP憲章」を採択(2001年3月、オーストラリアで開催されたUMAP総会において改正)。
(3)現在、加盟各国との連携・協力の下で、UMAP単位互換方式(UCTS: UMAP Credit Transfer Scheme)に基づく単位互換を試行。
(参考)UCTSは、単位の互換方式、成績の評価基準などを定めたもの。
(4)2000年1月、神戸にて開催されたUMAP国際理事会にて、我が国より、我が国の大学においてアジア諸国等の将来のリーダーとなる人材の養成を支援するため、「UMAPリーダーズ・プログラム」の創設を提案し、承認。2001年7月から東京外国語大学九州大学で実施。
(5)2000年2月、我が国からの拠出金を基に「UMAP留学生支援信託基金」を創設。アジア・太平洋地域等から新たに渡日し大学等へ入学した私費外国人留学生に対し、円滑な修学を支援するための渡日一時金を支給する事業を実施(2002年3月終了)。
(6)また2001年4月から、従来(財)日本国際教育協会が実施していた「短期留学推進制度」を継承してUMAP事業として実施するため、我が国からの拠出金を基に「UMAP短期留学推進制度信託基金」を創設。
(7)さらに2002年10月から、UMAP理事国からの分担金等により、UMAP加盟国の途上国の学生を支援する奨学金事業を創設。

2.今後の展開
(1)加盟各国のUCTS試行への積極的な参加と普及を推進し、アジア・太平洋地域における学生等の交流を促進。
(2)将来は、欧州の同様なプログラムであるエラスムス計画との連携・協力なども視野に入れて、グローバルな大学間交流ネットワークが構築されることを期待。

参加している日本の大学は、UMAPのサイトによると92大学あるようです。*2欧米諸国はもちろんですが、東アジア太平洋地域であればより近接した形で大学のグローバル化を進めることができると思いますし、域内の単位互換を進められれば、学生の流動性も向上させることができるでしょう。
元々、UMAPと日本の関係においては、惜しまれながら2013年2月に逝去された前国際教養大学学長の中嶋嶺雄先生が国際事務総長を務められていました。*3当時、中央教育審議会に置かれていた教育制度分科会には中嶋先生も委員として参加され、UMAPの概要等について発言された内容が議事録として公開されていますので、こちらでご紹介したいと思います。

○鳥居分科会長
最後に出された問題は、実は文部科学省もほんとにわずかですが、予算を出され、それから国立大学協会と私立大学団体連合会が多少の予算を出して、中嶋委員が事務総長になってUMAPというのを始めたのです。ちょっと紹介していただけますか。UMAPは、中嶋委員は一所懸命やってくれているのですけれども、ほかの大学の教員はシレーッとしているのです。大学間の連携ネットワークなんて知ったことかと。その状況を中嶋委員から皆さんに御紹介していただきたいと思います。

○中嶋委員
今度機会がありましたら、UMAP(アジア太平洋大学交流機構)の新しいパンプレットができておりますので、事務局からでも配っていただくといいと思います。UMAPはもともとは1990年代の初頭に、オーストラリアのAVCCという大学長会議が発議しまして、何年もかかりまして、2年に一度ぐらいずつ会議をやってまいりました。その会議には国大協からも当時の井村先生であるとか、会長、副会長などもしょっちゅうお出になっていたのです。そのうちに、単に会議をやるだけではなくて、具体的な単位互換をやる方向に進んでまいりまして、98年のバンコクの会議で、UMAP憲章(コンスティチューション)が採択されまして、それとともにUMAPの国際事務局を日本に置くということになりました。それは前から約束だったのです。国際公約だったのです。ところが、日本に置くといってもそう簡単ではなく、言ってみればこれもNPO、あるいはNGOみたいなものですから、どこに事務局を置くのか、予算をどうするか、いろいろ難しい問題がありまして、そこで当時、文部省にも非常にお世話になり、国大協側からは私が責任者で、東大の駒場に仮に事務局を置きまして、それで活動を進めてまいりました。
国際的には徐々に広がってきておりまして、各加盟国もAPEC方式でお金を出すことになりました。徐々に単位互換も始まりました。ようやく今年度から具体的に、UMAPの枠組みで、学生の単位互換制度が進みます。この8月にはUMAPリーダーズ・プログラムも東京外大と九州大学で行われます。それも初めてのことです。授業は英語でやるのですけれども、そのようなことが始まりました。そして、これは国公私が一緒になっているというのがおもしろい試みでしてね。今まで日本の大学というのはみんなそれぞれの部屋があって、国立大学は国立大学、私学は私学ということですが、とにかく少ない予算ですけれども、国公私の各協会にもサポートしていただいてナショナルのコミッティができ、そして国際事務局があります。来週、国際研究大学村が正式にオープンするのですが、そこに駒場のほうから国際事務局が移ってまいります。UMAPは、徐々にこれは大きな意味を持ってくると思っています。私も国際理事会、その他で、日本に少なくとも2005年までは国際事務局が置かれることになりましたものですから、ボランティアの活動というか、多くの方々の御協力を得てやっていかなければけないと思っています。最近、ワークショップをやりますと、各大学の留学生課の方とか、皆さん大勢集まりまして、しかも、例えば私学、早稲田なんかも入って、ICUとか、留学生を受け入れてくださっているところには、UMAP枠組みで、派遣留学生ですと月に8万円ぐらい、受入れ留学生ですと17万円余の奨学金がつく枠組みを差し上げているのです。これは日本国際教育協会がその配分をやっています。我が国の社会貢献というか、国際貢献の一環としてもようやく位置づけられてきているということですので、ぜひよろしくお願いいたします。

UMAP創設から日本との関わりをより詳細に紹介した記事が教育学術新聞に出ていますので、こちらも是非ご参照いただければと思います。*4
2008年度からの試行運用を経て、2010年度からはオンラインによる学生交換"USCO"(UMAP Student Connection Online)も開始され、日本からは広島大学国際教養大学新潟大学の3大学が参加しています。具体的な取り組み事例は、「UMAPを通じた新潟大学の交流事例」に詳しく書かれています。

UMAPを活用したこのように以前から大学のグローバル化を加速させる可能性を秘めたプログラムがあるにも関わらず、UMAPの存在はメディア等で報じられることが少ないように思います。国際化を進めるにあたっては学生の流動性を高めることが必要不可欠で、そのためには英語での講義などのハードルを超えていくことが求められますが、元々は日本がUMAP憲章を提案しており、国際化の必要性が高く叫ばれている今だからこそ、もう一度目を向けても良いのではないかと個人的に考えているところです。

*1:我が国の大学と外国の大学間におけるダブル・ディグリー等、組織的・継続的な教育連携関係の構築に関するガイドライン文部科学省) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/1294338.htm

*2:UMAP Participating Universities http://www.umap.org/en/cms/detail.php?id=15

*3:中嶋嶺雄Wikipedia) http://goo.gl/IpqJc9

*4:キャンパス・アジア アジア高等教育圏を目指して4「UMAPで日本のリーダーシップを」 http://www.shidaikyo.or.jp/newspaper/online/2423/3_3.html