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Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

鳥取大学発ベンチャーの「ファインドパース株式会社」が面白い。大学でのデータサイエンティスト活用へのヒント

high190です。
私個人の特徴として「知的好奇心」が強いという点があります。言うなれば色んな事に関心が向く分、なかなかひとつのことに絞れないのは良くないことだと感じますが、その意味でもブログでは色々な情報を取り上げられるので、自分なりには好意的解釈して、記事を書くことに繋げていけるよう努めています。さて、最近の大学関係ニュースで私が関心を持った取り組みとして、鳥取大学工学部の教授らによるベンチャーのデータ分析会社設立のニュースがあります。


「ヒット現象の数理モデル」を考案した鳥取大学工学部の石井晃教授(56)(物理学)と、同大学院博士後期課程の新垣久史さん(38)がデータ分析会社を設立し、企業のコンサルタント業務を始めた。同大学の研究成果を生かした10社目のベンチャー企業。物理学と数学を駆使した方程式で商品のニーズを予測し、在庫を最小限に抑えるなど効率的な販売戦略を実現するという。(末善悠太)
石井教授は2005年、宣伝に携わる友人からヒット商品を生み出すこつを聞いて数式化に着手。広告宣伝費にかけた金額や口コミ情報、インターネット上の書き込み件数などから算出する方程式を作り出した。改良を重ね、昨年6月には研究チームで、映画の観客動員数を予想する方程式の論文を英・独の物理学誌に発表。推移予想と興行結果がほぼ一致したことを証明し、各国から反響があったという。
ビジネスへの応用に手応えを得て今年5月、株式会社「ファインドパース」(本社・東京都)を設立。アイドルグループAKB48選抜総選挙(6月)について指原莉乃さん、大島優子さんのトップ争いと、渡辺麻友さんの3位を当てるなど実績を積み、今月、同大学の研究成果を生かしたベンチャー企業として認定された。
2人は今後、他の研究機関や企業と協力し、コンビニでの新商品の売れ行き▽イベントの来場者数の予測▽芸術作品の成否ラインの設定――などに挑戦する予定で、必要なデータの種類や取得方法などを研究していくという。新垣さんは「数式に基づいた正確な予想は、これまでにないサービスだと思う。多くの人に利用してもらいたい」と話し、石井教授は「このモデルの守備範囲は広い。魅力的なビジネスになる」と自信を見せている。

記事中にある投稿論文ですが、New Journal of Physicsに投稿された"The ‘hit’ phenomenon: a mathematical model of human dynamics interactions as a stochastic process"という論文のようです。当該論文はオープンアクセスなので、ご紹介しておきたいと思います。ちょっと話が逸れますが、オープンアクセスの恩恵は本当に大きいですね。日本の学会等でもさらにオープンアクセスを進めていってもらいたいところなのですが。

石井教授らが設立したファインドパース株式会社のURLはこちらです。事業内容はクチコミ分析サービスの運営、ソーシャルメディア活用に関するコンサルテーション、ソーシャルメディア全般に関する受託研究、地域活性化事業支援となっています。鳥取大学の公式サイトでも大学発ベンチャーの認定式の様子が掲載されています。*1

これからはビッグデータの時代と言われてきましたが、アメリカの大学ではビッグデータを専門に扱うコースが相次ぎ設置されるとのニュースもありますし、*2 *3日本においても文部科学省が「次世代IT基盤構築のための研究開発」を公募するなど、*4ビッグデータを取り巻く社会情勢は活発化の一途を辿っているように思います。この他にも、ちょうど今日、慶應義塾大学SFC研究所が「データビジネス創造・ラボ」の設立をプレスリリースしていましたので、*5これから日本の大学でも同様にコースを設置する大学は増えてくることが予想されます。
また、ビッグデータを取り扱って分析を行う「データサイエンティスト」が大学経営、特にIRに与えるインパクトは非常に大きいのではないかと、私は考えています。このブログでは今までもIRについての記事を書いてきましたが、ニッセイ基礎研究所のIRに関するレポートでは、IRの利活用には専門的知識を必要とする実情がよく分かりますし、*6先日の大学行政管理学会の基調講演で、佐賀大学の佛淵学長が指摘していたように、*7IRは手段であることからも、具現化するための人材としてデータサイエンティストの存在が不可欠になってくるように思います。一般社団法人データサイエンティスト協会なども今年の5月に設立されていますが、*8大学教育においては平成20年に公表された中教審答申「学士課程教育の充実に向けて」でも、「大学の諸活動に関する調査データを収集・分析し,経営を支援する職員」が今後必要になると指摘されています。
ただ、特にそういった教育を受けてこなかった職員にいきなり「データサイエンティストになりなさい!」と言っても無理ですので、そこは教職協働で、教員の方々の力を借りながら解決していくのがいいのではないかと思います。ついこの間、「大学の教務Q&A」に続く書籍として「大学のIR Q&A」という本も出版されましたので、私などはまずここからスタートしようと思っています。将来的にはRなどを活用できる職員になることが目標です。

大学のIR Q&A (高等教育シリーズ)

大学のIR Q&A (高等教育シリーズ)

最後、ちょっと話が違うところに行きましたが、鳥取大学発のベンチャー「ファインドパース株式会社」の取り組みには今後も注目していきたいですし、こうしたベンチャーに職員も参画して能力開発を行う事例などがあれば、是非調べてみたいところです。

*1:鳥取大学ベンチャー「ファインドパース株式会社」認定式を行いました  http://www.tottori-u.ac.jp/dd.aspx?itemid=10827#moduleid1019

*2:米大学でビッグデータ専門コースが相次ぎ開設 http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323779204579041962427698246.html

*3:U.Va. Appoints Engineering Professor Don Brown to Lead New Big Data Institute http://news.virginia.edu/content/uva-appoints-engineering-professor-don-brown-lead-new-big-data-institute

*4:次世代IT基盤構築のための研究開発「ビッグデータ利活用のためのシステム研究等」採択課題 http://www.mext.go.jp/b_menu/boshu/detail/attach/1336515.htm

*5:データビジネス創造・ラボ http://www.kri.sfc.keio.ac.jp/ja/lab/dmc.html

*6:ニッセイ基礎研究所のIR(Institutional Research)に関するレポートが分かりやすい http://d.hatena.ne.jp/high190/20121127

*7:平成25年度第17回大学行政管理学会定期総会・研究集会に参加しました http://d.hatena.ne.jp/high190/20130909

*8:一般社団法人データサイエンティスト協会 http://www.datascientist.or.jp/index.html