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Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

科学研究費助成事業データベースで大学教育の研究成果を探す

high190です。
最近、高等教育に関連するガバナンス、IR、FDなどの先行研究を調べています。私は大学院に通ったことがないので「正統な研究の仕方」は身につけていませんが、業務上でも先行研究をレビューして自分の仕事に活かしていくことは可能だと思っています。研究者レベルには当然達していないとしても、公にされている研究成果を仕事に活かしていく発想は常に持っていたいものです。ということで既に公にされている研究成果を当たるには、図書館職員の方が専門なのでささくれ*1のkitoneさんなどにお任せするとして、学術情報のスペシャリストではない職員の場合、学会に入会する*2など様々な方法があると思います。その中で私が最近着目しているのが、科学研究費補助金データベースから検索できる採択課題別の「研究成果報告書」です。

この中で大学職員や大学教育に関する研究成果などを調べることが出来ます。私が関心のある領域でいくつかピックアップしたものをご紹介しますので、ご関心がありましたら是非ご覧下さい。

本研究は、1)日本の高等教育についての基礎的なデータを大規模調査によって蓄積し、その分析をおこない、2)それをもとに各国の高等教育との比較分析を行うとともに、3)その基礎にたって、日本の高等教育の課題を明らかにすること、を目的とした。とくに大規模調査については、(1)高校生調査(高校3年生4000人を、その後5年間にわたり追跡)、(2)大学生調査(127大学、約4万8千人の大学生について学習行動を調査)、(3)社会人調査(9千事業所、2万5千人に大学教育の経験、評価を調査)、(4)大学教員調査(回答者数約5千人)、(5)大学職員調査(回答者数、約6千人)、を行い、それをデータベース化した。

(1)研究目的:
本研究は、マネージメントのあり方を視野に収めて、国立大学法人化後の大学経営に求められるようになった戦略計画(中期目標・中期計画)の形成のプロセスのあり方と、それを実践するマネジャー職の役割について検証するものである。
(2)研究方法:
このために、戦略計画の構造・内容に係る先行研究を整理するとともに、本研究の底本となった"Strategic Planning for Public and Nonprofit Organizations-Rev.ed."(1995;Jossey-Bass)の著者であるJohn M.Bryson(Professor,University of Minnesota)に、大学組織における戦略計画の構造、策定過程などについてインタビューを行った。また、米国の主要な大学の戦略計画をWebから得るとともに、ミネソタ大学、オレゴン州立大学を訪問し、戦略計画の形成過程、マネジャーの係わり等に関して、トップマネジャー(副学長)やミドルマネジャー(学部長)、これらを支援するInstitutional Research Officeの所長などの担当者へのインタビューを試みた。また、日本同様に、最近大学の法人化に踏み切った台湾の国立臺灣大学、真理大学、開南大学を訪問し、トップマネジャー(学長、副学長)およびミドルマネジャー(学部長など)へのインタビューを行い、大学における戦略計画に係わる情報を収集した。
(3)研究成果:
戦略計画は、いまや大学におけるマネージメントを語る上での共通のツールとなっていると言っても過言ではない。それは、プランニングされたビジョン・戦略・計画などを組織の内外に対する最も重要なコミュニケーションとなっている。
これら戦略計画は、アメリカの大学では、トップダウンボトムアップのミックス型で形成されている。タスクフォースを形成し、内部環境分析・外部環境分析を行い、多くの構成員が数年をかけ議論し策定に至っている。また、いい提案は他のタスクフォースに紹介し、各タスクフォースの意見に傾聴するなどProvost(副学長)の果たした役割が大きいが窺われた。他方、戦略計画の導入に日の浅い日本および台湾の大学における戦略計画は、トップダウン的な手法により策定している傾向にあり、戦略計画にも進化のフェーズがあることが見てとれた。
今後の課題としては、日本の大学において戦略計画(中期目標・中期計画)を経営にいかに浸透させるか、またマネジャーの果たす役割などについて、引き続き検証していきたい。

少子化にともなって大学進学者数の伸びは鈍化しつつある。しかし他方で、大学の数は漸増を続けており、この市場競争の厳しい時代を大学はどのような経営で生き抜こうとしているのか、私立学校、大学の設置者である学校法人に焦点を合わせ、法人が採っている経営戦略を(1)学校法人内部での調整、(2)学校法人外部との連携・統合、(3)設置形態の変更の3つに類型に分け、それぞれについて訪問調査およびアンケート調査を行った。その結果、拡大に加えて縮小や廃止などを同時進行で行ってきた学校法人の存在や、地域との連携を重視して生き残りを図る学校法人などの各種の実態が事例として明らかになり、学校法人の経営行動の多様性が明らかになった。

本研究の主な結論は次の通り。第1に、日本の大学のデータを検討し、当局による大学行政を産業組織論の観点から再検討することが有益であることを指摘した。第2に、国立大学81校や私立大学107校のパネルデータを使いトランスログ費用関数をそのコストシェア方程式とともに同時推定することによって、規模や範囲の経済性が存在することを示した。第3に、国立大学のパネルデータを使い確率的フロンティアモデルを推定することにより、その非効率性の存在を明らかにした。第4に、国立大学の集計された時系列データを使い生産関数を推定し、大学教育の技術進歩率が年率0.4%〜0.8%程度と低いことを明らかにした。

本研究は、世紀の時代転換期において、大学が迫られている知識基21盤型社会への主体的対応、さらには研究・教育・社会貢献のありようについての比較調査研究である。とくに、日中韓の東アジアにおいて大学のガバナンス、マネジメントにおいて、どのようなリーダーシップとパートナーシップがとられようとしているかについて、実証的動態分析を行った。今後の方略についての貴重な実践的知見が得られたといえる。

本研究の目的は、アメリカの大学の中でも、とくに授業料依存型の財務構造をもつ大学における経営戦略の実態を明らかにし、日本の大学経営に対する具体的な示唆を導きだすことにある。アメリカの私立大学のなかでも、潤沢な基本財産をもつ大学に注目が集まりがちだが、アメリカにおいても数の上では大半を占める授業料依存型の私立大学である。
こうしたタイプの大学の多くは研究機能より教育機能で個別化戦略を立てていることが多い。そこで、アメリカで近年盛んにおこなわれている学生の学習状況調査(とくにインディアナ大学が行っているNational Survey of Student Engagementを中心に検討)で高い評価を上げている大学を探し、その中から、授業料依存率の高い大学をいくつか抽出してその特徴を検討した。

本研究の目的は、伝統的に「公的な」知識生産の拠点であった大学が、市場化の流れによって急速に「私的な」性格を強めている現状を歴史的に概観すると共に、失われつつある「アカデミックコモンズ」の再構築の必要性を実証的に論じることにある。本研究は、おもに1970年代から2000年ごろまでのアメリカの大学の変遷を、「知識経済」に政策の基盤をおこうとするアメリカ政府の産業政策との関わりから検証することを目指した。

米国での詳細なフィールド調査を通し、大学におけるナレッジマネージメントの概念と機能のメカニズム、活用の範囲とその効果、実践過程で生じた問題点や課題を明らかにするとともに、日本の大学におけるナレッジマネージメントの実践モデルを設計し、これを教育研究の分野で実践した。その結果を国内外の学会や研究会などで発表するとともに、報告書として「IR からKM へ-教育調査研究から『知』の共有への可能性-」にまとめた。

本研究により、アメリカの事例研究から、高大連携と学習の生産性の論点がリンクしていることが明確になり、教育接続の問題と、高等教育計画の効率化、社会発展アプローチ別の視点を包含した政策の理論化を果たした。日本でも、緊縮財政下の高等教育は、効率化と、教育機会の均等性の確保、大学教育の質の向上を追及することが必要であるが、そのための政策や実践の形成や、評価、改善のサイクルに資する基礎付けが可能になった。

本研究では,学生生活への不適応を抑止する要因を「登校行動持続要因の解明」という新しい発想を用いて分析・検討し,不適応への予防的アプローチを探ることを目的とした。分析の結果,次のことが明らかとなった。(1)大学生の登校行動持続要因は,周囲との関係への配慮,自己の可能性への期待,社会,金銭に関する理由が多い,(2)積極的対消極的理由と情緒的対道具的理由の2軸がある,(3)大半の学生は登校行動持続要因を複数保有している,(4) 複数保有する登校行動持続要因のうち重要だと位置づける要因が1つでもある学生は,講義に出席しやすいものの,それは登校行動の促進や登校忌避感情の抑制には影響しない,(5)登校行動持続要因を多く保有することは,登校への意味づけを相乗的に強め,登校行動を持続させやすい。

就職活動を組織間協働と捉え、大学組織と企業組織が学生というリソースをやり取りするダイナミズムを捉える本研究においては、平成21年度の研究結果より各大学のキャリアセンターが対内外への情報提供及び調整機能を果たすことが明らかとなった。平成22年度の研究成果として、大学の機能拡充は大学教育の在り方自体の見直し経緯の一環として行われており、その方向性は学士教育の質保証に沿うことが明らかとなったものの、課題として1)教育と研究の重点配分が大学経営の方針によって大いに異なり一般化が困難、2)組織間協働の機能を果たす機関としてキャリアセンターを研究対象としたが実態は継続性・専門性の不足と責任範囲の不明確さ等により期待される役割を十分に果たせていないことが明らかとなった。

2年間の調査で得たデータをもとに,記述的ケース・スタディと解釈的ケース・スタディを作成している。2009年度には,文献調査と訪問調査によって,ウエスタン・オンタリオ大学に関する基礎的な情報を得た。2010年度には,記述的ケース・スタディを学会で発表するとともに,追跡調査を実施した。現在,この記述的ケース・スタディをもとに,解釈的ケース・スタディを作成し,ここで得られたモデルを他大学のケース・スタディで得られたモデルと比較検討する準備をしている。

大学のマネジメントから教育社会学まで、色々な研究成果が公表されていますが、特に私自身が職員なので「奨励研究」でどんな研究が採択されているのか気になります。奨励研究とは「奨励研究は、小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・幼稚園・専修学校の教員、教育委員会の所管に属する教育・研究機関の職員、企業の職員又はこれら以外の者で科学研究を行っている者(ただし、学生(大学院生を含む。)・生徒及び大学等の研究機関の常勤の研究者等を除く。)が1人で行う研究で、大学等の研究機関で行われないような教育的・社会的意義を有する研究(商品・役務の開発・販売等を直接の目的とする研究(市場動向調査を含む。)及び業として行う受託研究を除く。)を助成し、奨励することを目的としています。」*3とある通り、研究機関に研究者として所属していない人でも研究で助成を受けられる制度のことです。
まだ助成期間中で研究成果報告書が公表されていない研究課題にも、興味深いものがいくつもありますので、*4 *5 *6 *7こちらも後々情報を閲覧したいところです。
近頃は大学職員でも修士の学位を持っている人が増えてきたように思います。個人の印象ですが、横の繋がりが他の業界と比較しても強いと思われる大学業界において、ソーシャルメディア等で繋がる人々の学位保有率は高まっていると思われますが、私などは地道な積み上げをしていってもいいのかなと感じたりもしています。大学院は研究を志向するところですので、例えば筑波大学大学研究センターが行っている履修証明プログラム*8などに通って、一定の知識を積み上げてからリサーチクエスチョンを考えて行った方がいいのかなと。そのためにも大学職員が行っている先行研究をよくレビューしておく必要性を感じるのです。

*1:http://cheb.hatenablog.com/

*2:大学職員の能力を高めるために、高等教育関連の学会に入会してみよう http://d.hatena.ne.jp/high190/20121014

*3:日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究 http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/11_shourei/

*4:大学職員の経営企画能力養成に関する社会人大学院での学び−人事部への調査から− http://kaken.nii.ac.jp/d/p/25907043.ja.html

*5:学校図書館大学図書館のサービス的・人的連携の実態調査と活用施策のモデル化 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/25907014.ja.html

*6:知識基盤社会における大学の役割と知的資産マネジメントの研究 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/25907039.ja.html

*7:大学教員のティーチングポートフォリオ作成支援における学生視点の有効性に関する研究 http://kaken.nii.ac.jp/d/p/24907038.ja.html

*8:Rcus大学マネジメント人材養成 http://www.rcus.tsukuba.ac.jp/program/index.html