読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

図書館改革からアクティブ・ラーニングを推進する。

Diary Research

high190です。
つい先日、大阪市立大学図書館開館時間について、学生が橋下大阪市長へのtweetをしたことを契機に開館時間の見直しを行うことになったのは記憶に新しいところかと思います。*1このように学生へのより良い学修環境を提供する観点で図書館を活用する取り組み、ラーニングコモンズが色々と広がりを見せています。一例ですが、名古屋大学附属図書館のラーニングコモンズでは、「自律的な学習を支援し、知識の創造を促す、図書館の新しい学習空間」*2という定義がなされています。
このように、今までは受動的に利用者を待つ存在だった図書館から、より学生の学修支援に対してアクティブに仕掛けていくことがこれからの図書館には求められているようです。今日ご紹介する和歌山大学図書館では、公立図書館の改革を成し遂げてきたスペシャリストを図書館長に据えて積極的な改革を行っているようです。


和歌山大学和歌山市栄谷)の大学図書館が劇的に変わりつつある。明るく開放的なオープンスペースや研究に使えるパソコンルームなど多種多様な空間が生まれ、「資料を貸し出すだけ」の施設から脱皮が進む。改革を担うのは、各地の公立図書館改革を実現してきた館長の渡部幹雄特任教授。「学生が充実した大学生活を過ごす拠点になれば」と意気込む。

学生の周遊を促す
夕方の図書館1階は、大型の丸テーブルを囲んで談笑する学生たちでにぎわっていた。内部の壁のほとんどが撤去された空間は広々とし、書架に埋もれて会話もはばかられるような従来の雰囲気から一変。入り口の脇には将来的にカフェになるテラスもある。和大図書館の改革が始まったのは2年前。「開放された空間に」との方向性を打ち出し、間仕切りの壁を減らすことから開始。あまり使われない資料が眠っていた倉庫を学内の別の場所に移し、2〜3階を含めて学生の周遊を促すようにする改装が続く。1階を「学習するために集う共有スペース」と位置づけ、2階は「サイレントゾーン」として1人で学習に集中できるよう机と椅子を配置。ほとんど使われていなかった3階はより高度な利用ができるよう、パソコンを置いた個室やミーティングスペースを設けた。2階には専属の助教が常駐し、学生の図書館利用の支援も行っている。

「ただの本の倉庫」を改革
狙いは「学生同士で集う」ことから「深く研究に没頭する」ことまで、利用スタイルごとにすみ分けを図ること。より多くの学生の利用を促し、「1階から3階に向けて利用方法が高度になるイメージ」という。利用する学生の数は増えており、改装途中にもかかわらず平成24年には前年比で4割も利用者数が伸びた月もあったという。
渡部館長は和大の図書館改革を依頼されるまで、滋賀県愛知川町(現愛荘町)など3つの自治体で図書館の立ち上げに関わってきた異色の経歴の公務員だった。これまでに国内外の約1500の図書館を視察し、「日本ではまだ、ただの本の倉庫になっている図書館が多い」と語る。近年は全国的に、公共図書館だけでなく大学でも図書館改革が進んでいるという。
図書館が使われている大学はどこもレベルが高い。しっかり学ぶ空間があれば、学生も自信を持って卒業できるはず」と話し、「改革はまだ5合目。職員も『もっと使ってほしい』との思いを持ち、大学の目玉になるような図書館にならないと」と語る。

図書館機能の充実化によって学生の図書館利用が増えて、ひいては学生の学修意欲・成果にも反映されるという意見は面白いですね。これはまさに図書館がラーニング・コモンズであるということの現れです。こういう方が図書館長である大学は非常に強みを持っていると思いますね。ちなみに記事中でも紹介されていますが、渡辺教授は3つの自治体で図書館を立ち上げてきた「図書館のプロ」です。愛荘町立愛知川図書館館長時代にはLibrary of the Year 2007で大賞に選ばれるなど、図書館経営の第一人者であると言えます。*3 *4
和歌山大学図書館の場合、「有能な図書館長だとこれだけ違う!」という好事例かと思いますが、図書館に求められる役割は受動的な情報の提供者から学修支援に深く関わるものに変質してきていることは確かだと思います。平成24年8月公表の中教審答申では、大学教育の質的転換についての提言がなされましたが、アクティブ・ラーニングの推進という点で、大学図書館が大学教育に果たす役割はますます大きくなっていくでしょう。*5 *6
大学図書館からは若干離れますが、つい先日公表された「これからの図書館の在り方検討協力者会議」報告書*7においても、次のような一文があります。

近年、少子高齢化、高度情報化、国際化などが急速に進む中で、社会構造の変化、地域の課題の増加や複雑化等に対応した図書館サービスの見直しが急務となっている。図書館は各地における「地域の知の拠点」として、国民の生涯にわたる自主的な学習活動を支え、促進する役割を果たす必要がある。
さらに近年は、人々の支え合いと活気のある社会づくりに向けて一人ひとりが「新しい公共」の担い手となることが求められる中で、地域が抱える様々な課題解決の支援や、地域の実情に応じた情報提供サービスなど幅広い観点から社会貢献することが期待されている。

また、国に求められる役割として、次のような指摘もなされています。

社会の変化や図書館をめぐる環境の変化等に対応した図書館サービスを促進するためには、新基準についても定期的に見直しを行うことが必要である。PIAAC*8 *9の調査結果の分析を館サービスの関連を解明し、必要に応じて図書館の在り方や関連施策等の提示を行うことも求められる。

地域の実情に応じた情報サービスの提供という点では、大学改革実行プランで示されたCOC(Center of Community)の実現にも必要なことです。以上のように図書館が大学の中心として学修支援に関わってくる以上、図書館以外の部署にいる職員も全く無関係では居られなくなってくるのではないかと思います。例えば、最近では学位規則の改正が諮問・答申されたことに伴い、*10博士後期課程を設置する大学においては、「博士の学位を授与された者は博士論文を印刷公表することとされているところ,教育研究成果の電子化及びオープンアクセスの推進の観点から,印刷公表に代えて,インターネットの利用により公表する必要がある。あわせて,博士論文要旨等の公表についても,インターネットの利用による公表とする必要がある。」との指摘がなされました。
学位規則第13条では「大学は、学位に関する事項を処理するため、論文審査の方法、試験及び学力の確認の方法等学位に関し必要な事項を定めて文部科学大臣に報告するものとする。」との規定がありますが、学位の取扱いは教務関係の部署が行っているのがほとんどではないでしょうか。つまり、今回の改正で、教務系職員もオープンアクセスについての知識もある程度は身につけておくことが必要になったということです。図書館の人向けにはオープンアクセスのイベントなども多数開催されているようなのですが、*11こうした情報に教務系の職員が関わることは少ないので、もっと業務ごとの連携というか、互いの仕事を知ることを深めていくことも大切になってきます。改めて考えると大学でのアクティブ・ラーニング推進には、本当に図書館の力が大きいのではないかと今更ながらに再認識しているところです。

*1:大阪市立大学図書館が日曜も開館となるまでの急な流れ http://d.hatena.ne.jp/daigaku-syokuin/20130110/p1

*2:名古屋大学附属図書館ラーニング・コモンズ http://lc.nul.nagoya-u.ac.jp/about/index.html

*3:Library of the Year2007で愛知川図書館が大賞受賞! http://www.gaido.jp/suteki/suteki.php?ID=225

*4:Library of the Year 2007 http://www.iri-net.org/loy/loy2007.html

*5:アクティブ・ラーニングと中教審答申をめぐる高等教育研究者の議論を聞いてきました http://d.hatena.ne.jp/high190/20121226

*6:京都で開催された高等教育研究会・大学職員フォーラム「教育の質的転換に向けた大学教職員の役割」に参加してきました。 http://d.hatena.ne.jp/high190/20130115

*7:図書館の設置及び運営上の望ましい基準の見直しについて(報告書) http://goo.gl/QYzYl

*8:国際成人力調査(PIAAC)は、OECD経済協力開発機構)が進める新しい国際比較調査。PIAAC(ピアック)は、Programme for the International Assessment of Adult Competenciesの略称

*9:OECDが「国際成人力調査(通称:PIAAC)」を2011年から実施 http://d.hatena.ne.jp/high190/20091124

*10:学位規則の改正について(諮問) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1330281.htm

*11:第6回SPARC Japanセミナー2012 http://cheb.hatenablog.com/entry/2012/12/04/215047