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Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

厚生労働省が若年者の離職率を初公表。業種・規模別に大きな開きがあることが明らかに

high190です。
ここ最近、田中文部科学大臣による大学不認可措置に伴う議論でメディアは持ちきりでしたが、その間にも大学に関連する重要ニュースがいくつも出ていました。厚生労働省より発表された、入社から3年以内に離職した若年者の離職率のデータについては、非常に重要な情報ですのでご紹介したいと思います。


若者が正社員として就職したあと早期に離職することが問題となるなか、厚生労働省は31日、入社から3年以内に離職した人の割合を初めて業種別に公表しました。このうち、大学卒業で離職した人は、ライフライン産業では10%を下回りましたが、飲食サービス業などでは50%近くに上るなど、業種によって大きな開きがあることが分かりました。
入社したあと3年以内に離職する若者は、ここ数年間いずれの年代でも減る傾向が続いていますが、3年前に入社した人では、高卒でおよそ35%、大卒でおよそ28%に上っています。専門家は、十分なキャリアを積まずに辞めた場合、正社員としての再就職は難しいと指摘していて、厚生労働省は、業界ごとに改善を求めるため初めて業種別の離職率を公表しました。
それによりますと、3年前に大学を卒業した若者では、最も高い業種は教育、学習支援業と宿泊業、飲食サービス業で、いずれも48%、次いで生活関連サービス業、娯楽業が45%などと、サービス産業で高い傾向が明らかになりました。一方で、最も低い業種は、鉱業・採石業で6%、次いで電気やガスなどのライフライン産業で7%、製造業が15%となっています。厚生労働省は、離職率が高い業界に改善を促すとともに、就職を目指す若者に、今回のデータも参考に企業分析などを進めてほしいと呼びかけています。
学校を卒業し企業に就職したあとで3年以内に辞める若者の離職率は、平成7年ごろから10年余りにわたって高い水準で推移し、中卒者で7割、高卒者で5割、大卒者で3割に上ったことから「7・5・3問題」などと呼ばれてきました。
離職率は平成16年ごろから減少傾向にあり、3年前の平成21年に卒業した若者の離職率は、中学を卒業した人が64%、高校を卒業した人が35%、大学を卒業した人が28%となっています。厚生労働省は、「10年ほど前の就職氷河期に就職した若者は、希望の職種に就けず離職率は高かったが、その後、緩やかに景気が回復し、求人が増え、希望の仕事に就いた人も増え、離職率は下がったとみられる。4年前のリーマンショックの影響はこれから出てくるので、再び離職者が増えないか注目している」と話しています。
若者の人材育成に詳しいリクルートコミュニケーションエンジニアリングの船戸孝重さんは、離職率が低い製造業などは、一人前の技術を身に着けるまで企業が時間をかけて育てていくのに対して、離職率が高い飲食業などのサービス業は、入社直後から現場に出て自分で経験を積んで学ぶということが多い。このため、なかなか成長を実感できず、悩んで辞めてしまうケースが多いのではないか」と分析しています。
そのうえで、「多くの若者がキャリアを積まないまま辞めてしまう状況が続くと、企業にとっては将来、中核となる人材が育たないことになるので、日本の将来にとって危機的な状況だ。企業側も若手社員の定着に努力することが重要だ」と指摘しています。

大学卒業者の就職率がメディアで大きく取り上げられることはありますが、同じように離職率の状況についても詳細に分析していく必要があります。上記の記事で指摘されている通り、離職率が高い業種の場合、現場で研鑽を積むことが多いと指摘されていますが、業種ごとの特性を踏まえて学生の就職支援を行うことが大切かと思います。記事中で指摘されている厚生労働省の発表資料は以下のリンクから確認できます。

このうち、入社から3年以内の業種別の離職率については、自分でも確認するために表にしてみました。ここでは大学卒業後3年間の離職率に焦点を当てたいので、平成21年3月卒のデータのみを使います。*1

離職率の高い上位5業種

    1. 教育、学習支援業(48.85%)
    2. 宿泊業、飲食サービス業(48.51%)
    3. 生活関連サービス業、娯楽業(45.01%)
    4. 医療、福祉(38.55%)
    5. 不動産業、物品賃貸業(38.50%)

離職率の低い上位5業種

    1. 鉱業、採石業、砂利採取業(6.10%)
    2. 電気・ガス・熱供給・水道業(9.66%)
    3. 製造業(鉄鋼業)(11.25%)
    4. 製造業(非鉄金属製造業)(11.28%)
    5. 製造業(化学工業、石油製品、石炭製品製造業)(11.45%)

high190的な印象ですが離職率の低い業種は、ある程度の企業規模がないと成り立たない仕事のように感じます。つまり事業所規模(従業員数)が大きいということです。厚生労働省の調査では、事業所規模別の離職者数も公表しており、平成21年3月卒のデータでみると規模別には次のような結果となっています。*2

事業所規模別の離職率

    • 5人未満 59.2%
    • 5〜29人 49.8%
    • 30人〜99人 37.9%
    • 100〜499人 30.1%
    • 500〜999人 26.3%
    • 1,000人以上 20.5%

中小企業への就職率が低いので「学生が選り好みしているのではないか」という指摘もありますが、*3実際のところ、大企業と比較すると中小企業の方が離職率は高く、それだけ待遇や福利厚生に差があることの裏返しでもあります。離職率が低く安定的な雇用を望む人が多いのは当たり前のことです。同時に中小企業の場合は事業環境が厳しさを増しており、社員の人材育成に大企業ほどの力を掛けられないことも事実です。大局的な話になりますが、中小企業の経営環境を好転させられる政策的支援が必要になると思います。
そういった観点を踏まえてか、中小企業の経営を支援するための取り組みも徐々に行われてきています。中小企業経営力強化支援法が本年8月30日に施行されたことに伴い、*4中小企業庁では「経営革新等支援機関認定制度」を導入して、税務、金融及び企業の財務に関する専門的な知識や実務経験を有する個人、法人、中小企業支援機関者を認定して、中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備しています。*5学生が大企業志向になるのは仕方ないとしても、多くの学生たちが中小企業に就職していくことは紛れも無い事実です。だからこそ、中小企業と学生のマッチングを考える上でも、中小企業政策や中小企業の動向などの情報を就職支援担当者は収集・分析しておくべきではないでしょうか。
そして、単純にリクナビマイナビへの登録を学生に促すのでなく、企業と大学間の直接的な関係を構築し、学生と企業の間のミスマッチを解消していくことが大切ではないかと強く感じます。また、卒業生の動向把握について、校友会と就職支援部門が連携し組織的に把握していく取組みも大切です。離職率が高いという事実が明らかになったからこそ、外部環境・内部環境分析を行って、教育課程内外で様々な部署が連携して今後の改善に繋げていくことが肝要かと思います。

*1:http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/dl/24-18.pdf

*2:http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/dl/24-16.pdf

*3:学生は就職先えり好み? 中小企業は「優秀な人材厳選」(MSN産経ニュース) http://sankei.jp.msn.com/life/news/120827/edc12082721430003-n1.htm

*4:中小企業経営力強化支援法に基づく経営革新等支援機関の認定申請について(経済産業省関東経済産業局) http://goo.gl/g35jh

*5:2,102機関を経営革新等支援機関として認定しました〜中小企業経営力強化支援法に基づく第1号認定〜(中小企業庁) http://goo.gl/XRJF1