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Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

SD研修の実施内容を「大学の社会的責任」と捉えて公表する大正大学の取り組み

Diary Unique Staff Development

high190です。
以前からSD研修については強い関心を持っていましたが、職場内での研修実施や業務改善の方策などを考えていくと、組織的な取り組みの重要性を痛感します。もちろん、若手職員による勉強会などのインフォーマルSDも重要なのですが、職場全体で職員能力を底上げしていくには組織的かつ戦略的なSD計画を練る必要があると思います。そういった観点で、特に中小規模大学のベストプラクティスがないか調べていたところ、面白い事例に遭遇することができました。東京都豊島区に所在する大正大学の取り組みです。


本学では、「首都圏文系大学においてステークホルダーからの期待、信頼、満足度No.1を目指す」という運営ビジョン達成のため、3つの経営基盤(財務・人材・施設)<大学力>の一つである「優れた人材の確保及び育成」を行っています。
その一環として、TSR大正大学ソーシャルレスポンシビリティ:大正大学の社会的責任)に対する本学事務職員の共通認識を醸成し、事務局が一体となって大学運営にあたることができるように、年間を通じて事務職員研修を実施しています。 

大学設置基準で実施が義務化されているFDと比べると、自学でどのようなSDを実施しているかを公表している大学はまだ多くないように思います。公表しているとしても「SDフォーラムを実施して外部講師を招聘しました!」「職員は外部講師の話を熱心に聴き、活発な意見交換が行われました!」という感じで、具体的にSDの結果が大学運営に反映されているか否かは分からない部分が多々あります。その点からすると、大正大学のように「年度内に実施した研修を公表する」ということは、今後の大学運営に向けて構成員をどのように育成するかを対外的に明らかにしており、面白い試みだと思います。具体的にどのような研修が行われているか、次に示しますね。

  1. 大正大学事務職員研修(夏期)
  2. 大正大学事務職員研修(冬期)
  3. 入局1年目事務職員研修
  4. 入局1、2年目事務職員研修
  5. 平成24年度採用予定者研修
  6. 大正大学事務職員研修(春期)

職員全体向けの研修が年3回、階層別研修(主に初任者・採用予定者向け)が3回の計6回開催されています。私の職場の場合、オフィシャルの研修ということだと、外部団体主催の研修に参加すること、年に1度SDフォーラムで外部講師による講演を聴くことぐらいです。私自身はそれだけでは満足できないので、自主的な勉強会などは行っていますが。それと比較すると収容定員4,000人弱、職員数118人(常勤嘱託を含む)大正大学が、これだけSDの取り組みを積極的かつ充実させていることは興味深く、職員の育成を重視していることがよく分かります。*1大正大学では"TSR"と呼称していますが、「大学の社会的責任」を果たすために、職員の共通認識を醸成するというのは面白くかつ他大学でも参考にできるのではないかと感じます。


TSRとは、大正大学ソーシャルレスポンシビリティ(大正大学の社会的責任)のことです。
本学は、学生や保護者、卒業生、さらには地域社会まで広げた本学のステークホルダーを明解にし、それぞれの皆さんの満足度向上や期待、要望に応えるために、適切な教育や地域・社会貢献事業など責任を持って推進していくことを「大正大学中期マスタープラン」の中核にしています。本学の教育ビジョン「4つの人となる」の実現のためにTSRシップによってともに達成していこうとする取り組みをTSRといいます。

職員は大学の構成員であるだけでなく、様々なステークホルダーと接する存在ですから、大学の社会的責任の主たる担い手でもあります。いかに社会的責任の重要性を掲げても、組織として責任を果たすためには地道な取り組みが重要になります。大学経営のためには業務に精通した大学職員が必要だ!という指摘はもちろんのことですが、大学の社会的責任を果たす上で、その担い手たる大学職員の能力を向上させていくことが必要だと言った方が、何となくぼんやりしている大学職員のSDに対して説得力を持つことができるような気がするのです。また、大正大学の場合は中期計画の中核に大学の社会的責任を据えて、SDと連結させているのですが、これは中期計画の浸透度を上げるという効果もあります。このことについては、進研アドBetweenの最新号で東京大学の両角亜希子先生も次のように指摘しています。*2

一般的には、小規模大学ほど大学の課題は共有しやすく、浸透が進んでいると考えられるが、実際には、どの調査データを用いて分析してもこのような傾向は見られない。つまり、規模に関係なく、大学の努力いかんによって浸透度は変わり得るということだ。

職員の能力開発という一面的な視点だけではなく、中長期計画の実質化と浸透を図る上でSDの位置づけが重要になると大正大学の事例から気づかされたように思います。職員が自分自身のキャリアプランを考えられるような職場環境を作ることは大切ですが、組織目標とのマッチングをどう図るか?ということも人事戦略上の重要ポイントですので、この取り組みは設計時点からしっかりと議論されて設計されているのではないかと思います。SDをどう位置付けていくかは多くの大学が課題として悩んでいることだと思いますが、大正大学の取り組みから学ぶ点は多いように思います。

*1:大正大学 平成23年度 事業報告書 http://tais.ac.jp/guide/pdf/financial/23/H23jigyouhoukokusyo.pdf

*2:進研アド2012年10-11月号「特集:競争力を高めるための計画の実質化」 http://shinken-ad.co.jp/between/backnumber/pdf/2012_10_tokushu01.pdf