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Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

イギリスでの留学生受入免許の取消措置を受けて、大学のグローバル化について考える

Diary Foreign

high190です。
イギリスのロンドン・メトロポリタン大学が、イギリス政府から留学生受け入れに必要な免許を取り消されるという事態が発生して波紋を呼んでいます。イギリス国境局によると、大学側の管理体制に問題があったとの指摘があります。


英国国境局は8月30日、ロンドン・メトロポリタン大学に対し、欧州連合(EU)域外の留学生受け入れに必要な免許を取り消したと発表した。在籍中の留学生も講義を受けられなくなり、約2700人の外国人学生に影響が出るとみられている。大学のウェブサイトによると、日本人学生も約150人在籍している。
英国のグリーン移民相は、同大学について、滞在許可証を持たない学生が学び、出欠の確認もずさんだったなどと指摘した。政府は留学生を支援する特別チームを設けたが、60日以内に新たな受け入れ先が見つからない場合、国外退去処分になる可能性がある。学生たちは、首相官邸前で抗議デモをした。
英国の大学にとって、高い学費を支払うEU域外の学生は貴重な収入源となっている。今回の措置で、留学先として英国の人気が落ちないかと心配する声も出ている。

EU域外の学生はある意味「ドル箱」であるため、入学後の出席管理などが杜撰であったことによる対応とのことです。留学ビザで入国したにも関わらず、不法就労を助長すると受け止められる大学に対しては、厳しい措置が取られてしかるべきかと思います。イギリス国境局の発表は以下の通りです。その他にブリティッシュ・カウンシルなどでも注意喚起の情報を提供しています。*1


The UK Border Agency has revoked (withdrawn) London Metropolitan University's licence to sponsor students from outside the European Union.
The withdrawal of London Metropolitan University's licence means that it is removed from the register of licensed sponsors, and students from outside the European Union are no longer allowed to study at the university.
We understand that international students at London Metropolitan University may be concerned.
London Metropolitan University students who are already in the UK with a current, valid UK visa do not need to do anything immediately.
A government-led taskforce is being created, which will include the Higher Education Funding Council for England (HEFCE), Universities UK, the Department for Business, Innovation and Skills (BIS), the UK Border Agency and the National Union of Students. This will work with London Metropolitan to support those affected and enable appropriately qualified genuine students to find another institution where they can continue their studies in the UK. The taskforce will start work immediately.
If an existing London Metropolitan University student with a current, valid visa is on holiday outside the UK, they can return to the UK.
New students who were planning to travel to the UK to start studying with London Metropolitan University should not travel.
A UK Border Agency spokesperson said:
-'These are problems with 1 university, not the whole sector. British universities are among the best in the world - and Britain remains a top-class destination for top-class international students.-'We are doing everything possible, working with the taskforce established by BIS, to assist students that have been affected.'

当該大学に在籍している学生に対しては一定の支援をするとともに、イギリスの高等教育レベルの質を保たなければいけないことについて、危機感を持っていることが感じられます。
文部科学省が公表した大学改革実行プラン*2日本経団連が発表したグローバル人材の育成に向けた提言*3など、国際的に通用する人材育成が現在の大学におけるホットトピックかと思いますが、同時に日本国内の大学が急速にグローバル化することによって、様々な制度上の不備などが明らかになる可能性もあります。授業を英語で実施することもグローバル人材の育成には必要だと思いますが、職員から見た大学のグローバル化というものはどういったものであるかを考えさせられる事件です。
例えば、韓国では「外国人留学生受入れ・管理能力認証制」を2011年の9月から導入し、各大学が留学生の管理について責任を持つことを明確にしていますが、順位が下の大学にはビザ発給を制限するなど厳しい措置を講じていることが分かります。*4グローバル人材の育成にあたっては、学生を海外に送り出すだけではなく大学全体をグローバル化することが大切だと思いますが、諸外国の高等教育に関する政策動向等についてもある程度の知識を持っておくことが必要であると言えます。そうした状況を踏まえてか、最近ではグローバル化に対応できる職員能力の開発についてのセミナー等が多く見受けられます。11月に同志社大学で「大学職員のグローバル化」と題されたSDワークショップが開催されます。これまで、このブログでも「大学職員の国際対応力をいかに向上させるか」ということを記事にしてきたこともあって、*5非常に興味深いイベントだと思います。


グローバル化する大学で働く職員に求められる役割、職員自身のグローバル化について検討、意見交換することを目的に、SDワークショップ「大学職員のグローバル化」を開催いたします。本ワークショップでは、本学国際教育インスティテュート所長 グレゴリー・プール教授(Gregory Poole, PhD)による講演会の他、「人事制度・事務組織」「学生派遣」「留学生支援」の観点から3つの分科会を設けます。
現在、留学生・英語プログラムに関わる部署に就かれている教職員の方々はもちろん、それ以外の部署からのご参加も歓迎いたします。

私が聞いてみたいのは「人事制度・事務組織」の分科会です。開催日は11月26日(月)で、申込は10月26日までとなっています。先着順のようなので、参加をご希望の方は早めのお申込を!
私も参加したいですが、いかんせん平日に京都まで行くのは無理なので、参加者の方のレビューを聞く機会があればいいですね。その他、大学職員のグローバル化に関する勉強会といえば、立命館アジア太平洋大学国際教養大学国際基督教大学早稲田大学国際教養学部上智大学で構成されるグローバル5大学(通称:G5)による大学教職員研修があります。昨年は秋田の国際教養大学にて、リーズ大学の戦略マップから「大学をグローバル化するための条件」を学ぶ研修会が開催されています。*6今年は東京の国際基督教大学にて「グローバル化と多様性〜G5大学の事例をとおして」という研修が開催されます。こちらも注目に値するイベントですね。こちらは9月10日(月)締切なので、申込はお早めに。

その他にも公益財団法人大学セミナーハウスが主催する「第1回大学職員のグローバル化研修(国際交流推進への理解と知識)」なども参考になるかも知れません。この研修では、E-mailライティング、発信力・表現力強化、バイリンガル・プロフェッショナルのためのジョブサーチ・テクニック、異文化理解と国際コミュニケーションといったかなり実践的な内容を2泊3日で行います。既に国際関係業務に携わっている職員に有用な研修ではないかと思います。

何だか今回は研修情報をお知らせするような内容になってしまいましたが、教育の質保証という観点に加えて、大学職員としてグローバル化に対応する能力をいかにして身に付けるかという視点を常に持っていたいものですね。また、留学生の適正な受け入れを行わないと、大学自体の魅力低下にも繋がりかねないことを示唆する出来事ではないかと思います。

*1:8月30日の UK Border Agency[英国国境局]発表による ロンドンメトロポリタン大学Tier 4ビザ ライセンス取り消しについて http://goo.gl/LDgpW

*2:「大学改革実行プラン」2012年6月5日公表 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/06/1321798.htm

*3:「グローバル人材の育成に向けた提言」2011年6月14日公表 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/062/index.html

*4:アルカディア学報No.483「韓国における留学生受入れ 地方大学の現状と政策」

*5:大学のグローバル化に伴い、職員に求められる国際化対応能力とは http://d.hatena.ne.jp/high190/20110303

*6:日本の大学が海外の大学から学ぶべきものは何か?リーズ大学(University of Leeds)の戦略マップに学ぶ http://d.hatena.ne.jp/high190/20111124