high190です。
7月22日(日)に若手大学職員勉強会、Grennhorn Networkへ久しぶりに参加してきました。今回のテーマは「海外研修・勤務」ということで、国立大学職員の方が参加したLEAP(Long-term Educational Administrators Program)*1の研修報告だったのですが、とても面白い内容だったので私のブログでも取り上げさせていただきたいと思います。
- 2012年度第2回勉強会のご案内(出典:Grennhorn Network)
前段として、LEAPとはアメリカの大学での研修・インターンを通じて大学職員等の国際対応力を強化するプログラムです。「等」となっているのは、大学以外の独立行政法人からも参加が可能なプログラムであるためですが、国立大学や大学共同利用機関法人*2の職員の方などが参加されているようです。講演ではとても分かりやすい説明をいただいたのですが、high190が聞いていて特に面白いなと思ったところを抜粋してありますので、あしからず。
1.「アメリカの大学」という虚構?
- 各州ごとに大学の基準が異なるため、「アメリカの大学」という統一モデルは存在しない。
- その代わり、予算全体に占める公金の割合が低いことは共通している。独自性のある運営体制であり、これは連邦制を取るアメリカならでは。
2.アメリカの大学のうらやましい点
- Provost(Chief Academic Officer)に強い権限がある。
- ランドグラント大学(land-grant university)として地域との繋がりが強く、地域の中心に大学がある。
- Distance Learningが盛ん。大学間の単位互換など。
3.日米大学のマネジメント比較
- Stewardshipがあり、ミッションが明確。
- SPARC(Strategic Plan Area Research Committee)の存在。
- Budget Retreatで業務の仕分けを全学公開、Webストリーミングしている。*3
- 業務システムはKualiというオープンソースソフトウェアを活用している。*4
4.質疑応答
- 日本の大学がアメリカの大学より優れていた点はあったか?
- 人事制度を日米比較するとどうか?
- アメリカの大学はジョブディスクリプションが明確。アメリカには「人事異動」の概念がない。公募に応募して職を変えるというイメージ。教員もAdministrationに専念する人がいる。
- アメリカのIR(Institutional Research)はすごいのか。
- どの大学にも必ずIR担当者がいる。IRがないことのデメリットを考えた場合、必須の存在であり、公的調査に対応するためにも必要。CIOの下にIR部門が置かれ、その下部組織に情報部門がある。
よくProvostの話が出てきたのが印象的でした。学長は学外対応が主たる仕事で、学内業務はProvostが担当しているという点で、日本で言うところの学務担当副学長のようなイメージなのかと思いました。役職ごとの権限が明確で、ガバナンスがしっかり取れているという印象です。この点が日本の大学との最も大きな違いなのではないかと私は感じました。また、Kualiという大学の経営管理まで行うことができるオープンソースソフトウェアがあることは知らなかったので、とても参考になりました。*5
今回の研修報告を伺って、普段、自分がどことなくアメリカの高等教育をステレオタイプに見ていたことに気付かされたのは大きかったと思います。「百聞は一見にしかず」なので、本当は自分自身の目で確かめる機会があるといいのですが。参考資料として、大学評価・学位授与機構が発行している「諸外国の高等教育分野における質保証システムの概要」のアメリカ合衆国版をご紹介します。こちらとあわせてご確認いただくと、より分かりやすいかも知れません。
*1:大学職員の国際対応力を強化する国際教育交流担当職員長期研修プログラム(LEAP) http://d.hatena.ne.jp/high190/20120326
*2:大学共同利用機関法人(mext) http://www.mext.go.jp/b_menu/link/daikyou.htm
*3:http://www.provost.colostate.edu/
*5:ICT 利用で世界的にオープン化が進む高等教育(科学技術政策研究所) http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt119j/report1.pdf