Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

国際教養大学の学生による授業評価から教学マネジメントを考える

high190です。
今年から授業評価アンケートを担当することになり、色々な気付きがあって面白いです。特に学生、教員、職員では授業評価に対する考え方がそれぞれにあることを再認識しました。私が授業評価に職員の立場で関わるにあたって一番気になることは、学生の目線に立った授業評価が行われているかどうかです。授業を実施するのは教員のサポート、最も主体的に授業と関わるのは学生のリアクション、それぞれをバランスよく見られる視点を常に持っていたいと思います。そのため、授業評価は学生の声を反映した形で行われなければならないと感じています。
秋田の国際教養大学では、学生が独自に授業評価サイトを立ち上げて、学生間での授業評価内容を共有化する取り組みを行っています。


国際教養大学秋田市雄和)に通う学生グループが制作した授業評価サイト「AIU Evaluation」が現在、同大に通う学生の間で話題になっている。
入学試験の偏差値や卒業後の就職率の高さなどで全国的な注目を集める同大。社会起業家を目指す同大2年生らのグループ「isicoro」が「秋学期から一般教養課程に入る新入生の参考に」と5〜6月、同大生を対象に約60の授業内容についてアンケートを実施。約150人分の回答をまとめて6月27日にサイトで発表したところ、掲載初日だけで約2500件のアクセスを集めた。
評価項目は、「授業の面白さ」「評定の厳しさ」「宿題の量」の3項目。それぞれ5段階評価するほか、「大量の宿題が出される」「頑張ればきちんと評価してくれる先生」「無駄話も多い先生だが面白い」など学生から寄せられた「授業レビュー」も掲載する。
「新入生が自分に合った授業を受けられるようにと企画した。あくまでアンケートの調査結果を数値化したものなので参考までに」と同グループの前山健大さん。サイトの立ち上げに携わった長田紘一郎さんは「学期ごとにデータを更新するなど、これからも責任を持って運営したい」と意気込みを見せる。

学生が立ち上げたサイトは以下の通りです。

学生による授業評価、というと北海道大学の鬼仏表が老舗でしょうか?*1その他にも最近では、学生がFDに主体的に関わる事例も少しずつ増えてきています。*2 *3授業評価とFDは密接に関連しており、学生の主体的学修を促進するためには、授業評価の実施方法や制度設計について学生の意見を聴くことは有効だと思われるので、その意味において、学生間での授業評価に関する情報を共有する取り組みは有意義なものだと思います。ただし、学生による授業評価は単位の取りやすさに議論が向いてしまうこともあるので、そこは差し引いておくことも必要だと思いますが。
ちなみに正規の授業評価アンケート結果については、国際教養大学が平成20年度に受審した機関別認証評価報告書の中に記載されています。*4

6−1−3 授業評価等、学生からの意見聴取の結果から判断して、教育の成果や効果が上がっているか。

学生による授業評価(学生評価)は、春セメスター終了時、秋セメスター終了時、及び冬期プログラム終了時に、全科目について実施されており、教育の成果・効果を検証する資料については、教員ごと、科目ごとに把握できる。学生による評価票は、教員に関する質問が17項目、授業科目に関する質問が14項目の計31項目からなる質問票と、5つの質問に自由に答える学生コメントから成り立っている。学生評価の結果では、「興味・関心をひきつけた」、「学習目標を達成するのにふさわしい授業だった」という肯定形の質問のすべてにおいて、「強くそう思う」、「そう思う」の間に回答が集中している一方、「進み具合が速すぎた」、「授業内容は必要以上に複雑だった」という否定形の質問については、「そう思わない」に回答が集中している。
これらのことから、教育の成果や効果が上がっていると判断する。

捉え方は様々ですが、学生はお客さんではなく、大学を構成する重要なステークホルダーでもあります。特に大学の教育内容を最も良く知っている生の声を活かすことは、授業改善のみならず、大学改革においてもそれぞれの大学にとって有用な知見がたくさん含まれているであろうことは容易に想像できます。大学を構成しているのは、教員・職員だけではなく、学生も重要な一員なのです。彼らの声に耳を傾け、大学運営に活かしていくためにも、それぞれの立場で授業評価を行った結果をすり合わせていくことが重要ではないかと思います。教学ガバナンスの観点からも、学生自身が自分たちの受けている講義について考え、教員と意見を交わしていくことは、教学マネジメントに繋がると思います。教育を受けている当事者の意見をもっと大学内部に取り入れていけるかどうかは、是非引き続き検討していきたいテーマのひとつです。

*1:北海道大学鬼仏表 http://camlife.jp/zyugyou/hokudai/

*2:FDネットワークつばさ「学生FD会議」 http://www.yamagata-u.ac.jp/gakumu/tsubasa/news/61.html

*3:学生FDサミット2012冬 http://www.otemon.ac.jp/other_info/fd/index.html

*4:平成20年度大学機関別認証評価実施結果報告(大学評価・学位授与機構・PDFファイル) http://www.niad.ac.jp/sub_hyouka/ninsyou/hyoukahou200903/daigaku/kokusaikyoyo_d200903.pdf